どうやら機械の天使に転生したみたいです 〜ぶっちゃけ人類は滅んでいるし天使と悪魔が戦争してるし最初からオワタ〜   作:鐘餅

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短編書いてたりでかなり遅くなりました

※設定ミスのため第二→第一へ修正しました


互いに二人だけ

 アイギス、アテナ、ルゥリア。

 その名前はある意味とても有名で、特に最初二人について、マルコシアス達は良く知っていた。

 そりゃそうだ。

 なんせアイギスとアテナは、魔剣を奪っていった相手なのだから。

 

(今思い返してもムカつきますね。アイツら、舐めた態度で僕達を攻撃して……)

 

 それに魔剣は、すべてベルゼブブとの共同作業で製作しているのだ。

 つまり、マルコシアスとベルゼブブの子供と言っても過言ではない。

 その愛しの魔剣を攫っていった輩に、マルコシアスは殺意を抱いでいる。

 

 具体的言えば、手足を削ぎ落とし、目玉をくり抜き、腑を取り出した後、マグマに叩き落としてやりたいくらいには憎い。

 

 だが……いくら何でも、このタイミングはない。

 マルコシアス達は、彼らについてまったく何も対策していないのだ。

 だって元々の情報では、マザーの護衛はスレンという天使だった。

 聖歌九隊の古参で、移動能力に優れるため、マザーの護送に最適だった。

 だからマルコシアス達の作戦も、それに合わせて計画していたのだ。

 

 でも、それが一瞬でパーになった。

 時間がない今、そのことはとても痛手である。

 

『しかも新しく入ったとは言え、彼ら三人も聖歌九隊ですか。……どうしましょう。一応、連れて行く魔物の種類は変更出来そうですが……』

『それだけじゃ不十分だろ。こっちで知り合いに掛け合って、なんとか数を揃えてみる。後は新しい装備をつけて、対応するしかない』

『ですよね。確かにこれは……』

 

 聞かれたら色々とまずい会話故、念話で話を続ける二人。

 マルコシアス達にとって、この作戦から手を引くという発想自体、あり得なかった。

 マザーがツヴィウル砦に来るからこそ、魔剣を取り返せるチャンスが生まれる。

 

『しかし、今回もあの人の気紛れに付き合わせてしまい申し訳ありません。いつもご迷惑をかけしてしまって……』

『良いよ別に。今に始まったことじゃないし』

『ですが……』

『だから良いって。お前のせいじゃないだろ。全部悪い人間のせいだし』

 

 ベルゼブブは、とても機嫌が悪そうに言った。

 事実は事実だが、マルコシアスにとって他人事ではいられないため、何とも複雑な気持ちになってしまう。

 

『……早く、こんなことが終わると良いですね。いえ、絶対に終わらせなければいけません。僕のこの、血筋にかけて』

『そうだな。こっちこそ……あの人のあんな姿は見ていられない』

 

 マルコシアスに続けて、ベルゼブブは目を伏せるような動作をする。

 

『知ってしまった以上は、殺してあげたい。何を犠牲にしても……』

 

 そうしてベルゼブブは、マルコシアスと同じように謝った。

 

『だからこそごめん、マルコ。お前が嫌がる相手を、最後のピースに選んでしまった。これが、最適解だと思ったからだ』

『? ……まさか、見つかったのですか?』

 

 最後のピース……それは、作戦の重要な要とも言える、陽動人員のことだ。

 ツヴィウル砦は脆いが、だからと言って所属天使は弱くない。

 聖歌九隊の三人とは別個に、彼らを足止めする必要がある。

 

 そこで、マルコシアス達はこの陽動を担ってくれる悪魔をずっと探していたのだ。

 それをベルゼブブは、スカウトしてくれたのだろう。

 でも、それがマルコシアスの嫌な相手とは、どう言うことなのか。

 

(ああ……もしかしてそう言うことですか?)

