A.違います。
22:あきつ丸、再入国スル!
「おまっ、お前、あんな入国の仕方をする奴があるか!!」
「死ぬかと思った! 死ぬかと思った!」
「モビーに傷ひとつないのがいっそ恐ろしい」
九里の港で、俺は白ひげ海賊団の船員たちに詰められていた。白ひげ本人は笑っているのだが、船員たちにとってはとんでもない恐怖体験だったようで……俺は浜辺に正座させられ、大人しく船員たちの文句を受け付けていた。
「でも無事入国はできたであります」
「過程が問題なんだよ! なんだ斬撃の衝撃で飛ぶって!」
「でも楽しんでた人もいるであります」
「アイツらとこれから距離置こうかな」
ワノ国が一瞬一望できて楽しかった! と笑いかけてくれた船員もいたのだが……悲しいかな、恐怖を感じた船員が圧倒的に多かったらしい。
「グララララ、まぁいいじゃねぇか。全員無事でワノ国に入国できた。あとは補給なり観光なりしていけばいい」
「親父……」
「九里にはあきつ丸の知り合いがいるんだろ? そいつに……ん?」
ふと、白ひげが立ち上がった。
「お前ら、下がってろ」
そうして愛刀である薙刀を手に取った。
俺は近づいてくる足音に、ため息をつきながらモビーの近くに移動する。
忘れもしない下駄の音。しめ縄の白と紫が懐かしい。しかし両手の刀は如何なものか。
「よくぞ来た! 悪天候を超え滝を越えよくぞここまで!」
白ひげが構える。
と同時に、男──おでんが斬りかかった。
覇気と覇気がぶつかり合い、衝撃が生じる。中には吹き飛ばされるものがいる程の強大な風が巻き起こった。
「おれの名は光月おでん! 誰だか知らんが、お前の船に乗せてくれ!」
「な・に・を・やっているでありますかー!!」
「えええええええええ!?!?」
俺は笑いながら次の技を繰り出そうとするおでんに、本気のドロップキックを決めた。艦娘の硬い装甲の付いたブーツが、おでんの顔に赤い足跡をつける。
突然の俺の暴挙に、船員たちは目を丸くして驚愕の声を叫んだ。
「はっ! お前はあきつ丸! 久しぶりだな、おれを迎えに来てくれたのか!?」
「お久しぶりであります。が! 突然斬りかかるとはなんでありますか! 白ひげ殿が受け止められたから良かったものの!」
「いやー強そうなやつに気分が上がってしまってな! 元気だったか?」
「おかげさまで……はぁ……」
「な、なんと言うか……」
「本当に破天荒、だな……」
真っ赤に腫れた顔面を気にせずに、おでんは話を続ける。変わっていないマイペースさに早速2回目のため息が漏れた。
ほら、白ひげさんちのメンバーも呆れてるよ。
「あきつ丸、手合わせしよう!」
「再会して早々なんでありますか」
「おれはこの数年で強くなった! それはお前もだろう? 力を試したい!!」
「……自分は今はもうワノ国のものではない、旅人であります。そんな相手と次期将軍が打ち合ったら問題になりましょう」
「大丈夫だ! お前の席は今も取ってあるぞ!」
「こう言う時だけ権力を使ってぇ……!」
しょうがない、もう適当に手合わせをして満足させてからの方が話が進む。
白ひげ海賊団に、離れている事、手出しは無用、万が一流れ弾が行ったら自力で防いでくれと伝える。俺は砂浜に改めて立ち、秋茜を構えた。
「おれの閻魔と天羽々斬の乱打……それを止められたのは今はまだお前だけ! さぁ、魅せてくれ、お前の成長を!!」
「手短に終わらせるであります。まったく、傍若無人な所も変わっていない……」
それはそれとして、原作でもかなりの強者として描かれていたおでん。空気がピリつくのは覇気のせいだろうか。
俺は居合の構えをとる。おでんも、その二刀流をギラギラと煌めかせている。
精神統一。
「強襲型一刀流・居合『アカツキ』!」
「早速か! 『桃源白滝』!」
バチバチと覇気がぶつかり合う。白ひげ程ではないにしろ、衝撃があたりを襲う。
それに構っていられるほど相手は甘くない。
俺はおでんの技を避けると同時に飛び上がり、刀を振り上げる。
「強襲型一刀流・連撃『テンリュウ』!」
「なんの!」
高速の五連斬は軽々と防がれてしまう。しかしそれはブラフ。本命は──
「おごぉ!?」
「足癖の悪さを忘れましたか!?」
防御によってほんの少し空いた顔の隙。そこに渾身の蹴りを叩きつける。常人なら頭蓋骨が凹んでいるだろうが、おでんは武装色の覇気でそれを守ったようだ。
「相変わらずかってぇなぁ、脚に鉛でも仕込んでいるのか?」
「残念、鋼鉄であります」
そのまま「強襲型一刀流・強撃『モガミ』」を繰り出し、おでんの首を狙う。
しかし、それは閻魔によって防がれる。
しまった弾かれた時に隙ができた。
「隙あ──」
「よっと!」
バク転の要領で追撃から身を守る。そして一度距離を取った。
「足癖の悪さが悪化してないか?」
「自分は純粋な剣士ではありませんので」
ミホークとの修行で、背中に切り傷を作らないために背中をよく蹴っていたのが幸いしている。ミホークとの修行で、俺自身も鍛えられていたのかもしれない。
俺がおでんに勝っている部分。それはスピードだ。そして小柄ゆえに小回りが利く。
そこを活かすためには…………
「強襲型一刀流・刺突」
「っ!」
「『キタカミ』!!」
急所を狙った一点突破! 速度に身を任せ、おでんより劣る攻撃力をそこで補う。
人中、眼球や口などの露出した内臓、関節。人体にはどれだけ鍛えようが弱点というのが必ずある。
そこを狙う!
