RAILJACK番外編   作:マブラマ

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もう一つの波乱・続き

伊隅みちるの声が無線を切り裂くや否や、警護課第二係の隊員たちが車列周辺に散開した。黒いスーツに身を包んだ彼らの動きは、まるで闇に溶ける獣の如く迅速で的確だ。新宿の渋滞は依然として動く気配を見せず、赤と青の回転灯が遠くで不気味に瞬いていた。みちるの視線は、車列の周囲を360度見渡し、わずかな異常も見逃さない。

「隊長、迂回路の確保は困難です。検問が主要幹線を完全に封鎖中!」

部下の一人、若手の佐藤が焦りを滲ませて報告する。

「なら、動くしかない」

みちるは短く答えた。彼女の頭脳はフル回転で次の手を模索していた。榊大臣をこの場に留めるのは危険すぎる。國鉄クーデターの混乱に乗じ、テロリストが動く可能性は刻一刻と高まっている。ましてや、SITの白井里美が一斉検問を敷くほどの事態だ。情報が乏しい今、動かずして安全は確保できない。

「閣下、失礼します。車外へご移動を」

みちるは榊に告げ、ドアを開けた。榊は一瞬驚いた顔を見せたが、彼女の目に宿る確信を見て、黙って従った。

「佐藤、林! 閣下を中央で囲め! 残りは前方と後方を固めろ!」

みちるの指示に、隊員たちが即座に反応。榊を護る人垣が瞬時に形成された。彼女は地図を頭に叩き込み、検問の隙間を縫うルートを計算する。新宿シンフォニーホールは諦め、私邸へ直行する最短距離――それが今、唯一の活路だ。

だが、歩みを進めた瞬間、背筋に冷たい予感が走った。みちるの視界の端で、路地裏の影が不自然に揺れた。反射的に拳銃に手をかける。

「全員、警戒! 3時の方向、確認しろ!」

隊員たちが一斉に銃を構え、暗闇を睨む。その時、路地から飛び出してきたのは――迷彩服に身を包んだ男たちだった。手に握られた自動小銃が、街灯の光を鈍く反射する。國鉄クーデターの余波か、それとも別の勢力か。考える暇はなかった。

「閣下、下がって!」

みちるは榊を背後に庇いながら、隊員たちに叫んだ。

「撃つな、まず牽制!」

銃声が夜を切り裂く前に、彼女は閃光弾を投擲。眩い光が敵の視界を奪い、その隙に隊員たちが白銀を囲んで移動を開始した。だが、敵は予想以上に組織的だった。路地の奥からさらに増援が現れ、車列を包囲するように展開していく。

「くそっ、ただのテロリストじゃない……!」

みちるは歯噛みする。この動きは訓練された軍事行動だ。クーデターに乗じた第三の勢力の可能性が脳裏をよぎる。

「隊長! このままじゃ閣下が!」

佐藤の叫びに、みちるは一瞬だけ目を閉じた。彼女の心臓は激しく脈打ちながらも、頭は氷のように冷え切っていた。敵の数は多い。だが、彼女には守るべき命がある。

「佐藤、林、閣下を連れて南へ! 私と残りでここを食い止める!」

「隊長、無茶です!」

佐藤が抗議するが、みちるは鋭く睨みつけた。

「これは命令だ! 行け!」

隊員たちが白銀を連れて走り出すその刹那、みちるは敵の先頭に飛び込んだ。銃口が火を噴く前に、彼女の拳が男の顎を捉え、電光石火の動きで二人目を地面に叩きつける。背後では隊員たちが援護射撃を開始。混乱の中で、彼女の姿はまるで嵐の中心に立つ戦女神のようだった。

「閣下を……絶対に守る……!」

銃声と怒号が響き合う中、みちるの決意は夜空に吸い込まれていった。彼女の戦いはまだ終わらない。新宿の闇が、さらなる試練を彼女に突きつける――。

(続く)

 

 

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