重ちー(偽)のハンター人生(完結)   作:銀の鈴

2 / 4
ハンターの新入社員研修

 

──ハンターに就職したら、ポンズの過酷な指導が始まった。

 

彼女の指導は早朝から始まる。

 

中学の卒業式も終わり、これからはお昼に起きればいいやと安眠してたら、ポンズにユッサユッサと身体を揺すられて起こされた。

 

「重清くんはお寝坊さんだね。もう八時だよ。寝過ぎは健康に良くないよ」

 

辛抱強い僕が布団の中で丸まり耐えていると、彼女はえいっと、掛け布団を剥ぎ取るという暴挙に及んだ。

 

イメージするのは常に最強のアルマジロ。そんな心意気で掛け布団を剥ぎ取られようとも、僕は一歩も引かずに更に丸まった。

 

ハァという溜め息が聞こえた。

 

ククク、諦めて部屋を去るといい。あっ、部屋を出る前に掛け布団は戻してね。

 

「もう、仕方ないなあ。家だとだらしなさに磨きが掛かっちゃうのね。あのね、重清くん。このまま起きない気なら、お姉さんがイタズラしちゃうわよ」

 

お姉さんのイタズラ!?

 

ちょっと待って!

 

すぐにシャワーを浴びてくるからそれまで待っててね!

 

僕は慌てて部屋を飛び出した。

 

 

 

 

グスン……ポンズに騙された。

 

彼女は男の子の純情を弄ぶ魔性の女だったんだ。

 

シャワーを浴びて部屋に戻ると、そこにポンズの姿はなかった。

 

少し遅い朝食を食べながら僕は愚痴る。

 

「人聞きの悪いことを言わないで。それにあんな冗談を真に受けないでよ。ママだって居るのにイタズラなんてするわけないでしょう」

 

ねえ、ママ。偶にはパパと二人で夫婦水入らずで旅行にでも行きなよ。留守番なら僕らでしとくよ。

 

「重清くんの心臓は鋼鉄製なの!?」

 

叫ぶポンズをスルーして、ママは静かに口を開いた。

 

「ママはこう思うの。条例を守らない女は重ちゃんには相応しくないかなって」

 

「誤解しないで下さい! イタズラっていうのは本当にただの冗談でして、重清くんを起こそうとしただけです! それに私はショタコンではありません! ちゃんと合法になる年齢まで待てます!」

 

ポンズは慌てて言い訳を始めた。

 

──待たなくていいのに。そう思っていると、ニッコリと笑顔になったママにジッと見つめられた。ゾクリと背中に冷たいものを感じた。うん、条例は守ろうと思った。

 

 

 

 

ポンズに連れられてフィールドワークを始めた。

 

「私の専門は動植物の生態調査よ。ハーヴェストの特性を考えれば、重清くんは世界最高の調査者にだって簡単になれるわ!」

 

もの凄い勢いでポンズは迫ってきた。僕に調査者になって欲しいっぽい。

 

僕のハーヴェストは総数五万体を超える。その行動可能距離も僕を中心に半径数百キロはあり、手のひらサイズのハーヴェストは何処にだって入り込めるし、空だって飛べる。しかも半自立型だから任せておくだけで効率的に調査をしてくれる。

 

ポンズが勧誘するのも納得だ。

 

ところで、動植物の生態調査は稼げるの?