 

 マルコシアスが、本当に嫌いなもの。

 そして見たくないもの。

 心当たりがふと一つ思い浮かんだ。

 

 ……成程、これは確かにやりづらい。

 マルコシアスは思った。

 この胸の痛みを無視することは難しいな、と。

 だが、だが……それが作戦に必要ならば、構わない。

 ベルゼブブの言う通り、何を犠牲にしたって、“彼女”を殺してあげないといけないから。

 

『分かりました。その方でいきましょう』

 

 マルコシアスはハッキリと頷く。

 ベルゼブブは息を飲んだ。

 

『本当に良いのか?』

『他に選択肢がないのなら仕方がありません。それこそ、今更ではないですか。あんなことをした時点で、僕らは終わってます』

『それは……』

 

 ベルゼブブは困ったように黙った。

 マルコシアスは、何だかその様子がおかしくって、少し微笑んでしまった。

 そうして、彼はベルゼブブの手を取る。

 

「大丈夫ですよ。何があっても、僕だけは貴女の味方です。罪なら一緒に背負います。怖いのなら側に居ます。二人で一緒に、地獄への道を進みましょう」

「……何だよそれ」

 

 ベルゼブブは、気まずそうに視線を逸らす。

 

「おかしいですか? 僕達にはお互いしかいないんですよ?」

「それは分かってる。けどその……」

 

 それからベルゼブブは、口をモゴモゴとさせた。

 仮面で隠れているだろうが、恐らく顔は真っ赤になっているのだろう。

 そういうところは相変わらずだ。

 胸の中で、甘やかな痛みが込み上げる。

 

(ベルさん、とっても可愛いです)

 

 ああ、本当に可愛い。

 

 マルコシアスは、イタズラ心のままに、指と指をグッと絡ませてみる。

 ベルゼブブが「ひぅ」と情けない声を漏らした。

 

「え、えーと……」

 

 彼女は恥ずかしいのか、慌てて、無意味にキョロキョロしてしまう。

 その満更でもない態度に、マルコシアスはもどかしくなった。

 ベルゼブブがこちらをどう思っているか、今すぐ聞いてみたい。

 

(その心に、別の相手がいるのは分かってます。だけど……)

 

 期待してしまうではないか。

 

 しかも普通の背丈のベルゼブブと、二メートルあるマルコシアスでは、手のサイズも違っているのだ。

 自分の掌の中で、ベルゼブブの小さい手がすっぽり包まれているという事実が、堪らない気持ちにさせた。

 

 さっきみたいに、夢の中だからとか理由をつけて、抱きしめたくなる。

 でも、もうそれは出来ないだろう。

 だから、マルコシアスは代わりにこう言った。

 

「じゃあお詫びとして、僕としばらく手を繋いでいてくれませんか。ね……良いでしょう?」

 

 甘ったるい声と口調で囁けば、べルゼブブは一瞬だけ硬直した。

 

「はひ? え、あ、ああ……わ、分かったよ……」

 

 そして蚊の鳴くような声で、何とか絞り出したみたいな強がった調子で、ベルゼブブはこくりと頷く。

 マルコシアスは嬉しくて仕方なかった。

 

「ありがとうございます、ベルさん!」

「ああもう、顔近づけんな! ただし十分……いや三十分……一時間だけだからな! 勧誘してる奴を待たせてるから! オーケー!? お前にも後で会ってもらうからね!?」

「ええ、勿論ですよ。うふふ、幸せだなあ……」

「お前マジで……」

 

 ベルゼブブは何か言いたそうにしていたが、やがて溜息を吐き、何を思ったのか……絡められた指を自分から強く握り返してくれた。

 それにマルコシアスはとてもびっくりしてしまい、目をパチパチさせる。

 

 思わず転げ回りたい衝動が走ったが、同時にそれを上回って込み上げてくる暖かなものがあった。

 幸福で、窒息しそうになる。

 感情に溺れて、時間が止まってくれれば良いのにと思った。

 

 ――マルコシアスとベルゼブブは、そのままキッカリ一時間、手を握り合っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――一時間後。

 

「さて、勧誘相手に会いに行くよ〜」

 

 ベルゼブブはさっさと手を離し、いつもの軽い調子で言った。

 マルコシアスは名残惜しくて、まだ暖かさが残ってる手を開いては握ったりする。

 

「うう、もう少しだけ……」

 

 そんなことを言うマルコシアスの頭に、ベルゼブブが手を乗せてペチペチと叩く。

 

「ほら、さっさと用意して! いつまでベットの中にいないで、早く出るのにゃー」

「わ、分かりました! 降ります!」

 

 マルコシアスは素直に従った。

 見下されて強く命令されたようで、少々いやかなり興奮した。

 

(ふへへっ、この口調のベルさんも素敵。今日も頑張って軽い口調を維持してますね!)

