あきつ丸(仮)が往く!大海賊時代特殊任務!   作:月日は花客

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14:あきつ丸、放流スル!

 

 ミホークが10歳になった。

 街のある島に移り住み、森の中で家を作らずサバイバル生活をさせた。この先野宿なんて当たり前にあるだろう。

 正しい飲み水の確保の仕方、食べてはいけないキノコ、野営の準備……。街の本屋で買ったサバイバルの本を熟読させ、実践させた。

 こういった生存方法はこの過酷な世界では需要があるのか、コーナーとして確立されるほどに本屋に並べられていたのだ。

 読めない文字は教えてやりつつ、基本はミホークに全て任せた。艦娘は燃料さえあれば最悪飲み水も食事も要らないので、サバイバルしないと死ぬのはミホークのみである。

 俺は変わらず近海の海賊を狩りまくり、金品や食料をぶんどっては船を沈めた。

 街がある島なので、商業船や連絡船の類もあったが、それらを狙う海賊は当然いる。というわけで、護衛ではないがなんとなく一般の船を襲う海賊を潰していたら、街の英雄のように扱われるようになった。

 山暮らしなので早々街には降りてこないのだが、降りてくれば食べ物の差し入れを貰ったり、握手を求められたりした。

 

 この島は政府非加盟国の領土なので、海軍はそうそう助けてくれない。海賊の搾取には苦しめられていたそうで。

 俺が来てからはそういう被害がとんとなくなったため、察されたようだ。

 俺が街に降りるのは、ミホークへのサバイバル本を買いに行ったりとか、手合わせで当てた傷を治すために包帯なんかを買いに行くためだ。

 ミホークの修行はさらに実戦形式を深くし、こちらも当てられるなら当てて行くし、足も使う。致命傷や部位切断までは流石にしないものの、ミホークは生傷が絶えなくなった。

 今日も丸一日の手合わせで頭や腕のあちこちに切り傷をこさえている。

 俺とて鬼ではないので、ちゃんと手当てはする。消毒して、包帯を巻いて、ガーゼを貼って。成長痛なのか夜に骨が痛むらしいので、湿布も用意した。

 最終的には自分の手当てを自分でできるようにさせる予定だ。

 

「おお、黒の姉ちゃん! 今日も包帯を買って行くのかい」

「はい、消毒液の追加もお願いするであります」

「子どもに稽古をつけてるんだろ? その歳で剣の達人なんて、すげぇなぁ」

 

 この人は行きつけの薬局の店主である。

 乗っていた連絡船が海賊に襲われているのを俺が斬って助けてから、こうして格安で医療品を売ってくれる。

 

「弟子は自分より才能があるであります。追い越されるのも時間の問題でしょう」

「そりゃ凄い! ほら、包帯と消毒液だ。修行頑張れよ!」

 

 剣術は、もう殆ど教える事はない。強いて言うなら、いずれ持つ黒刀「夜」のような大太刀の使い方を教えるくらいだろうか? だが、ミホークと夜の出会いがわからないため下手に教えられない。俺大太刀とか使った事ないし。

 あとはサバイバル技術なり航海術なり生き残る術を教えて、適当な島に放り投げよう。

 そもそも5億の海賊を一刀のもと斬り捨てるくらいには強くなっているのだから、あとは自力で覇気を練るなり技を磨くなりすれば良い。

 

「ミホーク殿、手当の時間でありますよ〜」

「ああ……」

 

 ミホークは息を切らして簡易キャンプに寝転がっていた。手合わせの疲れがまだ取れていないらしい。無理もない、まだ10歳の子どもが艦娘相手に数時間剣の相手をするのだ。完成してない体、未熟な体力では流石のミホークといえど疲労困憊になる。

 俺としても砲や艦載機を使わずにだが、8割くらい本気で切り結んでいる。当てられる敵意や殺意に気疲れするのもあるだろう。

 

「ちゃんと見てるでありますよ、最終的には自分でやれるようにならなきゃいけないでありますからな」

「わかってる」

 

 切り傷に消毒液を染み込ませた綿を当てると、反射でミホークの身体がビクリと動いた。構わず土汚れ、固まり始めた余分な血液を拭き取り、包帯を巻く。

 昨日や一昨日つけた傷は包帯を新しいものに変え、ガーゼも取り換える。

 今のミホークは包帯やガーゼにまみれている。大きな痕になる傷は作っていないので、安心して欲しい。あと、なるべく背中にも切り付けないようにしている。

 背中の傷は剣士の恥という名言が頭に張り付いているので、つい憚られてしまう。

 まぁその分斬らずに蹴ったりしているが。

 背中からの攻撃が来ないと判断されては困るのでね。

 

「はい、終わり。ところで大事な話があるであります」

「……? なんだ」

「あと一年でミホーク殿、貴方を武者修行に出すであります」

 

 武者修行、と聞いてミホークは首を傾げた。今の状況と何が変わるのかわからないのだろう。

 俺はミホークに火の準備をさせながら、概要を説明する。

 

「今までミホーク殿は自分しか相手にしていなかったであります。基礎を固める時は別にそれでも良かったでしょう。ですが、こうして剣が形になってきた今、相手が一人というのは変な癖や隙ができる原因となります。様々な武器! 様々な技! 自分から離れて、一度世界を見てくるのであります」

