影の監督とニセ乳疑惑   作:ChomeemohC

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可愛くなりすぎた香取
でも俺は香取はこのくらいのデレポテンシャルはあると思ってる

あたしとアタシがゲシュタルト崩壊

葉華派は見たら死ぬかも


影の監督とニセ乳疑惑

 遠征選抜試験が終わり、パラパラと解散していく面々

宇井真登華は、試験でのチームメイト、香取葉子に声をかけた。「香取、お疲れ~」

二人は試験を通じてすっかり仲良くなっていた。

元々人当たりのいい宇井 一度身内となると仲間意識が強くなる香取 相性は悪くなかった。

「お疲れ、宇井」

「香取はさ、遠征行かないんだよね?」

「最初に言ったけど、チームでなけりゃ行く気になんないわ、そっちは?」

「うちも遠征志望いないから、行かないと思うわ〜」

目の前で縦にした手を横に振る宇井はいつもの人懐っこい顔で香取を誘う

「じゃあさ、合格したらボーナスも出るし、一緒にどっか遊びに行こうよ、せっかくの機会だし、もっと香取と仲良くなりたいしさ」香取は目を見開いて応える

「はぁ?…あんた物好きね、いいわよ、付き合ってあげる」

香取は軽く肩をすくめながらも、どこか嬉しそうな顔を隠しきれなかった。彼女の口調はそっけないが、目尻がわずかに下がっているのが宇井にはわかった。試験中、香取がチームのために無言で動く姿を見て、彼女の仲間意識の強さを知っていたからだ。

「物好きって言うけどさ、香取だって嫌いじゃないでしょ、あたしと一緒にいるの。」

宇井はにこっと笑いながら、香取の肩を軽くつつく。香取は「はいはい」と言いながらも、顔をそらして笑いをこらえているようだった。

「で、どこ行く?」

宇井が勢いよく話を進めると、香取は少し考え込むように顎に手を当てた。

「んー、そうね…。試験で疲れたし、どっか静かなとこがいいわ。温泉でもいいけど、あんたが行きたいとこあるなら合わせるわよ。」

「温泉!いいねぇ、それ!」

宇井の声が弾む。彼女は目を輝かせて、両手を握り合わせた。

「あたし、ずっと行きたかったんだよね、試験終わったら温泉でのんびりしたいって思っててさ。香取と一緒ならなおさら楽しそう!」

「…あんた、ほんとテンション高いわね。」

香取は呆れたように言うが、その口調にはどこか温かみが混じっていた。試験中の張り詰めた空気の中で、二人は互いに支え合うことで絆を築いてきた。香取にとって、宇井の明るさは少し眩しいくらいだったが、悪い気はしなかった。

「じゃあ決まりね。ボーナス入ったら、どっかいい温泉探して予約するわ。あたし、こういうの調べるの得意だから任せてよ。」

宇井は得意げに胸を張り、香取は「頼もしいわね」と小さく笑った。

 

 

 

香取隊の隊室。香取はデスクに肘をつきながら、幼なじみの染井華に話しかける。

「温泉?」

「そ、柿崎隊の宇井真登華、知ってるでしょ?試験で一緒になった流れで行こうってなって…華、一緒に行かない?」

華は書類を手に持ったまま、軽く首をかしげる。

「葉子…それ、私も行っていいの?」

「聞いてない、けど、ダメな理由ある?」

「葉子らしいね。でも私は行かないよ。」

「なんでよ。」

香取の声が少し不満げに下がる。華は淡々と、しかし彼女らしい合理的な理由を並べた。

「宇井さんのことよく知らないし、葉子が一緒だと葉子としか話せない気がするから。」

香取は一瞬黙って華の顔を見つめ、それから小さく息を吐いた。

「…そんなもんかな。」

その声には、納得と少しの寂しさが混じっていた。華の答えは予想通りと言えば予想通りだった。幼なじみだからこそ、華がこういう性格だとわかっている。でも、どこかで一緒に来てくれるんじゃないかと期待していた自分に、香取は苦笑いを浮かべた。

