なのであきつ丸は初恋ではないです。安心だね!!!!(?)
「アイツは……能力者だ」
キッドが、キラーの鎖を掴む男を憎らしげに睨みつける。
能力者は、大物キャラ以外にも、何かと存在する。テキトーなモブでも、「割とそれ強ない?」って実を食べてたりする。
悪魔の実は効果こそ千差万別だが、基本的に攻撃特化だ。この荒い時勢がそうしているのかもしれないが、持つ者持たない者の差を大きくしている要因のひとつでもあるだろう。
戦闘に慣れているキッドでも、大人の、能力の使い方をわかっている大人には苦戦するだろうな。能力バトルは練度と拡大度がものを言う。
俺は秋茜を納刀し、改めて戦闘の構えをとった。が、キッドが徐に前に出る。
「アイツはおれにやらせろ……負けたままじゃ終われねェ」
「……危険と判断したら割り込むであります」
「いらねェよ」
キラーが静止の叫びを上げるものの、キッドのリベンジ精神は燃え滾っている。俺は構を解き、見に回る。
いつでも飛び出せる気構えではあるが、キッドの怒りを少しでも発散させた方が良さそうだ。
拘束され、見ているだけのキラーは気が気じゃないだろうが、ここは待っていてもらう。
「テメェらがウチの島を荒らしてる連中か。牢に入れたはずのガキもいるな」
「キラーを離せ! おれはテメェをぶっ潰す!!」
「この“鉄錆のラスト”サマに勝てるたぁ思えんがね。誰にこの島に連れてこられたんだっけなぁ??」
ラストと名乗った男は、キラーの鎖を屋敷の塀に縛りつけると、石製のメイスを構えた。
なるほど、あのメイスは持ち手の部分こそ違うが、先端なんかは海楼石となっている。スモーカーの十手のように、能力者でありながら海楼石も使う厄介な相手。
並の能力者なら、厄介ではあるが……十手の様に拘束するのは難しい形。攻め方を考えれば攻略できるはずだ。
ラストは、下卑た笑いを上げ、メイスを軽く振る。
「無様で見ものだったぜェ。オレサマにボコボコにされるお前の姿はよォ!!」
「テメェ……!」
「キッド! ダメだ、お前じゃ勝てない!!」
「黙ってろキラー!! コイツはおれ達の敵だ! 敵に背を向けてたまるかよ!!」
左腕に大量の金属を纏わせたキッドが、ラストに殴りかかる。
メイスで防がれるものの、鉄クズに守られた事で海楼石は体には触れていない。能力はまだ、無効にされていない。
そのまま勢いを殺さず押し切ろうとしたキッドだったが、纏った金属が嫌な音を立て始める。
それは潰れるような重い音でも、切られるような高い金属音でもなかった。
ただ、溶けるような、高速で劣化するような泡の弾ける音が、鉄たちに侵食する。
「バカの一つ覚えがよォ!! オレサマの“サビサビの実”とテメェの鉄の拳は相性最悪ってわかってんのかァ!??」
え? サビサビの実って別の海兵さんが使ってなかったっけ。雪走がボロボロになっちゃったやつ。
いや、まだそれまで時間があるから、前の持ち主か。
確かに、鉄を主に利用するジキジキの実で、鉄を錆溶かすサビサビの実は有利を取りづらいだろうな。
本来あるはずの金属によるメリットが、ほぼ無くなってしまう。
錆溶かされて装甲がなくなったところに、海楼石の武器を振るわけて負けたか。大人と子供で膂力にも差があるし、かなり不利だな。
錆びさせても追いつかないくらい鉄を引っ付けられれば良いが、まだそれほどキッドは力を得ていない。
キッドは凶眼をラストに向けつつも、苦しい表情だ。
鉄の全てが溶かされる前に一度大きく距離を取ったが、遠距離攻撃のために残りの鉄を使うと左腕の武装が甘くなる。
再度鉄を集めるにはタメが必要だが、果たしてあの男がそれを許すかどうか……。
「チィ!!」
「大人しく牢に戻れ。そしたら、特別に命だけは助けてやるよ……お前だけは、な」
「キッド殿」
「手ェ出すな! これはおれの戦いだ!!」
うーん、完全に頭に血が昇っておる。
まだ傷は負ってないものの、メイスって普通に頭骨とか砕けるからなぁ。まだ幼少期なのも相まって心配ね。
が、ここで下手に手を出すとキッドのプライドを傷つけることになる。それはよろしくない。
戦闘が再開される。
キッドはヒットアンドアウェイ。両腕に鉄屑を分散させ、両腕によるラッシュで錆びさせるための時間を最小限に抑えるつもりのようだ。
ただ、相手もメイスや腕でそれを凌いでいる。どちらが先に消耗するかと言われると、じわじわと錆が進んでいるキッドだろう。
キッドとキラーの友情は固い。
ワノ国編のスマイル事件はなかなかにショッキングで悲惨に感じたな。それでもキラーを笑う奴をぶん殴ってくキッドがまたカッコいいんだ。
まだ幼い中でも、そんな結束が存在しているのは、ファンとしてはとても好感情。
