「強襲型一刀流・居合『アカツキ』!」
一刀のもと船を切り捨てる。海に落ちた海賊たちを放置し、俺は次の海賊船の索敵を始めた。
最近、ここら辺に海賊が多い。
おそらくだが、ワノ国から出たおでんが武勇を披露していることによって、自分も侍を仲間にしてやろうと企む海賊が多いのだと思う。
ここら辺は政府非加盟国も多いし、海賊を狙う自分にとって格好の狩場だ。
なかなか燃料にも余裕が出てきた。
この航海での消費分はもちろんあるが、それを抜きにしても黒字。ひたすら船を沈めているので、この調子なら数日で週間任務もクリアできそうだ。
ワノ国周辺は過酷な天候も多く、海軍が少ないのも魅力的である。
俺は船として転覆なんてするわけにはいかないが、ボロボロになった海賊船を見過ごすほど甘くもない。グランドラインの天候に振り回される仲間とはいえ、資材のネタになってもらおう。
そうしてここ数日昼夜問わず海賊を狩りまくっていた。なんだか艦これの脳死レベリングと同じ脳みそのパーツを使っている気分だが、船としての本能は喜んでいた。
砲撃、艦載機、刀。
この三つの武器によって、俺は怪我もなく40以上の船を沈めている。
「はー……あともう少し燃料を集めたいでありますな」
艦これでいう遠征の概念が無いため、現状ひたすら任務をこなすか代わりに酒を飲むかでしか燃料補給ができない。
この世界にもっと油田があれば……ドラム缶や大発に積みまくっていたのに……と思うが、無い物ねだりである。
「それにしても……」
「グランドラインにしちゃいい天気だな」
ふと、声が重なった。
「……ん?」
「……お?」
キーコキーコと高い軋んだ金属音が聞こえる。パキパキという冷気を纏った音も。
足元を見れば、凍った海面と車輪。
上を見れば、もじゃもじゃ頭の男の顔。
俺と男はお互い無言で見つめあった。
断じて恋になど落ちていないが。
っすぅー……。
青キジだぁーっ!?!?
今はどの階級か知らないけどいずれ海軍大将になる人だぁー!?!?
なんでこんなとこに自転車で走ってるんだ! 海軍なら軍艦で来いよ! そしたら楽にスルーできるんだからさぁ!!
内心荒ぶっていると、青キジことクザンも俺の存在に驚いたのか口を開けた。
「すげぇな、おれ以外で単身海を渡れる奴初めて見た」
「……そ、それはこちらも同じであります」
クザンは今日は海軍の制服を着ていない。私服らしいアロハシャツに身を包んでいる。
しかしだからと言って侮るなかれ、海をものともしない彼は艦娘にとっても危険な相手だ。俺は砕氷船では無いから凍らされると一気に不利になってしまう。
敵対する行為はしませんよ、と努めて穏やかに返したが、心臓はバックバクだ。
「んー……その真っ黒な姿に刀……もしかして、“船沈メ”?」
「海軍にまで伝わっているのでありますか? まぁ、そうであります」
海軍の船はなるべく無視して、海賊と戦っててもスルーしてたんだけどな……どこで観測されたんだろ。
いやむしろ助けなかったから目をつけられたのか?