「まあいいわ。宇井と二人でも楽しめるし、アタシなら。」

香取はそう言って立ち上がり、試験中の宇井の姿を思い出した。あの明るくて、どこか憎めない奴。

華は書類を整理する手を止めず、背中越しに言う。

「楽しんできてね。帰ったら土産話でも聞かせてよ。」

「わかった。…華がいなくても寂しくなんかないからね。」

香取は軽く振り返って笑い、隊室を出た。ドアが閉まる音が静かに響いた。

 

 

 

「なんでアタシが不合格なの!?」

数日後、ボーダーの食堂。旅行の打ち合わせのために集まった二人は、テーブルに広げたパンフレットを前にしていた。だが、香取の声が突然響き渡る。

香取はテーブルをバンと叩き、椅子から立ち上がりながらモギャる。目の前の宇井は、紅茶のカップを手に持ったまま、にやにやと笑っている。

「あらあら、残念だねぇ~。香取、顔真っ赤だよ?」

その楽しそうな口調に、香取の眉がさらに吊り上がる。

「ふざけないでよ!試験の時、アタシだってちゃんとやってたじゃん!チームのこと考えて動いてたし…!」

香取はまくし立てるが、言葉の途中で力尽きたように座り直し、腕を組んで不貞腐れた。宇井はカップを置いて、肘をつきながら香取を眺めた。

「まあまあ、そうカリカリしないでよ。確かに香取も頑張ってたけどさ、ボーダーの基準ってよくわかんないよね。私だって合格するとは思ってなかったし。」

宇井は肩をすくめながら言うが、その軽い態度が逆に香取の苛立ちを煽るようだった。

少し前に、ボーダーから選抜試験の結果が発表されていた。遠征を志望する者には遠征行きが、志望しない者にはボーナス獲得の合否が示されるものだ。B級からは二宮隊や玉狛第2がチームとして順当に合格。個人では影浦隊の絵馬、鈴鳴第一の村上、漆間隊の漆間、生駒隊の水上など、実力者たちが名を連ねていた。そして、その中に宇井真登華の名前もあった。

なのに、香取葉子の名前はどこにも見当たらなかった。

「アタシ、遠征行く気なかったけどさ、ボーナスくらい欲しかったよ…。これじゃあ温泉旅行の資金も心許ないじゃん。」

香取はぼそっと呟き、テーブルに突っ伏した。宇井はそんな彼女を見て、くすっと笑う。

「大丈夫だよ、香取。あたしが合格したんだから、ボーナスでちょっと豪華なとこ連れてってあげる。ね?」

宇井はウインクしながら香取の肩を軽く叩く。香取は顔を上げて、じとっとした目で宇井を睨んだ。

「…あんた、ほんと楽しそうね。アタシが落ちたのに。」

「だって仕方ないじゃん。試験は試験、旅行は旅行。落ち込んでも結果変わらないんだから、切り替えて楽しもうよ!」

宇井の明るい声に、香取は一瞬言葉を失う。それから、深いため息をついて呟いた。

「…あんたといると疲れるわ。」

でも、その声にはどこか諦めたような、ほんの少しの笑みが混じっていた。

 

 

 

三門市からほど近い温泉地に到着した二人は、バス停から旅館へと続く石畳の道を歩いていた。

「着いた〜」

宇井が両腕を伸ばして大きく背伸びしながら、間延びした声で言う。彼女の荷物は軽そうなリュック一つで、まるで近所に遊びに行くような気軽さだ。

「三門市からこんな近くに温泉なんてあったんだ。」

香取は辺りを見回しながら、少し驚いたように呟いた。いつもは鋭い目つきが、今日はどこか穏やかで柔らかく見える。肩に掛けたトートバッグを軽く持ち直し、澄んだ空気を吸い込んだ。

