どうやら機械の天使に転生したみたいです 〜ぶっちゃけ人類は滅んでいるし天使と悪魔が戦争してるし最初からオワタ〜 作:鐘餅
次回からはやっと視点が現代へ戻ります
そして……良くないことというのは重なるもので。
次の日、グレイシオから更なる悲報がもたらされた。
――それは、新しい戦場で物資と人員を運搬せよ、と言う任務の知らせだ。
しかも、そこはハウダロン領と同じ泥沼化した戦場らしい。加えて心に傷を負ったルベルを連れて行けと言う。
「……上層部からの命令です。いつまでもルベルさんを遊ばせている訳にはいかないからと……」
実際一ヶ月もの間、ルベルはこのスフィア・ヘヴラに留まっていたそうだ。ノインにベッタリとくっつき、どこに行くにも一緒だったのだとグレイシオは話してくれた。
多分義体だったとしても、すぐ側にいたかったのだろう。
だがそれも長くは許されなかったようだ。どうしようもなかったのだ。命令は絶対だ。
でもやはり、そのことを聞いたルベルの瞳には暗い光が宿っていた。
虚な表情は、 ルベルらしからぬ不気味さがあった。
それでも別れ際、グレイシオが三人分、青い石のようなペンダント……お守りを渡してくれた時は、素直にお礼を言っていた。
ありがとうございます……お世話になりました、と。
それにグレイシオは無表情ながら、悲しそうな目を返した。
偉そうな割に、どうにも憎みきれない部分がある。
そして最後の最後まで、深々と頭を下げていたのだった。
「ご武運をお祈りしております。いってらっしゃいませ、皆様方」
◆◇◆◇
そうやって辿り着いた新しい戦場。
そこは悪魔が常日頃から進行してくる、エウスパ地方の最終防衛ラインだった。
起伏の多い山中にあることから、隘路を意味するクンタゲル線と呼ばれていた。
当たり前だが、その場所もまた地獄のような光景が広がっていた。
赫赫と咲き誇る血の花、破壊の轟音、上がる悲鳴、際限のなくやってくる敵。
そのどれもが、二度と見たくなかったものだ。
だがハウダロンと違うのは、全体的に異質な空気が蔓延していることだった。
どうやら異常な状況が続くと、人というのは精神的におかしくなるらしい。
駄目だと悟るや否や、くつろぎ始めたり。
何故か敵味方が争っている横で賭け事を始めたり。
勿論、全員必死に抵抗は続けているが、ありとあらゆる場面で死が身近過ぎて、兵士達は感覚が麻痺しているのだった。
おまけに最悪だったのは、戦えない天使が問答無用でスクラップ送りになることだ。拠点の防衛能力を手っ取り早く向上出来るからだろう。
そのスクラップ送りの様子は、凄惨の一言に尽きる。
まずどの拠点にも、地下深くには分割子宮のコア……円柱状の柱のような巨大な演算装置が存在しているが、その周りには無数のカプセルが並んでいる。
下部は新人の天使が接続する部分だ。
だが上部にあるカプセルは、スクラップ送りの天使が入る棺桶である。
だからスクラップ送りになる天使は、上からアームが伸びてきて、その体を吊り上げられる。
その様から通称“首吊り”と呼ばれる。その状態から余計なパーツを剥がされて、ボディが剥き出しになると、やっとカプセルに収まるのだ。
ここで残酷なのは、痛覚自体はそのままということだった。
生きたまま、皮膚を剥がされ、腕と足を捥がれ、感覚器官を取り除かれる。そして真っ暗闇の世界の中で、永久に終わることのない演算の労働へ従事することになるのだ。
おかげで辺りには、飛び散った血液がべっとり撒き散らされるのが恒例だった。こんなことを繰り返すから、分割子宮のコアは赤く染まり、鮮血の支柱などと囁かれる。
そしてスクラップ送りは恐怖されると共に、戦場ではある種娯楽としても機能するのだ。
なんせ派手で、無惨で、どんな奴でも虫みたいに苦しんで。
一部の奴らはこれをとても面白がった。
無能な者、戦えなくなった者を、どんどんどんどん、この鮮血の支柱の側に連れてくるのである。
だからコアがある部屋の中は、いつも盛り上がりだった。
惨たらしい光景を見て、アハハハハハと、皆、笑っていたのだ。
まさしく彼らこそが“悪魔”と言われても信じる程に、邪悪に、無邪気に笑っていた。
「……」
そんな様を、一体何度目にしただろう。
止められなんてしなかった。
吐き気がした。
意思を奪われ、なす術もなく、システムの一部と化す……悍ましい。
なんて、救いようがないんだろう。