 

ポンズはソッと目を逸らした。

 

 

 

 

「重清くんならどんなハンターになっても、よほどトンチキなことをしない限り成功するはずよ。個人的には調査者になって欲しくはあるけど、あなたには好きな道に進んで欲しいわ」

 

フィールドワークを一通りこなし、幾つかの新発見をしてポンズが大興奮するのを宥め終わったあと、冷静さを取り戻した彼女は真面目な顔を作って言った。

 

「うん、わかった。僕は寝具ハンターの道に進むよ。寝具メーカーと契約をして、新開発をした寝具の寝心地をモニターするハンターだ。きっとこの道で大成してみせると、ポンズに約束する。だから温かく見守っていて欲しい」

 

ムニュっと両頬を摘まれた。

 

「どんなハンターになってもと言った言葉は取り消すわ。それと的確にトンチキな選択をしないで。そうね、家に戻ったらママと一緒に、君が進むべき道を幾つか考えて上げるわ。その中から好きな道に進んでね」

 

ジト目のポンズの言葉に、僕は黙って頷くしかなかった。

 

 

 

 

家に戻る途中で、丸メガネをかけた女性に声を掛けられた。

 

「君がポンズかい? 私はハンターの――」

 

声を掛けてきた彼女もハンターだった。彼女はポンズに“念”を指導しに来たと告げた。

 

それを聞いたポンズは神妙な顔で答えた。

 

「ごめんなさい。私の一族は昔から蜂の精霊を信仰して――」

 

「はいはい。念は宗教じゃないよ。新手の勧誘じゃないから最後まで話を聞きなよ」

 

彼女はハンター協会から正式な依頼を受けた、新米ハンターに“念”を教える指導者だった。

 

念について一通りの説明を受けたポンズは納得した顔になる。そして彼女に訊ねた。

 

「重清くんも一緒に指導を受けるの?」

 

「いいや、彼はもう念を覚えているよ。彼の母親が熟練のハンターでね。幼い頃から英才教育を受けたエリートさ。全くそうは見えないけどね」

 

「重清くんがエリート? えっと、ここは笑うとこなのかな」

 

ポンズが首を傾げて聞いてくる。

 

彼女の頭に軽くチョップしてから、ハーヴェストを手のひらに乗せて答えた。

 

「僕の念の集大成がハーヴェストだよ」

 

手の上のハーヴェストと僕を見比べたあと、ポンズは深く頷いて言った。

 

「重清くんは全ての才能とやる気をハーヴェストに注いじゃったのね。同じ轍を踏まないように気をつけるわ」

 

うん。とても失礼だ。

 

罰として、僕はポンズの脇腹をくすぐる事にした。

 

コチョコチョとくすぐると、ポンズからの逆襲を受けた。負けじと僕も本気を出して彼女の身体を弄った。

 

「──あのさ、イチャイチャするのは二人の時だけにしてよ」

 

ポンズとキャアキャアと騒いでいたら、丸メガネのお姉さんが不機嫌そうに言った。

 

 

 

 

ポンズと暫く別行動をする事になった。

 

二人は念の修行がひと段落するまで、山に籠るそうだ。

 

「自然の中で修行をする方が効率が良いらしいわ。出来るだけ早く念を身につけるから、重清くんはトンチキな行動をしないでね」

 

うん。ポンズの修行が終わるまで、家で大人しくゴロゴロしながら待ってるよ。

 

「そうね、ゴロゴロしてたらママが何か言いそうだけど、私的にはその方がまだ安心かな。じゃあ、行ってくるわね」

 

うん、体に気をつけてね。

 

ポンズの姿が見えなくなるまで、僕は手を振り続けた。

 

 

 

 

「重ちゃん。就職してもう社会人だから、今月から生活費を家に入れてね」

 

家でゴロゴロしてたら、ママから爆弾発言が飛び出た。

 

フッ、ここで取り乱すと思った?

 

僕はそんな甘い男じゃないよ。

 

優秀なハーヴェストを率いる僕が、金銭的に困るわけなど無いのだ。

 

実はハーヴェストを街中に放って、落ちている小銭を拾わせているんだ。

 

ほら、大きな貯金箱がもう一杯になってるよ。

 

僕は胸を張りながら大きな貯金箱をママに見せた。

 

──ママに大きな貯金箱を没収された。

 

 

 

 

出稼ぎに出る事にした。

 

街で拾った小銭を懐に入れるのは法律に触れるんだって。

 

 

 

 

簡単に稼げるハンターの仕事として賞金首ハントがある。

 

ネットで調べると高額な賞金首が載っていた。

 

何でもククルーマウンテンって場所に高額賞金首が集まっているらしい。

 

これは一攫千金のチャンスだ!