宇井は隣を歩きながら、ちらっと香取に目をやる。

「旅行代、ホントによかったの?あたし、ボーナス出たから出すよって言ったじゃん。」

香取は軽く笑って手を振った。

「なんか試験以降、麓郎が張り切っててさ。防衛任務で結構稼げてるから大丈夫。お母さんも『楽しんできなさい』ってお小遣いくれたし。」

「若村くんも試験で色々あったみたいだねぇ。」

宇井がのんびりした口調で言うと、香取は少し遠い目をして頷いた。

「玉狛のヒュースがなんかボロクソに言ったらしいわ。詳しくは知らないけど、試験終わりに麓郎が急にさ、『ヨーコ、今まで悪かった、これからも頼む』って。ひっくり返りそうになったわ。」

香取が麓郎の低い声を真似ると、宇井がくすくす笑い出した。

「そのモノマネ、似てるの?」

「知らないよ、初めてやったんだから。」

香取はそっけなく返すが、口元が緩んでいるのを隠しきれなかった。

二人はそんな話をしながら、旅館へと続く坂道を登っていく。道端には小さな露店が並び、湯気の立つ温泉まんじゅうの匂いが漂っていた。宇井が「ねえ、あれ食べようよ!」と指差すと、香取は「まだ旅館着いてないのに?」と呆れつつも、結局一緒に買いに行くことになった。

旅館の玄関が見えてくると、宇井がふいに立ち止まり、空を見上げた。

「試験終わってからさ、こういう時間が一番のご褒美かもね。」

香取も足を止めて、隣で頷く。

「…まあ、そうかもね。」

二人は顔を見合わせて笑い、和やかに旅館の暖簾をくぐった。

 

 

 

旅館の和室に荷物を置いた二人は、さっそく浴衣に着替えることにした。畳の上に広げられた浴衣を手に、宇井が手早く着付けを済ませると、香取の方を振り返る。香取は帯を結びながら少しもたついていたが、なんとか形に整えた。

宇井がじーっと香取を眺めると、香取が怪訝そうな顔で睨み返す。

「何よ。」

「香取、あんた、トリオン体でムネ盛ってるって噂ほんとだったの?」

宇井がニヤニヤしながら言うと、香取の顔が一瞬で真っ赤になった。

「どこ見てんだコラァ!はっ倒すわよ!」

香取は浴衣の襟をぎゅっと掴んで隠すようにしながら、拳を振り上げて叫んだ。宇井は慌てて手を振って笑いものにする。

「ごめんごめん!でも、お風呂でもっとしっかり見せてもらうわよ〜♪」

宇井が歌うように言うと、香取はさらにムキになって反撃に出た。

「う〜、あんたもあんまり変わんないでしょ!何!?その自信満々な顔は!」

香取が指を突きつけてまくし立てると、宇井は「えー、あたしの方がちょっとあるかなって〜」と肩をすくめてからかう。

「あるかなじゃない!並んで証明してみろ!」

香取が勢いよく立ち上がると、宇井は畳に座ったまま大笑いした。

「やだよ、香取ったら本気になっちゃって!可愛いねぇ!」

「可愛いって言うな!」

香取はそう叫びながらも、宇井の笑い声につられてか、口元が緩むのを抑えきれなかった。二人はそのまま荷物を片付け、温泉に向かう準備を始めた。部屋に響く笑い声が、旅館の静かな雰囲気にちょっとした賑わいを添えていた。

 

 

 

露天風呂の湯気に包まれながら、二人は肩までお湯に浸かっていた。5月の新緑が岩風呂の周りに広がり、風がそっと葉を揺らす音が聞こえる。湯船の中で、香取がぽつりと呟いた。

