346プロ常務室 アイドル戦線の最前線
薄暗い常務室に、重苦しい沈黙が漂っていた。
武内Pは「……Perfume、でしょうか」と、いつもの控えめな声でポツリ。
美城常務が鋭い眼光を光らせ、口を開く。
「確かに彼女たちは素晴らしいアイドルユニットだった。だが、時代は変わりつつあるのよ」
そこへ、どこからともなく現れた影――木下プロデューサー(通称イヤミP)が、不敵な笑みを浮かべて割り込んできた。
「今の時代のアイドルと言えば……unoB(ユーノビィ)でしょうねぇ。特にメインボーカルの鹿島乃亜。あの子が國鉄のイメージキャラクターに抜擢されて、一週間も鉄道公安隊長を務めるって話ですよ」
「unoB? 聞いたことないわ」
ちひろが首をかしげると、武内Pが目を細めて木下を見つめる。
「あなた、もしかして木下さん?」
「その通り!」
イヤミPは胸を張り、得意げに続ける。
「今や時代は鹿島乃亜に取られちまった。事務所の猛プッシュでイメージキャラに上り詰めたんだから、実力行使ってやつだよ。ほら、これを見な!」
バンッ! と机に叩きつけられたのは、國鉄痴漢撲滅キャンペーンのポスター。そこには鹿島乃亜が凛々しい制服姿で、なぜか犬と一緒に写っている。
「可愛い~っ」
ちひろが目を輝かせる一方、武内Pは冷静に呟く。
「対抗策は?」
美城常務が顎に手を当て、木下に視線を突き刺す。
「お前が事前に策を打っているはずだ。対案を言いなさい」
イヤミPはニヤリと笑い、武内と今西部長を見据えた。
「これだけは自信がある。それは――プロジェクトクローネの」
「プロジェクトクローネの!?」
武内Pとちひろがハモる。
「一人の」
「一人!!?」
「さ」
「さ?」
「ぎ」
「ぎ?」
「さ」
「さ?」
「わ!」
「鷺沢文香さんですか!!?」
武内Pが勢いよく叫ぶと、イヤミPの顔が一瞬引きつった。
「……君ね、オチを先に言っちゃダメだよ。空気読もうね?」
「はぁ……」
武内Pは肩を落とし、気まずそうに目を逸らす。
だが、イヤミPはすぐに気を取り直し、声を張り上げた。
「向こうが一週間鉄道公安隊長なら、こっちは一ヶ月間鉄道公安機動隊隊長だ!」
「!!」
武内Pが息を呑み、ちひろが慌てて口を挟む。
「木下プロデューサー! いくらなんでもそれは――」
「いや、やってみる価値はあるわ」
美城常務が静かに、だが力強く言い放つ。
「美城常務……」
武内Pが驚きの表情を浮かべると、彼女は冷たく微笑んだ。
「面白そうな企画じゃない」
イヤミPは目を輝かせ、拳を握り潰す勢いで宣言する。
「とんでもないです! この件は全て私に任せてください、美城常務!」
「失敗したら……分かっているわね?」
美城常務の声が、氷のように冷たく響く。
「当然、分かってます。クビも覚悟の上です!」
イヤミPはそう言い切ると、自信満々に胸を叩いた。
常務室に再び緊張が走る中、武内Pは内心で呟いていた。
「(鷺沢文香が鉄道公安機動隊隊長……? 本と紅茶が似合うあの文香さんが、どうやって……?)」
果たして、この無謀とも言える対抗策は成功するのか――346プロの未来が、今、動き始めていた!