あきつ丸(仮)が往く!大海賊時代特殊任務!   作:月日は花客

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21:あきつ丸、通訳ニナル!

 

「なーあきつ丸! モビーはおれのことどう思ってるんだ!?」

「……『掃除が丁寧で嬉しい。ただベッドの上でお菓子を食べるのはやめてほしい』だそうです」

「たまに甘味が消えてたのお前の仕業かぁ!!」

「ア゙ー! ごめんなさーい!!」

 

 宴も賑わいが落ち着いてきた頃、俺はモビーの通訳として様々なことを聞かれていた。

 モビーの声を聞けるのは俺しかいないので、船員たちが俺に群がっている。

 ラクヨウが「絵面がやばい!」と言ったのである程度距離は取ってくれているが、視界がむさいぞ。

 

「モビー! おれはおれは!?」

「『いつも細かい不調にすぐに気づいてくれるから助かっている。今は第二倉庫の棚の釘が緩んでいるからなんとかしてほしい』」

「行ってきまぁす!!」

「次おれ!」

「『タンスの隅に洗濯物を溜めるのはどうかと思う』」

「サーセン……」

 

 モビーは割と厳しかった。ちゃんと働いている船員は褒めるし、サボりがちな船員は諌めた。スパスパ切れる刃物みたいに船員たちの質問を一刀両断していると、マルコが手を挙げる。

 

「おれは?」

「『船医として頑張っていると思う。でもたまに能力で小火をおこすのはどうにかしてほしい』」

「はい……ごめんなさい……」

 

 あのマルコがしおしおと沈んでしまった。モビーすげぇ。

 

「明らかにあきつ丸が知らないだろうことも言ってるし、マジなんだな……」

「種族的に船に近いってなんだ? どういう種族なんだ?」

「おい、詮索はよせよ。あくまでも同盟相手だぞ」

 

 白ひげの所は統率がちゃんと取れているのが良い所だと思う。おれも艦娘という種族をどう説明したら良いのかわからん。それに下手に言ったらどこからか漏れて珍しい種族として世界政府に狙われて……なんてルートもありうる。

 白ひげが情報を売るとは思わないが、念のためだ。

 

「お前ら、あきつ丸に通訳ばっかやらせてんじゃねーぞ! 飯全然食えてねーじゃねぇーか!」

「それもそうだ、すまんな、あきつ丸」

「モビーが俺たちの事をちゃんと見てくれてるってのはしっかり伝わったぜ!」

 

 俺としてはもうそろそろ胃袋が限界なのだが? まだムニエルとサラダが残っているのだが? 絶望。

 ギリギリになりつつも完食して、おかわりは必要ない事を告げる。「ほんとに少食だな!」と言われたが、だから食べ盛りの男とただの女の子の胃袋を一緒だと思うなって!

 赤城なんかだったら食い尽くせていたのだろうか……大和とか……。

 

「酒は? 飲める口か?」

「酔ったことはないでありますな」

「へぇ! ワノ国の酒にも詳しかったし、酒が好きなのか?」

「いや……例の大名が酒好きだったもので、自然と詳しくなったのであります。自分はお酒よりジュースの方が好きでありますな」

 

 よく考えると隼鷹を酔わせていた酒は何でできていたのだろう。アルコールという名の燃料だったのだろうか。

 あ、と俺は背嚢から保管していた酒を取り出す。

 

「どうせなら持っていって欲しいであります。自分よりあなた方のほうがこの酒の良さがわかるでしょうから」

「うおっ、これ、北の銘酒じゃねぇか!」

「こっちはグランドラインでブランド化してる酒だ!」

「本当にいいのか? マジで上物だぞ、これ」

「自分はどうせ酔えないので……」

 

 おそらくだが、アルコールが燃料扱いで艤装に流れている? 気がする。普通の燃料より微々たるものだが、ほんのり補給されている感覚があるのだ。

 一キロ航海するのにそれこそ樽いっぱいの酒を飲まないといけないので、効率は良くない。俺の胃袋にはそこまで入らないです……。

 

「……ん?」

 

 ふと、ピリついた気圧の変化を感じる。かなり遠くだが、雷の音が聞こえる。

 

「ワノ国が近いでありますな」

「……! 嵐か」

「まだ余裕はあるでありますが、宴はここまでにしておいたほうがいいかと」

 

