あきつ丸(仮)が往く!大海賊時代特殊任務!   作:月日は花客

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大海賊時代の始まり
52:あきつ丸、東ノ海へ行ク!


 

 白ひげと別れて数日。

 俺は久々の一人の時間を謳歌していた。

 青い海を一人で自由に進む爽快感! これよこれ。

 カイドウという重荷が無くなったのもあってさいっこうに気分が良いぜ。

 ワノ国救済とカイドウ、キングとの接触なんかで資材もガッポガッポだし、これはしばらく海賊狩らなくてもいいかもな。まぁ狩るけど。デイリー大事。

 のんび〜り海を進みながら、俺は次の目的地なんかを考えていた。

 このままダラダラと海を放浪するのもいいが、近い救済任務に駆けつけられる距離であるといい。

 

「あ、そういえばもうすぐロジャー殿が処刑されるでありますな」

 

 ローグタウンでだったか。東の海のどっかにあるわりと栄えた町だ。

 そうだ、ローグタウンに行こう。

 ロジャーの死を止めるつもりはない。てかあそこで死ぬのは本人も望んでいただろうし、死なないとそもそも大海賊時代が始まらないからだ。

 さてここはグランドライン「新世界」。こっから東の海へ行くにはレッドラインを越えねばなるまい。なんだっけ、双子岬だっけ?

 レッドライン上には聖地マリージョアがあるから上は無理。下には魚人島があるが俺は潜水艦ではないのであそこまでの深度の潜水は不可能だ。

 まぁ双子岬ルートが正解かな。あそこ確かなんかデカいクジラおったよな。ラブーンか。

 もう既にあそこにクロッカスがいるかは知らないが、知り合いみたいなものだし顔パスで通してくれるだろ。たぶん。

 俺は妖精さんの羅針盤に従い、双子岬に向かうことにした。この羅針盤は信じていいやつ。たぶん、おそらく、きっと、メイビー。

 

「お、海賊」

 

 レッドラインが近くなるにつれ、そこから来たばかりなのか新米そうな海賊の姿がちらほら見えるようになっていた。

 おそらくグランドラインに挑戦中のまだ若い海賊で、グランドラインに入れてイキっているのか俺にも積極的に攻撃してくる。

 よくわからんものは取り敢えず攻撃しとけばいいの精神なのだ。

 触らぬ神に祟りなしという言葉を知らないのだろうか。

 帝国軍人として売られた喧嘩は買うので、哀れルーキーはここで沈むこととなる。グランドラインをあまり舐めない方がいい。こういう輩がゴロゴロいるんだからな。

 

 弾薬節約でガレオン船を一刀の下斬り捨て、俺はまた海を進む。

 爽やかな風と波飛沫が気持ちいい。

 ちょくちょく海賊を斬り捨てながら二日ほどで双子岬には到着した。

 

「うん? お前さんはワノ国にいた……」

「あきつ丸、であります。所用あってグランドラインを出るので、通っても?」

「ああ、構わん。しかしお前さんのような実力者がグランドラインを出るというのは何か大事な用があるのか?」

「そもそも新世界生まれでして、様々な海を見てみたいのであります」

 

 ロジャーの処刑のことは、もう知っているかもしれないが言わなかった。わざわざ知り合いの死刑を見に行くという行為はなんというか不謹慎だろう。

 クロッカスはふぅんと頷くと、灯台前の椅子に座り直した。通ってよし、ということだろう。

 ラブーンはまだ海中にいるのだろうか、出てこなかった。

 まぁあれだけのデカさのクジラに浮かんでこられると流石にこちらも転ぶかもしれない。ミーハー心は抑え込んで、リヴァース・マウンテンを降りた。

 

 さて、東の海へ来たわけだが……今はロジャーの処刑の何日前だろう? もしかしてもう処刑されてしまっているだろうか。

 こういう時手っ取り早いのは新聞だ。

 ニュース・クーを探し、新聞代を払って一部もらう。東の海は平和だからかニュース・クーはよく飛んでいた。

 新聞見てみれば、一面にしっかり「ロジャー処刑まで」のカウントダウンが載せられている。カウントは3。これは少し急いでローグタウンに向かわないといけないぞ。

 妖精さんの羅針盤! 頼んだ!

 なんかそもそも羅針盤を回すこと自体がおかしい気がするが頼んだ!

 

 全速で羅針盤に従って海を進んでいく。さすが東の海。波だけでも本当に大人しいぜ。

 船も連絡船商業船ばっかだし、数分進めば海賊とぶち当たる新世界とは大違いだ。

 最弱の海、なんて呼ばれているらしいけど、平民としては東の海生まれは大正解なのでは?

 俺としては海賊がいた方がデイリーが進むから東の海の居心地がめっちゃいいわけではないが。やはり暴力がないと軍艦は生きていけないのだなぁ。

 グランドラインほど過酷な海では全くないので、すんなりとローグタウンに着くことができた。やはりそこそこ栄えている。

 どうせなら屋台の串焼きでも買おうかな、なんて上陸してからコツコツと町を歩き回る。

 なんだか人が多いように感じるのは、やはり海賊王の処刑の場所だからか。物見遊山の人間も多いのだろう。

 処刑は昔の娯楽とも言うし、今回のロジャー処刑も平民にとっては立派なエンタメなのかもな。

 俺としては理解し難い感性だが。

 俺は屋台で買った三段アイスを舐めながら、適当にフラフラうろつく。

 

 ふと、見聞色の覇気に見知った色が引っ掛かった。

 それは処刑場の近く、狭い路地と小さな窓しかない密室に囲まれた牢屋だった。

 俺はこっそりと牢屋前の扉の南京錠を妖精さんに開けてもらい、入る。

 見張りはいないが、昼休憩にでも行っているのだろうか?

