更新頑張ります。
クソが。完全に後手に回らされた。
己の失態はあとで散々後悔するとして、まずはオロチだ。
将軍城は目の前。そのまま外郭に入ろうとするが、警備に止められる。
「貴女様は、九里大名代理のあきつ丸様!? 何故城に!?」
「悪いが、少し強引にお邪魔するであります!!」
「ええええええ〜!?」
足に力を込め、思いっきり地面を蹴る。土が抉れ、俺は一気に城の中腹の屋根に乗った。
もう一度ジャンプ。瓦が幾つか逝ったが、あとでスキヤキに謝ろう。
そのまま勢いで天守へ突撃する。錦えもん達には内部の部下の説得と事情説明を任せた。あとはオロチの隠した情報の接収だ。
俺は確実に天守にいるであろうオロチに向けて、先手必勝の居合を放つ。
「強襲型一刀流・居合『マツカゼ』」
ガラリと天守が揺れた。
内部に侵入すれば、バリアに守られたオロチが茣蓙に座っている。豪華な身なりだ。それだけで血管が切れそうになる。この怒りは、スキヤキの設定を忘れ出鼻が遅れた自分への怒りだ。
オロチは怯えていた。その横に控える琵琶法師……名前は忘れた……がバリアを張っている。
もう一度斬撃を放つ。
「強襲型一刀流・強撃『タカオ』」
二段による両手での振り下ろしはバリアに簡単に弾かれた。俺は舌打ちを一つ。厄介だ、この能力は。
「な、な、なんだお前はぁ〜!?」
「九里大名代理あきつ丸。スキヤキ殿を貶めた仇を討ちに来た者。さぁ、死ぬであります」
問答無用とまた秋茜を抜く。
「強襲型一刀流・覇王纏『ナガト』」
覇王色を纏った一撃でも、バリアは壊せない。どんな強度だよ。
俺はそのまま何度も斬りつけるが、やはり傷一つ付かなかった。
オロチは自分に攻撃が来ないとわかったのか、調子に乗り始める。
「なんだぁ、壁を突破できないじゃないか! 九里の姫様は随分美人だと聞いたが、どうだ、今ならおれの嫁になるなら許してやるぞ」
「反吐が出ることを言わないで欲しいのでありますな」
「安心めされよオロチ様……この『バリバリの術』はあのおでんの一撃すら防いでみせましょう」
琵琶法師の鳴らす音がうるさい。
ひたすら何百と斬撃を繰り返しても、バリアは微動だにしない。
オロチは笑っていた。
「スキヤキがどうなろうが、今の将軍はおれだ! おれに逆らったらどうなるか、わかっているのか!」
「微塵も? その臭い口をさっさと閉じるのであります」
「お、お、おれはこのワノ国一の権力者だぞ! 九里だってどうにでも──」
「やめだ」
俺は一度秋茜の連撃を止める。
このままでも埒が明かない。あの閻魔の一撃でさえ防いだバリアだ。やはりそう簡単には壊せない。
……この
「なんだ、諦めたのか?」
「ここからは手心なし。
少々被害は出るだろうが、しょうがない。この手はあまり使いたくなかったのだがな。
俺は艤装を展開する。今回は烈風は持ってきていない。資材をやりくりして開発した新装備「WG42(Wurfgerät 42)」。そしていつもの「15.5三連装副砲」を構えた。
「ここからは耐久勝負であります」
俺は思いっきり、自分が巻き込まれるのを覚悟で
爆音と共に天守が砕ける。瓦礫も降ってくるが、この程度では艦娘の肌を傷つけるには至らない。
バリアを見ると……少しだが、ヒビが入っていた。
俺はそこに集中して艤装と秋茜の覇王纏いをぶつけまくる。
余波で自分も損傷しているが、確実にバリアは砕けていっていた。
「な……な……!? おい、この壁は砕けないんじゃなかったのか!?」
「なんという衝撃……本当に人間の技なのか、これが……!?」
最初からこうしておけばよかったんだ。おでんが仇を取りたいだろうとおでんの帰りを待っていたが、もう我慢ならん。やってしまおう。
いや、聞きたいことはあるから生け捕りにしないとか?
