東方霊恋帖   作:冷ヤクミ

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25/05/07
稗田家の設定を失念していた為、変更


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「クソッ、コイツらなんだんだ!?」

「私に聞かれても困るわよ!」

 

 妖怪に狙われながらもそれを利用し、人里の外に誘導するように飛ぶのは霊夢と魔理沙。早苗は建物を守る為に、咲夜は避難誘導の為に別行動をとっていた。

 

 一時は囲まれる事になったが4人と妖怪共では格が違う。迫る弾幕は意に返さず、迫る妖怪共を払い除けながら二人は事態について相談していた。

 

「とりあえず人里の安全が第一よ。もう直ぐ二人も帰ってくるでしょうし、そうしたらこんな事をしたバカを囲んで叩いてお終い」

「分かりやすくてアタシは好きだぜ」

 

『「魔符」スターダストレヴァリエ』

 

 魔理沙の乗る箒から星が弾け、後ろに向かって降り注ぎ、妖怪共を吹き飛ばしていく。

 

「ちょっと!家を壊さないでよ!」

「早苗が護ってるんだろ?なら大丈夫だよ。それに外に誘導するより早いしな!」

「、、、はぁ」

 

『「霊符」無双封印・散』

 

 霊夢は振り返り、スペルカードを発動する。同時におびただしい量のお札が飛び出し、妖怪達を吹き飛ばす。どうせ人里から出ればひと暴れしてこの妖怪を大人しくさせなければならないのだ。今やろうが後からやろうが変わりは無い。

 

「な、早いだろ?」

「そうね。。。ッ!」

 

 突如現れた妖怪共に背後を取られる。個々の力は弱いとはいえ数が数である。妖怪の波が油断した霊夢達に襲いかかる直前。突如として現れた銀のナイフが妖怪達を正確に撃ち抜く。

 

『幻夜「ザ・ワールド」』

 

「咲夜!」

「ちょっと油断しすぎじゃ無くて?」

「サンキューな!」

 

 咎める様にして二人の隣に現れたのは咲夜だった。

 

「慧音は?」

「振られたわ」

「振られたって、お前なぁ」

 

 咲夜は住民の避難とともに里の守護者である上白沢慧音に協力を申し出ていた。

 

「かなり辛そうだったわ。あの感じだと耐えるので精いっぱいって感じかしら」

「それかなりまずいんじゃねぇの?」

 

 今、人里で暴れる妖怪たちは例外なく操られている。原因は十中八九、人里の外で感じる巨大な妖力なのは想像がつく。妖怪を操る手段が妖術なのか能力なのかは判別できないが慧音をも従えるとなると話が変わってくる。

 

「早くこいつら蹴散らして元凶を叩くわよ」

「皆さん!お待たせしました!」

「早苗!遅いぞ!」

 

 家の保護を任せた早苗が戻ってくる。しかし、その顔は浮かないものであった。

 

「里中妖怪だらけです。しかも狙いは人間みたいで」

「予想より規模が大きいわね」

「予定変更!速攻で元凶を叩く!」

「了解です!」

 

『開海「モーセの奇跡」』

 

 どこからともなく波が押し寄せ、妖怪たちを人里の外に押し流す。しかし、これほどの波にかかわらず早苗の守護を受けた家々は一切の傷がつかず佇んでいた。

 

「これで当分は大丈夫です!行きましょう!」

 

 

 

「アンタね?人里で起きてる異変の元凶は」

「やっときたか。今代の博麗」

「!」

 

 森の中に佇んでいたのは一人の少女だった。高めの慎重に腰まで伸びた艶やかな黒髪、黒のノースリーブの上に着た博麗の巫女独特の袖の離れた赤い巫女服。その姿を見た霊夢は硬直し声が出せないでいた。

 

「なんだ?博麗の巫女のファンか?推すならこの魔理沙様がおススメだぜ?」

「魔理沙さん!こんな時にふざけないでください!」

「そうよ、霊夢からも言ってやりなさい、、、霊夢?」

 

 霊夢は喋ることなく、目を見開き、金魚のように口をパクパクさせている。それを見た少女はクツクツと楽しそうに笑いながら霊夢に問いかける。

 

「驚いて声も出ぬか、そうだなこんな感じか?」

『霊夢、大きくなったな』

「お、お母さん、、、」

「は?霊夢なにいって」

『そうだ、お母さんだよ。もっとこっちに来て顔を見せておくれ』

「お母さんを、、、お母さんを語るな!妖怪!」

「ちょ!霊夢!」

 

