あきつ丸(仮)が往く!大海賊時代特殊任務!   作:月日は花客

20 / 102
脳が破壊される!!!!!!!(コメント、評価、評価コメントありがとうございます)






20:あきつ丸、宴ヲ楽シム!

 

「野郎ども! 今日はあきつ丸との同盟を祝して宴だァ〜!!」

「うおおおおおお!!」

 

 男たちの歓喜の叫びが響いた。

 先の海賊船から大量の酒が手に入ったのと、あの後投網漁を何回かして十分な量の食糧が手に入ったため、歓迎の宴をしてくれるそうだ。やったぜ。

 料理担当のサッチ(この頃はまだ4番隊の隊長じゃなかった)に魚料理が好きと伝えれば、「じゃあ沢山作ってやるよ! 腹一杯食えよな!」と笑顔で返された。陽気なやつだ。

 

「それにしてもすっげぇ剣技だったぜ。一体どんな修行をすれば船を細切れにできるんだ?」

「ワノ国の……例の九里大名に頻繁に手合わせを申し込まれていましてな。それに付き合ったり、弟子を取って刀を教えていたら、こんな風に」

「ワノ国の大名すげぇ〜!」

「早く会ってみたいですね」

 

 おでんの実力ハードルなんていくら上げても良いだろ。あいつも多分船両断くらいできるよ。

 着々と宴の準備がされていくのを、俺は白ひげの横で眺めている。食材調達を手伝ったからそれ以上は船員の仕事だろう。与えられた仕事を取ってはいけない。

 白ひげは宴前だというのにずっと酒を飲んでいる。もはや水だ。

 

「ワノ国ってのは、そんなバケモノ連中の集まりなのか?」

「流石にそうでは……九里大名──おでんという男が規格外なだけであります」

「そうか、なにやら破天荒だと言っていたが、どんな奴なんだ?」

「そりゃあ……苦労させられたであります。あらゆる賭博場を出禁になるわ、街中で刀を振り回そうとするわ、どこでもおでんを作って食べるわ……。チンピラと小競り合いになったことなんて数知れず、毎回仲裁に向かわされる自分の身にもなって欲しかったであります」

「グララララ……苦労してんな」

「まぁ斬りかかれば自分との手合わせに夢中になって事が収まったのでありますが」

「お前もなかなかバイオレンスじゃねぇか?」

 

 おでんは戦闘狂だ。だから好敵手を前にすれば目の前の簡単な喧嘩なんてすぐほっぽり出す。

 俺とおでんの打ち合いを見ればそこらのチンピラなんてすぐ逃げていくし、楽に場を納められる手段だったのだ。

 まぁ3回に1回は無視して半月堂で抹茶飲んでたが。

 

「その刀はワノ国で?」

「そうであります。妖刀秋茜。大業物21工のうちのひとつ。気まぐれでじゃじゃ馬。自分が手にするまではかくれんぼが好きだったらしいであります」

「かくれんぼ?」

「見た方が早いでありますか。秋茜、この船の中ならどっか行っても良いでありますよ」

 

 そういえば、ふと視線を逸らした隙に秋茜が俺の腰元から消えた。

 

「え!? 消えた!?」

「自分は何もしてないでありますよー。こんな感じで、適当な場所にコロコロ移動するのであります」

「親父ー!? なんかあきつ丸の刀が冷蔵庫の中にあったんだがー!?」

 

 サッチが大慌てで俺のもとに来た。

 冷えた秋茜を抱えている。

 

「よりにもよって冷蔵庫かよ」

「感性がわからない刀だな……」

「自分は『気に入られた』らしく、どっか行かれることはないのでありますがな。はい、おかえり」

 

 秋茜は久しぶりにかくれんぼをしたというのにすぐに見つけられて悔しそうだ。ここ数年でかくれんぼの腕が鈍ったか?

 

「そういや、あきつ丸は魚料理が好きって言ってたが、具体的にどんな料理が好きなんだ?」

「そうでありますね……やはり焼き魚は欠かせないというか。塩でさっぱりと焼いたものを米と一緒にかきこむのが最高であります。煮込みも良いでありますな、アクアパッツァとか、見た目も華やかで好きであります。ですが、やはり焼き鮭や秋刀魚……! そこに米と味噌汁が最強なのであります……ワノ国ではそればかり食べておりました! ……どうしたでありますか?」

 

 なんだかサッチ達が俺のことをにんまりした笑顔で見つめていたので、語りを止めてしまう。

 キョトンとしていると、サッチに軍帽ごと頭を撫でられた。

 

「食いしん坊かー! かわいいやつめ! サッチお兄さんが美味しい魚料理沢山作ってやるからなー!」

「じ、自分少食だと自負しております」

「なら沢山種類作ってやるから、色々つまんで楽しめよ! じゃ、行ってくるわ!」

「おー、あきつ丸のためにもちゃきちゃき働け」

 

 ボサボサにされた髪を整える。なにやらサッチ達の琴線に触ったらしい。俺としては美味しい魚料理が食えるならなんでも良いが。

 

「ワノ国は食事事情も特殊なのか?」

「独自の文化は発展してると思います。特に米や鮭は外より美味しいですし、酒は米から作った酒が主流であります」

「米の酒か……たまに見かけるが、吟醸とかいうやつか?」

「そうでありますね、酒の歴史には詳しくないでありますが、おそらくワノ国が本場なのでは? 度数は高いでありますが、冷やしても温めても美味しいでありますよ」

「へぇ……楽しみだ」

「あと甘酒という『飲む点滴』と言われているほど栄養価のある酒もあるであります」

「ほう!」

 