何重もの爆発音と破裂音、そして剣の金属音が響く。秋茜はこの衝撃に巻き込まれないよう、しっかりと流桜で守っている。ミホークの師匠というものが刃こぼれなんてさせるわけがない。
天守はすっかり崩れ、もう青空が見えていた。民衆のざわつきは、爆発音で聞こえない。
「まっまて! おれにはカイドウっていう海賊がバックにいるんだぞ! 俺を殺したらそいつがワノ国に攻めてくる!」
「だから?」
「だから!? あ、アイツは四皇だぞ! 海の皇帝だ! お前なんかより遥かに強い!」
「だから?」
「や、やめろ、来るな! 来るなぁーっ!!」
最後のロケランの一撃によって、バリアは完全に壊れた。その隙を見逃さず、俺はもう一度「ナガト」を叩き込む。
わざとオロチは生かす。バリバリの実のクソ野郎は知らん。
腹を真っ二つにされて沈黙した琵琶法師を横目に、俺はオロチの頭を掴んだ。潰さないように細心の注意を払う。
「武器工場の資金源。輸出先。マネマネの実の能力者の居場所。全て吐くであります」
「や、やめ」
「あ?」
「ヒィぃっ!!」
オロチが人外の姿に変化しようとするが、それを覇気で止める。ゾロがモネの復活を気迫で止めた時のイメージに近い。
圧倒的な力の前に、人は抵抗の意思を簡単に無くす。オロチは戦闘慣れなんてしてないから、気迫で押せば簡単に情報を吐いた。
オロチは既にカイドウと接触していた。
武器工場を作り、武器を輸出するという事を条件に金を借り、こっそりと都の地下に工場を建設。そしてある程度武器が溜まったタイミングでスキヤキを蹴落とし将軍へ、そして好き勝手に生きる……。そういう計画だったらしい。
原作だとオロチがカイドウと関わり始めたのはもっと後だった気がするが、俺の存在なんかで少し時期が早まったのだろうか?
しかし既にワノ国がカイドウのターゲットに入っている以上、オロチの処遇をどうこうしようが確実に奴はワノ国に来る。
おでんの帰港が間に合えばいいのだが……。
「マネマネの実の能力者は?」
「あ、あ、アイツならお前がこっちに向かってると聞いてすぐに工場に向かった! あとは知らねぇ!」
「ふぅん……あらかた情報は聞き出せたし、もう用済みでありますな」
「いっ命だけは! 命だけはぁ!!」
この後に及んで、オロチは泣きながら懇願してきた。その汚い顔面に一発蹴りを入れて、にこやかに問いかける。
「砲撃か、刀か、選ばせてあげるでありますよ」
カタカタと震えるその姿に、将軍の威厳は無かった。
*
「姫様、偽装帳簿に失踪者のリストを発見いたしました」
「家来達への情報共有も完了です」
俺が天守から降りてくると、雷ぞうと傳ジローが駆け寄ってきた。それぞれの任務を果たしてくれたようだ。
天守では派手に暴れたが、家来たちに怪我人はいないらしい。
良かった、と艤装を仕舞う。
「城を随分と破壊してしまいましたが……後でスキヤキ殿にしっかり謝らねば」
「姫様、例のバリアはどうやって……?」
「力技で自爆覚悟で砲撃を繰り返したであります。おかげですこし艤装に傷がついたでありますな」
状態としては中破寄りの小破といったところ。煤がついた頬を拭い、俺は秋茜を腰に差し直す。
雷ぞうは一度集めた資料を九里城に。
傳ジローはこのまま城に残って家来たちと城の修繕とオロチの死を知らせる事。
俺は二人にそれぞれそう命令を出すと、都の少し外れ、郊外と言っていい場所に走り出した。
そこに、武器工場がある。
既にどれだけの武器がカイドウに流れているかは知らないが、錦えもん達は無事に工場を潰せているだろうか。
脳内に叩き込んだ地図を頼りに、ひたすら町の中を屋根伝いに駆けていく。
オロチは始末した。工場も壊せるだろう。
あとはカイドウとその傘下の首だけだ。