重ちー(偽)のハンター人生(完結)   作:銀の鈴

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ハンターへの道のり

 

──僕には前世の記憶がある。庭で遊んでいて転んだときに思い出したんだ。

 

前世でのプライベートな事はあまり思い出せなかったけど、今と同じ男であり、働いていた事と、様々なサブカルチャー知識については思い出せた。きっと大人になっても夢を忘れないナイスガイだったのだろう。

 

そんなナイスガイの新たな人生が始まった世界はなんと異世界だった。

 

異世界転生といえば、まずは剣と魔法の世界を思い浮かべるだろうけど、残念ながらそうではなく、日本に似た現代風異世界だった。国名はジャポンだ。どことなくB級異世界っぽいネーミングセンスだ。

 

現代風異世界への転生なら次に思い浮かべるのは、男女逆転世界だろう。男女比が1:100とかで男というだけでモテモテ人生が約束されている、全男子なら誰しもが憧れる世界だ。

 

「男女比? 重ちゃんは変な事を気にするのね。男の子と女の子の人数はほぼ同じだから安心してね。男の子と女の子のお友達はどちらもいっぱい作れるわよ」

 

ママの言葉に絶望した。

 

転生しても人生の難易度は何も変わらなかったんだ。今世でも女の子とは縁の無い――ううん! きっとナイスガイな僕は前世ではモテたはずだ! 今世でもきっとモテるはずだ!

 

可愛い彼女を作ってキャッキャウフフな青春を、今度こそ謳歌するんだ!

 

そんな夢を胸にした幼い僕にママは言ったんだ。

 

「重ちゃんもそろそろ“念”の修行を始めましょうね」

 

ママ――変な宗教にハマってるの?

 

 

 

 

念は宗教じゃなかった。

 

前世でいう気功みたいなものだ。前世での気功は漫画とかでデフォルメされ過ぎてどこまで本当なのか分からなかったけど、こっちの“念”は本物だった。

 

ママが見せてくれた“念”はまるで魔法みたいだった。

 

一般的に“念”は秘匿されているらしいけど、ママは独身時代にハンターと呼ばれている仕事に就職していて、その新入社員研修で覚える機会に恵まれたそうだ。

 

その時に“念”を他人に教える場合は、その為人を確認して資格のある相手にのみ教えるようにと厳しく言われている。

 

「世の中には犯罪者でも“念”を覚えている人がいるから護身術のつもりで、重ちゃんも覚えましょうね」

 

うん、ママの愛を感じる。

 

自分では“念”を教えてもられる資格があるかは分からないけど、ママはあるって信じてくれたんだ。僕は決してその信頼を裏切ったりしない。ちなみに、パパには内緒なんだって。

 

──この日から念修行は始まった。うん、とてもしんどくて始めるんじゃなかったって何度も思った。

 

 

 

 

数年が経ってから水見式というものをした。

 

水と葉っぱを入れたグラスをオーラで包むように両手で練をする。

 

ザワリと水面が波立ったと思ったら、水の中から“何か”が飛び出した。

 

飛び出した何かはシュタッと床に立った。

 

それは、楕円形の身体に4本の腕、2本の足で立ち尻尾がある。全体的にミツバチの様な縞模様、擬人化した昆虫のような手のひらサイズの生き物だった。

 

「まあ!まあ!まあ! 重ちゃんは大天才だわ! 初めての水見式で念獣を生み出すなんて聞いた事がないわ! 今夜はお祝いをしましょうね!」

 

ママは大きな声で喜んでいるけど、僕はそれどころじゃなかった。何しろコイツには見覚えがあったからだ。

 

──ハーヴェスト。

 

記憶違いじゃなかったら、これがコイツの名前だ。前世の記憶にあるジョジョの奇妙な冒険に出て来るスタンドだ。そのスタンドの本体は……誰だったかな?

