どうやら機械の天使に転生したみたいです 〜ぶっちゃけ人類は滅んでいるし天使と悪魔が戦争してるし最初からオワタ〜   作:鐘餅

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ようやく投稿できました
最近ゴタゴタしており、かなり時間がかかって申し訳ないです
これにて番外編は最後です
次話から二章へ移行します。

※AIの挿絵を使っています


爆誕!! ニニ特製羊肉の塩胡椒焼き

 俺はふと思った。

 ジンギスカンが食べたい。

 

 そのきっかけは、些細なことであった。

 仲直りをしてから既に数日。俺とライラは一緒の分割子宮の部屋で過ごすようになっていた。いつの間にかすっかり意気投合してしまっていたのだ。

 よく話せば、ライラはとても気が合う相手だったのだろう。

 こんなことなら、もっとちゃんと会話すれば良かった。

 

 そんな思いから、俺の方からも積極的に、交流を持っていたのが……、

 

「飽きたわね」

「ん? 飽きた?」

「そう。飽きたわ」

 

 唐突にライラは、そう言った。

 エメラルから貰ったゲーム盤(遺品回収から逃れられていたしい)で、ケルン・クォタリアムをやっていった時だった。

 俺が勝ったところで、ライラは実に心底困ったような顔で、そんなことを溢したのだ。

 

 しかしこっちは楽しくプレイしていたので、ちょっと不満を抱いてしまう。

 

「えー、そうか? 何で?」

 

 なので理由を聞いてみると、ライラは本当に分からないのか? という態度で答えた。

 

「ずっと続けているからよ! これで何回目なの?」

「十六回目」

「やり過ぎよ!! そこまでやってたら、他のもやりたくなるわよ!」

「と言ってもな……」

 

 このゲーム以外、遊べるものなんぞないし。

 うーん、だったら。

 

「腕相撲でもする? それか指スマとか」

「ゆ……指、……スマ?」

「あ、知らないか。こうやって指上げて、いっせーのっせーで……」

「成程ね。なかなか面白いじゃない」

 

 そう言う感じで、俺達は指スマにハマった。

 しかし数日後。

 

「飽きたわね」

「また? 今回はニ十二回目だよ?」

「充分よ。他のは?」

「だったら、こう言うのはどう? 互いに両手の人差し指を出して、数を増やしていくってルールで……」

「ふーん、どれどれ……」

 

 そうして次は、指で数字を増やしていくゲームにハマった。

 けれど一日後。

 今度は早い段階で、ライラはまたまた文句を言った。

 

「飽きたわね」

「俺も飽きた」

 

 そして俺も、滅茶苦茶指遊びに飽きてしまった。

 流石に二回も似たゲームをし続けるのは、無理があったらしい。

 単調だしな。

 でも他に思いつくことがなくって、しょうがなく虚空を見て、ぼけ〜っと暇つぶしをしていると、

 

「なら、ジャジャーン! これ、なーんだ」

 

 と、ライラがまたもや唐突に何かを取り出した。

 どうやら持ってきたケースに、物を入れていたらしい。

 俺はそれを見て、そのままの答えを言った。

 

「楽器」

「楽器って……そりゃそうだけど! 他に感想はないの!?」

「ライラがそんなの持ってるなんて珍しいね。意外。俺びっくりした」

「失礼ね! 遠慮なくない!?」

「そりゃそうしても大丈夫だと分かったので」

「色々と複雑だわ……」

 

 俺の言い方に納得しなかったのか。

 ライラはどうにも釈然としない顔になった。

 

「でもどうしたのそれ。ハープなんてこの世界に存在してたの?」

「普通に存在してるわよ。エメラルからもらったのよ」

「え、アイツから? ……よく回収から免れていたな」

「一度出したけど、脱走事件と無関係なのはフィルルカが全部戻してあげたらしいわ。あのヴォルフって奴と交渉して」

「そうだったのか。じゃあ教官に感謝だな」

「そうね。お礼に三時間、肩揉みしてあげたのよ。トッロトロにしてあげたわ」

 