絶叫するスクラップ送りの天使が、不思議と自我を焼き切られたノインと重なって見えた。
ああ……やはり、あんな風だけはなりたくない、とエメラルは思った。
何も感じなくなるのが怖い。それは死ぬより恐ろしい。
そして何より現状を見て見ぬ振りして、ヘコヘコと上に媚を売る連中にも嫌悪を感じる。停滞の中で逆らう意思を完全に無くす……それもまた、自分を失うことと何が違う。
次第にはっきりと、そんな気持ちが形になっていった。
それは、病的なまで程に潔癖な思いだ。
自分の感情が何より大事で、自分のままでいることが、エメラルにとって一番大事な価値観になっていったのだから。
そしてそれは、他人であっても変わらないのである。
スクラップ送りにされた天使達の悲鳴と、その彼らが大切にしていた思いが沢山踏み躙られたという事実。
それらはエメラルのトラウマとなり、だから自分自身の感情を無視し、大切にしない者を、余計許せなくなった。だって人は何も感じなくなって、初めて存在が消えてしまうのだ。誰が覚えていようと関係ない。
何も感じない=“死”。少なくともエメラルの中ではそういう認識になってしまった。
そしてそれを認められないから、見たくないから、エメラルは思いを誤魔化す人々を嫌がるのだ。
理不尽に虐げられている。無理やり戦いに赴いている。
そう徐々に自覚した怒りが、八つ当たりのように他人にも向いた。
どうしようもなく、エメラルは歪んでいったのだろう。
それでも……エメラルにはハナビがいた。
エメラルの救いはハナビだったから、ハナビを必死に支えたのだ。
ハナビだって辛い気持ちなのは変わらないのだから、と。
ハナビに思ってもらえれば、報われる。エメラルはそう信じていた。
当然、ルベルを思う気持ちをなくした訳ではない。
エメラルの出来る範囲で、ルベルを励まし、サポートした。
おかげか、ルベルはそんなエメラルに深く感謝し、次第に持ち直していった様に思う。
だが戦いは激しくなる一方で、死体は増えていくばかり。
天使達はそのような遺骸すら、分割子宮のコアに組み込んでいた。
無意味な行為なのに、組み込んだのだ。
そして敵の悪魔を捕まえた時には、檻の中に閉じ込め、拷問した。必要以上に虐めていた。
目を背けたくなるようなその場面。
だがルベルはじっとそれらを眺めていた。
ただじっと……そうして、その目に浮かんでいたのは、虚な光とはまた違う、底無しの沼のような炎だった。
恐らくエメラルとは別のベクトルに、ルベルの感情は振り切れたのだろう。
それは絶望と憤怒がごちゃ混ぜになったようなものだったかもしれない。
どうして誰も、死体を尊重しない。どうしてマザーは、こんなに頑張っている天使達を労いもしないのか。
そんなことを怒り、いつも慟哭していた。
「何でこんな地獄があるんだよ! ノインはいつだってマザーのために戦ってた……それを無視して、あまつさえ蔑ろにして! 彼の愛されたいというささやな願いすらマザーは否定した! 他の天使だって……!」
そうなのだ。
天使達の戦う理由はいつだって、マザーなのだ。
マザーの役に立ちたい。マザーに見て欲しい。誰だってそんな思いを抱えている。子が親を無条件で慕うように、天使達はマザーを助けようと必死だった。
だがマザーは、そんな天使を気にかけない。興味を持っても玩具にする。ノインを奪ったように。
こんなに死んでるのに、一番天使を冒涜しているのがマザーだったのだ。
「そして悪魔達でさえファザーのために捨て身で戦ってるんだ……報われないくせに。それが、あんな悲惨な死に顔を晒す理由になるのか……? 何んなんだこの世界は……何でこんなに間違ってるんだ?」
どうしてどうしてどうしてどうしてどうして――繰り返す、ひたすらに繰り返す。
やがて、彼女の中で浮かんだのは覚悟だったようだ。
「このクンタゲル線の戦いは、俺が終わらせる。このままじゃ駄目なんだ――」
そう決意したルベルは……やはり何処までも優しく、そして強かったに違いない。
実際、そう決めた翌日からルベルの快進撃は始まって、なんと悪魔に奪われた土地の半分を単独で取り返すという快挙を成し遂げたのだ。
これは奇跡に近かった。
あれだけ沈んでいた士気は一気に鰻上り。噂からルベルを不気味がっていたくせに、周りはルベルを持ち上げ、英雄だのなんだの、囃し立てた。
