「で、じゃあ具体的に何をするんだ?」
「いや無計画で了承したのかよ!?」
おでんの誓いで武士たちが鬨の声を上げた後、第二声に白ひげ海賊団がつっこんだ。
いやまぁ、おでんは概要を聞いただけで具体的になにをすればいいのかはわからないだろうし、しょうがない。
「あきつ丸が『観た』未来を回避するとして、おれはワノ国に留まった方がいいのか?」
「いや、おでん殿は白ひげ殿と出港し、是非世界を見てきていただきたい。途中でまた運命的な出会いがあるので」
「ふーん? そこはネタバレしてくれないのか?」
「えぇ……あー、うーん、白ひげ殿言っていいでありますか?」
「なんだなんだ」
「おでん殿、ロジャー海賊団の船に乗る事になるであります」
「グラララララ!! それは本当か!? おもしれぇ!!」
おでんはロジャー海賊団? と首を傾げている。まぁ知らんやろね。
これはどちらかというと白ひげに伝わるネタである。おでんがラフテルまで一緒する事は言わないでおいた。俺もワンピースの正体とか知らないし……。
さて、問題はおでんが外に出ている間にオロチの侵食が進むため、そこをどうするかという話だ。イゾウ、イヌアラシ・ネコマムシは白ひげの船に乗船するとして、残りのメンバーでどう動くか。
「取り敢えずおでん殿はオロチに金を貸さないように。返ってきませんし、武器工場の資金になるであります」
「ヤスさんには申し訳ねぇが、仕方ねぇな」
「今からそのオロチを殺しに行くってのはダメなのか?」
錦えもんたちがそう聞いてくるが、現状はただの霜月の小間使いだろうし、既にマネマネの実の能力者とバリバリの実の能力者に接触していた場合攻撃が通らない。
特にあのバリバリの実はおでんの本気の一撃すら耐えた高練度の力だ。マジでなんであれ防げたんだやべぇな。厄介過ぎる。次の持ち主ワンピオタクなのに。
「オロチが既に協力者……黒炭の残党と接触している場合、現実的ではないでありますな。あの防御はおでん殿の怒りの一撃さえ防いで見せた」
「なんだそれ……? やべぇな」
「やべぇのであります。とにかくおでん殿が航海に出ている間、どうにかしてオロチの資金源を断ち、九里の治安を守らねばなりません」
「残るおれたちだけでは、荒くれ者の多い九里を纏めるには至らず……か」
傳ジローが悔しげに拳を握った。
今こそ平和だが、それはおでんのカリスマがあってこそ。そのおでんが長期不在になれば、またこの九里は荒くれ者が暴れ出す。
「オロチが将軍になった場合九里の扱いはより悪くなるでしょう。……スキヤキ殿が殺される時期は自分にもわからないであります。ただ、相手には姿を真似る能力者がいる」
「悪魔の実の能力者が二人か……厄介だな」
「オロチが将軍になる頃にはオロチも能力者になっていると見ていいかと。正直言って、おでん殿と家来数名がいなくなる以上戦力的には……」
「お前は? 剣士が本業じゃない上であの強さなんだろ? 本業でいけば足りるんじゃないか」
「それは……」
どうだろう。
俺の中でカイドウの強さのイメージがルフィたちが戦った時の方で固定されているのだ。あのタフさと広範囲攻撃はとてつもない脅威。艦載機なんて一撃で落とされる。
あと、これは本当に俺の装備の問題なんだが、集団戦にびっくりするほど向かない。
百獣海賊団は人数も多い。確実に乱戦になるだろう。そんな中で砲撃なんかしたら、味方も無事では済まない。
基本船はある程度距離をとって戦うから、至近距離で戦う場合こちらの装備に誘爆する可能性もある。飛ぶ斬撃と合わせればいいじゃんと思われるかもしれないが、流石に砲撃のほうが飛距離が長い。
近距離なら艦載機と刀、遠距離なら艦載機と砲撃と自動的に決まってしまうのだ。
「……隠してても仕方がないので、自分の本業を見せるであります」
