(今日はみんな釣りをしているね)
(食料も集められて暇も潰せる。一石二鳥でありますな)
(魚っていうのは美味しいんだろう? ぼくも食べてみたかったよ)
(そうでありますなぁ、今度食レポでもしてあげましょうか)
煙草を吸いながら、ボーッとモビーと会話する。モビーは随分愛されている船なようで自分が出会ってきた船の中で一番はっきりと意思疎通ができた。
船員たちを見守り、眺め、海に揺られる。
船としての生を謳歌しているようだ。
俺は人になった船として、モビーにいろんなことを聞かせた。
いつかの自分は輸送作戦に参加し、多くの物資や人材を運んだこと。
輸送にはたくさんの護衛艦がつき、時に戦いながら戦を乗り切ろうとしたこと。
今は自力で戦えることが嬉しいこと。
自分の中の「船の感情」というものを引っ張り出して話せば、モビーは喜んでそれを聞いてくれる。
(自分もいつか、ひとりで白ひげ海賊団のみんなを守れるようになりたい)
(……白ひげ海賊団は、それを良しとはしないでしょう)
(うん、きっとみんなで戦ってくれるよ)
ぷわぷわと輪っかの煙を作って遊びながら、俺は甲板の隅で黙っている。
雰囲気的に近寄りづらいのか、船員たちの多くはチラチラ見てくるだけで話しかけてはこない。
同盟相手とはいえ数多の海賊を沈めてきた実績のある俺だ。怖がられるのもわけないか。
モビーとずっと話しているのも良いが、船員とコミュニケーションを一切取らないというのも問題だろう。
俺は煙草の灰を海に捨てつつ、辺りを見回した。
甲板を磨いている知らない船員が数名。なにやら話し込んでいるビスタとジョズ。釣りを楽しんでいるマルコとサッチ。
俺はマルコのところに歩いて行った。
「釣果はどうでありますか」
「ん? いい感じだよい。サッチはもっと釣れってうるさいけどな」
「十匹程度で足りるかよ。うちの船員がどんだけ食べると思ってんだ」
バケツの中を見れば、そこそこ大きな魚がみっちり詰まっていた。しかしこの船全員の腹を満たすには到底足りないだろう。
「何匹くらい欲しいのでありますか?」
「最低でも30。50あればおかわりが作れる」
「ちょっと失礼」
俺は甲板から飛び降り海の上に立つ。サッチが何か言っているが、よく聞こえない。
俺は艤装を展開して、ソナーを発動させる。対潜とかじゃない、漁のために使うソナーだ。
魚群を探知すると、艤装から網を発射。砲撃でダイナマイト漁的なものをしてもいいかと思ったが、派手なので却下した。
これはいわゆる艦これのイベント内であったサンマ漁のあれである。あきつ丸は限定立ち絵があるが、その要領で艤装を少し変えてみた。
だから魚群探知のソナーが付けられているし、投網もある。
網を引き寄せれば、20ほどの魚が網の中にぎっちり詰まっていた。上々だ。
それを持ったまま甲板に戻ると、サッチに「すげぇなぁお前!!」と叫ばれた。
「漁にはちょっと経験があるのであります」
「どうやったんだよい?」
「海中の魚群を探知して、そこに網を投げるだけであります」
「魚群を……探知……?」
「仕組みは企業秘密ということで」
魚群探知機の仕組みなんて俺が知ってるわけないだろ。装備として使えるから使ってるだけだ。
無事に今夜の夕食が魚料理に決定したらしいので、モビーに食レポしてやろう。船にもわかるように言葉を選ぶのが難しいが、賢いモビーならきっとわかってくれるはず。
「正直ちょっと怖かったんだが、なんだ、いい奴じゃねぇか!」
「親父が認めたんだ、そりゃいい奴だろ」
「皆白ひげ殿が大好きなのでありますね」
そう言えば、マルコたちは笑顔で「当たり前よ!」と叫んだ。後ろで白ひげが気分良さそうに酒を飲んでいるのが見える。
(いい船でありますなぁ、モビー殿)
(そうさ、これが白ひげ海賊団なんだ)
モビーもたくさん愛されて、愛されたからクラバウターマンが宿ったのだろう。
船が楽しそうな場所は好きだ。造船所とか、港は楽しい。
意外と連絡船や商業船にもクラバウターマンは宿っていることがあって、主人の帰りを待つ声や新しい港を楽しむ感情が流れてくるから、居心地が良い。