 飲む点滴、という言葉に船医であるマルコが食いついた。なんか甘酒ってすごいらしいね、俺は前世で正月に飲むくらいだったけど。

 やはり海賊は酒が好きなのか、しばらくワノ国の酒の話で盛り上がった。おでんもよく酒を飲んでいたから、それに付き合ってワノ国の酒事情には割と詳しい。

 ビールのような発泡酒は珍しいことや、全体的に度数が強いこと、淡麗甘口や辛口など種類があることも教えた。

 

「酒だけでも樽いっぱいに持って帰れねぇかな」

「わかる、飲み比べもしたい」

「おれは甘酒が気になるよい。点滴レベルの栄養価ってどんだけだよ」

 

 というか、マルコ達は宴の準備をしなくていいのか? と思ったが、まさかコイツら、酒の話にかこつけて準備サボってやがるな。

 まぁ良い。それで後でどやされるのはマルコ達だから。俺関係ないもんね。

 

「新しい出会いと同盟に……かんぱーい!」

「かんぱーい! であります」

 

 甲板に広げられたテーブルと料理たち。アクアパッツァ、ムニエル、パエリア、ピザ……。様々な魚料理が並べられている。

 大所帯だからかパエリアは山盛りだし、ピザは一枚がクソでかい。

 俺は取り分けられた自分の皿に頬を引き攣らせた。食い切れるだろうか。

 

「沢山食べろよ!」

 

 サッチが歯を見せて笑う。俺だけフードファイト始まってる。食べ盛りの男の胃袋と女の子の胃袋を同一視しないでほしい。

 

 さてさて、俺にはこんかいモビーに食レポするという使命があるのだ。

 

(みんな楽しそうだね)

(モビー殿が気になるものから食べていくでありますよ。どれが良いでありますか?)

(ピザが気になるなぁ)

 

 エビと貝が乗っけられたシーフードピザだ。俺はなんとか両手で持ってそれを口に運ぶ。どこか甲板の空気が緊迫したような気がする。

 

「……! 美味しい……!」

「ッシャア!!」

「サッチ今の声ガチだったな」

 

(エビがプリプリであります。貝は歯応えもあって、これ一枚で満足感が得られるであります。ソースがほんの少しスパイシーなのも、次の一口を進める手助けをしているであります)

(スパイシー?)

(……香辛料ってわかるでありますか?)

 

 味覚がない相手への食レポというのは難しい。相手は船。どういう形容詞がいいのだろう。

 

(次は?)

(その黄色い粒々の料理はなんていうの?)

(パエリアであります。食べるでありますよ)

 

 次はパエリアだ。小皿に盛られているのでまだマシな量である。

 また甲板が緊迫した空気を帯びる。

 

「ん、んん〜?」

「どうした? 苦手だったか?」

「いや、ちょっと、モビー殿に対する食レポを考えていたであります」

「モビーに?」

 

 米の食感ってモビーにどう伝えればいいんだ……? と考えていたらつい口が滑ってしまった。

 モビーに食レポ? と船員たちにハテナが浮かぶ。

 

「あ、え、えーと」

「モビーも飯が気になるのか?」

「モビー! これはなんかこう……いい感じでうまいぞ!」

「いや下手すぎるだろ」

 

 すると、船員たちは口々にモビーへ料理や酒の食レポをし始めた。中には「飲ませてやる!」と床に酒を注ぐ人もいる。

 

「……その、自分は船の言葉が聞こえるのであります。それで、モビー殿が魚がどんな味か気になると言っていて……。信じづらいとは思いますが」

「何を言う! モビーだって白ひげ海賊団の一員だもんなぁ! そりゃおれの料理の味も気になるか!」

 

 サッチがガハハと笑う。

 船員たちはガツガツ飯を食いながら、「美味しいぞモビー!」「お前も楽しめよ!」と船に向かって叫んでいた。

 

「グララララ……魚人は魚と会話できると聞くが、お前は船の声を聞けるのか」

「種族的に、船に近いのであります。モビー殿は意思疎通がハッキリできるので、つい……」

「なに、おれたちの船が喋れるってんなら、喋らせてやらぁ良いじゃねぇか。モビーもおれの息子だ!」

 

 その言葉に、モビーは歓喜の色を強く浮かばせた。

 

(船長、船長、ぼくは一生船長についていくよ)

「白ひげ殿、モビー殿が『一生ついて行く』と言っているであります」

「グララララ! 当たり前だァ! お前ら、モビーに意思があるってわかったんだ、これからもっとコイツを大切に扱えよ!」

「はい、船長!!」

 

(……本当に、良い船でありますな)

(だからぼくは運ぶんだ。船長を、みんなを、どんな海にだって)

(……)

(君にも、そんな人がいた?)

 

 どうだろう。史実のあきつ丸は戦いより輸送作戦に従事した艦艇だった。

 それでも、お国のために、頑張って動いていたのだろう。

 進水して4年間。潜水艦に沈められるその時まで。

 運んで、進んで、運んで、進んで。

 戦いに出る兵士たちを見送って。死にゆくものに願いを込めて。

 たとえ前線に出れなくても、陸軍の船という特殊な立場でも、あきつ丸は戦っていた。

 その記憶が俺の心の中にじんわりと沁みて、ほんの少し目の前が歪んだ。

 ぐいっとジョッキに注がれた酒を一気飲みする。

 

 口から溢れた酒を拭うふりをして、瞳から溢れた海水を袖に染み込ませた。








強襲型一刀流・連撃「テンリュウ」:五連の斬撃を繰り出し相手を細切れにする技だぞ! 「アカツキ」より初動は遅いが威力は折り紙つきだ! 秋茜の機嫌が良くないと発動はないぞ! ふふ……怖いか?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。