RAILJACK番外編   作:マブラマ

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過去の亡魂、未来の光

新宿の地下クラブから朝日が差し込む。血と硝煙の残る戦場で、神長香子は高橋悠真を支え、静かに息を整える。クローバーホームの刺客は壊滅したが、刺客のリーダーの言葉が彼女の心に突き刺さっている。

「お前のせいで彼女は死んだ」

その「彼女」が、香子の慕っていた先輩を指すのかどうか、確かめる術はない。だが、過去の傷が再び疼き、彼女の決意を揺さぶる。

 

「神長、大丈夫か?」

高橋の声に、香子は眼鏡を押し上げ、皮肉な笑みを浮かべる。

「心配してくれるなんて、らしくないな。…ありがと」

彼女の声は小さく、しかしどこか温かい。高橋は軽く肩をすくめ、傷を押さえる。

「次はもっと楽な仕事がいいな」

その軽口に、香子は初めて彼に仲間のような信頼を感じる。だが、クローバーホームの影はまだ消えない。

 

警視庁に戻ると、香子と高橋は山本教官に報告する。地下クラブでの戦闘は、クローバーホームの東京支部を大きく揺さぶった。だが、山本の表情は厳しい。

「神長、高橋、よくやった。だが、クローバーホームの首領はまだ姿を見せていない。次の動きに備えろ」。

会議室を出ると、香子は資料を手に一人で考える。クローバーホームのネットワークは、彼女が想像していた以上に複雑だ。ロストック港でのベアトリクスの介入、警視庁での高橋の存在、そして刺客の言葉――全てが繋がっている気がする。彼女は無意識に首に手をやる。涼に託した首輪型爆弾の記憶が、ふと蘇る。

「首藤…お前なら、どうしたんだ?」

その夜、香子は寮の自室で、明星学園のアルバムを手に取る。黒組の仲間たちの笑顔が、彼女の心を締め付ける。特に、先輩の写真。彼女の優しい眼差しは、香子に暗殺者を辞める決意を与えた。だが、その先輩を失ったのは、香子のミスだった。

「私のせい…? ほんとに?」

彼女はアルバムを閉じ、窓の外の夜景を見つめる。東京の光は、彼女に希望を与えると同時に、過去の闇を照らし出す。

 

翌日、香子は新たな任務の準備に追われる。クローバーホームの首領が、横浜の港湾地区で大規模な取引を計画しているという情報が入った。香子と高橋は、警備部の精鋭チームと共に現地へ向かう。だが、香子の胸には不安が渦巻く。刺客の言葉が、彼女の自信を揺さぶっているのだ。

「もし、ほんとに私のせいで先輩が…」。

横浜の港に夜が落ちる。冷たい海風が倉庫街を吹き抜け、ロストック港を思わせる雰囲気だ。香子は黒の戦闘服に身を包み、警視庁の拳銃を握る。彼女の隣には高橋、背後には警備部の隊員たち。作戦は単純だ――取引現場を急襲し、首領を捕える。だが、香子の本能が警告を発する。

「これは…罠の匂いだ」。

作戦開始の合図と共に、香子たちは倉庫に突入する。だが、予想通り、クローバーホームの刺客たちが待ち構えていた。銃声と叫び声が響き、戦闘が始まる。香子は暗殺者時代の動きで敵を倒していくが、刺客の数は多い。彼女は高橋と連携し、敵の包囲網を突破する。

 

「香子、右だ!」

高橋の叫びに、香子は咄嗟に身を翻す。だが、その瞬間、倉庫の奥から現れた影に彼女は凍りつく。黒いマスクの女――その動き、ナイフの構えは、かつての先輩を彷彿とさせる。

「まさか…!?」

香子の心臓が激しく鼓動する。

「神長香子…お前が裏切ったせいで、私はこうなった」

女の声は低く、憎しみに満ちている。マスクを外すと、そこには見覚えのある顔――だが、目は死んだように冷たい。香子は一瞬、言葉を失う。「先輩…生きてたの?」

だが、女は笑う。

「生きてた? 違うな…私はイレーナの双子の妹、ミレーナだ。生き別れだがな。クローバーホームに作り替えられたんだ。お前のせいでね」

香子の脳裏に、過去の記憶が蘇る。先輩を救えなかった任務、爆発の中で消えた彼女の姿。だが、クローバーホームが彼女を改造し、刺客として蘇らせたというのか? 香子は拳銃を握り直す。

「私のせい…かもしれない。でも、あなたをこんな風にしたのはクローバーホームだ!」

戦闘が再開する。香子はミレーナと一対一で対峙する。ナイフと拳銃が火花を散らし、倉庫に金属音が響く。香子の動きは鋭いが、感情が彼女を乱す。

「イレーナ先輩、ごめん…私が、守れなかった!」

その叫びに、ミレーナの動きが一瞬止まる。だが、すぐに冷たい笑みを浮かべ、攻撃を再開する。

高橋が他の刺客を倒し、香子を援護する。

「香子、過去に縛られるな! 君はもう暗殺者じゃない!」

その言葉に、香子は目を覚ます。彼女はミレーナの攻撃をかわし、拳銃の銃床で彼女を気絶させる。

「……安らかに眠れ。私が終わらせるから」

戦闘が終わり、首領の逮捕に成功する。だが、香子の心は重い。ミレーナはクローバーホームの施設に連行され、彼女の運命はまだ分からない。香子は高橋と並び、朝日を見つめる。

「高橋…私、過去を断ち切れるかな」

彼は静かに頷く。

「君ならできる。俺も、そう信じてる」

警視庁に戻った香子は、ベアトリクスの言葉を思い出す。

「警察のトップになりなさい」

彼女は拳を握り、決意を新たにする。

「クローバーホームを終わらせて、先輩を救う。それが私の償いだ」

 

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