 などと、何故か得意げに胸を張るライラ。

 俺はその態度に、相変わらず何とも言えない気持ちになったが、まさかそんなのが天使に効くとは思ってもいなかったので、少し驚いた。

 と言うか、あのフィルルカがトッロトロになったと言う事実だけで、ちょっと面白い。

 

 俺は聞いた。

 

「変な顔だった?」

「アヘ顔だったわ。白目向いてた」

「やべー」

 

 と言うか、それはむしろライラのテクニックが異常だったのでは? と思ったが、俺は黙っておいた。

 

「まあそれはともかく、暇ならこの楽器を触ってみる? なかなか面白いわよ。そう、こことここを抑えて……」

 

 そしてライラは、何処で知ったかも分からない演奏技術を俺に教え、迷惑にならないよう防音の結界を張った上で、

 

「よし。覚えたわね。やってみなさい」

「ん〜、こうかー?」

 

 俺は渡されたエルフォリア・ハリルというらしいハープを、軽く鳴らして、テキトーに歌ってみた。

 

「か゛〜え゛〜る゛〜の゛歌が〜、聞゛〜ご〜え゛〜て゛〜く゛〜る゛〜よ゛〜。グワアっ゛、グワアッ゛〜、グワっ、グワン゛〜ゲロ゛、ゲ゛ロ゛、ゲロ゛、ゲロ゛、グワ〜゛、グワ゛〜、グワ〜ン゛」

「………………」

 

 そしたら、ライラはドン引きしたように固まった。

 

「……歌のチョイスもアレだけど、酷いダミ声と音程ね!」

「俺もここまで酷いとは思いませんでした」

 

 そして自分で言うのも何だが、俺も俺に引いた。

 まさかこんなにヤバいレベルとは。

 ジャ○アンじゃあるまいに。

 

「やっぱ、この肉体が悪いんだよ。この天使の体が、歌うのに適してないというか……」

「そんな言い訳したって、音痴であることに変わりないわよ!」

「ん? いやちょっと待って」

 

 それから俺は、脳内の回路を開き、演算を開始した。

 最適な姿勢、空気の吐き方、声のトーンを計算。

 シュミレーション。

 それを自分にダウンロードして、ひとまず再挑戦。

 

「か〜え〜る〜の〜う〜た〜が〜、き〜こ〜え〜て〜く〜る〜よ〜、ぐわっ、ぐわっ、ぐわっ、ぐわっ、ケロケロケロケロ、ぐわ、わっ、わっ、わっ」

 

 すると、これ以上ないってくらいの美声が、俺の喉から溢れ出す。

 某イケメン声優が歌ったと言っても過言ではないくらいの、完璧な音程。

 俺は天才かもしれない。

 

「治った! やっぱり天使の体は、歌うのに適しているんだ!」

「いや思いっきりズル」

 

 とはいえ、歌うのが楽しくなったので、一時間カラオケ大会したが、それもやっぱり飽きてしまって、俺とライラはひたすらぼけ〜とする作業に戻った。

 

「結局ハープは弾かなかったわね。何で歌大会になったのかしら……?」

「マジ、それなー」

「もしかして、ハープがつまらなかった?」

「ん〜そーかもしれん。ムズイし、面倒臭いし、悪いとは思うけど」

「ああ、そう。ちょっと残念だわ。でも私は意外とハープの演奏は好きだったけどね。色んな意味でね〜」

 

 ライラはエルフォリア・ハリルを撫でながらそう言って、ふと気になったように聞いてきた。

 

「……そう言えば二二ってさ、一人でいる時何してたの? 暇じゃなかった?」

 

 というのも、見習い期間はあまり仕事もないからだ。

 そのため多くの同期は時間を持て合しているらしく、よく一緒に遊んだり、訓練したりと言った様子を見かけることが多い。だが俺はこの前までぼっちで、その間何をしていたのかライラには想像が出来ないのだろう。

 ライラは陽キャで、知り合いも多いみたいだし。

 俺とは真逆と言っても良い。

 

「つーたって、今と大して変わらないけど。一日寝てたり、歩いたり、ゴロゴロしたり、まるでニートみたいな生活してたな」

「おい、ニートって……」

「あ、でも、川原のところで、ひたすら石を積み上げて暇つぶしとかはしてたぞ」

「は?」

 