あまりにも都合が良かった。ルベルはその分傷ついてボロボロになっていたのを、誰も気に留めなかった。
でも……そう上手くはいかなかった。
このままあと一息でエウスパ地方を取り返そうという段階で、七つの大罪の魔王が、二人も現れたのだ。
名は〈色欲〉のスクズブと〈強欲〉のファフニール。
スクズブは蠍と淫魔を掛け合わせた悪魔で、その刻印の能力は“愛着の具現化”だ。
対象に抱いた愛情の深さ、種類によって、様々な効力を付与する。そして厄介なことにスクズブは戦闘狂で、天使のことも歪ながらに愛していた。切り心地の良い相手として。
するとどうなるか。
スクズブと相対した天使は、例外なく脆くなり、ちょっとした傷でも大怪我を負うようになる。
こうなって切り裂かれた天使は数え切れない程。
一方ファフニールは相手の価値を“奪う”。
つまりは敵対者の能力の一部を封じ、弱体化させる。おまけに相手が強ければ強い程、より強力なエネルギーを扱えるようになるというチートみたいな能力を持っていた。
この二人に、ルベルは一方的に蹂躙された。
肋骨を折られ、下半身はひしゃげ、顔面は潰され、息をしているのもやっとという有様だった。むしろよくそんな状態で生き残れたと言えるだろう。
しかし先頭に立っていたルベルがやられたことで天使陣営のやる気は完全に挫かれた。
全兵士は敗走した。
歴史に残る程の惨敗っぷり。そのくせ皆、また手のひらを返したように言うのだった。
「お前がしっかりしていなかったからこうなった」
ルベルは、それをどんな気持ちで聞いていたのだろう。
目を見開き、手をワナワナと振るわせ……信じられないと言いたげに呆けていた。
責められるなんて思っていなかったようだった。
更には、気遣って来たハナビでさえ、残酷なことを言う。
「今回は仕方なかったんでござるよ。運が……なかったんでござる」
「……え?」
「だから、ルベル君は悪くないんでござるよ」
流石のルベルでさえ、縋るような顔でハナビを見ていたのだ。
完全に固まっていた。
なのにハナビはそれすら気づかず、続けてしまう。
「皆、死んでしまったのは究極的に、運が悪かっただけなんでござる。七つの大罪の魔王が来るだなんて、誰だってわかんないでござるから……必要以上に責任を感じる必要なんてないんでござる。ルベル君は充分頑張ったでござる……ただ、それが運悪く報われなかっただけで……」
「………………………」
「……いつか運が向けば、ルベル君だって良いことがあるでござる……いつの日かきっと……だから大丈夫……皆の言うことなんて放ったらかしとけばそれで……」
その言葉はきっと本心からのものだったろう。加えて、別に言っていること自体は何も悪いことなどなかった。普通であれば。
しかしこの状況でそんなことを言うことそのものが間違っていたのだ。
だって運が悪かったなんて……いつか良いことあるよ……だなんて、そんなの努力して努力して、後一歩というところで失敗したルベルにとっては、空っぽななものにしか聞こえないだろう。
冗談じゃなかった。
まるでこの残酷な現実を突きつけるような言い方になってしまった。
そのためか、次にルベルは皮肉気に笑った。
「全部、運……ですか。じゃあ、何ですか。強くなれないのも、強くなれたのも、サフィが死んだのも、ノインがああなったのも、全部運が悪かったからなんですか。……貴方はそう考えているんですか?」
「……それは」
途端、ハナビは言い淀んだ。
しかしその光のない目が答えていた。
――そうだ、と。
死ぬのも、生きるのも、運次第。だから何があったって受け入れるしかない。受け入れるべきなのだ。
そう思っているのは明白だった。
そしてそれが分かった瞬間、エメラルは何かが崩れていく音をはっきりと聞いた。
それは、何も感じないことと同じじゃないか、と思ったのだ。
一体いつからそうなった? ここに来てから? まさかグレイシオのあの発言を聞いてから――目まぐるしくぐるぐると回る思考。
それでもたった一つ分かるのは、きっとエメラルが命を落としても、以前のように彼が本気で泣いてなんてくれないことだった。
たとえ今ここでエメラルが自殺をしても。全部仕方ないこととして処理をされてしまう。
ああ、運が悪いことが起きたのだ。そんな言い訳を理由に、辛い気持ちを無かったことにされてしまうのだ。
(そうやってすべてを、遠い思い出にしてしまうつもりなのか?)