 

本体はよく覚えていないけど、ハーヴェストのことはよく覚えている。だってとても有能なスタンドだったからだ。

 

ハーヴェストは小さなスタンドだけど、人間の皮膚を簡単に抉れる爪を持ち、針を刺してアルコールを静脈注射もできる。しかも群体のスタンドだから数の暴力を発揮できる。極め付けに半自立型だから簡単な命令で動いてくれるのが魅力的だ。

 

「君はハーヴェストなの?」

 

《――ハーヴェスト。私はハーヴェスト。本体、これからよろしく》

 

ペコリと頭を下げるハーヴェスト。

 

「うん! これからよろしくね、ハーヴェスト!」

 

──これが一生を共にするハーヴェストとの出会いだった。

 

この後、ハーヴェストは群体じゃなかったっけ? と思った次の瞬間、オーラが枯渇して気絶した。目覚めたら五百体以上のハーヴェストに囲まれていた。

 

 

 

 

ハーヴェストと出会ってからも“念”の修行を続けた。念が強くなれば強くなるほどハーヴェストが強化された。総数と行動可能距離が増えていったんだ。

 

僕自身の戦闘技術の向上は芳しくなかったけど、僕の戦闘スタイルがスタンド使いだから仕方ないだろう。その代わり、ハーヴェストの戦闘能力は順調に上がっている。

 

「重ちゃんは安全な場所でハーヴェストに護衛されていれば、後はハーヴェストがどうにでもしてくれるわ。決して自分で戦おうなんて思っちゃダメよ」

 

ママも戦うなっていうからその通りにしようと思う。

 

うん、僕のハーヴェストは優秀だからね!

 

 

 

 

今年で中学を卒業する。

 

高校に進学するか、ママと同じハンターに就職をするか、自分で決めていいわよ。と言われた。

 

ずっと家でゴロゴロしたいと言ったら、高校に進学するか、ママと同じハンターに就職をするか、自分で決めていいわよ。と言われた。

 

あれ? と思いながらもう一度、ずっと家でゴロゴロしたいと言ったら、高校に進学するか、ママと同じハンターに就職をするか、自分で決めていいわよ。と言われた。

 

うん。これは無限ループだ。

 

無限ループに抵抗しても無駄だから、就職する事に決めた。ハンター入社試験は厳しいらしいから就職浪人になっても仕方ないだろう。

 

十年ぐらいはこの手でいけると思うんだ。

 

「重ちゃん、ハンター試験に落ちたら高校進学だからね」

 

ウググ、高校には行きたくない。学力は問題ないけど楽しくないんだ。言っておくけどボッチじゃないよ。孤高なんだ。

 

よし、仕方ない。

 

ここは本気を出そう。

 

「ハーヴェストよ。就職浪人は諦める。本気で試験を受けるから本気を出してね」

 

《了解です。情報収集を開始します》

 

うん。これで良し。

 

後はハーヴェストに任せておけば問題はない。

 

僕はゴロンと横になって昼寝をしながら、ハーヴェストの応援を夢の中でする事にした。

 

 

 

 

ハンター試験日が近付いてきた。

 

今日、僕は出立する。

 

空港にまでママが見送りに来てくれた。このまま付いて来て欲しいけど、ダメって断られた。

 

「重ちゃんは、ハーヴェストの言う通りに行動するのよ。そうすればきっと合格できるわ」

 

うん。ハーヴェストは僕に似て優秀だからね。

 

「ママ、吉報を待っててね!」

 

家で待つことになるママを心配させないように、僕は自信に満ちた笑みを浮かべて飛行船へと乗り込んだ。

 

さあっ、僕達の試験はこれからだ!

 

 

 

 

到着した。僕は飛行船から降りる。

 

《本体、次は――》

 

ハーヴェストが教えてくれた都市にタクシーで向かった。

 

 

 

 

試験会場のある都市に到着した。

 

《本体、次は――》

 

ハーヴェストが教えてくれた住所に向かった。

 

 

 

 

とある定食屋に着いた。

 

《本体、店内に入ったら――》

 

ハーヴェストが教えてくれた合言葉を覚えてから店に入った。

 

 

 

 

エレベーターで地下にきた。

 

ナンバープレートを貰ったら1番だった。

 

 

 

 

ゴロゴロしながら時間潰しをしていたら少しずつ人が増えて来た。

 

ガラの悪い人が多いから、百体ぐらいのハーヴェストの透明化を解除して護衛をしてもらう。

 

ハーヴェストは普段は姿を消して護衛をしてくれているけど、こういう時は護衛の姿が見えた方が抑止力になるんだ。

 

「(なんだあれ、魔蟲みたいだな)」

 

「(見たことねえ種類だな。新種か?)」

 

「(あの体色だと毒持ちだな。下手に近づくなよ)」

 

うんうん。護衛の効果は十分だね!