 俺がそう言えば、ライラが眉を顰めた。

 俺はよく分からなかったのだろうと思い、詳しく説明する。

 

「だから、こうやって石積んで、塔を作って、崩れたらまた積んで――」

「え、縁起でもないっ!」

 

 するとライラは突然、ギョッとしたように叫んだ。

 今度は俺が顔を顰める番だ。何でこんなにも動揺しているのか不思議だった。

 でもライラはブルブル震えて、何やら小さく呟いている。

 

「ちょ、これ……賽の河原……洒落にならない奴……ぶつぶつ」

「???? おーい、大丈夫かー?」

 

 ついに心配になって呼びかけると、次の瞬間、ライラは俺の肩に両手を乗せた。

 

「ニニ! アンタ、他に趣味かなんか作りなさい!」

「は、はい?」

「こんな石積みだの何だの、無駄に時間を消費するくらいなら、いっそ好きな物をパーっとやった方がいいわ! じゃなきゃアンタ、このまま何もやらずにいつの間にかポックリいきそうもの! ……と言うかそもそも、エメラルと話した時、趣味を作らせようって思ってだったんだわ……うう、こんなくだらないことで遊んでる場合じゃなかった……」

「そうかな? 俺はライラと一緒で楽しかったけど」

「……、そうなの?」

「? もしかして照れてんの?」

 

面白がって指摘してれば、柄にもなくライラは頬を染め、俺から離れてそっぽを向いた。

 彼女にしては珍しい反応だ。

 釣られるようにこっちも気まずい気持ちになる。そう言う態度を取られると、俺まで気恥ずかしいって言うか……。

 

「……で、やりたいことって何かあるの?」

 

 しかしこのままでは話が進まないとでも思ったのか。

 ライラはそう話題を振ってきた。

 

「うーん、そうだな」

 

 そうして俺は改めて考えて……そこで、思い至ったのである。

 そう言えば俺って、ここに来て何一つ、やってないことがあるな、と。

 

 それは食事だった。

 基本的に天使になってからというもの食欲とは無縁だったが、一度もそういうことを気にしなかったかというと嘘になる。

 でも死への恐怖が先行して、忘れてしまっていた。

 そのためか、再び気になると止まらない。

 

 そして、ふと思った。

 ジンギスカンが食べたい。

 

 ――ここでやっと、話は冒頭へと戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……ちなみに、ここまで語った割に、そんないきなりジンギスカンとか言うなんて、ギャグなんじゃねんの? とこれを見た人がいるならそう思うだろうが、俺はまったくふざけてなどいないのだ。

 本当に真剣な意味で、ジンギスカンが食べたいのである。

 

 多分、その理由は前世にあるのだろう。

 

 俺のカスみたいにしか残っていない生前の記憶。

 何もかもを忘れているが、その割に知識だけは残っている。

 

 例えば、歴史の人物とか。動物の雑学とか。

 勉強は何故か初級のことしか思い出せないが、因数分解が解けた辺り、まったくやってなかった訳ではなさそうだ。

 他にも生前習得しただろうことは、多分やれる。

 それを見るに、俺の中で消えてしまったものは、エピソード記憶だけなのだろうと推測している。

 つまり他の部分は、ほぼそのままなのだ。

 

 恐らく趣味趣向も、変わってなどいない。

 たまに、何かを懐かしいと思う瞬間もある……そう最近になって気が付いた。

 

 だからこそ、ふと思い浮かんだジンギスカンという単語も、多分生前好んでいたものなのではないかと思うのだ。

 その証拠に、ジンギスカンを頭の中で想像してみると、思わず涎が垂れそうになった。

 あの肉の柔らかいところとか、濃い味付けのタレとか、シャキシャキした野菜とか。

 すごく、すごく食べたいです。

 

 しかし当然ながら。

 この世界にジンギスカンというものは存在しないのだ。

 食すことは不可能である。

 なのでしょんぼりしながら、俺はライラに「実は本で読んだんだけど、こういう料理みたいなのがあって〜」とか言いながら、落ち込み具合を説明をしていると。

 

「ふーん、要するにお肉が食べたいってこと? それならやりようはあるわよ?」

「ん?」

 