ルベルのことも。ノインのこともさえも。
そんなの……あんまりじゃないか。
散々支えてきたのに、今更逃げるつもりなのか。悲し過ぎるから、それに蓋をしようなんて、
(ふざけるな)
その時、エメラルの胸に怒りと憎悪が湧き上がった。
ハナビの気持ちが理解出来るからこそ、受け入れられない。
受け入れてなるものか。
(どうやったら元に戻る)
頭に過ぎる、昔の記憶。
『もし拙者を元の自分に戻したければ、勝負に勝ってから申されたし』
「ハハ……」
思い出し、エメラルは気付かれないように笑った。
それはどうせ冗談とかふざけて言ったのであって、そんなので元通りになるなんて有り得る訳がない。
でも……こんなのに負け続けるのも嫌だ。
(次こそは勝つ……)
秘めたる思いは、ぐつぐつと煮えたぎった。
それは決して、消えることのない熱だった。
またルベルも――何かを決意するように、目を固く閉じるのだった。
◆◇◆◇
そこからは語るまでもなく。
三人はそれぞれ、バラバラの道を行くのだった。
精神的にも、距離的にも。
エメラルは相変わらず輸送の仕事を任されられ。
ハナビは遠くの基地へ転勤し。
肝心のルベルは、これを境にどんどん苛烈になっていく。ハナビの言ったことが止めになったのだろう。
別れる前日、エメラルにだけは本音を話してくれた。
「俺はもう、何も信じられないよ。何が運だ、運命だ。皆大嫌いだ」
散々責めてきた天使が憎い。
仲間を殺し続ける悪魔が憎い。
ノインを奪ったマザーが憎い。
サフィを殺したい魔物を生み出したファザーが憎い。
ルベルは呪詛を呟く。
所詮、この世は次に繋がらない行き止まりの無限地獄。
偽物と大差ない。
「だから、変えようと思う。この世界は駄目だから。戦争を終わらせる方法を、俺は考える。皆が明日に行けるよう、努力することにする」
「……全部、嫌いなのにか?」
「皆、死にたくて死んだ訳じゃないだろ。まだ大切なものは残っている」
そう答えるルベルの顔には、憂いがあった。
やっぱり何処までも情を捨て切れないルベルは、優し過ぎたのかもしれない。
だがそんな彼女にも限界はあるというもの。
「でもそれすら無理なら、リセットしちゃうかも。どれだけ屍を積み上げても、変えれないなら、そっちの方が潔い」
「……そうかもね」
エメラルはそれを否定しなかった。
この世界がクソであることは疑いようがない事実だ。
「そのためなら、俺は悪役にでも、何にでもなってみせるよ。たとえ何と言われようが」
彼女はくるりと背を向ける。そのまま歩き出す。
「じゃあね」
一言残して――それが、長い別れの合図となった。
◆◇◆◇
――そして、また長い年月が過ぎて。
十七年目にして、エメラルは取り返しの付かないミスを起こした。
それがきっかけで、遂に僻地への左遷を命じられたのだ。
きっとバチが当たったのだろう。
ハナビに勝つ。
それだけを目標に走り続けて、だから他のことなんて見えなかった。
随分と色んなものを犠牲にしてきたと思う。八つ当たりに近い感情を、神様は許して下さらなかったのだ。
それなのに下された罰自体は甘い処遇で、まだ少しの時間だけはあった。
その時間で何をするか、それこそが問題だった。
「……なら、このニョクスちゃんが、協力してやるのにゃん」