故に、彼らはここで終わってはならない。
最悪の世代、11人の超新星、懸賞金30億。
そんな存在に、登り詰めるのを見てみたい。
「グゥッ!?」
「脇が甘ェんだよ!! ホラホラ、またあの時の二の舞か? ガラクタ遊びはもう卒業しろよ」
「ッまだまだァ!!」
「しつけぇな!! オレサマも暇じゃねぇんだよクソガキ!!」
キッドが押され始めた。
主人公や、過去編が一気に章として公開されたローと違い、キッドは情報量が少ない部分もある。
しかし、その断片からでも、コイツが執念深く、また仲間への侮辱には一気に怒髪天をつくほど仲間意識が強いのも知っている。
メイスが振るわれる。重く鈍い音と、骨の何本かが逝った軽い音が同時に響いた。
それでも、キッドは立ち上がる。
血を流しながらも敵を睨む様は、真っ赤な髪も相まって怒り狂う鬼の如き圧があった。
錆の臭いが、血の鉄臭さと混ざって戦場をより激しく昂らせていく。
「おれは忘れねぇ。親友にやった事も、味わわされた屈辱も」
「だからなんだ。所詮はガキの戦争ごっ──グァ!?!?」
「それは、キラーも同じだ」
ラストの横っ腹に、刃が貫通する。
それは俺の秋茜ではなく、当然ミホークの剣でも無い。
湾曲した、鈍い光を放つそれは、間違いなく鎌だった。
「ナイス、キラー」
「このくらい、安いものだ。キッド」
「なっ……!! お前は、お前は、鎖に繋いでいた筈ッ……!!」
キッドの連打は鍛えが足りなくても、かなりの速さと手数を持っていた。
そして、錆びながらも鋭利に纏った金属は、一つ一つが大怪我になる脅威。
ラストのメイスも、流石に防御へと意識が向かう。コイツは、傷を恐れるタイプだ。肉を切らせて骨を断つという戦法を避け、守れる攻撃には守備に徹する。
ラストはキッドの乱撃に対応できていたが、あまりにも、視野がそれに集中し過ぎていたのだ。
「マスターキーはこの手の中に。手を出さないから、意識から外して良いとは脇が甘いでありますな」
俺が気配を消し、キラーの拘束を解いた。
俺が手を出すとダメなら、キッドのプライドを傷つけない相手を向かわせれば良い。
別に戦えとは命令してない。鍵を解いたら、真っ先にキッドへ援護に向かって行ったよ。いやぁ美しい信頼関係、10点!
ラストは、突然の大ダメージに動揺を隠せていない。
あーいうタイプは傷を負った時に大きくぐらつく。しかも傷を負わせたのはさっきまで手綱を握っていたガキだ。心身共にショックはデカいだろう。
メイスを持つ手が緩んだところを、キラーは更に弾き、武器を遠くへ飛ばす。
「が、あ、あ」
「サビの力は確かに厄介だな」
「っ、まだオレサマは……!!」
「でもお前は知らなかったみたいだな?」
キッドが、その人相の悪さを存分に活用して恫喝的な笑みを浮かべた。
「錆びた鉄が刺さると……死ぬほど痛ェらしいぜ」
錆びつつもまだ鋭さを帯びた鉄拳が、叫びを上げさせる隙もなく、男の顔面に突き刺さった。
錆によって脆くなったパーツたちが、ラストの顔面に深く抉り込み、そのまま折れていく。
見てるこっちとしては、かなりエグい。
下手な真剣より、錆びた刃で斬られる方が痛いってのは、よく知る話。
達人の剣は、時に斬られたことさえ忘れさせる幻の一太刀。
泥臭く散らばる劣化した金属の断片は、それとは程遠く、ただ刻まれた破壊の跡の分だけ痛みを与える。
喰らいたくねぇーなー、あの技……。
倒れ伏したラスト。勝敗は確定し、流血を負いながらも、キッドの勝利となった。
「お疲れ様であります。キッド殿」
「……おう」
「怪我は酷いが、リベンジマッチは成功したな。……で、この二人は一体誰なんだ?」
助かったが、とキラーが首を傾げる。
まだメカクレ状態のキラー、改めて見ると新鮮だな〜。
「ラストを倒したようだな……」
「だが奴は能力者四天王のなかでは最弱……」
「門番真打はおれ達よ……」
「今忙しいであります。散れ」
「ぎゃああああああ!?!?」
何やらまた増援が来たが、今はそういうのに付き合ってる暇がないので一閃でまとめて黙らせておく。
残念ながらお前らの出る幕はとっくに降りている。
「えっ……と……??」
「詳しいことは道中話すであります。拠点へ侵入しますが、キッド殿、傷は」
「こんくらいならまだ戦える」
「なら良し。では、敵本陣へ突撃であります!!」
「キッド、どうなってるんだ」
「おれとしても、まだ完全に整理はできてない……」
困惑のキラーを一旦置いて、ギャングのアジトに突入だ!!
陸軍じゃコラァ!! はよ開けんかい!!
「ようやく終わったか」
「どこからワインをだして……??」
この間一言も喋らなかったミホークは、いつの間にか椅子に座ってワインを楽しんでいた。
本当にどこから持ってきた。