 と、ライラが言い出したので、俺は目を瞬かせる。

 そんな方法あったっけ、と。

 だがそれを予想してか、ライラはすぐに付け加えるように言った。

 

「ほら、拠点で育てている魔物の廃棄肉よ。どうせ捨てるから、貰えるじゃない」

「ああ……」

 

 そう言われて俺は思い出した。

 実はこの世界の天使の拠点は、殆ど地下に魔物を飼っているのだ。

 それはコアを回収するためであり、それが天使の部品や建物、機械に使われるオリハルコンの材料となる。

 この魔物は品種改良されており、場所によっては羊だったり鶏だったり、中には虫の姿のこともあるようだ。

 これらは一〜三ヶ月で成体となり、次の個体を産む。

 それに伴いコアの回収を行い、新兵を製造するというサイクルだ。

 

 しかし、コア以外の部分は不必要となるため、魔物の肉は基本的に捨てられる。

 毛皮の方はそうでもないらしいが……天使にとってみれば、肉なんてどうでも良いんだろうな。

 一方で、食事がしたい俺にとっては都合が良いと。ゴミなんだから、いくらでも貰いたい放題ってことだ。

 

「けど、お前は引かないのな。普通、こういうのを天使は嫌うんじゃなかったっけ」

「ん? ……まあ、私は色々あるから、拒否感はないわよ?」

「そうなのか?」

 

 不思議な奴だな。

 別に俺としては、付き合いやすいから良いが。

 

「うん、なら……行くか」

 

 そう言う訳で、俺達は早速、地下の魔物飼育場へと行ったのだが……案の定、渋い顔をされたのだった。

 

「うぇえ、お前らマジ? こんな気持ち悪いのが欲しいの?」

 

 そんな風に眉を顰める天使の手には、タッパーみたいな透明な容器が握られている。

 中には何か分からないゴロッとしたお肉が入っていて、精肉店で見かけるような、お高い牛肉のように見える。

 全力で頷けば、相手の天使はますます不可解そうにした。

 

「物好きな奴も居るもんだな〜」

 

 それから作業員の天使は肉を渡すと、しばらく奥に引っ込んで行き、戻ってくると同時に瓶のようなものを投げつけてきた。

 

「っ、とと」

 

 慌ててキャッチすると、天使は無造作に言った。

 

「そういうことなら、こっちも持っていってくれよな。それもゴミだからいらない」

「……ゴミ? 中見は何です?」

「廃棄油」

「廃棄油って……」

「お前らも知っての通り、植物油の残りカスだよ。作る時、そういういらない成分も出来るの。まあ、昔の人間様は、料理用として使ってたらしいが……俺達には無用な長物なんだよなあ」

 

 その言葉に、俺とライラは顔を見合わせた。

 一応、解析能力で分析してみたが、どうやらそこまでバッチい物でもなく、毒物もないようだ。

 これ……イケる奴やん。

 

「あ、ありがとうございます! こんなものまで頂いて!」

 

 思わず感謝を伝えると、作業員の天使は不思議がって、首を傾げた。

 

「あれ? 何で礼を? ただゴミを押し付けただけなんだが?」

「それでもありがたいです!」

「??? 最近の子は変わってるな……」

 

 彼は何故か可哀想な子を見る目を向けた後、やがて作業をするべくさっさと帰っていった。

 何だか釈然としない気持ちを抱えたままでいると、隣のライラが笑いかけてきた。

 

「良かったわね。これでニニ、お肉食べれるわ」

 

 その笑顔があんまりにも眩しく、こっちのことばかり思いやっているということが伝わってきて、俺は少しの間黙る。

 

「……」

「? どうしたの?」

 

 ライラはキョトンとした顔を返した。

 それをしばし見つめ……俺はライラに負けないくらいニヤッと笑う。

 

「ライラ。せっかくだし、お前のために、作ってやるよ」

「作る?」

「料理だよ、料理」

 

 よく分からないという顔のライラに、俺は宣言した。

 

「俺はこう見えて、料理には自信がある!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 という訳で、ところ変わって建物の外。

