あきつ丸(仮)が往く!大海賊時代特殊任務!   作:月日は花客

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44:あきつ丸、おでんヲ迎エル!

 

 トキが正式なおでんの正室だと発表された時、ワノ国は少し荒れた。

 あきつ丸様は!? 黒姫様とは遊びだったのか!? と一部の人間が騒ぎ立てたのである。

 中には目安箱に直接投函してくる者もいた。

 街を歩けば、おいたわしや黒姫様……と酒を渡されたり、息子を紹介されたりと町人が集まる。

 正直、面倒くさいことこの上ない。

 

 トキも未だ肩身が狭い身の上。俺たちは根気強く百合活動を続けていった。

 数週間で噂になり、数ヶ月で日常になり、半年も経てば当たり前になった。一年も経てば、一人で町を歩いていること自体が不思議に思われる。

 今やあきつ丸とトキはズッ友だョ……という認識はワノ国では当然となっている。

 トキも個人で民衆の仕事を手伝ったり、愛想良く対応したりと支持を集めることを怠らなかった。

 今や九里は俺とトキの二大姫様を掲げる「美姫の里」とすら呼ばれている。

 

「あきつ丸様、そろそろ休憩されては如何ですか」

「ん? いや、今ちょうど計算が……」

「あきつ丸様?」

「その……」

「あきつ丸様??」

「はい……」

 

 トキは強かった。

 流石原作でもあのおでんを落とし、九里を守り、侍を未来に託した女である。彼女の笑顔の圧には俺も逆らえない。

 赤鞘達は「姫様が素直に筆を置いた!?」と驚いていたが、あの笑顔おっそろしいんだ。笑顔だけど般若が見える。

 素直に従わないと般若が修羅に進化するので、俺は大人しく算盤から手を引いた。

 

「んーっ……トキ殿、モモの助殿たちは昼寝中でありますか?」

「はい、でもあんまり寝させると夜眠れなくなりますから、そろそろ起こさないと」

「子育てというのは大変でありますなぁ」

 

 日和はまだ大人しくてマイペースなのだが、モモの助は夜泣きは酷いわ気づいたら女中を追っかけて部屋を出ているわで大変そうだ。

 多人数に世話されるというのもまだ慣れないのか、トキがいないと高確率で泣いている。それを無視して日和は横でお絵描きなんかで遊んでいるというのがシュールだ。

 いや、まだ一才と少しなのだから存分に泣けばいいと思うが、それに対応しなければならないトキや女中の苦労は計り知れないだろう。

 トキの方こそ、子育てによる疲れが若干顔に出ているように思えた。

 

「モモの助はよく泣きますし、日和は大人しいですけど少し言葉が遅い気がして……女中に任せられるわたしはまだ余裕がある方です」

「自分はそう言った方面はとんと無知でありますからなぁ……協力できず申し訳ない」

「そんな! あきつ丸様にこれ以上なにも求められませんよ」

 

 ミホークは既にある程度自立していたし、ドンキホーテ兄弟は食べ物を与えていただけだし、ここまで小さいと何もわからない。

 おぼろげに前世の家庭科なんかで習ったことを思い出そうにも、流石に年月が離れすぎて正解か不正解かわからなかった。

 実習でドラゴンのエプロンを作ったことは覚えているのだが。

 

「わたしが正室になったということは、モモの助はいつかの将軍。その為にも、健やかに育てることがわたしの仕事です」

「将軍に姫君……。二人の将来が楽しみでありますな」

 

 モモの助は将来大物に育つし、日和は国民に愛される姫君となる。そこに存命のおでんとトキが加われば、ワノ国に怖い者なし。

 だからこそ、ここまで何も動いてこないカイドウが不気味なのだが……。

 

 ふと、港の方が騒がしいことに気づく。今日は索敵のカ号を飛ばしていなかった。

 ドタバタと赤鞘達が部屋に入ってきた。

 

「姫様! トキ様!」

「白ひげの船が……! おでん様が帰ってきました!!」

 

 その言葉に、トキが口を手で覆った。

 ようやく帰ってきたか、あのろくでなし。

 すぐに行くと伝え、俺は外套と秋茜を纏いトキの手を引いた。

 モモの助たちにはまだ眠っていてもらうことになりそうだ。

 

「白ひげ殿!」

「久しぶりだなぁあきつ丸! おでんのお届けだぜ」

「これは……ずいぶん豪華なニュース・クーでありますな」

 

 港に行けば、あのモビー・ディック号が停められている。

 白ひげはいつものように酒瓶を手に持って、笑っていた。他の面々も変わりなさそうだ。むしろメンバーが増えたか?