――と、その時、何処からか声が聞こえた。
聞き慣れた声が。
「……!」
明らかにおかしかった。
ここは誰もいない場所の筈なのに、どうして。
そうして振り返れば……果たしてそこに、当たり前のように生き別れた兄弟がいたのだ。
似合わない軽薄な笑顔を浮かべ、手には刃渡りの短い日本刀のようなものを携えて。
「……ルベル?」
思わず驚いて呟けば、ルベルは――否、ニョクスと改名した赤目の天使は、瞳を細めた。
「そうにゃんよ。久しぶりなのにゃん、エメラル」
「お前その口調……」
なんとも奇妙な言葉使いをしているのでツッコでしまうと、ニョクスは「ニャフフ」と笑い、
「あ、やっぱおかしいと思ったのにゃん? 勿論それが狙いなのにゃん! だってニョクスちゃんって、もう魔女に堕ちてるのにゃん! 悪役は悪役らしく……真意なんて見せず、ただいずれ来たる勇者を待ち構えるだけにゃんからね!」
堂々と、そんなよく分からないことを言うニョクス。
そこには何かポリシーのような……そんなものが感じられて。
地獄よりも生温い深淵へ堕ちることを、自覚しているのだろうか。
駄目だったんだな、とエメラルはふと思った。
多分、何年も模索したけど、無理だったのだ。この世界を今のまま次に繋げる方法がなかった。
だからニョクスは宣言通り、すべてを滅ぼそうとしているのかもしれない。
これ以上悲劇が起こらないよう。だがそれは天使も悪魔も、全部を敵に回す修羅の道だ。
簡単な道のりじゃない。必ず邪魔をする奴が現れるだろう。
そしてそいつの方が一般的な視点から見ると、正義の味方なのだ。
そいつに対する思いやりのために、あえてニョクスは戯けた態度を取っているのだろう。
下手に同情なんて示されたら、後味が悪過ぎるからと。
「それにエメラルだって知ってるのにゃん? 今の俺は、強くなるために仲間の死体を食ってるのにゃん。死を出来る限り無駄にしないよう、食ったのにゃん! その時点で、俺ってばやっぱ狂ってるのにゃん。そんな奴が今更――まともなフリとか許されるかよ?」
最後の方、ニョクスは素に戻って、へらりと自嘲した。
「友達なんて……お前達以外にいらないんだよ。仲間もいらない。誰に理解してもらはなくても良い。周りはただ俺を、おかしい奴と見なせばそれで良い」
――俺は世界を滅ぼす魔女だから。
ニョクスは刃物を持っていない方の手を差し出して、誘う。
「エメラル。俺は、お前を利用すためにここに来た。俺に協力すれば、情報を改竄してハナビさんの元へ行かせてあげる。だけどその代わり、最後には――」
「……」
エメラルはそれを聞き、ニョクスの掌を見つめる。
迷う理由など、一つもなかった。
「今更だよ。私の意思は決まっている」
――かくして、再び兄弟の手と手は繋がれた。
それはこの世界の滅びの序曲。
これをきっかけに、世界は大きく揺らぐことになるのだった。
ざっくり設定20
〈傲慢〉〈色欲〉〈暴食〉〈憤怒〉〈怠惰〉〈強欲〉〈嫉妬〉〈虚飾〉〈憂鬱〉で構成されるが、その内今代の〈虚飾〉、〈憂鬱〉は在位期間が百五十年とかなり長く、残った
しかしそんな大罪の魔王もその実態は意外と世知辛いものであり、と言うのも悪魔の社会は実力主義かつ年功序列で、年上連中がかなり権力を持っているからである。だが
それでも