 いつも来ている森の中の川付近。

 その近くにある切り株を挟み、俺とライラは座っている。

 テーブル代わりにされた切り株には、俺が紙で作った皿や、木を削り出して作成したフォークや箸と言ったものまで並んでいる。

 ライラはさっきからずっとそわそわしていて、居心地が悪そう。

 そして遂に口を開いた。

 

「……えーと、ニニ。これは一体?」

 

 俺はしたり顔で答える。

 

「料理の準備だよ、準備。お前、どうせ食べることに拒否感ないんだろ? 普段の礼だよ」

「はあ」

 

 しかし、ピンと来てないという反応だ。

 まあ無理もないかもしれない。それ程珍しいものに見えるだろうし。

 だからこそ腕の振り甲斐があるというもの。

 

 ちなみにフライパンだの、鍋だのは、ナノマシンで武器を作る要領で一から組み上げました。

 まな板は平べったい石(消毒済み)で代用し、包丁はフライパンや鍋と同じ原理で作っております。

 

 野外ということで、料理用の鉄製の台×二(ハナビに借りた)を用意しています。

 

 今日の具材はこちら。

 まずメインであるお肉の塊(400g)。

 ツヴィウル砦が育てているのは羊なので、恐らくこの肉はマトンでしょう。赤身がたっぷり、一応腐ってない。殺したてで、取れたてホヤホヤの、新鮮な生肉となっています(下処理はしました)。

 副菜は事前に森で収穫してきた皆様。

 地中に健気に埋まっていた長芋さんに、そこら辺で見つけた山菜もどき野郎。カラフルなキノコちゃんには、一応毒はありません。

 解析結果でそう出ていました。

 香辛料は少ないですが集められています。

 ペパルの実とソルトの実です。

 外見は胡桃みたいな木の実で、種をすり潰すと、それぞれ胡椒や塩のような味付き粉へと変身します。実際香辛料として使われていたようで、とても病みつきになる後味。舐め過ぎ、かけ過ぎにはご注意を。

 

 今日はこれらを使って、料理をしていきましょう。

 ライラが心配そうな顔をしているが……まあ、大丈夫だろう。

 多分、きっと。

 

 そうして俺は最初に、肉の塊を手に取る。

 これを2〜3cmのステーキ状にスライスしていく。すべて切り終わったら両面に小さじ1/2のペパルと小さじ1のソルトを振り、しばらく放置。

 その間にキノコ(200g)の汚れを水で洗い、食べやすい大きさに切る。とりあえず見目は気にしていないので、適当で良いだろう。

 山菜(150g)は根本を切り離し、5cmの大きさにカット。

 苦味が強そうだから、水を沸かした鍋に投入して一、二分茹でて下処理。

 長芋(300g)の皮を剥ぎ、キノコと同じく洗う。半分を包丁で細かくリズミカルに、トントントン。潰してトロロ状に。残り半分は5mm厚の輪切りにスライスする。

 これで大まかな下準備が完了。

 材料を別々の容器に移しましょう。

 

 ここからがようやく本番だ。

 まずいきなりフライパンと鍋の両方をを使います。

 鍋に少量の水を入れて、すりおろした長芋を加えて、煮ていきます。火力の調整は術式で出来るので、ここは弱火でコトコトしていく。

 ソルト小さじ1/2、ペパル小さじ1/4を混ぜ、二分経つとトロトロになっていく。

 同時にフライパンを中火で熱し、油を引き、スライスした長芋を並べて、両面を軽く焦げるまで焼く。焼き上がった長芋をトロロの上に乗せ、混ぜ合わせ、一品目が完成。

 

「ゴクリ」

 

 それを見ていたライラの目の色が明らかに変わったのを、俺は見逃さなかった。

 心の中でガッツポーズ。

 そうだろう、そうだろう。

 食の魔力というのは恐ろしいのだ。

 せいぜい楽しみに待っているが良い。

 アーッ、ハッハッハッ(棒読みノリ笑い)。

 

 さて、料理再開だ。

 長芋の焼きトロロは一旦別の皿に移して、フライパンは継続で使います。

 次に登場するのは、キノコと山菜。

 フライパンを中火で熱し、キノコを入れ、二、三分炒めて水分を出す。

 ソルト小さじ1/4、ペパルは小さじ1/8。

 山菜を加え、三〜四分。更にソルトとペパルで味を調整し、火から下ろして二品目完成。

 