クザンは頭をかきながら、あからさまに「めんどくさい」という気持ちを露わにした。
「まさかこんなところで、しかも休日に会うなんてねー。アンタ、海軍でも扱いに困ってる問題児なのよ」
「問題児とは、またなんというか」
「海賊船のみを執拗に沈めて、肝心の賞金首には全く興味なし。そのくせ船の金品はとっていく。そして沈められる船の多くが『刀で斬られた』断面をしている……こんな行動理由が不可解な人そうそういないよ」
不可解とまで言われてしまった。
まぁ俺の場合資材のためと、一時期は弟子やら元天竜人のために沈めてたからな。
海軍は艦娘なんて知らないだろうし分からなくて当然だ。
「懸賞金をかけようか迷うにも、商業船や連絡船を助けることもあるみたいじゃない。んもー扱いに困るよね」
「はぁ、別に助けられる人命を助けて損はありませんからな」
「でも海軍の船は無視する」
「貴方がたは仕事でしょう。職務をとっちゃあいけませんから」
えー、別にいいのにー。と青キジはまた頭をかいた。
俺としては早くここを去りたい。そして海賊船狩りに集中したい。
のだが……。
「海賊船に何か恨みでもあるわけ?」
「恨みは無いでありますなぁ」
「ふぅん……一応聞くけどさ、海軍に入る気はない?」
ハイ出た。お決まりのやつ。
ぜっっったい入らない。めんどくさいから。
クザン、サカズキ、ボルサリーノとかいうクセ強上司にガープなんていうおでんレベルの破天荒。確実に胃が死ぬし、天竜人に近いし、自由が無いし。
艦娘という唯一の種族を知られたら政府が何してくるかわからない。
マジ無理。
「断るでありますな」
「マ、そうだよね。アンタはなんか目的があって行動してんだろ? 海軍はそれに関わってないわけだ」
「海軍の船を沈めたり、一般人相手に略奪なんてこともしておりませんから、手配書は勘弁して欲しいでありますな」
「市民相手に何かしてないなら手配書出す理由も無いな。まぁ本格的なことは上が決めることだけどさ」
ここで会ったのがクザンで良かったかもしれない。これがサカズキとかだったら地獄やったやろなぁあの頑固親父。
はーこんな所に休暇で来んなよもー……とため息が漏れそうになった時、俺はカ号の索敵を察知した。
刀を構える。
「ちょちょちょ、なによ」
「海賊船の気配がしたであります。では、失礼するであります」
海上を滑走する。
海賊船が来たならしょうがねぇよな! ここで話打ち切ってもしょうがないよな!
ヒャッホー名も知らぬ海賊よ! 今なら一撃で沈めてやるぜ。
「敵艦発見」
「! お前は“船沈メ”! よくもおれの傘下の船を──」
言い終わらないうちに、「シラツユ」によってガレオン船を両断。デカかったのでついでに砲撃もしておいた。
一撃で沈める……? 自分は確実性をとるタイプなんで……。
「あららー、すごいね、ホント」
「うわっ、ついてきたのでありますか!?」
背後にクザンが自転車を漕いできたことに気づく。物見遊山です。と言ったように呑気にペダルを漕いできた。
「危ないでありますよ」
「ねー、せめて海賊船を沈める理由くらい教えてくれない? 単純に気になるんだよね」
海賊船を沈める理由ね……まぁ今は燃料だが、そんな弱点を海軍にいうのもアレだしなぁ。
適当に厨二病くさいことで誤魔化すか。
「……本能、でありますな」
「本能ぅ?」
「生きるために、必要な要素として海賊を沈めることがある……そう言うことであります」
間違っちゃいない。
海に出ないと艦娘としてはストレス溜まるし、海賊船を沈めなきゃ資材を安定して確保できない。本能的に敵艦は沈めなきゃと思うし、今はワノ国という守るものもある。
答えとしては抽象的だが、クザンにはこれで納得して欲しかった。
てかしろ。
「……詳しくは話してくれなさそうだね」
「自分はこのまま海賊船狩りを進めるであります。貴方は休暇中なんでしょう?」
「んんー、返答次第では海軍に連れて帰ろうと思ってたけど……悪いやつ、ってわけじゃなさそうだし。放置してあげるわ」
「感謝であります」
じゃーねー、とクザンは緩く手を振り、自転車を漕いで去っていった。
しかし海軍にも“船沈メ”として噂が広がっているのか……手配書は出てないとはいえ、やはり近づかない方が良さそうだ。
海賊は海賊で面倒だが、海軍も面倒な奴が多すぎる。一癖も二癖もあるやつしか生き残れない世界だ。
「……戦闘にならなくてよかった」
今のクザンの練度がどれほどかは知らないが、海を走る俺とは相性良くないからな、今どんくらいの階級にいるんだろうなー。
まだ若かったし、そこまで高くはないのかな?
会うと思ってなかったネームドキャラの現在を考えつつ、俺はまたカ号の反応に足を走らせるのであった。