 片付けにも時間かかるだろうし。

 まだ目視確認はできないが、ゴロゴロと雷の鳴る音が耳を澄ますと聞こえてくる。白ひげもそれを感じ取ったのか、船員たちに速やかに嵐対策を命じた。

 

(嵐が、くるよ。でも、頑張るよ)

(同じ船として、沈ませないであります。安心して進んで欲しいであります)

 

 あっという間にテーブルや皿が片され、積み荷をロープで縛り、マストを調節して行く船員たち。その姿は歴戦の海賊で、表情に油断の一つもなかった。

 

「お前ら聞けェ! おれたちはこれより、ワノ国へ侵入する! 経験者はあきつ丸のみ! こいつの指示には必ず従え! 海を侮るな!」

「はい! 船長!」

「速度を上げろォ! 面舵いっぱーい!!」

 

 白ひげの掛け声で全体の士気が上がる。速度を上げた船はグングンと雷雨に近づいていった。

 そこに待つのは、ワノ国名物高波に巨大な鯉。

 モビーごと飲み込むようなほどの波が、あちこちで立っている。その迫力は、流石の白ひげ海賊団船員をも怯ませた。

 

「波が高い! マストを閉じろ!」

「操舵師は操舵室に集合! 全力で波を避けろぉ!」

「船長、あきつ丸さん! 滝はどうするんですか!?」

 

 目の前にこようとしている滝は、鯉が登り飛沫を上げていた。ああ懐かしい。ここで俺も「無理じゃね?」ってなったんだった。

 白ひげはこちらを見る。その視線に、任せてくれと頷いた。

 もう俺は普通の艦娘じゃないのだ。

 

「総員、船内に避難するか掴まれるものに死ぬ気で掴まるであります!」

「聞こえたか野郎どもォ! 掴まれェ!」

「浮遊感に注意! 飛ぶでありますよ!!」

「はぁ!?」

 

「強襲型一刀流・強撃」

 

 秋茜は故郷に久しぶりに戻って来れてテンションが上がっているらしい。早く早くと鍔を鳴らしている。

 こうもご機嫌だと、飛びすぎるのが心配になるな……っ!!

 

「『モガミ』!!」

 

 両手での大上段振り下ろし。

 巨大な飛沫……もはや水柱を立てた一撃は、モビー・ディック号を大きく押し出した。

 衝撃で船首が上を向き、船底が浮き、船尾が波を離れた。

 要は原作ミホークがやっていた飛ぶ斬撃でのブーストである。絶好調の秋茜の力と艦娘の膂力を使えば、ガレオン船でも大滝を越えられる衝撃となる。

 

「えええええええ〜!?!?」

「船がっ……飛んだァ!?!?」

 

 おっと、口を閉じていろと言うのを忘れていた。舌を噛むぞ。

 

「滝を越えて……まだ飛ぶか!」

「すげぇ! 船が飛んでる……! モビー! この景色が見えてるか!?」

「このまま九里まで飛ぶでありますよ……角度調整! また掴まって!!」

 

「強襲型一刀流・強撃」

 

 今度は空中に向かって斬撃を放つ。

 下段からの切り上げ一撃。

 

「『スズヤ』!!」

 

「軌道が曲がった!」

「お、落ちるぅー!?!?」

 

 さぁラスト一撃、いってみようか、秋茜!

 

「強襲型一刀流・連撃」

 

 モビーに傷一つ付けやしない!

 着水の衝撃を緩和させる!

 

「『ヤハギ』!!」

「ぎゃああああああ〜!?!?」

「つ、掴まれェ〜!!」

 

 威力を調節し、だんだんと下に降りて行くように細心の注意を払う。これでモビーの船底に穴なんて開けたら、土下座じゃあ済まない。

 一撃目は大きく、二撃目は程よく力を抜いて。三撃目は片手で、四撃目は薄皮を切るように軽く。

 その努力によって、モビーはまるで空中浮遊したかのように軽やかに着水した。

 ふぅ、大仕事を終えて一息つく。納刀。

 周りを見れば、全員が目を丸くしてあちこちにしがみついていた。

 

「入国完了、であります」

「トンデモ過ぎるわーッ!!」

 

 白ひげ以外の船員から総ツッコミを喰らったのは……まぁ、ほら、ご愛嬌ってやつだ。









Q.無理してない?

A.むしろ楽し過ぎる(お気遣いありがとうございます)
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