 いよいよ最後の大物に取り掛かろう。

 フライパンを再び中火で熱し、油を引き、準備した羊肉を並べて、片面を三〜四分程焼いて焼き色をつけていく……。

 立ち登る肉の香りが何とも言えないくらい芳しい。もうこの時点で、堪らない。

 ああ、これだよこれ。焦がれてたよ。焼いてるだけに。

 そのまま返して、反対面も三〜四分焼き、熱い部分にフォークを軽く指して、火が通っているかを確認する。

 

 ……これくらいなら大丈夫そうだ。

 俺は肉を火から下ろして、皿に盛り付けた。

 二〜三分休ませ、炒め物や焼きトロロを添えると……、

 

「完成、俺特製、羊肉の塩胡椒焼き〜」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 その瞬間、ライラの口から涎がダバーと溢れ出た。

 

「…………………………………………!!!!」

 

 ライラはその感覚が生まれて初めてなのか、大層戸惑っていた。

 でもそれは悪いものではないのだ。

 彼女の分を差し出し、トドメと言わんばかりに言ってやった。

 

「どうぞ召し上がれ、お客さん。ホッホッホ」

「…………クッ!」

 

 我ながらふざけて謎の笑い声を出してみたが、ライラは無視し、皿にガッツこうとした。

 そこでフォークの扱いに苦戦しながらも、演算でどうにかしたのか、やがて上手に握り直し、飢えた犬のように食らいついた。

 一心不乱に。

 

 俺もそれ見て、自分の分を箸で食べる。

 ………うん。

 出来としては、本当イマイチ。

 調味料不足がダイレクトに響いている。

 やはり、味醂や醤油は偉大だったのだ。アレらを開発した人にノーベル賞を贈ってあげたい気分だった。

 

 でも、それでも。

 久しぶりの、まともな食事……!

 ヤバ……涙出てきた。

 

 そうやって俺がじ〜〜〜んとしているのも束の間。

 それまで黙って食べていたライラはしばらくするとブルっと震え、カッッッッッッと目を見開いて叫んだ。

 

「天下一の一品やないかッ!!!!」

「うお」

 

 それにビビった俺は盛大にビクッとする。

 突然驚かせないで欲しい。

 

「ど、どした。お腹痛いのか? 水いる?」

「違うわよ! そんなのどうでも良いし!」

 

 ライラはどうしてか目が飛びんでくらいに怒り、「何なのよコレは!!!!」と騒ぎ出す。

 

「滅茶苦茶美味しいじゃない!!!! まず、一口かじってみると、外側のカリッとした焼き目が香ばしくて、ソルトとペパルのシンプルな味付けが羊肉の自然な旨味を引き立ているじゃない!!!! 肉汁がジュワッと溢れ出て、ジューシーで噛むほどに甘みが増すこの感じ!!!! 羊肉特有の臭みはほとんどなく、むしろ野生っぽい力強い風味がクセになるわ!!!! 厚みがある部分は中が少しピンクで柔らかく、全体的に満足感が高い一品!!!! 本格的で豪快な味わいね!!!! 一方でキノコと山菜の炒め物はキノコの香りが立ち上ってきて、炒めた水分が染み出してジューシー過ぎる!!!! 山菜の軽い苦味がアクセントになって、全体のバランスがとても良いわ!!!! コリコリとしたキノコの食感と、山菜のシャキシャキ感が混ざって、噛むのが恐ろしい程楽しいじゃない!!!! ソルトとペパルだけなのに、素材の旨味が凝縮されてて、シンプルながらご飯泥棒級の味わい!!!!! 野外で採れた新鮮な素材に、自然の恵みを感じるわ!!!! 長芋の焼きトロロも美味し過ぎる!!!! すりおろしたトロトロの部分がふわふわに焼けて、口の中で溶けるような柔らかさ!!!! スライスした長芋の部分はカリッと香ばしく、2つの食感が交互に楽しめて面白いのよ!!!! 塩胡椒の優しい味付けで、長芋の自然な甘みと粘りが際立ち、焼きを加えることで、普通のトロロよりコクが増して、居酒屋のおつまみみたいな満足感!!!! 何より羊肉のボリューム感に野菜の軽やかさがマッチして、野外食事として完璧じゃない!!!! ジューシーなメインと食感豊かなサイドが交互に食べたくなる豊かなバランス!!!! アンタは天才か!!!!」