 

僕はククルーマウンテンのあるパドキア共和国行きの飛行船に乗った。

 

 

 

 

パドキア共和国に到着した。

 

ネットで調べてみると、観光バスで高額賞金首がいる場所まで連れて行ってくれるみたいだ。

 

サービス満点だね!

 

僕は観光バスに乗った。

 

 

 

 

観光バスを降りると大きな門があった。

 

ハーヴェストが大きな門の中を調べてくれた。

 

大きな屋敷が建っていて、そこに閉じ込められてる女の子が居るのを見つけてきた。

 

きっと誘拐された女の子だと思う。

 

ハーヴェストに山の麓から穴を掘ってもらい、女の子の部屋まで侵入する事にした。

 

えっほえっほと穴掘りに精を出すハーヴェスト。三日ぐらいで床下まで辿り着けた。

 

さあっ、囚われのお姫様を助け出すぞ!

 

ハーヴェストが床をぶち破る。

 

僕は空いた穴を颯爽とよじ登った。

 

 

 

 

──足を広げ腰を落とす。右手で胸元を大きく開くと、心の奥底から燃え滾る正義の炎が迸る。

 

「ゴゴゴゴゴゴゴッ。運命とは眠れる奴隷だ。囚われるのが君の運命だと言うのなら、僕が眠れる奴隷を起こそう。何故なら運命に抗う事こそが、僕の宿命だからだ!」

 

目を丸くして、突然現れた僕を見つめる黒髪の女の子。

 

彼女に優しく手を差し出す。

 

「囚われのお姫さま。僕に盗まれて下さい」

 

「え? あの、えと、あたしを盗みたいの?」

 

「うん、盗みたい」

 

「盗んでどうするの? あたしを食べちゃうの?」

 

「ううん、僕に盗まれて自由になったら――」

 

部屋中に現れた無数のハーヴェストが、彼女に一斉に手を差し出した。

 

「――僕たちは家族になろう!」

 

「うわあ!? 大家族だあ!!」

 

大口を開けて呆気にとられた女の子を、僕は颯爽と盗み出した。

 

 

 

 

女の子をおんぶした僕を、ハーヴェストが運んでくれる。

 

「うわあ! すっごく速いよー!」

 

フハハハッ、僕らのスピードは世界一ィィィィッ!

 

「あたし達のスピードは世界いちいいい!!」

 

テンションマックスな女の子をおんぶして、僕らはククルーマウンテンを颯爽と駆け下りた。

 

 

 

 

盗み出した女の子――アルカを義妹にした。

 

ククルーマウンテンの高額賞金首は予想以上の大物みたいだから、彼女の安全を考えた結果だった。

 

1日24時間365日体制で彼女の護衛をできるハーヴェストの近くに居るには義妹が一番だと思う。

 

ママを説得しようと気合を入れたけど、ママはあっさりとオッケーしてくれた。

 

「重清おにいちゃん――重ちーって呼んで良い?」

 

うん、いいよ!

 

「しげきよすき」

 

うん! 僕も大好きだよ!

 

「あい」

 

 

 

 

土木工事のアルバイトをした。

 

親方に土方の才能があるって褒められた。

 

ママに生活費を渡した。

 

 

 

 

アルカと遊園地に行った。

 

「遊園地、すごく楽しかった!」

 

うん、また行こうね。

 

「あい」

 

 

 

 

土木工事のアルバイトに行った。

 

親方に土木の天才だと褒められた。

 

ママに生活費を渡した。

 

 

 

 

アルカと動物園に行った。

 

「パンダさん、可愛いね!」

 

笹しか食べれないの可哀想だね。

 

「アハハ、重ちーは食いしん坊さんだよね」

 

あれ、アルカはケーキを食べたくないみたいだ。じゃあ、一人で食べてくるね。

 

「アワワッ!? 待って! あたしも食いしん坊さんだよ!」

 

うん、じゃあ、食べさせ合いっこをしよう!