 

 牢屋の中にはロジャーがいた。

 処刑まではここで留置されているのだろう。海楼石の鎖でぐるぐる巻きにされ、ガッチガチに錠で固められている。

 その姿は明らかに囚人であるのに、やたらと威厳のある姿だった。

 

「随分と丁重に扱われているのでありますな」

「ん……? おお、あきつ丸か! 久しぶりだな!」

 

 ロジャーは前会った時より幾分かか細げな声で応答した。病が末期まで進行しているのだろう。

 しかしその快活さは衰えておらず、こんな状況でもニカッと笑ってみせる。

 

「ワノ国から出てきたのか! おでんは元気か?」

「それはもう無駄に元気でありましたよ。ロジャー殿は処刑まで暇そうでありますな」

「ああ、新聞のひとつでもくれりゃいいのによ。海軍ってのはケチだぜ」

「今日ので良ければ見せるでありますよ」

 

 俺は片手で新聞を持ち、ロジャーの前に掲げた。

 一面には本人の処刑カウントダウンが大きく掲載されている。

 

「へぇ! こんなカウントダウンまでしてくれんのか、豪勢だな」

「ローグタウンは大勢で賑わってるであります。貴方の処刑を見るためでありましょうな」

 

 新聞をしまい、溶け始めたアイスを口に含む。ナッツの入った紅茶風味の冷たさが口一杯に広がった。

 

「そりゃいいや。死ぬ時は派手なほど死にがいがある。……なぁ、そのアイス一口くれよ」

「これが最後の晩餐でいいんでありますか?」

「んなもん今更気にしねぇよ、ほら」

 

 ベロ、と大口を開けるロジャーに、しかたなし牢屋の隙間からアイスを差し出した。

 すると、三段アイスの根元、手に持っていたコーンのギリギリまで一気に持っていかれた。

 

「あー! それは酷いでありますよ!」

「『一口』は『一口』だ! へへっ冷え〜!!」

 

 頭いてぇ〜!! とロジャーはアイスクリーム頭痛に頭を抱えようとして、海楼石に阻まれた。

 ふん、俺のアイスほぼ丸ごと持っていったんだ。自業自得である。

 丸ごと持ってかれすぎてもう楽しみも何もないので、残りのコーンの部分もあげた。次は五段を買おうかな。

 やっと頭痛が落ち着いたらしいロジャーは、なにやらニタリと笑った。さっきよりも悪い奴がする、“海賊”の笑みだ。

 

「あきつ丸、おれはもうじき死ぬけどよ、世界はもっと面白くなるぜ」

「面白く?」

「おれが見つけた財宝を求めて、世界の秘密を求めて……今よりもたくさんの海賊が海に出る! 時代が変わる!」

「それは……大海賊時代とでも言いましょうか」

「それいいな! そうだ、大海賊時代だ。海はもっと戦場になるし、強え奴が大量に出てくるだろうよ」

 

 見れねぇのが残念だ! とロジャーは笑う。

 

「あきつ丸! 最期におれに会ったよしみだ、おれの願いを聞いちゃくれねぇか」

「なんでありますか?」

「お前は『船』なんだろう? ならよ、世界を渡って見てきてくれよ。おれが見れない、おれが死んだ後の面白え世界ってやつを!」

「ロジャー殿の代わりに? 大海賊時代を見届けろ……と?」

「ああそうだ! お前はきっと歳もとらねぇ、強さだって十分ある。海も簡単に渡れる。これからのこの世界を見る特等席にお前は座ってる」

 

 ガチャガチャと鎖が鳴る。それすらもロジャーの笑い声に聞こえた。

 

「オーロ・ジャクソン号は世界の果てを見た。なら次はお前が、時代の果てを見てくれ! おれはそれを天の上から眺めてっからよ!」

「……アイスを取られた挙句、とんでもない使命を下されたであります」

「いいじゃねぇか、お前だって次の時代の行く末って奴が気になるだろ?」

「はー、海の男ってのはこれだから!」

 

 まぁ、救済だの接触だのの任務がある時点で俺が世界を渡る事は確定している。

 ロジャーは野生の勘でそれを察しているのかもしれないな。

 それにしても、数回会っただけの相手にデカいものを背負わせすぎだろう。おでんを超える破天荒め。せめてアイスの代金くらい払いやがれ。

 

「大海賊時代特殊任務だ! お前の瞳を通して、おれに激動の時代ってやつを魅せてくれ!」

「…………はぁ〜、しょうがない……。やるでありますから、きっちり時代の始まりを盛り上げて死んでくれであります」

「おうよ! 頼んだぜ」

 

 と、ここで見聞色に海兵らしき気配が引っ掛かる。どうやら時間切れのようだ。

 

「では、素晴らしい死に方を期待しているでありますよ」

「任せとけ! いやぁ楽しみだなぁ!!」

 

 自分が死んだ後の話をこんな楽しそうにする奴、見た事ないぞ。

 俺はその笑い声を背後に、海兵に見つからないよう速やかに牢屋のある部屋から出た。路地を抜けて、大通りに出れば、誰も俺とロジャーが会っていた事なんてわからない。

 覇気で簡単に壊せてしまうからか、あの部屋に監視の電伝虫は置かれていなかった。

 

「はぁ……大海賊時代特殊任務ね……」

 

 任務、と言われたらやらなきゃって思うのが帝国軍人の習性なんだよな……それをうまく利用しやがって。

 

「受けてやるから、派手に散るであります」

 

 俺のその言葉は、雑踏の声によって誰にも聞かれる事はなかった。








ファンアートを頂きました。
あらすじ欄のほうに掲載してあります。
キャッホーーーーーーー!!!!!!!!!
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