 魔理沙の静止を振り切り走り出す霊夢。霊夢は自身の母親を語る少女に襲い掛かる。弾幕ごっこは一切行われず、ただひたすらに力のぶつかり合いが起きる。霊夢のフェイント、足払い、目つぶしを織り交ぜた体術を涼しい顔で捌く少女。そして挑発するようにあえて急所を外しながら霊夢の胴を拳で打ち抜く。

 

「!」

 

 木々をなぎ倒しながら吹き飛ばされる霊夢。反撃に放つ弾幕はすべて撃ち落されるも、それを囮に背後から距離を詰める。

 

「いいぞ!博麗の巫女!それでこそだ!」

「おいおい!霊夢!どうしちまったんだ!」

 

 霊夢のあまりの気迫に3人は近寄れず、ただ佇むことしかできなかった。

 

「いいのか?博麗の巫女。この体は正真正銘、先代の体だ!私を殺すとこの体も死ぬぞ?」

「!」

「隙ありだ」

 

 少女の言葉に一瞬固まる霊夢。その隙をつかれ妖力でできた帯に拘束される。

 

「そうだな、冥土の土産に名乗ってやろう。私は空亡。妖怪の王にして『最後の百鬼夜行』空亡である!」

 

 

 

 霊夢に母親の記憶は殆どない。幼少期、そろそろ霊夢も博麗の巫女としての鍛錬を始めようかという頃に姿を消したからだ。理由は単純、暴れる妖怪を封印するためにその身を捧げたからである。

 

 しかし霊夢はもう殆ど声も顔も思い出せない母親を誇りに思っていた。微かに残る記憶の中のお母さんは強く逞しい立派な人であったから。

 

数年前

 

 霊夢の母親、先代の巫女は月に照らされながら森を駆けていた。人里より妖怪が暴れている知らせを受けた彼女はそれを異変と断定し、それを治めるために人里へ向かうためであった。

 

(なんだってこんな時に)

 

 先代は心の中で悪態をつきながらも木々を渡る。明日は娘の誕生日であった。自分の幼少期を思い出せばそろそろ厳しい鍛錬を始めなければいけない頃合いである。こういった祝い事をしてやれるのも今年が最後かもしれない。そう思い今年はめいっぱい甘やかしてやろうと、その矢先にこれである。

 

「み、巫女様」

「大丈夫か!」

「妖怪どもが、、」

 

 人里につくとそこは悲惨な有様であった。家々は燃え、ケガをした人たちがそこら中に倒れていた。

 

「博麗様!」

「里長殿!」

 

 老人が駆け寄ってくる。彼は里長として老体に鞭を撃ち里の人たちを自身の屋敷に避難させていた。

 

「状況は?」

「村の者はこちらに任せてください、人里の中の妖怪は里の防人で何とかなりそうです。博麗様は元凶を!」

「わかった!かたじけない!」

 

 里長の話を聞いて再び先代は駆けだす。場所の把握は思っていたより簡単に済んでいた。里の奥に佇む巨大な妖気そこにいるのは明らかであった。

 

 

 

「声!?」

 

 元凶に向かって走る中、ふいに足を止める。微かに聞こえた声は助けを呼んでいるように聞こえた。声の元はすこし見渡せば見つけることができた、狭い路地の先妖怪に囲まれながらも子供を抱え妖怪から守るように覆いかぶさる母親。子供の大きさは自分の娘と同じぐらいだろうか、目に涙を溜め震えながら必死に母親にしがみついている。妖怪が親子に襲い掛かろうとする直前、考えるより先に体が動いた。

 

「ぐっ!」

 

 親子をかばい背中をえぐられる。普段ならこんな木っ端の妖怪など纏めてなぎ倒せただろう。しかし、そうすれば囲まれている親子に被害が及びかねない。もう少し時間があれば少ない霊力を込めて弾幕で気を引いたりすることも出来たかもしれない。

 

「巫女様!」

「逃げろ!早く!」

「ありがとうございます!」

 

 博麗の巫女という極上の餌で妖怪の気を引き親子を逃がす。傷つけるものがなければ後は簡単であった。腹を貫き、頭を飛ばし、半分に裂く。あっという間に妖怪達は塵となって消えていくのだった。

 

「やるではないか、博麗の巫女」

「!?」

 

 突如、声を掛けられ振り返る。そこに佇むのは黒い甲冑に身を包む一つ目の妖怪であった。赤黒い球体を背負い自信を誇示するように垂れ流す妖力を前に先代は構える。

 

「そう構えるな、まずは話でも!?」

 