「なーんで不合格だったのかしら。」

宇井は隣で目を閉じていたが、その声にくすっと笑って目を開ける。

「まだ言ってんだ。意外と気にするタイプだねぇ、香取って。」

香取は湯の中で膝を抱えるようにして、少し不機嫌そうに返す。

「だってさ、序盤に諏訪さんが『安心しろ香取、おめーは選ばれねーよ』って言ってたでしょ。その通りになったのがムカつくじゃん。」

低い声で諏訪を真似ると、宇井が手を叩いて笑い出した。

「今のは似てたわ〜!何?モノマネにハマってんの?」

宇井が茶化すが、香取は憮然とした表情のまま、湯気を見つめて黙り込む。宇井は一息ついて、少し真面目なトーンに切り替えた。

「まぁ、冷静に分析するとさ、試験序盤のアレがやっぱ致命的だったんじゃない?今思えばしょうがないことだけど、あれを審査するとなるとちょっとねぇ。」

宇井が言うのは、試験中に香取が対話拒否に陥った一件だ。理由としては若村のチームの成績が振るっていなかった、という仲間思いの彼女らしい理由があったわけだが、はた目には試験の途中で協力を放棄したようにしか映らない。

「でもさ、あれが無かったら合格だったんじゃない?その後の快進撃は本領発揮って感じで、かっこよかったよ?」

いつもの軽い調子で付け加えるが、香取はまだ真剣な表情を崩さない。お湯の中で指先が小さく動くだけで、考え込んでいるのがわかる。

宇井はそんな香取をそっと見つめた。

(あぁ、この表情。)

いつもはわがままで無茶苦茶な香取だが、壁に直面するとこの顔になる。戦闘試験でA級相手に凹まされた時、何度も見たあの真剣で、少し悔しそうな目。宇井はそのギャップに、言葉にできない魅力を感じていた。香取の強さと脆さが混ざった瞬間が、彼女をただの仲間以上の存在にしていた。

「…あ、ごめん、考え事してたわ。ん?どうしたの?」

香取がふと顔を上げると、宇井が慌てて目をそらした。

「な、なんでもない!ちょっと熱いね、あたし、出るわ。」

宇井はバタバタとお湯から上がり、タオルを手に持って岩の陰に隠れるように去った。香取は首をかしげてその背中を見送り、「…変な奴」と呟いてまた湯に浸かった。

 

 

 

露天風呂に一人残った香取は、湯船の縁に背中を預け、ぼんやりと新緑の木々を見上げていた。湯気が立ち上る中、彼女の思考は試験のことから始まり、徐々に宇井真登華へと移っていく。

(優秀よね、やっぱ。)

宇井真登華。A級に昇格した嵐山隊を抜けた柿崎国治のために紹介され、柿崎隊に加入したオペレーターだ。普段は柿崎、照屋文香、巴虎太郎という個性豊かなメンバーを支え、チームをまとめている。外から見ても、柿崎隊は雰囲気がいいことで有名だった。和気あいあいとしながらも、任務ではきっちり結果を出す。そんなチームを裏で支える宇井の存在があってこそだろう。

(アタシがダメになってる時も、めげずに励ましてくれたし…さっきみたいにちゃんと指摘もしてくれるし。)

試験中、香取が対話拒否に陥ってチームを乱した時も、宇井は怒るどころか私物のチョコを出してくれたり、くすぐろうとしたりと明るく引っ張ってくれた。その後の快進撃だって、宇井の冷静な指示があってこそだった。さっきの会話でも、致命的だった点をズバリ指摘しながら、最後にはかっこよかったとフォローまでしてくれた。

香取は目を閉じて、湯の中で小さく息を吐く。宇井に対して感じるのは、幼なじみの染井華とはまた違う居心地の良さだった。華はいつも冷静で、香取のわがままにも合理的に付き合ってくれる。でも宇井は、香取の感情に寄り添いながらも、どこか明るく突き放さない。華が「頭」で理解してくれる存在なら、宇井は「心」で一緒にいてくれるような感覚。

ふと、宇井のニコッとした笑顔が頭に浮かんだ。あの試験のピンチでも、食堂で不合格を愚痴った時でも、いつも変わらないあの笑顔。

「っ…!」

ハッとして、香取は慌てて口元まで湯に沈み、ブクブクと泡を立てた。湯船の中で顔が熱くなるのを感じながら、彼女は目をぎゅっと閉じる。

(何!?何で今そんなこと考えるのよ、アタシ!)