 

「ふぇ!? 人前だと恥ずかしいよ!」

 

 

 

 

土木工事のアルバイトに行った。

 

親方に土木の申し子だって褒められた。

 

ママに生活費を渡した。

 

 

 

 

アルカと水族館へ行った。

 

「イルカさん、可愛かったね」

 

アジは美味しそうだったね。

 

「重ちー、そんな感想だと女の子にモテないよ」

 

がーん!?

 

「えへへ、あたしは面白いと思うけどね」

 

 

 

 

土木工事のアルバイトに行った。

 

親方に土木の神かもしれないと褒められた。

 

ママに生活費を渡した。

 

 

 

 

アルカと植物園に行った。

 

「うわあ、ジャングルみたい」

 

なってるバナナも美味しいよ。

 

「なってるバナナを食べちゃダメ!」

 

でも美味しいよ?

 

「でもじゃないよ! 植物園は鑑賞する場所で食べる場所じゃないの!」

 

はい、アーン。

 

「あい」

 

ねっ、美味しいよね。

 

「ナニカは勝手に食べないで!」

 

 

 

 

土木工事にアルバイトに行った。

 

親方に娘と結婚して会社を継がないかと言われた。

 

アルカにダメって言われた。

 

ママに生活費を渡した。

 

 

 

 

「ねえ、重ちゃん。ハンターに就職したのに土木工事しかしないの?」

 

え?

 

ハーヴェストは土木工事が得意なのに態々狩りなんてしないよ。猪や鹿を狩ってもそんなに高く売れないしね。

 

「猟師さんの話じゃなくて、重ちゃんが合格したハンターのことよ。ねえ、ポンズちゃんのこと覚えてる?」

 

ポンズ?――――――あ!

 

うん! もちろん覚えてるよ。大切な同期で女の子のことを忘れたりしない。

 

僕は情に厚い男だからね!

 

 

 

 

ポンズに連絡してみた。

 

念の習得に苦労をしてるみたいだ。

 

修行に夢中になって連絡をしなかったことを謝られた。寛大な僕は笑って許してあげた。

 

修行が一段落したら試合をしようね、と強引に約束させられた。ハーヴェスト無しでの試合だ。

 

フッ、念の初心者との試合か。

 

ちなみにポンズは格闘技経験はあるの?

 

格闘技は我流だから、狼ぐらいにしか勝つ自信はないって照れ臭そうに言われた。

 

そっか、狼に勝てるのか。

 

──女の子は怖いと思った。

 

 

 

 

「天空闘技場でなら格闘技を体験できて、お金まで稼げるわよ」

 

ママの助言で天空闘技場に行く事にした。

 

 

 

 

「重ちー、絶対に無理はしないでね」

 

心配するアルカを安心させる男臭い笑みを浮かべて、僕はデビュー戦の舞台へと上った。

 

デビュー戦の相手はどこかで見た気がする銀髪の少年だった。

 

「チッ、アンタが相手かよ。まだあのヤベェ魔蟲の攻略法が――あの魔蟲はいねえのか?」

 

魔蟲ってのが、ハーヴェストのことなら試合には出ないよ。今回は僕自身の修行の為に天空闘技場に来たんだ。

 

「ふーん。魔蟲使いのアンタが体術を磨いても時間の無駄だとは思うけど、まっ、別にいいんじゃね」

 

ハーヴェストが居ないと分かると銀髪の少年の緊張感が明らかに弛んだ。

 

ククク、この僕をハーヴェスト頼りの男だと思っているみたいだね。

 

昨日、デビュー戦前の腕試しとしてアルカと相撲をとったんだ。

 

結果は七勝三敗で、僕の圧勝だった。

 

パワーの僕と、技のアルカの対決だった。

 

「剛よく柔を断つ」

 

さあっ、僕のパワーをみせてやるぞ!