 

 

 

 

「ねえねえ、それって新種の蜂なの?」

 

大きな帽子を被った可愛い女の子に話し掛けられた。

 

「えっと、この子達は僕の家族でハーヴェストって言うんだけど、蜂なのかな? 小さな頃から一緒だけど気にした事ないから知らないんだ。ごめんね」

 

「ううん、私の方こそごめんなさい。家族なら種別なんて気にしないよね。あのね、私もこの子達とは小さな頃から仲良しなんだ」

 

優しい目で僕を見つめる女の子が大きな帽子を指先で軽く叩くと、数匹の蜂が出て来た。

 

ブンブンと飛び回る蜂に興味を示したハーヴェストが近付いていった。大丈夫? 刺されないかな。

 

「ふぇ!? 君のハーヴェストが、私の蜂を率いているんだけど!?」

 

フワフワと飛んでいるハーヴェストの後ろを一列になって飛んでいる蜂の姿に、女の子が目を丸くする。

 

うんうん。僕に似てリーダーシップに溢れているんだね!

 

 

 

 

大きな帽子を被った可愛い女の子――ポンズと友達になった。

 

僕よりお姉さんだけど、ポンズさんではなくポンズと呼び捨てで良いと言われた。

 

「さん付けは柄じゃないもん。お互いにフレンドリーでいこうよ。ねっ、重清くん」

 

歳下の僕が呼び捨てなのに、ポンズは君付けなの?

 

「えへへ、重清くんって、重清くんって感じだもん。何だかしっくりくるんだ」

 

うーん。よく分からないけど、こういうのはフィーリングなのかな。

 

まあ、別にいいか。

 

「あはは、適当だね。でもその適当さが重清くんらしさなのかな。とにかく、これから仲良くしようね!」

 

ハーヴェストが気に入ったのだろう。ポンズはとてもフレンドリーだ。ニコニコしているポンズを見ながら僕はそう思った。ちなみに、彼女の手にはジタバタともがくハーヴェストが握られていた。ハーヴェスト、女の子相手だから我慢してね。

 

 

 

 

人がどんどん増えていく。危なそうな人もどんどん増えていく。

 

そんな中で、最初の頃に来たピエロのおっちゃんが、ジッとハーヴェストを熱い目で見つめては、視線を僕に移すとハァと心底残念そうに溜息を吐くという動作を繰り返していた。

 

うん。なんだかとても失礼だ。

 

「ピエロのおっちゃん。人の顔を見て溜息を吐かないでよ。とても失礼だよ」

 

「ちょっ!? ダメだよ、重清くん! そんな危なそうな人に話しかけちゃダメ!」

 

ポンズが慌てて僕の手を引っ張り、ピエロのおっちゃんから遠ざけようとする。

 

「違うよ、ポンズ」

 

「何が違うの? あっ、もしかして知り合い?」

 

「ううん、このピエロのおっちゃんは危なそうな人じゃなくて、危ない人だよ。ポンズは近付いちゃダメだよ。頭を落とされちゃうかもしれないからね」

 

「そんな危ない人を挑発しないで!?」

 

そんな二人のやり取りを見ていたピエロのおっちゃんは、怒り出すこともなく穏やかに話し出した。

 

「うん! 凄いね♥ キミの念獣はボクが今まで見てきた中でもぶっちぎりで最高だよ!」

 

ピエロのおっちゃんはニコニコとハーヴェストを見たあと、残念を通り越して可哀想なものを見る目付きで僕を見た。

 