心の中で自分に突っ込みを入れつつ、香取は湯をバシャバシャとかき回して気持ちを紛らわせた。

 

 

 

旅館の夕食は豪華だった。色とりどりの会席料理が並び、温泉地ならではの新鮮な食材が目を引く。だが、香取は箸を手にしてもどこか上の空で、ほとんど食べ進められなかった。

「…湯あたりしたかも。先に寝るわ。」

香取はそう呟いて立ち上がり、部屋に戻るために膳を片付けた。

「あらあら、ゆっくり休んで〜。」

宇井は軽い調子で手を振って見送るが、先ほどの露天風呂での不完全燃焼が頭に残っていた。食事を終えた後、彼女は一人で再度温泉に向かった。夜の露天風呂は静かで、月明かりが湯面に映り込む。宇井は湯に浸かりながら、香取の真剣な表情を思い出していた。

 

 

 

部屋に戻ると、香取はすでに布団に潜り込んでいた。すやすやと眠るその姿に、宇井はそっと近づく。障子の隙間から差し込む柔らかな光が、香取の顔を照らしていた。

「綺麗な顔…。」

宇井は無意識に呟き、香取の寝顔を見つめた。彼女のウェーブのかかった髪が額に垂れ、そのまま香取の目の前に落ちそうになる。宇井はそっと手を伸ばし、その髪を指で耳元に分けた。

その瞬間、二人の顔が近づく。宇井の息が少しだけ香取の頬に触れ、静かな部屋に微かな緊張が漂った。

「ん…。」

不意に香取が寝返りを打ちかけ、顔を動かしたその刹那、二人の唇が触れ合った。

「――っ!」

パッと香取の目が開く。

「な、ななななっ…!」

香取が跳ね起きた瞬間、部屋に響いた声が静寂に変わる。布団を握り潰す彼女の目が驚愕に見開かれ、宇井を見つめていた。

宇井は一瞬慌てて後ずさったが、急速に頭が冷めていくのを感じた。戦闘のオペレーションで培った能力だろうか。ピンチになればなるほど、頭が冴えてくる。普段ならチームの危機を冷静に分析し、指示を飛ばすためのその感覚が、今こんな場面でも発動している。

(職業病かな…。)

内心で苦笑しそうになるが、すぐにその笑いは引っ込んだ。ここはもう誤魔化すべきじゃない。頭がそう判断し、心がそれを後押ししていた。

宇井は深く息を吸い、香取の目をまっすぐ見つめた。

「香取、あたし、あんたのこと好きだわ。」

 

 

 

その言葉が部屋に落ちた瞬間、時間が止まったように感じられた。湯気も笑い声も遠ざかり、障子の隙間から漏れる月明かりだけが二人を照らす。香取の表情が驚きから何か別のもの――混乱と動揺に変わっていく。

「…何?」

香取の声は小さく、掠れていた。布団を握る手が震え、目を逸らすこともできずに宇井を見つめ返す。

「だから…好きだって言ったの。試験の時からずっと、あんたのこと見ててさ。わがままで無茶苦茶で、でも壁にぶつかった時のあの真剣な顔とか、全部…好きだなって。」

宇井の声は静かで、普段の軽い調子はどこにもなかった。彼女は自分の髪を指で軽く弄びながら、言葉を続ける。

「さっきのことは事故だけど…こうやって近づいた時、心臓バクバクしてたの、あたし。誤魔化すつもりだったけど、もう無理だわ。」

香取は言葉を失い、ただ宇井を見つめていた。頭の中でさっきの唇の感触、露天風呂での宇井の笑顔、試験中の励ましの声がぐるぐると回る。でも、それをどう言葉にすればいいのかわからない。