 

「おう、あきつ丸! 帰ってきたぞ!」

「おかえりなさいであります。ろくでなし」

「おかえりなさいませこのろくでなし」

「おれに対する扱い酷くねぇか!?」

 

 うるせぇこんな美人な嫁さんほっといて冒険に出るお前はろくでなしや。

 たとえそれが海賊王に必要なピースだったとしても男としては立派なろくでなしよ。

 

「おでん様っ……!」

「トキ……っ!」

 

 トキがおでんに抱きつく。それにおでんは感激したように抱きしめ返した。

 誰かが「ヒュー」と口笛を吹いたが、それ以外は何も言わない。

 俺としてもあの二人に関してはごちそうさまですくらいしか思うことねぇや。

 

「息災のようでなによりであります。白ひげ殿」

「グララララ、おれたちぁ白ひげ海賊団だぜ? 息子達にモビーがいりゃ、沈むこたぁねぇのさ」

「親父……!!」

「ふふ、モビー殿も元気そうでなによりであります」

 

 モビーは今回どうやって滝を登ってきたのか聞くと、白ひげの薙刀の斬撃の衝撃で突破してきたのだという。俺が一度見せただけの技を完璧にコピーして、しかも数年越しに成功させたというのか。とんでもねぇや。

 

(久しぶり、あきつ丸。元気だった?)

(ええ、そちらこそ、大切に扱われているようで何よりであります)

 

 モビーは前回見た時よりもピカピカに磨かれ、船体にフジツボのひとつもなかった。余程大事に掃除されているのだろう。

 知っている船が大事にされているとこちらも嬉しくなる。

 

「おでんがいねぇ間、ワノ国はどうだった?」

「オロチを討ち取って以降は概ね平和であります」

「そうか……」

 

 白ひげはここでグビリと酒を呷った。

 少し、彼の纏う雰囲気が変わった気がする。

 おでんも、トキから離れてからはどこか肌が張っているように見えた。

 おでんがあれこれと報告する赤鞘を少し待たせ、こちらに近づいてくる。

 

「あきつ丸……カイドウがワノ国に向けて出発している」

「っ……!! 遂にでありますか」

「おれがおでんを運んだことも重要なんだろうな。あいつぁまともに喧嘩できるやつに飢えてる。ロジャー海賊団の活躍でワノ国の侍の強さは知れ渡った。おれとおでん、そしてまだ見ぬ強敵を求めて……って具合だろう」

「……傍迷惑な思考でありますな」

 

 おでんの強さはワンピース世界でも上澄み。そこに白ひげも加わるとなれば、カイドウの琴線には十分触れるか。

 オロチとの作戦は失敗したが、ならもっと直接的にアプローチすれば良いと考えてもおかしくない。

 

「その情報はどこから?」

「世界経済新聞が、カイドウが動くとぎゃあぎゃあ騒いでやがる。あれは手段こそあれだが情報は信頼できるからな。航路を予測すれば自然とワノ国を狙っていることに辿り着いた」

 

 あー、あの、なんだっけ、でかい鳥がやってる新聞屋。

 ワノ国にはニュース・クーも来ないから、外の情報は入ってこないのだ。白ひげ経由で知れたのはでかい。

 すぐにスキヤキに報告、国の防衛を強化し、おでんと打倒カイドウの作戦について話し合わねば。

 

「白ひげ殿……貴方にもカイドウ討伐に協力を要請したい」

「グララララ……あいつぁちとおいたが過ぎるからなぁ。モビーの恩人であるお前に言われずとも、無理矢理にでも参加するつもりだったぜ」

「助かるであります。おでん殿、ここ数年のワノ国の情報共有は城で。白ひげ殿も計画に参加する以上、『海賊侍同盟』としてきっちり作戦要項を立てるであります」

「ああ……わかった!」

 

 ついにカイドウ戦か。秋茜が今すぐにでも戦いたいと言うようにガタガタと鳴る。

 それを宥めつつ、俺はカン十郎に頼みカラスをスキヤキに飛ばした。

 決戦のその時までに、やれることはなんでもしなければ。

 

「白ひげ殿、カイドウのワノ国到着までの期間はどれほどで?」

「全速で三日ってところか? グランドラインは何が起きるかわからねぇ。前後してもなにも不思議じゃない」

「思ったより猶予がないでありますな……おでん殿、閻魔と天羽々斬の具合は?」

「絶好調だ! 今なら城の天守も斬れる!」

「それは自分が前斬ったであります」

「えっ」

 

 カイドウ戦、迎え撃つはワノ国全土と白ひげ海賊団。

 この国の未来を確定させる戦いは、もう始まっている。

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