あきつ丸(仮)が往く!大海賊時代特殊任務!   作:月日は花客

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66:あきつ丸、会議スル!

 

 あれから一度場はお開きとなった。

 このままでは各々冷静な判断はできない。考える時間を持とうということだ。

 俺はロビンを連れて家に帰っていた。

 

「……ロビン殿も、一度ひとりで考えてみるであります。自分は学者達の判断を待つでありますから」

「うん……ねぇ、あきつ丸さん」

「なんでありますか?」

「辛くないの?」

 

 ロビンを見る。その表情は曇っていくて、その手は黒いワンピースの裾をギュッと握っていた。

 辛くないのか。

 何が? と聞く暇なく、ロビンは口を開く。

 

「未来を見て、それを自分だけが知ってて。それが不幸な結末で……誰かに信じてもらえるかもわからないのに」

「……あー」

 

 ロビンはきっと心配してくれているのだ。俺のメンタルと言うか、精神状態を。

 そりゃ、普通なら不吉な未来が見えて、それを自分だけが知っていると言うのは相当なストレスがかかるだろう。しかも素直に話したとして大抵の人間は未来なんて信じない。

 今回だって、覇気について知っている学者がいなければ戯言と棄却されてたかもしれなかった。

 我ながらなかなかパワープレイだったが、結果として信じてもらえたから良かったと思う。

 

「ロビン殿は信じてくれたじゃありませんか」

「でも……」

「信じられなくても、信じられなかったなりに自分は行動してたであります。たとえ異常者と排他されても、自分なりのやり方でオハラの悲劇を少しでもマシにしようとしていたと、自信をもって言えるでありますよ」

「……なんで、そんなことが出来るの? そこまでして……貴方になんの得があるの」

 

 まぁ、任務報酬はあるな。少なくとも。

 でもそれを言うのは憚られる。ただの任務による義務感でここを救うのだとは思ってほしくない。俺はちゃんとロビンや学者達に親愛の情を持っている。だからこそ助けたい。

 俺は笑って、「放っておけないから」と誤魔化した。

 まぁ本心ではある。原作で心を痛めたキャラに幸せになって欲しいから。犠牲を減らしたいから。

 それが出来るのが俺しかいないわけで。

 

 ロビンは数秒黙ると、そっか、と一言残して自室に行ってしまった。

 

「知っているからには、関わったからには、責任がつきまとうのでありますな」

 

 救済任務を無視するという選択肢を選ばなかった俺はもう戻れないのだ。

 

 *

 

 次の日、自分なりに意見を固めてきた学者達は、改めて会議を開いていた。

 俺はそれを少し離れた席で眺める。

 ロビンは、今日は家で博士号の勉強をしている。まだ彼女は自分の心の整理ができていないのかもしれない。

 現状としては、意見は拮抗している。

 俺は一応、この図書館の本は全て収納し移動可能な事。人員を運ぶ船は別で用意する必要がある事。安全地帯に運ぶ手助けはする事。を伝えてある。

 俺を信じるかはその人次第だし、信じたとしてこの島に残る選択をするかは自由だ。

 一応避難先はワノ国を予定しているが、ワノ国はグランドライン、しかも新世界の政府非加盟国で、オハラとは生活様式もずいぶん変わる。それも覚悟してもらわなければならない。

 環境の変化や学者としての矜持が、未だ踊る会議の要因となっている。

 

「……今日では決まりそうにありませんね」

「船の手配や本の移動も必要だというのに……意見がまとまらん事には何もできん」

「残りたい人は残って、逃げる人は逃げればいいのでは?」

「それが一番いいのだろうが、学者というのは一人で研究しているのではない。共同研究や名義貸し……横の繋がりがある。その相手と意見が違えば揉めるじゃろう?」

 

 クローバー博士は目頭を抑え、深いため息を吐いた。

 学者としては、下手に分割されると今後の研究に響くのか。大変そうだなぁ。

 仲のいい相手がここで死ぬと言ったら止めたくなる気持ちもわかるし、研究仲間がオハラと命運を共にするというのは受け入れ難い者もいるのだろう。

 