「おっ、どんなもんなんだ?」
俺は少し離れて、艤装を展開する。
両腰に副砲が、背中には巻物のような甲板が浮かび、手には走馬灯。
おお、とワノ国連中から歓声が上がる。
白ひげ海賊団も、あまり見せていなかったので興味深そうに装備を見つめている。
「これでどうやって戦うんだ?」
「ここだと流石に……港に出ても?」
「わかった、街中でこんな話をするのもあれだしな」
人のいない場所に行くのも兼ねて、俺たちは九里の港に移動する。
俺は海に出ると、海岸にいるみんなが飛距離などを見れるように横付けに体の位置を調節した。
「行くでありますよー! 先ずは砲撃!」
射程が短いので、海としての規模は小さいワノ国の海でも足りる。
思いっきり打ち出された砲撃は、放物線を描いて視線の先に水柱をいくつか立てた。
あー、久しぶりに砲撃した。船としての感覚を思い出す。
「次に艦載機。発艦であります!」
走馬灯に烈風の影を映し、そのまま実体化させ発艦させる。
飛んで行ったミニチュアの烈風の射撃は、海の中でなければ蜂の巣のように的をボロボロにしていただろう。
カ号は対潜なので出番はない。どちらかといえば偵察の方向だし。
久しぶりの艦娘としての戦い方に楽しくなって、砲撃と艦載機の連携なんかも見せてみた。滑るように海を移動し、射撃が止まったタイミングで砲撃を行う。
そうだよこれだよ。なんであきつ丸なのに最近は刀を振ってばっかりだったんだよ。
「こんな感じであります。どうでありますか?」
「えげつないわ!!」
「そりゃ“船沈メ”なんて呼ばれるわお前ェ!」
「なんだそのインチキ装備ィ!!」
総スカンである。
「いや待て、その装備を量産すれば良いんじゃないか?」
「あー、多分無理でありますな。これは自分の種族特性みたいなものであります。つまり、体の一部」
「体の一部」
「これが破壊されると自分にもダメージがくるであります」
砲塔を指差せば、「やっぱどういう種族なんだよ……??」とか細いツッコミがくる。
「肉体的にも精神的にも船に近い、名称は『艦娘』。これはこのメンバーの秘密でありますよ」
「艦娘……いや、普通の船にもこんな装備乗らないだろ、なんだその飛ぶ機械は」
「烈風という戦闘機であります。自慢の武器でありますよ」
「お前は何者なんだよ……」
「あー……大日本帝国陸軍特殊船丙型揚陸艦であります」
「何が何の何??」
艦娘の概念を説明するのはワンピ世界では難しい。装備も、オーパーツと言えばオーパーツだし。
でもフランキーあたりなら作れるんじゃねぇかなって。ワンピ世界の科学力ってピンキリというか、科学者によって差が激しいというか。似たような連装砲とか作ってなかった?
あ、でも弾丸がまだ鉛玉なのか……?
わからん。未来のサイボーグのことより今の龍のことを考えねば。
「ただこれ、近距離だと誘爆したり被害が大きかったりと複数人戦には向かないのであります。露払いをするなら刀の方になってしまうであります」
「確かにやべぇ爆発だったな」
「あとこれ対空用なので火力としてはバリバリの実によるバリアを砕けるかどうか……。もっと強力な戦艦用の主砲を積めれば良かったのですが、艦種の都合で無理なのが口惜しいであります」
「これよりヤベェのがあるのかよ……むしろ無くて安心してる自分がいるよ……」
白ひげ海賊団船員数名が俺から離れたが、本当に俺の体が大和とかだったらどうなっていたんだろう。今より資材がカツカツになっていただろうな。
「自分は航空戦と近接戦に集中したほうがいいかもしれないでありますね。砲撃はリスクが高い」
「あの飛ぶ機械を使えば偵察もできそうだし、お前はじゅうぶん戦力だ。……そうだ!」
おでんがふと、手を叩いた。
「あきつ丸! お前、九里の大名になれ!!」