 先代は妖怪の声に聴く耳を持たず、腹に全力の拳を突き出す。腹を貫き一撃で決めるつもりであったがそこまでには至らず、妖怪は踏ん張ってはいるものの勢いを殺せず飛ばされ、離れていく。

 

 ひと飛びで追いつく先代。飛んでいく勢いに乗るように妖怪を押し出していく。柵や壁を貫きながら里の外まで押し出して行き、里外れの大岩に叩きつけた所で距離を離す。

 

「ずいぶん血気盛んじゃないか」

「妖怪に貸す耳は無い、それが異変の首謀者ならなおさらな」

 

 先代の目には妖怪は殆どダメージの入っていないように見えた。初撃の位置こそ甲冑がへこんでいるように見えるはそれ以外は傷もほとんど入っていなかった。

 

 

 

 先代と妖怪の戦いは熾烈を極めた。先代の拳は甲冑で受け止められ、返しの刀を避けながら拳を叩きこむ。距離を離し過ぎれば弾幕が邪魔をする。拳を入れるには刀の間合いに入らなければならない。無理をして刀の一撃を食らえば致命傷になりかねない。先代は歴代の博麗の巫女と比べ霊力が少なく、それを恵まれた怪力で補っていた。ゆえに時折、攻め手に欠けることがあり、特にこの妖怪のように防御に心得がある者相手は先代の苦手とする相手だった。

 

 しかし、先代も無策に戦っていたわけではなかった。最初の一撃相手が油断していたからこそ叩き込んだ全力の一撃。そこから奴の甲冑はほころび初めていた。

 

「万事休す、と言ったところかな?博麗の巫女?」

「それはどうかな!」

 

 一足で妖怪との距離を詰める。振り下ろされる刀を回し蹴りではじき空いた胴に拳をねじ込む。度重なる衝撃に耐えきれずついに甲冑にヒビが入り、砕けてゆく。本体さえ見えれば一撃で決めれる。それは先代が培ってきた自信と覚悟であった。

 

「!?」

「驚いたか?すまないな、私の本質は付喪神なもんでな」

 

 甲冑の中は空っぽであった。ガラガラと崩れる甲冑の後ろ、背負っていた球体が開眼し、しゃべりだす。

 

「そっちが本体か、グッ!」

 

 先代は殆ど限界であった。思っていた以上に親子をかばった傷が深く、激しく動く先代の体は血を流し続け、いつ倒れてもおかしくなかった。

 

「いい眺めじゃないか。皆の恐れた博麗の巫女がまるでぼろ雑巾じゃないか」

 

 妖怪から伸びる妖力の帯が先代を縛り上げる。ニタニタといやらしい笑みを浮かべ、嬉しそうに妖怪は吠える。

 

「私は空亡!最後の百鬼夜行にして妖怪の王!博麗の巫女を打ち取った者なり!」

 

 先代の意識は今にも手放してしまいそうであった。しかしそれを気合で押しとどまる。なぜなら自分は幻想郷の守護者、博麗の巫女であるから。覚悟を決め最後の手段に出る。歴代の博麗の巫女より霊力が少ないからこそ編み出した奥義。自身の体を霊力に変え、今以上の身体能力と莫大な霊力を得るという正に命を削り放つ。

 

「夢想天生」

「何!?」

 

 先代の体が淡く光り、空亡の帯を引きちぎる。しかし夢想天生をもってして空亡は倒せない。それは何となく感じていた、血を流しすぎたのだ。ならばやることは一つ。

 

「驚いたな。まだそんな力があったとは、しかし息も耐え耐え、そんな体で何ができる、、、貴様何をする気だ!?」

「夢想封印!」

 

 先代は自身のすべてを霊力に変え放つ。捨て身の一撃。

 

「クッ!まだこんなものを隠していたとは!しかしこの程度の封印!十数年もすればいずれ食い破り復活できる!徒労に終わったな!博麗の巫女!」

「十数年あれば十分!次代に託す!」

「なにを!」

「私の娘は天才だからな!悔しいが私にできるのはこれが精いっぱいだが、娘なら!霊夢なら!貴様を殺す!」

 

 先代は意識を溶かしながら神社で眠っているであろう娘、霊夢について想いをはせる。笑顔も、泣き顔も、ご飯をほおばる顔も、寝顔もかわいらしい子だった。できることなら、

 

「誕生日を祝いたかった」

 

 そして二人は光に包まれ、この日先代の博麗の巫女はいなくなり、誕生日を一人で迎えた霊夢は新たな博麗の巫女として、孤独になったのだ。

 

 

 




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