 俺としては、ただ決を待つだけである。

 もし、彼らがここに残る判断をした場合、ロビンだけは逃すとも伝えてある。

 それは彼らも納得してくれた。彼女は研究に身を滅ぼすには幼すぎるのだ。

 

「民間人の避難も行わなければ。適当に津波でもでっち上げるでありますか?」

「そうじゃな。自然災害にしておいた方が都合がいいじゃろう」

 

 学者達は自分の処遇を考えているが、民間人の避難も考えなければならない。

 ただまぁ、これは楽だろう。大津波なり海賊の襲撃なりをでっち上げて避難させればいいのだ。

 この町の住民はうっすら嫌いだが、だからといって死ねとまでは思わない。危険が迫っているのならそれをやんわりと伝えるべきだ。

 クローバー博士がそれらしい文言を考えて避難船を手配してくれるそうなので、そこは任せる。流石に避難船の護衛はできないが、近くの島に移動するくらいなら大丈夫だろう。

 

「クローバー殿は決めたのでありますか?」

「わしは……オハラを出る。わしが打ち立てた“仮説”をもっと強固なものにするために」

「そうでありますか。では、しっかり護衛させていただくであります」

「お前は……不思議な旅人じゃな。こんな事態になって尚、冷静に沙汰を待つか」

「取りこぼすのは、辛いでありますが……それも本人が決めた事なら、自分は何も言えないであります」

 

 このオハラで俺ができることは限られている。その歯痒さはあるが、この世界にいるもの達は最早キャラクターではなく生きている人間だ。

 彼らに自分が未来を知っていると明かしたとて、そこからどうするかは彼ら次第なのだ。

 数ヶ月での情や命の重さもわかっているからこそ、できるなら生きる選択をしてほしい。

 特にロビンには生きててほしい。

 それは俺のわがままでエゴだから、そのまま受け入れていよう。

 

 次の日も、その次の日も話し合いは行われた。

 ロビンはずっと部屋で勉強している。知識を頭に詰め込みすぎて、熱でも出ないか心配なほどに必死に勉強している。

 会議はやはり二分されていて、特にここに骨を埋めると決めた面々の意思は硬いようだった。

 それが学者としての誇りなのか、知ってしまうことへの疲れなのかはわからない。

 わからないが、俺は置いていくなら置いていくと決めている。そこまで面倒は見切れないし、俺は二人に分裂できない。

 オルビアが捕まっている時点でオハラの終わりは明白。その終わりをその目で見たいなら、止めない。

 薄情だとは思うが、この手に一度に乗せられる命の数は限界がある。

 

 一週間半経って、ようやく生存派は死亡派を諦めた。そこには悔しさも悲しさも乗っていたが、これが結論だ。

 綺麗に半々に分かれた派閥は、生存派は船に乗って逃亡。死亡派はオハラに残りオルビアの帰還を待つ。

 そういうことになった。

 船の手配には時間がかかる。すぐに伝手を辿って避難船と逃亡船の用意の準備がされ、荷物をまとめたり断捨離が始められた。

 生存派と死亡派は、気まずそうに別れて作業している。

 どんな頭のいい学者でも意見は分かれるし、分かれた時の気まずさはあるのだなぁと俺は他人事のように眺めていた。

 

 俺も背嚢の整理をしなければ。

 オハラの本は膨大で、中にある食糧や金銭をある程度整理しないと入り切らない。

 積載量は輸送作戦にも従事してただけあって、他の艦船より多い自信はある。

 保存の利く食糧は逃亡船に積もう。生ものはさっさと食べてしまおう。

 宝物類や嵩張るものはベリーに換金して、なるべくスペースを空ける。

 あとはひたすら本を背嚢の中に詰めていくだけ。

 馬鹿みたいな数の本を黙々としまっていくが、これが一番時間がかかる。心が無になる。

 

 俺が全ての本を背嚢に詰め終わった頃。

 ロビンが博士号取得と共にポーネグリフの解読が可能になった。

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