 

 そのいじらしさと可愛らしさと言ったら……マルコシアスは百万字の文章で書ける。というか実際たまにしてる。

 つくづく気持ち悪い男である。

 

 その思考に気付いているのかいないのか。

 ベルゼブブはなんてことないみたいに懐から刃を抜き放った。

 

 それは小さな日本刀……短刀だった。

 第一魔剣、時空刃ムラマサ、その二振りのうちの一つである。

 

 ――この魔剣の能力はシンプルだ。

 次元を司り、切った斬撃から空間と空間を繋げ、離れた場所へ転移できる。

 

 この魔剣を使い、マルコシアス達は世界中を秘密裏に飛び回っていた。

 と言っても弱点はあって、知らない場所へ転移することは“遠ければ遠い程”難しく、また距離に比例して使用魔力も増大する。

 便利だが、弱点を突かれて痛い目を見たこともあるので、戦闘中に使うのはなかなか難しい。

 

 だがこういう安全な場所にいる場合、そのデメリットはない。

 躊躇なく、割とホイホイ使っているマルコシアス達だ。

 

 今回も慣れたように、ベルゼブブは虚空を切り付ける。

 すると空間に切れ目が出来て、広がった。

 

(はてはて、一体どういう方でしょうか)

 

 詳細は事前に聞いていたが、マルコシアスは初めて会う相手が楽しみだった。

 そうして空間の切れ目を二人で通った先は……古びた室内だった。

 

「ここは、地下ですか?」

 

 臭いから判断すれば、傍にいたベルゼブブが「そうだよ」と返す。

 

「プーカ、久しぶりだね〜。待った〜?」

 

 そして、目の前の人物にベルゼブブは声をかける。

 

「ううん。ぷーも、さっき来たとこ」

 

 相手は妙に幼い声で答えた。

 

 ――マルコシアスは、彼を密かに観察する。

 それはプルプルと震える、両手で抱えられる大きさの、ゼリー状の物体だった。

 視点が低いためか椅子に座っている。

 青いソーダのような澄み切った色で、中心には目玉が一つ、浮かび上がっていた。

 魔物のスライム……いいや、ジョゴスだろう。

 一見すると分かりにくいが、スライムは必ず核が見えている。

 しかしこのプーカと言う悪魔にはそれが見受けられない。

 

(それに、この声も……事前に聞いていた通りですか)

 

 プーカの中に混ざったもう一つの形質。

 その関係で、成人にも関わらずこんな幼い声になっていると言う。

 更に性格も。

 

 実際、プーカは遠慮がなかった。

 

「はじめまして! ぷーは、プーカって言うんだよ! おじさん、ベルちゃんの相棒なんでしょ? お名前は?」

 

 これにはマルコシアスも、微妙に向っ腹が立った。

 

「誰がおじさんですか! 後、気安くベルちゃんだなんて……!」

「マルコ」

「マルコシアスです。よろしくお願いします」

「……ぷ〜……」

 

 彼の何か言いたげなところが気になったが、マルコシアスはごほんと咳払い。

 早速放題へ切り出す。

 

「ではプーカさん。まずはこの度、我々の作戦へのご協力、誠に感謝致します。本日、来て頂いたのは他でもなく……事情はご存知ですよね?」

「うん」

 

 その時、プーカの目に、憎悪の色が燃え上がった。

 

「ぷーの話聞きたいんだよね。アイギスとアテナ……ルゥリアについて」

「そうだよ。こちらとしても、情報はなるだけ欲しいからさ」

「分かった。じゃあ話すね、あの時のこと」

 

 そうしてプーカは、話し始めた。

 彼の始まりの物語を。




ざっくり設定34
時空刃ムラマサ
魔剣のうちの一つ。第一魔剣。
二振りの日本刀で、短刀と大太刀の二つが存在する。
能力は至ってシンプルであり、斬撃を通じ空間と空間を繋げる。つまりどこ○もドアと同じ能力。ただし知らない場所へ転移する場合は、座標を知らなければ少し離れた場所へ繋がってしまい、距離が遠ければ遠い程使用魔力は増大する。飛ぶ場所を何も指定しなければ、一キロメートル範囲内でランダムに飛ばされる。
ベルゼブブとマルコシアスはこの魔剣を使い、世界中を秘密裏に飛び回っている。
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