あきつ丸(仮)が往く!大海賊時代特殊任務!   作:月日は花客

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64:あきつ丸、考エル!

 

 ロビンを助けるだけなら、ぶっちゃけ今すぐにワノ国なり誰も知らない島なりに連れて行けばいい。

 それを俺がしないのは、それがロビンの精神にとって良くない事をわかっているから。

 

 ロビンは聡明だが孤独で、人の温かさに飢えていると思う。今まで大人にも子どもにも冷たく当たられ、学者たちもいつも一緒にいるわけではない。

 そんな彼女から全知の樹という居場所も知識を吸収できる本も取り上げて、ただ命を長らえさせるために異国へ連れていくのは酷い事に思えた。

 俺に依存されては困るし、ロビンがポーネグリフ研究によって本当の学者になる事を望んでいるのを知っている分、今すぐ逃げると言うのはやりにくい。

 

 では学者や全知の樹の本まるごとワノ国になり持っていくのはどうか?

 という思考になるのだが、学者連中はそれを良しとするかどうか。そもそも俺の言う「オハラが滅びる」というのを信じて、さらに次の居場所を託してもらえるかと言う話になる。

 結局、ロビンの信頼を勝ち取れても学者たちを助けるには学者たちの信頼を別で得ないといけない。

 今の状態を乙女ゲームに表すなら、メインヒロインのロビンは好感度マックス。完全にルートに入った。しかしそれ以外の学者たちの好感度はまちまち。ハーレムルートに行くにはステータスもコマンドも足りないし、エンディングまでのターンもかなり近くなってきている。

 爆弾処理に追われないだけまだマシだが、ときめきでメモリアルなエンディングに辿り着くには色々と不足している。何よりこのままだと伝説の樹が燃やされる。

 うん、まず優先すべきは学者たちの説得。および好感度上げ。

 ロビンがポーネグリフを読めるようになるかはこの際置いておこう。それはもう彼女次第だし、ロビンがポーネグリフを読める事をうっかりバラさなければいい。

 オルビアに会わせるかどうかは、多分だが会わせられない。彼女と会ってもオルビアは自分が母親である事を隠さなければならないし、感情が決壊したロビンが何を言い出すかわからないからだ。

 なによりオルビアが帰ってきたイコール、オハラがバスターコールをすぐ受ける事になるからだ。

 

 一番大団円というか、生存者数が多いのは民間人を避難させ、ロビンと学者たちを別の島に移動させるルート。

 オハラをもぬけの殻にすると言う事だ。

 オルビアやサウロは無人のオハラに着くことになるし、色々諦めないといけないものもあるだろうが、生き残れるルートはこれ。

 俺の背嚢に限界まで積めば全知の樹の本は大体収納可能だ。俺が学者たちが乗る船を曳航するなり護衛するなりして安全地帯……ワノ国までいけるかはわからないが……まで連れていく。

 問題は学者たちがそれを許容するかと、民間人が素直に避難してくれるかどうか。

 

 もし学者たちが島に残る事を選択したのなら、民間人は避難させるとしてロビンをどう説得するかになる。

 ロビンは恐らくだが学者たちと一緒に最後を共にすると言うはず。

 そうなるとロビン生存ルートがかなり細くなってしまう。

 ロビンはあれでかなり頑固だし我が強い。本気で抵抗されると無理矢理島を出るルートしかなくなる。俺がロビンに嫌われるのは最悪いいが、その後のロビンの旅や生存戦略を考えるとどこかにロビンを預けると言うのは不安に思える。

 学者の中で一人だけ生き残るロビンの精神状態も心配だ。

 

 一番最悪というか、任務失敗がバスターコールや避難先でロビンが死ぬ事。あと俺の存在が政府に危険視される事。

 旅人という立場があるからこそ人混みでも自由に動けたり、警戒されないわけで……。

 これで懸賞金がついたりしたら面倒この上ない。

 今後も色々と動いていく予定があるのだから、お尋ね者になるのは避けたかった。海軍には既に色々噂されているらしいが、捕縛とかそういう話にはなっていないようだし。

 バスターコールなぁ、クザンがいなければゴリ押しもいけたかもしれないけど、ヒエヒエの実がほんと嫌。海凍らせるってさぁ、能力者としてチートじゃない?

 俺砕氷船じゃないから。冷たいのも普通に無理だし。

 次期大将が二人もいるバスターコール、どんだけオハラのたどり着いた真実を政府が隠蔽したかったかわかるね。

 

 ここまでで一言。

 

「難易度高……」

 

 俺は机に頭を打ちつけた。ゴンと痛そうな音が鳴るが、俺にダメージは一ミリもない。

 色々考えたが、学者たちの反応でこの先のルートが大きく変わる。

 しかしその学者たちが手放しで信頼できるほどの関係構築はまだできていない。

 ポーネグリフ研究を知っている時点で俺がスパイだと思われてもおかしくない。そうなると子どもであるロビンから懐柔したクズになってしまう。

 いや、ロビンの好感度上げたら他のメンバーの好感度も勝手に上がるだろと思ってたのは事実だった。クズは俺です。

 

「あきつ丸さん、大丈夫? 物音がしたけど」

「ああ、気にしないで欲しいのであります」

 