「でもその本体がキミなんだね♣ うん! ボクが今まで見てきた中でもぶっちぎりで酸っぱいブドウだよ♦」

 

とても失礼なことを言われた気がする。

 

 

 

 

なんだかんだでピエロのおっちゃんと連絡先を交換し合った。

 

「キミの念獣はとても有能そうだ。何かで依頼をすることもあるだろうね♦ キミの依頼もハンターの同期になるだろうから、同期割引で受けてあげるよ♥」

 

最終的にはフレンドリーな結果で終わった。

 

「あのね、重清くん。友達は選んだ方がいいよ」

 

ポンズは困った顔をしていた。

 

 

 

 

ポンズに膝枕をしてもらいながらお喋りをして時間を潰していると、制限時間になった。

 

周りを見渡すと数百人のおっちゃん達がウジャウジャしていて暑苦しかった。ポンズみたいな可愛い女の子は他には居ないみたいだ。

 

あっ、クール系のお姉さんが居た!

 

駆け寄ろうとすると、むんずと首元を掴まれて止められた。

 

「こら、知らない人に近付かないの。ここに居る人達はライバルなのよ。気を抜いたら危ないわ」

 

ポンズとは友達だから協力し合って試験に挑む約束をしたけど、確かに他の人はライバルになる。

 

僕としては足の引っ張り合いは好みじゃないけど、僕がしなくてもされる可能性はあるだろう。

 

うん。ここはポンズの忠告に従おう。

 

僕はササっとポンズの背中に隠れた。

 

「ねえ。素直なのは良いんだけど、女子の背中に堂々と隠れるのは、男子として思うことはないの?」

 

何を言ってるの?

 

男女平等の世の中で、そんなことを言ったら問題になるよ。ポンズはお姉さんなんだからしっかりしてよ。

 

「……そうね。重清くんの言う通りだわ。感情では納得しないけど、理性では納得したわ」

 

ポンズは妙な顔をしながらも納得してくれた。ところで、どうして僕の頬っぺたを摘んでいるの?

 

「ふふ、理性では大人気ないと思うけど、感情では正当な報復だと思うからよ」

 

そっか。ポンズはまだまだ感情に振り回される子供なんだね。ここは僕が大人になって我慢を――

 

軽く摘むだけだった指に力が入る気配を感じたから、僕が大人になって素直に『ごめんね』をした。ポンズは許してくれた。

 

ふぅ、気紛れな女の子の相手は大変だよね。

 

 

 

 

第一次試験が始まった。

 

試験官の変なヒゲのおっちゃんの後に付いて行くだけだ。

 

たぶん持久走だと思うから、僕らはハーヴェストに運んでもらう。

 

「ねえ、運んでもらえるのは体力を温存できて有難いけど、すごく目立ってない?」

 

ポンズの恥ずかしそうな声に周りを見渡すと、むさ苦しいおっちゃん達がウジャウジャ居るだけだった。

 

「女の子達は居ないから問題ないよ。あっ、クール系のお姉さんがこっちを見てる!」

 

クール系のお姉さんの視線に慌ててハーヴェストから降りると、僕は颯爽と走り出した。

 

「こらこらこら! 私だけ目立つポジションに残さないでよ」

 

ポンズが文句を言うけど、女の子には無理をして欲しくない。無理をするのは、僕を守る時だけにして欲しい。

 

「もう、格好良いセリフを言うのなら、ちゃんと最後まで格好良く締めてよ」

 

「男女の違いや、歳の差はあるけど、僕らは対等な友達だと思っているよ。だから、男だから君のことを一方的に守ってやるとか偉そうなことを言う傲慢な男にはなりたくない。今は僕が君を運ぼう。そして、危険が迫るとき、君の背を借りたいんだ。我が友ポンズよ。共に力を合わせて、このハンター試験という難局を乗り越えよう」

 

「あのね、格好良い言い回しをしろって言ったわけじゃないわよ。それに君の背を借りたいって、私の背中に隠れるっていう意味でしょう。力を合わせてないじゃない」

 

