あきつ丸(仮)が往く!大海賊時代特殊任務!   作:月日は花客

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5:あきつ丸、刀ヲ貰ウ!

 

「おぬしは何故刀が欲しい?」

 

 飛徹の視線は鋭かった。

 いくつもの刀がカゴに入れられた工房、染み付いた鉄の匂いと炭の煙たさがここを刀を作る場所だと知らしめてくる。

 あちこちに玉鋼や砥石があり、中には気に入らない出来だったのか折られた刀の破片すらある。

 飛徹という男はストイックに刀を作り続ける職人気質らしい。

 

「自分は、しがない旅のものであります。どうにかここまで旅をしてきましたが、どうにも近接戦が心許なく……ワノ国の刀はそれはもう業物ばかりと噂を聞いて、気になったのであります」

「護身用か。だがわしも半端な実力の者に渡す刀は無い」

 

 飛徹はガサゴソと棚を漁り、一本の木刀を放ってきた。キャッチしたそれは、俺の背丈に馴染む打刀のサイズ。くるりと回せば、すんなりと手に馴染んだ。

 頭の中に、経験したことないはずの軍刀の動きが染み込んでくる。デジャヴにも似た既視感が木刀を持つ手と重なった。

 

「立ち合え」

「戦えるのでありますか?」

「馬鹿者、刀を打つ者が刀を扱えなくてどうする」

 

 飛徹はそう言って外へ出る。流石に室内で模擬戦をするわけにはいかない。

 村の隅、人の来ない平坦な空き地で、飛徹は構えた。まっすぐにこちらに刃を向け、体の真正面に木刀がくるようにしている。青眼の構えだと史実のあきつ丸が囁く。

 対してこちらは、上段、木刀を頭上に控えさせる形の構えだ。こちらは天の構えと言う。

 俺は意識を少し落とし、史実のあきつ丸の記憶を呼び起こす。訓練や実戦の様子、艦船に染み込んだ鉄の気配と鯉口の音。

 精神統一。

 

「──ふっ」

 

 先ずは構に沿って上段、正中線にそって振り下ろす。しかし当然読まれていて、斜めに傾けられた刃によって弾かれた。その際、上ではなく斜め下に弾かれるように力を入れる。

 返す手で逆袈裟に切り掛かるも、これも流される。その隙に胴に一閃入れられそうになるが、ここはフィジカルで防御の弾きを入れて間一髪セーフ。

 そのまま一度距離を取り、構え直す。今度は刃を顔の横に持ってくる霞の構えだ。

 

 今回の俺の戦略は超攻撃的なスピード特化型。

 フィジカルは艦娘クオリティなので、それに任せつつ相手の頭〜胸元を狙う。防御より火力を重視した脳筋のやり方である。

 飛徹は防御を重視しつつ、隙があれば一本入れてくるカウンター型と見た。

 俺としては、体格差がある分スピードと確殺の一撃で勝負を決めたいところ。

 

「──ハッ」

「なんの!」

 

 数度の打ち合いをしていると、だんだん周りに見物客ができてきた。

 木刀故に、本気の殺し合いではないと判断したのだろう。というか、飛徹は何度か似たようなことをしてきているのではないだろうか、村人たちから「またか」という雰囲気を感じる。

 中には酒を持ってきてどちらが勝つか賭けている者もいる。ええい見せもんじゃないぞ。

 

「なかなかやるようだな」

「修羅場を潜ってきていると言ったでしょう」

 

 ギアを上げ、連撃を重ねていく。大きく飛び、居合の構えから一点に集中させる斬撃。

 ガリガリと木刀が削れていく音がした。

 おそらくだが、艦娘の力に木刀がついていけてない。折らない程度に力を抜いているが、それでも持ち手からミシミシと音が伝わってきた。

 飛徹もなんとか防いでいるが、剣戟によって滞空している俺の一撃は重く、弾くだけで精一杯と見える。

 

 ラスト、左斜めから叩きつけるような一撃によって、お互いの木刀が同時に折れた。

 

「む……耐えられなかったでありますか」

「おぬし、なんという馬鹿力だ。本当に人間か?」

「その質問にはノーコメントでありますな」

 

 自認的には、人よりは船寄りである。

 

「ところで、これで認めてもらえたでありますか?」

「まぁ及第点だ。但し、わしの刀を同じように折ったら承知しないぞ」

 

 そりゃそうだ。今回は「斬る」というより「叩く」であったので耐えられなかったが、真剣を手にしたからには折らないよう細心の注意を払う。

 刃こぼれすらも己の恥と思え。というやつである。

 