 扉越しにロビンから声をかけられた。

 ロビンはあれから更に考古学の勉強に集中し始めた。何が何でも博士号を取ってやるという気概を感じる。

 

「……あー、いや、ロビン殿の意見も聞きたいであります」

「入っていい?」

「どうぞ」

 

 ロビンがガチャリとドアを開けた。

 俺はスツールに置いていた本を机にどけ、ロビンをそこに促す。

 大人しく座ったロビンに、これからのオハラのことを話した。

 

「オハラに軍艦が迫るのはあと二、三年ほど後。それまでに学者の方達や民間人を避難させたいのでありますが……」

「どうやって避難させるかってこと?」

「そうであります。誰しもがロビン殿のように未来のことを信じてくれるわけではない。学者達にとっては未来を見たとはいえポーネグリフ研究を知っている自分こそ怪しいと思われてもおかしくないであります」

「うーん……ポーネグリフ研究についてはわたしがあきつ丸さんにバラしたって事にする? 時系列を操作するの」

「時系列を?」

 

 ロビンが言いたいことは、つまりロビンがポーネグリフ研究を俺にバラしたことによって俺が見聞色を発動、オハラの滅亡を見た。

 という流れに本筋を組み替えるということだった。

 これなら俺が何故ポーネグリフ研究を知っていたのか明確だし、ロビンが既にポーネグリフ研究を知り、そこを目指して博士号を目指しているのだとわかる。

 少しは信じやすくなるだろう。

 

「なるほど……ロビン殿はそれでよろしいので? きっと怒られるでありますよ」

「いいの。たぶん博士号を取ったら自分から言っていたし。なによりオハラが滅ぶってわかってたらなりふり構ってられないもの」

「その場合、一芝居打つのも手か……ロビン殿、演技力に自信は?」

「え?」

 

 人間、同情心には弱いぜ。

 

 *

 

 俺はダッシュで全知の樹に向かっていた。ロビンを抱えて。

 額には汗を滲ませ、正に「必死です」と表情に描く。

 ロビンはロビンで、「やってしまった」と「困惑」を色濃く映し、大人しく抱えられていた。

 俺は丘をもつれるように超え、全知の樹の中に倒れ込むように入り込んだ。

 膝を打った事により「うっ」と低い声が漏れる。

 その異様な姿に、学者達は騒然となる。

 

 俺は息を切らし、脂汗を滲ませながら「人払いを」と頼んだ。学者達はそれだけでなにか察したのか、一般の利用客を全知の樹から退出させる。

 

「あきつ丸さん、何が……」

「『観えて』……しまったのであります。っクローバー博士は!?」

「なんじゃなんじゃ!? あきつ丸にロビン、どうした!?」

「ごめんなさい、クローバー博士……!」

 

 ロビンが俺に抱えられながら呻いた。俺も床に膝をつきながら頭を抑える。まるで脳内に何かが映っているかのように。見えるはずもないものが見えているかのように。

 

「ポーネグリフの、研究……」

「!! お前、まさか!」

「あきつ丸さんに、言ったの……そしたら」

「このままだとオハラ全土が危ないであります! 『観えて』しまった……オハラにバスターコールが掛かるのを!」

 

 おぇ、と吐き気を催したように俺は叫んでから口の中にダラダラと唾液を溢した。

 ロビンはその姿を泣きそうな目で見つめ、俺の背を撫でる。

 その様子に、そしてポーネグリフ、バスターコールという単語に、学者達がにわかに騒ぎ出す。

 

「ロビン、お前地下を能力で覗いたな!? なんて事じゃ!」

「バスターコール!? それがオハラにだって!?」

「見えたってどういう意味だよ、あきつ丸嬢!!」

 

 大混乱となった全知の樹で、俺は息を荒げ、もはや過呼吸になりそうなほど息を吸いながら、「事実か……」と呟く。

 ロビンはオロオロとしながら、ただ俺の背中を撫でていた。

 

「白い髪の女性が……オハラに来て……」

「っオルビアか!?」

「軍艦……避難船が撃たれる……全知の樹が焼かれる……そんな景色を見たであります」

「だから見たってなんだよ!?」

「もしや……見聞色の覇気か」

 

 学者の一人が、本棚から文献を取り出した。タイトルは見えないが、グランドラインでの伝承をまとめた表紙に見えた。

 

「覇気、という力……特に見聞色と呼ばれるものを鍛えると、人には『未来』が見えるという」

「っ……正解、であります……!」

「あきつ丸さん、無理して喋らないで」

「その未来で……オハラがバスターコールで滅ぼされる未来を……?」

 

 クローバー博士の問いに、こくりと頷いた。

 そして、また大きな頭痛が襲ってきたかのように頭を抱え呻いた。ロビンの必死そうな叫びが響く。

 

「あきつ丸! しっかりしろ、あきつ丸!」

「う……あ……」

「あきつ丸さん! 気をしっかりもって!」

「悲鳴、が、聞こえる……軍艦が何隻も……島が燃える……」

「あきつ丸さん!!」

 

 俺はそれだけ呟いて、意識を落としたフリをする。瞳を閉じた。

 悪い、あとは流れで頼んだ、ロビン!

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