「…アタシ、どうすれば…。」

呟くように漏れた香取の声は、途中で途切れた。彼女は布団を引き寄せ、膝を抱えるようにして目を伏せる。

宇井はそんな香取を見て、そっと笑った。少し悲しげで、少し優しい笑顔だった。

「急に言われても困るよね。…ごめん、寝てたのに起こしちゃって。」

彼女は立ち上がり、香取に背を向けて障子の方へ歩き出す。

「あたし、外でちょっと涼んでくる。ゆっくり休んで。」

障子が静かに閉まり、宇井の足音が遠ざかると、香取は布団の中で枕に顔を埋めた。胸の奥が締め付けられるような感覚と、頭の中の混乱が収まらないまま、彼女は目を閉じた。

 

 

 

翌朝、二人は別々のタイミングで目を覚まし、それぞれ温泉に浸かってから朝食のレストランで合流した。宇井が先に席に着き、窓際のテーブルで湯呑みを手に持っていると、香取が少し遅れてやってきて向かいに座った。

香取はトレイを置いて、軽く髪をかき上げながら口を開く。

「あんた、またお風呂行ったの?」

「せっかくだしね。堪能しないと勿体ないよ。香取は体調大丈夫?」

宇井はいつもの軽い調子で返すが、声の端に微かな緊張が混じる。

「うん…。」

香取は短く答えて目を伏せ、湯呑みに手を伸ばす。二人の会話は昨晩の出来事が嘘だったかのように自然に始まったが、言葉の端々にはどこかぎこちなさが漂っていた。箸を手に持つ宇井の手が一瞬止まり、内心で呟く。

(いや、やっぱ失敗だったかな…。)

告白してしまった後悔が頭をよぎり、彼女はそっと息を吐いた。

すると、香取がふいに顔を上げて切り出した。

「昨日のアレだけど…。」

ドキッと心臓が跳ねた宇井は、思わず湯呑みを握る手に力が入る。

香取は少し目を泳がせながら、言葉を紡ぎ始める。

「アタシ、男の人も好きになったことないのよね。烏丸先輩は好きだけど、それはなんか違うでしょ?だから…よく分かんなくて。」

彼女の声は小さく、普段の気丈さとはかけ離れていた。宇井は黙って聞き、ただ香取の表情を見つめていた。

「だから昨日、訳わかんなくて焦っちゃって…。」

香取はゴニョゴニョと呟きながら、湯呑みの縁を指でなぞる。目を伏せたまま、彼女はさらに言葉を絞り出した。

「でも、あんたなら…いいかな…って思って。そういうアレ、教えてくれるのかなって…。」

その瞬間、宇井の心臓が握り潰されるかと思うほどギュッと締まった。普段のわがままで強気な香取とは全く違う、新しい一面。恥ずかしそうに言葉をつむぐその姿が、たまらなく愛おしく見えた。

(あたしだってそんな経験ないよ…ましてや女同士でなんて…。)

宇井は内心でそう思うが、目の前にいるこの可愛い生き物への愛は、もう誤魔化しようがないほど溢れていた。

香取が顔を上げ、顔を赤くしてニヘラと笑う。

「だから、付き合ってみよっか。」

その言葉に、宇井の目から涙がぽろりとこぼれた。関係が壊れるかもしれないという不安が一気に緩み、感情のタガが外れた瞬間だった。香取が慌てて声を上げる。

「ちょっと!何で泣くのよ!」

「ごめ〜ん、ありがとう、香取ぃ〜!」

宇井は涙を拭いながら立ち上がり、香取の隣に飛びついて抱きついた。香取は「うわっ、やめなさいって!」と突っぱねようとするが、その顔は真っ赤で、どこか照れくさそうに笑っていた。

レストランの他の客がチラチラとこちらを見やる中、二人の笑い声と騒がしさが朝の静けさを破った。でも、その喧騒は、二人にとって新しい始まりの音だった。




この後のイチャラブは用意するつもりはあります
このカップリングがどれほどの支持を得られるのか
未知数すぎる
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