「つまり……師匠と別れ、一人で旅をしろと」

「サバイバル技術や航海術を学ばせているのはこのためであります。ミホーク殿……貴方の剣術は、既にグランドラインで通用しうる」

 

 ミホークがごくりと唾を飲み込んだ。

 

「あと一年……あと一年で、この海で生きて行くための術を叩き込むであります。武者修行の果てに待つのは、更なる成長を遂げた己でありましょう」

「……師匠は、その間何をするんだ」

「自分も未だ発展途上の身。海を渡りながら人と関わり、戦い、技を磨くであります」

 

 まだ覇気とか超使いこなせる! ってわけじゃないからね。特に覇気を艤装に纏わせるのがむずい。未だに成功していない。

 やはりワンピース世界の力と艦これの力で噛み合いがうまく行っていないのだろうか?

 

「一人で生きられるようになるであります。一人で戦えるようになるであります。自分が納得するまで鍛えて鍛えて、そしたら会いにくるでありますよ」

「わかった。──そのためにも、教えてくれ。生きるための“術”を」

 

 俺は笑った。

 あと一年でこの重荷は降りると。

 

 *

 

「ついに……でありますな」

「ああ」

 

 俺は海上に浮かび、ミホークは船に乗っていた。

 あれから一年。ひたすらグランドラインで生き残り航海するための知識を叩き込み、こうして船出の時を迎えた。

 海賊ではなく旅のものとして、ミホークはジョリーロジャーが掲げられていない船に乗っている。この船は街の造船所が善意で作ってくれた特製の船で、小さいなりに機能が充実したものになっている。

 街の連絡船を助けてて良かった。船を作るとなるとなかなか費用が必要になるから、そこを心配していたのだ。

 親切は返ってくるものである。

 

「それじゃあ、元気で。死ぬんじゃないでありますよ」

「ああ。次、会った時は……本気で戦ってくれ」

「それに見合う男になっていたら、でありますよ」

 

 そんな軽口を交わし、俺とミホークは反対方向に舵を切った。

 ミホークは武者修行に、俺はまた流れの艦娘に。

 次会う時、彼がどれだけ強くなっているか、そしてそれに己が追いつけるのかは……現実逃避で考えないことにした。王下七武海になってたらどうしよう。

 これは自分も修行が欠かせないぞ、と背中から感じる慣れた気配に気を引き締めた。

 

 *

 

 ここら辺は政府非加盟国が多いようだ。

 この土地も、なにやら殺気立っている。

 ミホークと別れた島からおおよそ三日分離れた島。そこでは武器を持った男たちが街中を練り歩いていた。

 

「天竜人を探せェ〜!!」

「おれたちの苦しみを味わわせろ〜!!」

 

 騒がしい、火薬の匂いと鉛の匂いが濃い。ハズレの島だ。いや、前の島が政府非加盟国領土にしては平和過ぎたのか。

 こういう島を見ると、世界の汚いところを見ている気分で気が滅入る。

 

「はぁっ、はぁっ兄上……!」

「走れロシィ! 走るんだえ!」

 

 金髪の子どもが走ってくる。その顔に、俺は覚えがあった。

 

「ちょっと失礼」

「なっ!? 離せ! 離せ!」

「兄上ェ〜!!」

 

 走ってきた子どもを二人とも外套の中に隠した。暴れるので太ももで押さえつける。

 

「おい、そこのお前!」

「ひっ!!」

「静かに」

「こっちに金髪の子どもが来なかったか!? あいつら天竜人なんだ! 見つけたら殺してやる!」

「天竜人かは知りませんが、あっちの方に子どもが走って行くのは見たであります。二人組でした?」

「ああ、それだ! ありがとよ!」

 

 武器を持った大人たちが走り去って行く。

 しばらく待って、俺は子ども二人を解放した。

 子どもたちは俺の足の中で必死に抵抗していた。噛んだり、どこから持ち出したのか刃物で斬りかかったり。全て艦娘の肌の前では無駄に終わったが。

 

「さ、追手は行ったでありますよ」

「あ、ありがとう……」

「ロシィ! 離れるえ! コイツもきっと他と同じ……!」

「子どもを好き好んで痛めつけるほど人間性終わってないのでありますな」

 

 ほら、と背嚢からリンゴを取り出す。警戒心の薄そうな目の隠れた少年……ロシィの方に差し出せば、素直に受け取ってくれた。

 

「下民からの施しは受けないえ!」

「お腹空いてないのでありますか?」

 

 ぐぎゅるるるる、とちょうどいいタイミングでサングラスをかけた子どもの腹がなった。

 俺は背嚢からもう一個のリンゴを取り出す。

 

「別に取って食ったりしないでありますよ。遠慮なく持って行くであります」

「…………」

 

 サングラスの子どもは迷いに迷って、奪うように俺からリンゴを受け取った。

 

「明日もここにいるでありますよ」

「行くぞロシィ! ここにずっといたらまた見つかるえ!」

「あ、う、うん……」

 

 路地裏へ駆けていく子どもたち。俺はその背中を見送ったあと、ため息を吐いた。

 

 ドフラミンゴとロシナンテかよ……。

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