RAILJACK番外編   作:マブラマ

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國鉄クーデター(RAIL WARS! -日本國有鉄道公安隊-20巻参照)の舞台と日時を同一とした、同作では語られなかったもう1つのハプニング。警視庁警備部警護課(SP)警護第二係の伊隅みちるは、警護対象者の大臣を、鑑賞予定の「風間透子演奏コンサート」に無事送り届ける為、国会議事堂から会場の新宿シンフォニーホールに急いでいた。しかし、國鉄鉄道公安機動隊隊長の五能瞳によるクーデターが発生したとの連絡が入り、大規模テロを懸念した榊はコンサートの鑑賞をキャンセルし私邸に戻る判断をする。だが、同事件警視庁刑事部捜査第一課特殊捜査班第一係(SIT)班長の白井里美の指示により、新宿向けの車両全てに対して一斉検問が行われ、それによる大渋滞に大臣の車列が巻き込まれ、足止めを食らってしまう。




第五話 警護官 伊隅みちる
もう一つの波乱


新宿の夜を切り裂くサイレンの音が、伊隅みちるの鼓膜を震わせた。国会議事堂を後にした黒塗りの車列は、警視庁警備部警護課第二係の彼女が守る、大臣・榊の命を乗せて新宿シンフォニーホールを目指していた。車内の空気は重く、みちるの視線は窓の外を流れゆく都心の光に注がれつつも、常に周囲の異変を捉える鋭さを失わない。

「風間透子さんの演奏会、楽しみにしてたのになぁ……」

榊が呟く。その声に、みちるは小さく頷きながらも、インカムに意識を集中させた。任務に私情は挟まない。それが彼女の信条だ。

だが、その刹那――インカムからけたたましい報告が飛び込んできた。

《緊急連絡! 國鉄鉄道公安機動隊隊長・五能瞳によるクーデター発生! 都内全域に警戒態勢発令!》

みちるの瞳が一瞬で鋭さを増す。クーデター。それは単なる暴動ではない。国家の根幹を揺るがす大規模テロの可能性すらある。彼女の脳裏に、訓練で叩き込まれた最悪のシナリオが浮かんだ。

「閣下、状況が変わりました。コンサートは中止し、私邸へ戻ることをお勧めします」

みちるの声は冷静だが、内に秘めた緊迫感が滲む。

榊は一瞬驚いた顔を見せたが、すぐに頷いた。

「分かった。君に任せるよ」

運転手に指示を飛ばし、車列は進路を変更。だが、その時――前方で赤いテールランプが無数に連なり、まるで動かぬ鉄の壁のように立ち塞がった。渋滞だ。それも尋常ではない規模で。

「くそっ、なんでこんな時に!」

運転手が舌打ちする。みちるは素早く無線で状況を確認した。

《新宿方面、全車両に対する一斉検問実施中。警視庁捜査一課SIT、白井里美班長の指示によるもの。即時解除の見込みなし》

みちるの眉がピクリと動く。白井里美。SITの鬼才と呼ばれる女だ。彼女が動くなら、事態は予想以上に深刻かもしれない。だが、今のみちるにとって問題はただ一つ――この渋滞が、大臣の命を危険に晒していることだ。

「閣下、しばらくここで待機を。迂回路を模索します」

みちるは冷静に告げ、助手席に飛び乗ると地図アプリを叩く。だが、画面に映る都内の道路は、どこも真っ赤に染まっていた。検問の影響は想像以上に広く、まるで東京全体が息を止めているかのようだ。

車外では、苛立つクラクションと遠くのサイレンが不協和音を奏でる。みちるの心臓は早鐘を打ちながらも、頭は冷え切っていた。このまま足止めを食らえば、テロリストの標的になる可能性すらある。クーデターの影は、すぐそこまで迫っているかもしれない。

「みちる君」

榊の声が静かに響いた。

「君なら、きっと大丈夫だろ?」

その言葉に、みちるは一瞬だけ目を細めた。信頼。それは彼女が背負う重い楯だ。

「必ずお守りします。どんなことがあっても」

彼女は無線を握り、部下に指示を飛ばす。

「迂回路が無理なら、ルートを切り開く。警護課第二係、全員配置につけ!」

夜の新宿に、みちるの決意が響く。クーデターの嵐が吹き荒れる中、彼女の戦いはまだ始まったばかりだった。

(了)

 

 

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