流石はポンズ。僕の上っ面の言葉に惑わされない冷静さが頼りになるね。

 

「もう、重清くんは困った子ね。そんなんで学校では上手くやれていたの?」

 

ポンズの言葉の刃に、僕は力なく座り込んだ。なんだか胸が痛い。今日はもう家に帰ろう。ママが心配して待っていると思うんだ。

 

「急に打たれ弱くならないで!? ごめんね、重清くん!」

 

ハーヴェストから飛び降りたポンズが駆け寄ってきて、頭を撫でながら謝ってくれた。

 

至近距離のポンズからフワリと良い匂いが漂ってくる。

 

うん。今回は許して上げるけど、これからは気をつけてね。男の子は繊細なんだよ!

 

「ハァ、普通なら納得いかないとこだけど、そんな涙目で言われたら何も言えないわ。無神経なお姉さんが悪かったわ。本当にごめんなさい、重清くん」

 

ギュッと抱き締めて慰めてくれるポンズ。そんな二人をハーヴェストはソッと運んでくれた。

 

 

 

 

「ウググ、周り中から視線を感じるわ」

 

ポンズに膝枕をしてもらいながら持久走を続けている。ハーヴェストのスタミナは無限みたいなものだから、この一次試験は楽勝かもしれない。

 

「そうね、さっき一人目が脱落したみたいだけど、私達の消耗はないからこのままなら問題はないわ――私の羞恥心以外はね」

 

ポンズは恥ずかしいの?

 

確かにポンズの服装は野暮ったいけど、今は試験中だから許容内だよ。もちろん、街中だと恥ずかしいかもしれないけど、その分、ポンズは可愛いから差し引きだと僅かに可愛いが勝つから安心してよ。

 

「うふふ、軽口なのは分かっているけど、僅かに可愛いが勝つってなに? そこは圧倒的に可愛いが勝つの間違いじゃないかしら」

 

両手で頬っぺたをモニュモニュと揉まれまくる。このままだと鏡餅にされそう。

 

「貴方達は仲が良いわね。先程から見させてもらっていたけど、ハンター試験中だというのにイチャつきっぱなしね」

 

クール系のお姉さんが話し掛けてきた。

 

「イチャついてはいないけど、そう見えたならごめんなさい。気に障ったかしら」

 

ポンズは警戒したのか、クール系のお姉さんから僕が見えないように背中に隠した。

 

「あら、警戒させちゃったみたいね。別に気に障っていないわ。微笑ましくて見てただけよ」

 

クール系のお姉さんはそう言うと、邪魔をしてごめんなさいね。と告げて先に行ってしまった。

 

ポンズの背中に隠れながら、僕は彼女の去って行く後ろ姿を見送った。

 

 

 

 

目の前に階段が現れた。

 

「ここからは自分で上るわね」

 

手のひらサイズのハーヴェスは階段の段差と同じぐらいの大きさだ。ハーヴェストは集団だから協力し合って運べるけど、ポンズはハーヴェストに負担を掛け過ぎると思ったみたいだ。

 

ハーヴェストから降りると、軽快な足取りで階段を上っていく。ここまで体力を温存できたから問題はなさそうだ。

 

もちろん、僕はハーヴェストに運んでもらった。

 

 

 

 

地上に到着した。

 

周りはジャングルみたいだ。街中の定食屋の地下からジャングルまで走らされたわけだね。

 

うん。ハンター試験は無茶苦茶な試験だと思う。

 

暫く待っていると、制限時間になって階段の出口はシャッターで閉じられた。

 

変なヒゲのおっちゃんが試験の続きの説明をしてると、イベントが起こった。

 

イベント自体には興味が湧かなかったけど、イベントで登場した猿。あの猿は変なヒゲのおっちゃんによく似ていた。もしかしたら、遠い祖先は同じなのかもしれない。

 

ピエロのおっちゃんはやっぱり危ない人だった。ポンズが震えていたから手をギュッとしといた。ポンズもギュッと返してくれた。

 

 

 

 

ジャングルでも持久走だった。

 