 

 

 

 

ボコボコに殴られた。

 

打撃は反則だと思う。

 

アルカに慰められた。

 

銀髪の少年を見て『どこかで見た気がする。気のせいかな?』と、首を傾げていた。

 

 

 

 

ハーヴェストの指示通りに動き、攻撃を避ける事にした。

 

ハーヴェストは、僕の運動能力も考慮して指示を出してくれるから回避は完璧だ。

 

攻撃はどうしようかな?

 

ママからは念を込めた攻撃を非能力者にしちゃダメって言われている。

 

ハーヴェストよ。どうしたらいいの?

 

《硬い石で殴る?》

 

うん、格好悪いからそれは却下。

 

 

 

 

蝶のように舞い、チワワのように殴る。

 

そんな激闘を繰り広げる。

 

 

 

 

天空闘技場の50階前後という激戦区で、僕は着実に格闘経験を積み重ねる。

 

 

 

 

今日は道着姿の少年が相手だ。

 

「押忍! よろしくお願いします!」

 

よし、僕が胸を貸して上げるよ。

 

 

 

 

お互いの攻撃が当たらない。

 

僕の攻撃を躱すとは見込みのある少年だね。

 

観客席に目を向けると、アルカが声を張り上げて応援をしてくれている。

 

「重ちーっ、頑張ってー!」

 

女の子の声援を受けると男子としてやる気が漲ってくる。

 

よし! 今日はアルカに格好良い姿を見せるぞ。

 

念を込めた攻撃が禁止なら、僕は“波紋”を込める!

 

波紋とは念とはまた異なる生命エネルギーだ。不思議なことに、ママは波紋エネルギーを認識できなかったけど、僕は波紋エネルギーを認識して使うことが出来た。

 

たぶん、この波紋が僕の転生特典なのだろう。出会った記憶はないけど、きっと僕を見守ってくれているだろう綺麗で優しい女神様に感謝をしたい。

 

さあっ、ハーヴェストよ。お手軽呼吸法をよろしく!

 

《了解です》

 

──お手軽呼吸法とは横隔膜に外部から衝撃を与えることで、波紋呼吸法をマスターしてなくても波紋を練れる秘技だ。

 

ハーヴェストがズボッと僕のお腹を突いて、身体を流れる血液に波紋を起こし、生命エネルギーを生み出した。

 

「燃えるぞハート! 燃えつきるほどヒート! おおおおおっ、刻むぞ血液のビート! 山吹き色(サンライトイエロー)波紋疾走(オーバドライブ)!!」

 

溢れる生命エネルギーの勢いに任せて、怒涛のラッシュを繰り出す!

 

吹っ飛んだ道着姿の少年はドテンとダウンした。

 

──右足を前にして左足をクロスさせるように合わせ少年に背中を見せて立つ。背中は大きく見せるため両腕は開いておく。

 

「ババーン! お前の敗因はひとつだけだ。それは、僕の前に立ったことだ」

 

ユーウインだ!!

 

 

 

 

ヒョコンと道着姿の少年は立ち上がった。

 

え? と思いながら、僕はある方向へと視線を向けた。

 

視線を向けたそこには、幼い頃、幼稚園のお遊戯会で木の役を演じる僕を応援してくれた大好きなママ。そんな大好きなママと同じ顔で応援してくれている大好きなアルカがいた。

 

 

 

 

全力を振り絞った。

 

「じ、自分の…負けっ……す」

 

道着姿の少年は膝をついた。

 

勝ったのは僕だっ!!

 

 

 

 

「次は自分が勝つっす!!」

 

次も僕が勝つ!!

 

道着姿の少年とは互いにライバルと認め合った。

 

アルカと勝利のお祝いをした!