「もう一度、『キタカミ』!」
「同じ手は食わん!」
二刀によって阻まれるも、それによって腹側がガラ空き、そこに蹴りを叩き込もうとするが……おでんの脚によってこれも防がれる。
「蹴るしか小手先の技が無いのか?」
「そっちこそ、防戦一方では?」
「舐めるなよ、『
飛ぶ斬撃だと瞬時に構えから判断し、咄嗟に距離を取る。案の定飛んできた多数の刃を、秋茜で何とかいなした。
そっちが飛ぶ斬撃で来るなら、こっちもそれで行かせてもらおう。
「強襲型一刀流・対空『アカギ』!」
まるで艦載機の航空爆撃のような斬撃がおでんを襲う。砂浜の砂が舞い散り、霧のように視界を曇らせた。
そこからできた隙を、おでんは見逃さない。
「『
閻魔と天羽々斬による二連撃。シンプルながらも、基礎の技というのは一番恐ろしい。
砂煙による死角から放たれたそれは、俺を押し倒し首元に刃を突きつけるまで至った。
「これで俺の156戦123勝33敗だな」
「はぁ〜……満足したでありますか」
「した! で、海賊とお前がなんで一緒にいるんだ?」
俺としてはもう疲れたから適当に茶屋で休みたい。半月堂の練り切りと抹茶が飲みたい。
ダラダラと起き上がり、俺は服についた砂を払った。
おでんは久しぶりに俺と手合わせできたからか上機嫌だ。
「彼方の方達は白ひげ海賊団。ワノ国入国にあたって、経験者の自分が同盟相手として入国を手伝ったのであります。ワノ国の美食や美酒が気になるようでありますよ」
「おお! それならうちで歓迎しようじゃあないか! おでんをご馳走するぞ! あと仲間に入れてくれ!」
「しつこいであります」
がすっとおでんの脇腹にチョップを入れた。せめて観光中は大人しくしてくれないか。
「いやぁ見事な戦いぶりだった。本当に剣士が本業じゃないんだよな?」
「本当であります。本来の力の方は規模が大きいのと手加減ができないので、手合わせでは使わないのであります」
「あれで本気じゃないのかよ……」
艦載機や副砲を使ったら、それこそ同時並行でいろんな攻撃できちゃうからなぁ。そも遠距離でチクチク系だし。
「とにかく九里を案内しよう! 宴の用意もする! そしておれを船に乗せてくれ!」
「いい加減にしないとその円盤頭ちょん切るでありますよ」
「それだけは勘弁してくれ」
はぁ……白ひげたちが九里観光をしている間に、俺は花の都の半月堂に行こう。そして美味しい抹茶を飲もう。そうしよう。
すっかり気疲れした俺を、気遣うようにサッチが葡萄ジュースをくれた。
ありがとう、沁みる……。
強襲型一刀流・強撃「モガミ」:大上段から振り下ろす兜割の一撃だ! 両手でしっかりと握って艦娘の膂力で放たれる一撃は鋼鉄なんて簡単に切り捨てるぞ!
強襲型一刀流・強撃「スズヤ」:下段から繰り出される切り上げ技だ! 両手でしっかりと握って艦娘の膂力で放たれる一撃はたとえ鎧を着ていても余裕で貫通するぞ!
強襲型一刀流・連撃「ヤハギ」:強弱をつけて放たれるトリッキーな連撃だ! テンリュウと同じく初動は遅い(強撃よりは速い)が、弱い一撃に油断していると強力な二撃目で沈むことになるぞ!
強襲型一刀流・刺突「キタカミ」:一点突破をねらった魚雷のように精密な一撃だ! 当たれば相手の体に深く沈み込み、致命傷を負わせるぞ! 基本人体の急所に向けて放たれるぞ!
強襲型一刀流・対空「アカギ」:強襲爆撃のように飛び立つ斬撃が空から降ってくるぞ! 室内では使いづらいが屋外ではとんでもない脅威だ! ただし出すのに溜めが必要なのと、出したあと隙ができるぞ!