僕達はハーヴェストに運んでもらった。

 

 

 

 

一次試験を合格した。

 

 

 

 

二次試験が始まった。

 

ハーヴェストが大きな豚を狩ってきて丸焼きしてくれた。

 

合格した。

 

ポンズも合格してた。

 

 

 

 

二次試験の後半戦が始まった。

 

「あたしのメニューは握り寿司よ――」

 

これはジャポン出身の僕にはラッキー問題だ。

 

握り寿司は好物だから、ママと一緒に握ったこともあるんだ。

 

「ポンズ、一緒に食材を探しに行こう」

 

「一緒に行くのはいいけど、当てはあるの?」

 

「とりあえず、歩きながら話そう」

 

「――そうね。行きましょう」

 

周りの受験者に気付かれないように、ポンズに目で合図を送ると気付いてくれた。

 

僕らはさり気なく川へと向かった。

 

 

 

 

「――なるほどね。じゃあ、川魚はあまり握り寿司に向いていないのね」

 

ポンズにざっと握り寿司について説明をした。

 

うん、確かに川魚は向いていないけど、それでも少しは使える魚はあるんだ。試験内容が握り寿司ってことは、ここの川にもいるはずだよ。

 

「それもそうね。ネタになる魚がいないのなら試験に選ばれるはずがないわ。それで、魚はどうやって取るの? 釣り道具は持っていないわよ」

 

そこはハーヴェストにお任せだよ。じゃあ、よろしくね。

 

ハーヴェストがササっと魚を取ってくれた。

 

「うーん。ハーヴェストが優秀すぎるわね。これじゃあ、重清くんがダメになっちゃいそうだわ。重清くんの将来の為にも何か対策が必要よね」

 

ブツブツとポンズが不穏なことを言っているんだけど!?

 

よし、スルーしよう。

 

さあっ、ポンズ。早く戻って握り寿司を握ろう!

 

「ええ、そうね。対策はハンター試験が終わってからゆっくり考えるわ」

 

……ハンター試験が終わったら速攻で家に帰ろう。と僕は思った。

 

 

 

 

「ねえ、ハーヴェストに全部任せて出来上がったのを持って行くだけなのは気が咎めるんだけど」

 

「僕のハーヴェストが握った握り寿司は僕のものだし、僕と協力関係にあるポンズにそれを融通するのは作戦の内だよ。何も問題はないよ」

 

「重清くんは割り切りが凄いわね。でもその通りだわ。今回は重清くんに頼らせてもらうわね。だけど、私も頼りっきりじゃ終わらないわ。最悪、ハンター試験中に借りを返せなくても、重清くんへの恩返しは絶対にするわ。うん、本気で教育カリキュラムを考えよう」

 

とても不穏な……よし、いざとなったらポンズにアルコール注射をして泥酔させて逃げよう。

 

明るい未来のため、僕は心を鬼にしてアルコール注射をする覚悟を決めた。

 

 

 

 

「なにこの握り寿司は!? あんた何者なの!」

 

こんな感じでメンチから合格をもらった。

 

「あんたはさっきの子の弟子かしら? ふふ、言葉にしなくても分かるわよ。あんたのオドオドした雰囲気から察するに、この握り寿司は師匠に手伝って貰ったのね。いいえ、別に文句はないわ。師匠が決めたことは弟子にとっては絶対だもの。でもあんたも大変よね。歳下の師匠だなんて。だけど、あんな天才寿司職人の元で修行が出来るのよ。小さなプライドは捨てて精進しなさい」

 

こんな感じでポンズも合格した。

 

合格したポンズはすごく微妙な顔をしてた。

 

 

 

 

三次試験には飛行船で向かった。

 

 

 

 

飛行船の中を散歩してたら、ちょんまげのお爺ちゃんが少年達とサッカーをしているのを見かけた。元気だなあ、と思いながらその場を後にした。

 

 

 

 

大きな塔に到着した。

 

ここの一階がゴールらしい。

 

どうやって降りようかな?

