「海賊たちの噂になってしまったからには仕方ない。引っ越しするでありますな」
“船沈メ”とかいう艦船的に褒められてるのか貶されてるのかわからない二つ名を貰ってしまったことで、この島に居続けるのは危険だと判断した。
ビークのような海賊なら斬り捨てるなりして沈めればいいのだが、海軍やらが来たらめんどくさいことこの上ない。海軍関連は基本めんどくさいのだ。勧誘とかされても入る気無いし、ぶっちゃけミホークという少年を誘拐した判定でお縄になるかもしれん。
今の海軍が孤児誘拐なんかに対応しているのかは知らないが、とにかく面倒なことに変わりはない。一応海賊しか沈めてないけど、海軍に逆らったから指名手配! とかもありえるわけだしな〜。いやだいやだ。
ということで、引っ越しをします。
目指すはこの島から少し離れたところにあるそこそこ栄えた街のある島。島の半分が街で、もう半分は未開拓の山々といういい感じの立地である。山には獣も居るようだし、サバイバル技術を教えるのも良さそうだ。
距離的にはここから21ktで10時間ほど。流石に抱き上げて移動するには無理がある時間がかかるので、ミホークには小舟に乗ってもらいそれを曳航する形にした。
家は食料を除いて丸ごと置いていく。まぁ使う人はいないだろうが。
「忘れ物はないでありますなー?」
「無い」
「じゃ、行くでありますよ〜」
燃料はここ数年でコツコツ貯めたこともあり余裕がある。最高速度で行ってしまおうじゃないか。
途中海賊に遭った時は、なるべく避けるか一刀で斬って終わらせることにした。砲撃は衝撃で小舟が転覆しかねないし、艦載機では即効性に欠ける。
爆撃機を積めればまた違っただろうけど、あきつ丸は戦闘機しか積めないんだよな〜。無い物ねだりしてもしょうがないや。
カ号で索敵はしつつ、海を滑走する。子どもの乗った小舟程度を曳航するくらいわけはない。速度を落とすことなくひたすら海原を進んでいく。
「……」
「……」
無言。
ミホークは元々おしゃべりでは無いし、俺自身もなにか話題があるわけじゃ無いから、無言。
気まずい。
ミホークは暇だろう。小舟だから素振りだなんだもできないし、辺りは海の青と空の青があるばかりで、物珍しい景色など何も無いからだ。
本でも持ってくればよかっただろうか。俺は艦船としての本能なのか、海を進んでいるだけで楽しいので本やら娯楽は持ってきていなかった。
「……ミホーク殿は……自分を不審に思わないのでありますか?」
「思う理由がない」
「いやいや、燃料で動く所とか、こうして海を渡れる所とか、色々あるでありましょう? こう、ツッコミ所というか」
「師匠は師匠だ」
「……ミホーク殿の警戒心が心配になってきたのであります」
剣が強ければ誰にでもついて行くんじゃないか、この子。お姉さん心配よ。
そもそも全身黒ずくめの俺についてきてる時点で相当アレよ? そんな彼をあと一年程度で放流する予定なんですけど、心配にさせるようなこと言わないでほしい。
俺の母性が……暴れてしまう……!