 

 

 

 

ピエロのおっちゃんに会った。

 

「やあ。こんなとこ(低い階数)で何をしているんだい? そうか、資金集めだね。ここは資金集めには手っ取り早いからね♥」

 

200階以上に上がると選手は念能力者だけらしい。なるほど、念能力者との戦闘経験を積むには良いのか?

 

「うーんどうだろ? 君のハーヴェストとまともにやり合える相手なんてボクしかいないよ。所詮ここはゲームの場所だからね。資金集めだと割り切った方がいいんじゃないかな♣」

 

そっか。200階に上がっちゃうと賞金は出なくなっちゃうし、僕には上がるメリットはあまり無いのかも。いや、念能力は多種多様だもん。強い弱いは兎も角として油断大敵だと思うんだ。

 

「フフ、そうだね。じゃあ、今度、ボクの試合があるから見ときなよ。ここのレベルが分かるからさ♠」

 

ピエロのおっちゃんは微笑ましそうに僕を見ながらそう言った。

 

うん、ありがとう!

 

試合楽しみにしているね!

 

ピエロのおっちゃんは、手をヒラヒラと振りながら去っていった。

 

 

 

 

100階を超えたら自室を貰えた。

 

宿泊代が浮いた。

 

もっと早く上がれば良かった。

 

ベッドは一つしかないけど、アルカは僕と一緒でいいよね?

 

「あい」

 

「勝手に答えないの!」

 

顔を赤くしたアルカが叫んだ。

 

折り畳みベッドを持ち込んだ。

 

 

 

 

自室が出来たから、アルカにミニスカメイド服をプレゼントした。

 

「意味が分かんない!?」

 

ほら、自室だけで着たらアルカの可愛いミニスカメイド服姿を他の男に見られなくて済むからね。

 

「……なるほどそうだね。恥ずかしいミニスカメイド服姿を見られるのは重ちーだけで済むよね。ハァ、もう仕方ないなぁ。せっかく買ったんだし着てあげるね」

 

やったーっ!

 

写真も撮っていいよね!

 

「あい」

 

「だから勝手に答えちゃダメ!」

 

顔を赤くしたアルカが、ネット流出をさせない事を条件に撮影を許可してくれた。

 

 

 

 

ピエロのおっちゃんの試合を観た。

 

対戦相手が分身してた。

 

実体のあるタイプの分身だ。

 

ピエロのおっちゃんが勝ったけど、戦力がいきなり二倍になるんだ。驚異的な念能力だと思う。現にピエロのおっちゃんは片腕を落とされた。

 

ハーヴェストならどう対処する?

 

《集団で囲む》

 

それもそっか。

 

数勝負なら負けないもんね。

 

──戦いは数だよ兄貴!

 

そんな名言がある。

 

この言葉を胸にして、僕はこの過酷な世界を幸せに包まれて生き抜いて見せる。

 

大好きなアルカ。

 

君を必ず幸せにして見せるよ。

 

「しげきよだいすき」

 

「うん、あたしも重ちーが――って先に言わないで!」

 

顔を赤くしたアルカが叫んだ。

 

 

 

 

ピエロのおっちゃんのお見舞いに行ったら、知らないお姉さんが居た。

 

「えぇっ!? アンタを見舞うような奇特な奴がいるのかい!」

 

「酷いなあ。ボクにだってそういう相手ぐらいいるよ。重清君、ごめんね♣ 彼女は口は悪いけど、根は良い子……とは言えないけど、比較的に害は少ない子だから紹介しておくよ。彼女の名前はマチ。腕の良い外科医なんだ。ほら、千切れた腕もこの通り動くように繋げてもらったんだ。モグリの闇医者だけどいざという時は頼りにすると良いよ♥ マチ、そういうわけだから重清君をよろしくね。彼は念獣使いとしては超一流だけど腕っぷしはアレだからね」

 

「アンタにしてはえらく友好的だね。まあ、子供相手だからそんなものか。重清、あたしはマチだ。料金さえ支払ってくれたら依頼は受けるよ」

 

うん、そのときはお願いします。マチ先生!

