あきつ丸(仮)が往く!大海賊時代特殊任務!   作:月日は花客

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3:あきつ丸、任務ヲ熟ス!

 

「救済任務……ってコト!?」

 

 思わずあきつ丸ではなくハチワレが出てしまった。

 これは転生ネタあるある「原作で酷い目に遭うキャラを救済しよう!」のやつじゃないか。ハーメルンで50000000000回見た。

 ロー、ロビン、エースに白ひげ、コラソン……所謂原作で悲惨な過去や末路を遂げるキャラが挙げられている。

 重要なのは報酬だが、かなり豪華である。大量の資材は勿論バケツ複数個や応急修理女神、装備など現状必須になること間違いなしのものばかり。生き残るにはこの任務、受けるしかない。

 ゲームとは違い遂行中とクリックしなくてもクリアしたら自動で貰えるシステムらしいので、取り敢えず内容だけ把握しておく。

 

「現在地がどこかわからないと、何から手をつけるかわからないでありますな……」

 

 救済系からみて原作開始前なのだろうが、現在地がグランドラインなのか他の海なのかで手をつける場所が変わる。あと今が何年なのか。

 流石にONE PIECEの年表を事細かに覚えているわけではない。そこはシステムもわかっているのか、任務画面に時系列順で「あと何年後」と表記がある。謎なところが親切だな。

 

「救済しないとこっちも資源がカツカツになりそうでありますし、生き残る為には見境なく助けていかないと……特に燃料」

 

 海を渡る以上船を使ってもいいだろうが、自分には航海術とかないし、艦娘の本能なのか船に乗るのに若干の抵抗がある。だって自分が船なんだもん。

 海をこの身で渡っていく以上大量の燃料は必須。1000なんて割とすぐ尽きるだろうし、なんとかして余裕のある暮らしをしたい。

 

「その為にはまず日課から。沈められそうな海賊船はなるべく沈めていくのでありますな」

 

 海軍の船は狙わないでおこう。政府に目をつけられたら厄介だ。

 海賊もこっちを攻撃してきた海賊に限りたいが、どうだろう? この世界では海賊と言ってもなかなかピンキリなので、選り好みはしていきたい。

 

「あと金銭の回収も忘れないでおきたいでありますな」

 

 世の中金だよ。

 沈めた船からサルベージするのは周りの死体の数的に嫌な為、船に潜入して金目のものを回収したい。できるかは別として。

 

「さっき見つけた別の海賊も倒しておくか」

 

 Uターンして、最初に見つけた海賊船へ向かう。知らないドクロマークなので、まぁ原作に関わらない有象無象だろう。

 あきつ丸の射程は短いので、副砲を使うならかなり近づかねばならない。なるべく気配を消して、見張りに見つからないよう慎重に進む。

 どうやら相手は宴の最中で、見張りなんかもろくに立てていないようだった。

 

「好都合でありますな」

 

 俺は船尾にまでくると、その横っ腹に自分が通れるサイズの穴を開けた。パンチで。

 おそらくだがこの身体、人よりも力が圧倒的に強く装甲もある。つまり、船としての力を圧縮したような身なのだ。船にちょっとした穴を開ける程度なら副砲を使わずとも簡単にできた。

 中に潜入し、適当に空き巣をしていく。

 船の間取りとか全然詳しくないので、手当たり次第に扉や棚を開け、目ぼしいものを探して行った。金庫は素手で開ける。

 金貨、札束、宝石、高そうな酒……。お宝っぽいのはガンガンに背嚢に突っ込んでいく。すごいなこの背嚢、明らかに見た目の許容量超えてるのに入るぞ。揚陸艦が1000人乗っても大丈夫な輸送船だからか?

 

 あらかた見終えたところで、物音を不審に思った船員に見つかった。廊下での対面に動転したのは相手の方だ。

 

「だっ誰だお前は!?」

「敵でありますな」

 

 間髪を容れずに副砲を発射する。それだけで船内部の八割が消し飛んだ。やはり威力がおかしくないか?

 突然の轟音に甲板にいた奴らも異変を察知したらしい。ドタバタと戦闘準備をする音が聞こえてくるが、もう遅い。

 

「なんだ!? 敵襲か!?」

「野郎ども武器を取れ!」

 

 怒号を聞き流し、ぶち開けた穴から脱出。ある程度離れて、副砲を発射。

 それだけで海賊船は簡単に沈む。

 

「……やってる事が深海棲艦な気がしなくもないですな」

 

 転生早々二隻の船を沈めた身としては、これでいいのか複雑だ。まぁ史実では海軍、陸軍側の船なので海の賊を退治するのは正しい……のかも?