「そういえば、なんで師匠はおれに『殿』を付ける?」
「口癖みたいなものでありますなぁ」
「普通師匠は弟子を殿付けで呼ばないと思う」
「んー……こればっかりは、直すのは無理でありますな」
あきつ丸は提督に「殿」を付けて呼ぶ。それの真似をしているわけだが、あきつ丸が他の艦船……所謂同僚をなんて呼ぶかは知らない。スピンオフでは描写されていたかもしれないが、俺は基本ゲームしかやってなかったので。
それに原作キャラを呼び捨てするのもなんか畏れ多いし……。ミホークなんて原作登場時点で俺より年上だったから、余計に。ショタより成人のイメージが強いのである。未だに。
そうしてまた無言に戻った。沈黙が辺りを支配する。聞こえるのは波の音だけだ。
「グランドラインにしてはいい天気でありますなぁ……」
「ああ」
天気デッキに手を出すに至ってしまった。話題が無さ過ぎる。
でもいい天気なのは確かで……晴天と思ったら突然豪雨だとか、槍が降るとか、波がウサギになるとか、そういうのがよくあるグランドラインにしては本当にいい快晴なのだ。波も落ち着いている。
「こんな日には、のんびり魚釣りでもしたいであります」
「師匠は魚が好きなのか」
「焼き鮭や秋刀魚が好きでありますなぁ」
ワノ国から出るとそういう魚はとんと見なくなる。鮭はともかく、秋刀魚は見ない。鮭もサーモン扱いで焼くより刺身やソテーだし、ザ・和風な焼き鮭はそうそう無かった。
白米もあるにはあるが、やはりワノ国の米の方が美味い。水の質とか品種が影響しているのだろうか。
味噌汁に至っては本当に無い。そもそも味噌自体幻か? ってくらい無い。ワノ国特有の調味料扱いなのかもしれない。
だから、白米焼き鮭味噌汁という黄金定食セットはワノ国でしか食べられない。秋刀魚を焼いて大根おろしで食べるのも無い。
肉より魚派の俺にとっては、なかなか惜しい事態だ。だからといって味噌や醤油を自作するなんてことはできない。俺は人間時代も出来合いの出汁や味噌に頼りまくっていた自炊テキトー人間……。
「秋刀魚?」
「刀のように細い体を持った魚であります。焼くのが美味しい」
「刀みたいに切れるのか?」
「いや……比喩でありますよ。いつか食べられると良いでありますね」
ワインには合わないだろうけどな。あれは日本酒だ。
あきつ丸の体になってから酒に酔うことが無くなったので、あまり酒に興味がなくなった。どれだけ飲んでも素面と変わらないというか……。だからどちらかと言えば普通に甘いジュースの方が好きだ。ワノ国では抹茶や緑茶ばかり飲んでいた。
ミホークはワノ国に行けるのだろうか? 例の飛ぶ斬撃による移動法であの滝くらい簡単に突破できそうだが。
流石に連れて行くことはできないので、一人旅の時に頑張ってほしい。
あー、秋刀魚定食食べたい。
「ワノ国という場所で食べられるのでありますが、あそこは鎖国国家。行くのは難しいでありますな」
「師匠は行ったのか?」
「数年過ごしていたであります。刀を教えてもらったり」
「師匠にも師匠がいた?」
「うーん……師匠、というより勝手に勝負を挑んできたというか……なんというか……」
おでんを師匠とは認めたく無い。
「いつか戦ってみたい」
「……応援してるであります」
無理だよ。とは言えなかった。おでんは今はまだ九里で大名をしているはず。そして白ひげ、ロジャーの船に乗り、国に戻って死ぬ。
俺もきっと、最期には立ち会えないだろうなぁ……。仇は麦わらと連合軍が取ってくれるだろうから、平和になったワノ国に花を捧げに行くくらいにしようかな。うん、カイドウと会いたくない。
「ワノ国には侍という剣士がおりましてな、自分のような刀を使って、主人や家族を守るのであります」
「サムライ……」
「特に九里という領の侍は強い! なんせそこを統べる大名が九里の荒くれ者をその力でまとめ上げ、一つの領地として国王に認めさせたのでありますからな」
「へぇ」
「自分はそれを眺めておりましたが、まぁ見事な戦いぶりでありました。まぁ破天荒なところは玉に瑕でありましたが」
「ふぅん」
つい懐かしくなってペラペラと喋ってしまった。思い出語りは得てして長くなるものだが、聞いていて面白いものでもないだろう。
実際、ミホークはなんだか拗ねたような顔をしている。
「……まぁ、そのワノ国にも8歳で自分に傷をつけられるような者はいませんでしたから、師匠として成長速度に驚いたでありますよ」
「! ……そうか」
慌てて褒めれば、途端に機嫌を良くする。そのチョロさが可愛くて、俺の中の
やめろー! 俺はTSしたがメス堕ちはしないんだ!
「師匠から見ても、おれは凄いのか」
「え、ええ。ミホーク殿の一撃で自分の血を初めて見たでありますし、まさか一晩で森の獣を狩り尽くしてくるとは思わなかったでありますし……その成長にはいつも驚くばかりであります」
「……ふふ」
あー! 困りますお客様! かわいさを安売りされては困ります! あー!
あきつ丸(仮)の技名:あきつ丸が所属していた部隊「暁部隊」+「暁の水平線に勝利を刻みなさい!」+「駆逐艦暁」の三重
あきつ丸(仮)がミホークに向ける感情:前方腕組み師匠面+母性(ギリギリ耐えている)+ワンピ読者としてのファン心
ミホークがあきつ丸(仮)に向ける感情:前方腕組み弟子面+後方「初めての男」面+???