 

「ねえ、ハーヴェストならここから飛び降りても地上で受け止められるんじゃない?」

 

ポンズが怖い事を言う。

 

「え? 無理かな」

 

ううん。受け止めるのは簡単だけど、こんな高いとこから飛び降りたくないよ。

 

「それもそうだね。私は高いの平気だからつい言っちゃったけど気にしないで。重清くんは怖いよね。本当に余計なこと言ってごめんね」

 

……ここでカチンときて飛び降りるのは三流の男だと思う。

 

ククク、一流の男ってのをポンズに見せてやろう。

 

ハーヴェストよ! あの空飛ぶ気持ち悪い大きな生き物を捕まえてきて!

 

《了解です》

 

数百のハーヴェストに全身を抉られて抵抗する気力を失った空飛ぶ気持ち悪い生き物が、大きな塔の屋上に運ばれてきた。

 

ゴロンと転がされる空飛ぶ気持ちの悪い生き物。ゼーゼー言ってる呼吸音がとても耳障りだ。

 

うん、コイツの背中に乗って降りようかと思ったけど、近くで見ると予想以上に気持ち悪いや。全身血塗れだし、背中に乗るのは無理だね。

 

ハーヴェストよ。コイツは捨てといてね。

 

《了解です》

 

ポイッと空飛ぶ気持ち悪い生き物は地上へと捨てられた。

 

「ねえ、あの人食い生物は害獣だから殺処分は何も問題はないけど。重清くんは確か今年で中学卒業なんだよね。もう子供とは言えない年齢だね。じゃあ、もう少し考えてから行動できるように一緒に頑張ろうね」

 

そんな僕の行動を見てたポンズが、慈愛のこもった眼差しで僕を見つめながら言った。

 

うん。ちょっと失敗したみたいだ。

 

僕はコホンと咳をすると何食わぬ顔をしながら、他の人達と同じ様に大きな塔の調査をする事にした。

 

調査をする振りを始めても、ポンズから感じる視線は消えなかった。

 

 

 

 

ハーヴェストが隠し扉を見つけた。

 

《二つ並び。同じ部屋に出る》

 

うんうん。僕とポンズ用の扉だね。

 

「ポンズ、一緒にいこう」

 

「ええ、丁度良い扉があって良かったわ」

 

僕達は同時に扉を開いた。

 

 

 

 

ハーヴェストの指示に従って進んで行く。

 

 

 

 

特にイベントもなく一階に到着した。

 

一番だった。

 

 

 

 

四次試験の舞台は無人島だった。

 

ここではナンバープレートの奪い合いを行うそうだ。

 

僕らは最初に無人島内へと向かった。

 

ポンズとはすぐに合流して二人で島の奥深くまで移動した。

 

「はい、ポンズの標的のプレートだよ」

 

ハーヴェストが取って来てくれたナンバープレートをポンズに手渡す。

 

「もう、本当に重清くんにおんぶに抱っこ状態だわ。この恩返しは絶対にするからハンター試験が終わっても逃げないでね」

 

ギクッと内心思ったけど、顔には出さずに恩返しを楽しみにしてるね。と返しておいた。

 

 

 

 

クール系のお姉さんが殺されそうになってるのをハーヴェストが見つけて報告を受けた。

 

頭中に針を刺した変態が相手だった。

 

二人にバレないように透明のまま、変態に向けてハーヴェスト千体で石を投げつけさせて気絶させた。

 

周辺がクレーターだらけになった。

 

ハーヴェストは剛腕だった。

 

クール系のお姉さんは気絶した変態からナンバープレートを奪っていった。

 

クール系のお姉さんと、頭中に針を刺した変態。男の子ならクール系のお姉さんを贔屓しても仕方ないよね。

 

 

 

 

ポンズと二人で試験最終日までキャンプ生活を送った。

 

ポンズはサバイバル生活に慣れているらしく、色々と面倒をみてくれた。

 

うん、恩返しはこれでチャラでいいよ。

 

「あのね。これでチャラにしたら私が非常識人間だって非難されちゃうわ。ハンター試験がどれだけの超難関か分かっているのかしら。恩返しの内容はちゃんと考えているから重清くんは口出ししないでね」

 

あれ、僕への恩返しなのに、僕の意見は聞いてくれないの?