 ただ海軍には入りたくないな。この世界だと天竜人とかいう地雷に一番近い。奴隷ルートとかマジ勘弁。

 

「ともかく島を探して……本当にここ、何処なのでありますか?」

 

 *

 

 Q.何時間か大海原を放浪し、ようやく見つけた島が万国(トットランド)だった俺の気持ちを述べよ。

 

 A.死んだ。

 

「冗談じゃないであります……なんでよりにもよって四皇の島なのでありますか……??」

 

 というかグランドラインだったのかよ。

 入ってからやけにお菓子が多い島だなぁ〜と思ってたら、途中からビッグ・マム海賊団のジョリーロジャーがあり状況を理解、そして絶望。

 普通に観光気分でドーナツとか食べちゃってたよ。

 ここでビッグマムことシャーロット・リンリンに目をつけられれば死、幹部に目をつけられても死、そもそも無事に出られるのかこの国から。

 

「あんまり街の中心部に行かないように……こっそりと……」

 

 カラフルポップな街で黒の詰襟は滅茶苦茶目立つ。しかも女の子一人。一応艤装は展開していないので、まだ視線を集める程度に留めているか。

 

 中心街を離れ、森の中に入った時。誰か子どもが泣く声が聞こえた。

 

「……ひっく、うぅ、グス」

「……どうしたのでありますか?」

 

 こんな所で人知れず子どもが泣いているとは。なにやら不穏な匂いがする。

 ドーナツの入った紙袋を持ち直し、俺はそっとしゃがみ込んだ。

 顔を隠して泣く子どもは男の子で、まだ幼い。

 

「なんだよお前……見んなよ……!」

「泣いてる子どもを放っておくほど人間性が終わってはいないのでありますな。ドーナツでも食べるでありますか?」

 

 そっとチョコにスプレーのかかったドーナツを差し出すと、「いらねぇ!」と手を打たれた。小さな子どもの力でドーナツを落とすほど柔な身体はしていないが、とりあえずドーナツを紙袋の中にしまう。

 グスグスと泣いている男の子は涙声で、その悲しみの深さが伝わってくる。

 

「どっか行けよ……!」

「だから、泣いてる子どもは放っておけないのであります。泣き止んだら勝手にどっか行くでありますよ」

「…………グス」

「話を聞くくらいはできるでありますよ。別に」

「…………」

 

 グレーズのかかったドーナツを頬張りつつ、俺はそっと彼の横に座った。この世界にはポンデリングは無かった。たぶん持ち込んだらドーナツ界に革命が起きると思う。あのモチモチ感は忘れられない。

 シンプルなシュガードーナツはほんのりとレモンの香りがつけてあって、サクホロ食感が美味しい。

 鼻水を啜る音を聞き流しながら、俺は黙々とドーナツを食べ続けた。

 

「……妹が」

「ほう」

「妹が、おれのせいで顔に傷をつけられたんだ。一生残る。おれのせいで……」

 

 既に二つドーナツを食べた後だったので、流石に重いな……と半分まで食べた頃少年はそう溢した。

 

「今までおれを笑った奴はみんなぶっ飛ばせばいいと思ってた。でも、妹に矛先が行くなんて思ってなかったんだ。おれがバカだった」

 

 そこまで言って、少年はまた泣き出してしまった。

 ううむ、可哀想な子だ。妹ちゃんも、女の子の顔に残る傷を付けるなんて非道なやつもいたもんだ。

 そしてこのドーナツなかなかに重い。あと半分が山のように思える。あきつ丸の胃袋を過信しすぎていた。赤城のような大食いキャラではなかったんだった。どうしよう、調子に乗ってあと3個くらいドーナツある。

 

「……君も妹君も何も悪くないと思うのでありますな。悪いのは傷つけた方で、君が気に病む必要は何もないと自分は思いますな」

「でも」

「どんな人間であれ、乙女の顔に傷を付ける輩は処されて当然なのであります。兄として許せないなら、傷ついた妹君のそばに少しでも長く居てやるのが一つの兄君の姿ではと考えるのですな」

「……」

 

 なんとか三分の一まで食い切る事ができた……砂糖の塊部分がかなりキツい……。なんで俺は子ども相手に説教垂れながらフードファイトをしているんだ……?

 少年はなにか琴線に触れたのか、顔を上げた。

 そこには耳まで裂けた口の縫い跡と鋭い牙があった。

 

「この顔見てもそんなこと言えるかよ」

「他人の傷を笑うほど人間性終わってはいないのでありますな」

 

 カタクリじゃねーか!?!?

 ちっこいカタクリじゃねーか!?!?

 えっつまり顔に傷を負った妹さんはブリュレ……?? やべぇシャーロット家次男と接触しちまったよ俺死んだ。

 

 頭の中は大混乱になりつつ、俺はポーカーフェイスでニヒルな笑みを浮かべてみせた。

 

「むしろイカしてるでありますな。自分はなかなか好みでありますよ」

「えっ、なっ……!」

「泣き止んだのなら、自分はもう行くのでありますな。あ、このドーナツはその妹君と仲良く食べるでありますよ」

 

 食べきれなかったドーナツを自然(?)に押しつけ、俺は立ち上がる。

 カタクリと長く話してると保護者という名のママが来る可能性あるからな。長居はしないに限るぜ。

 

「お、お前名前は!?」

 

 少年カタクリがあわてて叫ぶ。最終的にえぐい巨体に育つ彼とはいえ、まだ流石に身長は低い。

 こちらを見上げてくる頭をそっと撫でて、俺は笑った。

 

「ただの通りすがりのお姉さんであります。名乗るほどの事はしてないでありますよ」

 

 シャーロット家次男に名を覚えられるわけにはいかないんだわ。すまんな。

 そっと口の縫い目に指を這わせ、少年カタクリが固まった所で俺はさっさと退散した。

 やべーな、初手でこんな大物海賊のナワバリに来ることになるとは思わなかったぜ。

 ここがグランドラインってことはわかったし、万国を出た後今後の予定を計画しよう。

 

 顔を真っ赤にした少年カタクリが俺の背中をじっと見つめていた事は、気づかなかった。









カタクリくんの性癖はもうボロボロ。
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