クラバウターマンが宿っていると言っても、みんながみんな話せるわけじゃないのだが……港で話せる船を見つけて、なんとなく雑談に興じるのも良いものだ。
ミホークと修行していた島の街にある造船所は、なんだか安心感があった。船が造られる場所だからだろうか。
なんだろ、お母さんが赤ちゃんを抱いてるみたいな光景を見た時に浮かぶあったかい感情が湧き出るのだ。
「お前らー! 6時の方向に敵襲! 戦闘準備!」
ガランガランと金物を鳴らす音が聞こえた。敵艦隊、見ゆ! というやつだ。
総員が武器を持って構えた。俺はそっと後方に控える。
「白ひげ海賊団の戦い方を見せてもらうであります」
「おう! サッチ様の活躍よく見とけよ!」
「調子に乗るなよい」
鳥人形態になったマルコにどつかれつつ、サッチも刃物を構えて準備万端のようだ。操舵手がモビーを敵船に寄せ、船員たちが飛びかかる。
真っ先に行ったのは飛べるアドバンテージがあるマルコだ。
「『鳳凰印』!」
「マルコに続けー! 油断するなー!」
続々と船員たちが敵船に飛び込んで行き、敵海賊たちとの乱戦に持ち込んだ。
剣戟の音、銃声が響く。敵海賊もなかなかやるようで、怪我を負ってこちらに戻ってくる者もいた。
「戦闘に参加するんじゃなかったのか?」
船首で同じく戦闘を眺めている白ひげが聞いてきた。
俺の力は乱戦に向いてないところが欠点なのである。秋茜すら、秋茜本体の機嫌によっては味方を巻き込みかねない。
「自分の技はここまでの乱戦だと危険であります」
「規模か」
「そうでありますね」
それに略奪のために船の形を残しておかないといけない場合にも向かない。基本的に攻撃力が高すぎて色々小回りが利かないのが玉に瑕か。
しかし力を抑えるというのはなかなか難しい。秋茜はついこの前多くの血を吸ったので血気盛んになっていて、コントロールの難しさに拍車がかかっている。
数年連れ添ってまだ、秋茜の機嫌によっては大規模な斬撃を放ってしまう。飛徹はやる気がないと切れないと嘆いていたが、俺と出会った後の秋茜は基本「やる気満々」。むしろ切れすぎて困るという事態になっている。
ミホークに修行をつけるときは秋茜に何回も「殺すなよ!?」と言い含めた。
「戦闘終了だー! 物資を船に運べー!」
「おいおい、終わっちまったぞ」
「自分の出番は略奪が終わってから、であります」
戦闘が終わったら楽しい略奪タイムだ。食糧、金品、医療品や貴重品を奪い船に詰め込んでいく。
木箱や樽に詰め、倉庫に持っていくのだ。
今回はどうやら酒がたくさん手に入ったようで、酒飲みの船員たちが喜んでいる。俺にはあまり関係のない話だ。
「さて、全員モビー殿に戻ったでありますか?」
「ああ、どうかしたか?」
「いえ、確認であります」
乗務員全員敵船からは戻ってきたようなので、俺も安心して刀の鯉口を切った。
「強襲型一刀流・連撃」
秋茜が光る。
「『テンリュウ』」
瞬きの間に刻まれた五連斬によって、敵船はバラバラになって敵海賊たちと共に海に沈んだ。
モビーよりも小さい船だったから「アカツキ」で足りたかもしれないな。秋茜が切りたがっていたから「テンリュウ」にしたが。
溶かしたバターより簡単に切れた船は、ガラガラと崩れてあっという間に海に飲み込まれる。
シン、と辺りが静かになった。
「あ、まだ何かやる事あったでありますか?」
「いやヤベーよ!? なんだその剣!!」
「大型船がバラッバラ!」
「剣士が本業じゃないって嘘だろぉ!?」
船員たちがワーワーと俺に群がった。本業は艦船です。
白ひげを見れば、なにやら大爆笑していた。なんなんだ。
「グラララララ!! こいつぁとんだ拾い物をした!!」
「おっそろしい剣技だよい……」
「剣士として、ぜひお手合わせ願いたいですな」
マルコがドン引きです。と言ったように俺から距離を取り、ビスタは笑って髭をいじる。
せっかく艦娘になったのに、剣を振るう機会のが多いというのは、なかなかに複雑なんだけどな……。
もうちょっとさぁ、砲撃で遠距離から船を沈めたり、艦載機でカッコよく偵察とか空襲とかしたいぜ。
Q.更新速度やばない?
A.コメントを沢山もらうと脳が破壊されいつの間にか続きができている。(いつもありがとうございます。とてもモチベになっております)