 

「マチ先生!? いや、間違ってはいない呼び方なんだろうけど、先生呼びはよしとくれよ。背中が痒くなっちまう」

 

うーん。じゃあ、マチお姉さんで!

 

「マチお姉さん――まだマシかな。ピエロのおっちゃんなんて呼ばれるのと比べれば普通だし、それでいいよ」

 

「フフ、ボクはピエロのおっちゃん呼びはフレンドリーで気に入ってるけどね♥ そうだ! マチなら外科のおばちゃ――ヒデブッ!?」

 

「誰がおばちゃんだあッ!!!」

 

失言をしたピエロのおっちゃんが、マチお姉さんにぶん殴られた。

 

ピエロのおっちゃん、女性に失礼なことを言ったらダメだよ。

 

ねえねえ、マチお姉さん!

 

折角だからお昼ご飯を一緒に食べようよ。マチお姉さんともっとお話がしたいな。

 

「ああ、もうそんな時間か。いいよ、一緒に食べに行こうか。お勧めのお店はあるのかい?」

 

うん! 美味しいジャポン料理のお店があるんだ。僕の故郷の料理だよ。

 

「へえ、それはいいね。実はあたしも――」

 

僕達は仲良くお昼ご飯へと向かった。

 

「ボ、ボクも一緒に――ガクッ」

 

ピエロのおっちゃんの弱々しい声が聞こえた気がしたけど、当然ながらマチお姉さんとのお昼ご飯を優先した。

 

 

 

 

マチお姉さんと友達になった。

 

 

 

 

ある日、歩いてたらスカウトされた。

 

「護衛をお願いしたいと考えております。もちろん、プロハンターに相応しい報酬を用意しております」

 

ノストラードファミリーの代理人を名乗るその人は破格の報酬を提示した。

 

うん、とても怪しい。

 

「怪しいと考えて当然でしょう。こうして話している私自身も怪しいと思いますからね。ですが、これは決して貴方様を騙そうとかそういう類の怪しい話ではありません。とても危険な、そう命懸けになる。そういう類の話なのです。プロハンターとして命懸けの依頼、興味はありませんか?」

 

聞きたくないのに強引にその人が話した内容を纏めると――

 

①護衛相手は凄腕の占い師

②護衛役の大半が死ぬと占い結果が出た。

③ファミリーが近々没落すると占い結果が出た。

④ボスが近々狂って我が子を殺すと占い結果が出た。

⑤ボスが半狂乱で凄腕の護衛を探しまくっている。←今ココ。

 

うん。じゃあ、僕は次の試合があるからもう行くね。

 

「お待ち下さい! プロハンターの皆さんには軒並み断られてしまったんです! 藁をも掴む思いで天空闘技場に顔を出したら今年期待のルーキーを見つけたんです! 最低ノルマの一名を連れて帰らないと文字通りに首が飛ぶんです! 人助けだと思ってせめてお屋敷まで来て下さい!」

 

やだよ。

 

そんな死にに行くような護衛なんて受けるわけないじゃん。

 

「お願いします! お嬢様をお助け下さい!」

 

お嬢様…?

 

護衛をする相手は女の子なの?

 

「は? ええ、そうです! お嬢様はもう深窓の令嬢という言葉がピタリと当て嵌まる外見をされた美少女です!」

 

義を見てせざるは勇無きなり。

 

女の子のピンチは助けるべきだと思う。

 

僕は颯爽とお屋敷へと向かった。

 

 

 

凄腕の占い師の女の子――ネオン=ノストラードは我儘な歳上の女の子だった。

 

お付きや護衛の人達に言いたい放題で、暴れたりもする手の掛かる乱暴な女の子だ。

 

はっきり言ってショックだった。

 