 

女の子の理不尽さに、僕は身を震わせた。

 

「重清くん、寒いの? ほら、こっちにおいでよ。くっ付いたら温かいわよ」

 

ポンズは温かくて柔らかくて良い匂いがした。そしてギュッと抱き締めてくれた。

 

女の子の優しさに、僕は心を震わせた。

 

 

 

 

四次試験に合格した。

 

 

 

 

ちょんまげのお爺ちゃんの面接を受けた。

 

「注目してるのは246番のポンズ。彼女とは友達だもん。戦いたくないのは女の子かな。こう見えて僕は紳士だからね」

 

 

 

 

最終試験は逆トーナメント方式の試合だった。

 

僕の最初の相手は忍者のおっちゃんだった。

 

「ほう、忍者を知っているのか。見たところお前さんもジャポン出身みたいだな」

 

──左足を絶妙な角度で曲げて前方に出し、両手は輪郭に沿わせる。眼光は意志の強さを感じさせる。

 

「ゴゴゴゴゴゴゴッ、僕の名は矢安宮(やんぐう)重清(しげきよ)。人は誰でも不安や恐怖を克服して安心を得るために生きる。ハンターとはそんな人々の希望となる存在だ。僕はそんな希望を背負う覚悟をもってここに立っている。我が祖国ジャポンの同胞よ。お前の覚悟を見せてみろ」

 

「いや、なんだ。あー、そういうお年頃なわけね。そうだな、カードバトルでもやるか?」

 

フハハハッ、親戚の子供達を無双するこの僕にカードバトルを挑むとは、忍者といえど驕り過ぎだ!

 

──ストレートで負けた。

 

 

 

 

うん、次の相手はポンズだ。

 

「ポンズ、試合方式はジャンケンにしようよ」

 

「重清くん、さっきの試合……ううん、なんでもない。ジャンケンでいいよ」

 

ジャンケンポン! 一発で負けた。

 

ポンズはこれでハンターだ。

 

おめでとう、ポンズ。

 

「うん! うん! ありがとね、重清くん! ぜーったいに恩返しするからね!」

 

えっと、そんなに気合いを入れなくても大丈夫だよ。

 

 

 

 

次の相手はクール系のお姉さんだった。

 

ポーカー勝負をした。

 

ブタで負けた。

 

健闘を讃え合って握手をした。

 

「ありがとう、重清。四次試験のアレも君よね。この借りはきっと返すわ」

 

耳元で囁かれたあと、チュッと頬にキスされた。

 

ポンズが観客席で怒号を発していた。

 

 

 

 

次の相手は銀髪の少年だった。

 

「──俺の負けでいい」

 

試合開始直後、ハーヴェスト(透明化を解いた百体)が彼の全身を抉る直前で動きを止めたら、素直に負けを認めてくれた。

 

こうして、僕はハンターになった。

 

 

 

 

速攻で、家に帰った。

 

ママとハンター合格のお祝いをした。

 

ポンズに住所を教えてないからこれでお別れになる。

 

少し寂しかった。

 

 

 

 

翌日、ポンズが自宅を訪れた。

 

「重清くん、恩返しにきたわよ。末永くよろしくね!」

 

ンタ(女の子)ーは怖いと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本作を読んで下さってありがとうございます。
本作は別作品の気分転換で書いたので続きはありません。
実は別作品を書き始める前のアイディア時点では、主人公の重ちーは決めていたのですが、舞台をヒーローアカデミアにするか、ハンターハンターにするかで迷っていました。結果的にヒロイン役のトガヒミコが好きだったので、ヒーローアカデミアに決めました。
別作品を読んで下さっている方は違う世界の重ちーは如何でしたか?あまり変わり映えは無かったかもです。
本作だけを読んで面白かった思っていただいた方は別作品も一度読んでみていただければ嬉しいです。あまり変わらない重ちーが活躍しています。
ではまたお会いできる日を楽しみにしています。
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