 

 そこまで怒鳴ったライラは、フー……フー……と息を荒く吐く。

 

「これが、“食事”という概念なのねッ!? すごいわッ!! 新鮮だわッ!?」

「そんなにか……?」

 

 些か大袈裟すぎなのではと思ったが、ライラの興奮は止まらない。

 しかも俺に八つ当たりし始めた。

 

「何よその反応は! 私は今すっごいショックを受けているのよ? 褒めてるんだから、ありがたがりなさいよ!」

「ええ……」

 

 いくら何でも、それは横暴過ぎるのでは?

 そう言いたくなったけれど、これだけリアクションが大きいと、逆に作ったかいがある。自然と俺の口角は上がっていた。

 

「でも、そこまで喜んでくれるなんて俺も嬉しいよ。……また、料理作ってやろうか?」

 

 そんなことを提案すれば、ライラは目を輝かせた。

 

「勿論大歓迎よ! これからもたっぷり作りなさい! 大盛りでね!!!!」

 

 それからというもの、俺が料理を作り、ライラが食事をするという日課が生まれたのだった。




ざっくり設定30
ペパル/ソルトの実
外見は胡桃のような、あちこちの森に群生する木の実。しかし実は魔物の因子を持ち合わせた半魔と呼ばれる種類の木で、実の中に塩分などを魔法で生成し、それを種に蓄えるという性質を持つ。これにより塩分を求める人間や動物を誘き寄せ、実を食してもらうことで、広範囲に種を運んでもらうという繁殖の仕方をする。
その名の通り、種は潰せば故障や塩のような味がする粉になる。
昔から重宝されてきた香辛料の一つ。簡単に採取可能。

山菜もどき
森で取れる食べられる野草。山菜とそっくりなので、山菜もどきと呼ばれる。味も山菜とそこまで変わらない。でも栄養価はとても高い。

ナタリオ油
ナタリオと呼ばれる植物から取れる植物性の油。天使達が主に工業用として扱うが、製法はオリーブ油を作るのと酷似しているので、実は食べられる。残りカスは更に上質なもので、地球の料理店で使われてもおかしくないクオリティであるが、天使達はいらないので、残りカスは捨てられる。製法的に衛生面に気を使っているので、バッチくもないし、毒性もない。

オリハルコン採取
天使の主なオリハルコンの入手方法は、魔物の養殖、魔物狩りである。特に魔物の養殖は盛んに行われており、品種改良された結果、その魔物は丸々と太り、上質なコアをいくつも体内に持つ歪な生物となった。勿論自然界では生きていけず、繁殖も出来ず、その様から蚕魔物と呼ばれる。とは言え格拠点ごとに何の動物を育てているかは違い、豚、羊、鶏、牛と様々である。成長が早く、成体になるのは一〜三ヶ月である。これらのオリハルコン採取に合わせて天使の新兵は製造されており、その拠点がどれだけ魔物を育てられるかで製造数が決まってくる。中には魔物の養殖を専門で受け持つ拠点も存在しており、そこからオリハルコンが運ばれるケースもしばしば。蚕魔物の毛皮は剥ぎ取られ、布地にして洋服やクッションに加工される。一方で肉はいらない部位なので捨てられることが常である。

ニニの料理の腕前
生前のニニは五歳で母親を亡くし、その後十歳まで親戚中をたらい回しにされた。扱いは相応に酷かったようで、食事を用意されなかったこともあり、彼は自分で料理を覚える必要があった。その環境で培われた創作料理の腕はなかなかのもので、少ない金銭で充実したレパートリーを増やすことが一種の娯楽となってしまったようである。
舌先もうるさく、生前のニニの食への探究心は相当なもの。そんな彼の好物はジンギスカンで、心羽の実家の北海道で引き取られた時に一度食べて、ずっと印象に残っていたらしい……(むしろそれしか良い思い出がないとも言える)。いじめもなく、自殺もしていなかったら、普通に料理人になっていた。
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