「籠にあるものは全て売り物だ。好きに選べ」

「では吟味させていただくとしますか」

 

 どうせなら気に入りの一本を見つけたいところ。たしか閻魔はおでんが持っていくので、それ以外で……無銘でも号付きでもいい。取り敢えず持ちやすいもの……。

 様々な長さの日本刀が籠に詰められている。籠自体も幾つもあり、何十本もの刀が選択肢として目の前に並んでいた。

 

「ふむ……」

 

 大きすぎるものは除外、逆に短すぎるものも除外。ピンとくる刀を探すため、ガサゴソと籠を漁っていく。

 ふと、籠の中の奥の奥、まるで隠れるように、黒い鞘の打刀が立てかけられていた。

 

「これは……」

「なっ、おぬしそれをどこで!?」

「え? 普通にこの籠の中にあったでありますな」

 

 一見普通の刀に見えるのだが、その菊があしらわれた鍔を見て、飛徹は明らかに顔を顰めた。

 

「そこにおったのか、問題児め……」

「問題児?」

「それは大業物『秋茜』。……妖刀だ」

 

 妖刀。

 ゾロの三代鬼徹やローの鬼哭なんかがそうだ。あと閻魔もか。

 持ち主は早死にしたり、数奇な運命に見舞われたり。まぁ、良い噂は聞かない。

 それがこんな籠の中にポイっとあったのは何故か。

 

「そやつは気まぐれでな。いつの間にかあっちこっちに移動するわ、(なまくら)のようにやる気がない時があれば、名刀も真っ青の切れ味を魅せたりする。とにかく気分屋で面倒な妖刀なのだ」

「ほう……それで、今回はこの籠の中に隠れていたと」

 

 抜き身を見てみても、なにか物騒な気配は感じない。普通の刀に見える。

 なだらかな乱れ刃は美しく、灯りを反射し白銀に光っている。血の気配など微塵もない美術品にすら思えた。

 それが妖刀なのだから、人によっては信じられないかもしれない。

 

「面白いでありますな。この子に決めても?」

「良いのか? 扱いづらいぞ」

「扱いづらさ、と言われると自分も似たようなものでありますからなぁ」

 

 揚陸艦は使い所を上手くしないとただの劣化空母だ。あるいは劣化海防艦か。

 自分も気まぐれとは自負しているし、似たもの同士仲良くなれそうだ。

 

「それに、名前が良い。秋茜と秋津。うん、お似合いであります」

「気に入ったのならそれでいい。持っていけ」

「いくらでありますか?」

「そいつはわしも手を焼いていたひねくれ者だ。代金は要らんから上手く使ってやれ」

「それはどうも。せいぜい使いこなしてみせるであります」

 

 黒の鞘に金の柄。菊が咲く鍔。あきつ丸の雰囲気になんとも似合っている。

 

「試し切りがしたいのでありますが」

「外を左に曲がったところに竹がある。それを使えば良い」

 

 表に出てみれば、時代劇とかゲームで見る竹が並べられている的があった。

 斜めに切るのを見かけるアレだ。正式名称は知らない。

 

「さ、お手並み拝見でありますよ」

 

 鍔をトントンと叩き、抜刀する。

 キラリと竹林から溢れる陽の光を反射して、一閃。袈裟斬りに斬りかかる。

 

 瞬間、竹の的どころか奥の竹林すらも切れた。

 地面には斬撃の跡がはっきりと残っている。

 

「……やる気十分でありますか?」

 

 倒れる竹林を眺めながら、俺はそっと呟いた。

 この刀、想像以上にじゃじゃ馬だぞ。

 

「これでは確殺の流れは変わっていないのでは?」

 

 これ程までにやる気を見せられると、手加減用に買ったのだとは言いづらい。人に斬りかかれば余裕で骨ごと真っ二つ間違いなし。

 なんなら船も余裕で斬れそうだ。

 

「なんだなんだ、随分懐かれたな」

「予想以上の切れ味でありました」

 

 飛徹もこれには驚いているようで、家屋から出てその結果を見て腕を組んでいた。

 これは少し訓練しないと余計な被害を生む。秋茜にはやる気を抑えることも覚えてもらわねば。

 

「よく切れるのはわかったから、取り敢えずどこかに隠れるのだけは止めて欲しいでありますな」

 

 腰に佩いていたのにいつの間にか……なんてことが起こったら笑えないのでね。

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