僕が接してきた女の子は優しい子ばかりだったからだ。今も目の前で喚き散らしている女の子の姿に悲しくなってきた。

 

──絨毯の敷かれた床にゴロンと寝転ぶ。両手両足をジタバタと感情の赴くままに振り回した。

 

「ヤダヤダヤダヤダ!!女の子はもっと優しいんだ!!思いやりがあって家庭的で僕の面倒を見てくれるんだ!!いい匂いがして触ると温かくて柔らかくて気持ちいいんだ!!悪いことをしたらメッて優しく叱ってくれて良いことをしたらにっこり笑って撫ででくれるんだ!!一緒に遊んだら楽しくて一緒にいるだけで幸せな気分になるんだ!!女の子はフワフワな綿菓子で出来てるんだ!!僕が寂しくなったら何も言わずにそっと寄り添ってくれてお腹が空いたら美味しい手料理を――」

 

「えと、その、あのね。あたしが女の子だから分かるけど、女の子だからって理由だけで、そんな男の子の理想の塊を求められても困っちゃうっていうか。要するにそんな女の子は現実にはいないよ?」

 

恐る恐るといった感じで、ネオンお姉さんが酷いことを言った。

 

僕はギャン泣きした。

 

 

 

 

「――うんうん。ごめんね。お姉さんが悪かったね。女の子は優しい生き物だから安心してね。ほら、お姉さんも同じ女の子っていう生き物だから分かるんだよ。男の子の理想の塊は空想の生き物じゃなくて、現実の生き物だからね。はい、もう泣かないの。重くんは男の子だよね。男の子は強いんだよ。泣いてたら笑われちゃうよ。笑われちゃうぐらいなら、お姉さんと一緒に笑おう。一緒に笑ったら楽しいよ。笑ったら甘いものを食べようか。お姉さんね、甘いケーキを持ってるんだよ。えへへ、笑ってくれた。うん、重くんが笑ってくれたからお姉さんも嬉しくて笑ったんだ。ねっ、一緒に笑ったら楽しいでしょ」

 

 

 

 

ネオンお姉さんと友達になった。

 

 

 

 

ネオンお姉さんを連れて天空闘技場に戻った。

 

ちょっぴり格好悪いとこを見せてしまったネオンお姉さんに、僕が格好良く勝利する姿を見せる為だ。

 

僕の引き立て役になる対戦相手は──

 

 

 

 

ライバルのズシと、死闘と呼べるほどに激しい戦いを繰り広げた。

 

男と男の意地の張り合いだ。

 

ハーヴェストの助言は無しにした。

 

僕だけの力で、ネオンお姉さんに勝利をプレゼントをするんだ。

 

──後に、世紀の泥試合と謳われる事になるズシとの死闘は、ダブルノックアウトという結末を迎えた。

 

 

 

 

ネオンお姉さんとアルカ、そこにオマケしてズシを加えて食事会をした。本当は勝利の祝勝会をする予定だったんだ。

 

次こそは、ズシに快勝して祝勝会をしよう。

 

「違うっすよ。前回は負けて今回は引き分け。つまり、着々と実力を上げてる自分が、三度目の正直で勝つパターンっすね」

 

ウヌヌ、歳下のクセに生意気だ。

 

「勝負の世界に年齢の差は関係ないっす」

 

それなら大食い勝負だ!

 

「元々の食べれる量が違いすぎるっすよ!? 歳上のくせに大人気ないっす!」

 

男相手に大人気など必要ない!

 

「本気で大人気ないっす!」

 

わちゃわちゃと言い争う僕らを、ネオンお姉さんとアルカはクスクスと笑いながら見ていた。

 

 

 

 

翌日、ポンズから連絡がきた。

 

『今なら熊でも締め殺せそうよ! 早く試合をしたいわ!』

 

弾んだ声でそう言った。

 

──女の子は優しくて、怖い生き物だと思った。

 

 

 

 

 




気分転換が続きました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。