さーて、ワノ国から離れて新世界、孤島。
船にはロビンという少女が一人。
なんとなくデジャヴを感じるこの頃、俺はロビンを鍛えることにした。
今のままだとロビンはすぐに死ぬ。あっけなく死ぬ。
なんせ海に落ちたらそれまでなのだ。俺も深く潜れるわけじゃないし、事故や戦闘で押し負けてポチャンしたらそれイコール死である。
ならばある程度対抗できる力を得ないと。
ということで、チキチキあきつ丸ブートキャンプはっじまっるよー!!
「ロビン殿は能力者。なら、自分の能力を深く理解することが大切であります」
「理解する……使うのとは違うの?」
「能力者はその発想力を試されるであります。理解し、考えて使わないといつまで経っても強くなれない。そういう世界なのであります」
解釈を広げ、心身をより能力に近づかせること。これが能力者を鍛える上で重要なんじゃないかと俺は思っている。
ロビンの能力「ハナハナの実」は自身の体のパーツを自在に咲かせることができる。
では、咲かせるパーツを増やし、一度に咲かせられる数を増やし、大きさを調節したり同時に別の動きをさせられるようにするなど、強化の余地は大量にある。
覇気……はまだ早いかな。ミホークのあれは馬鹿みたいな戦闘センスがあったからできたこと。体も丈夫だったから多少無茶が利いたし。
ロビンはそこまで人外に片足突っ込んでないので、地道にやっていこう。
「この世界では何事も強さがものを言うであります。弱者は死ぬのみ、死者は何も語らない。生き残るためにも、厳しい事をするでありますが……付いてくるでありますよ」
「うん、置いていかれないよう、頑張るね」
そこからはしばらく修行の日々だ。
とは言っても、ロビンの能力を鍛えるためにまずは限界まで能力を使わせてみたり、戦闘のために関節の勉強をしたりとミホークほど苛烈ではない。
ロビンは原作で関節技を得意としていたので、それに倣ってサブミッション方面を伸ばしていくことにした。
基礎的な体力もつけさせる。逃げ足が早ければそれだけ生存率が上がる。
俺とロビンの関係は、師弟というより姉妹……? 擬似親子……? である。俺もロビンを弟子とは認識していない。弟子はミホークでじゅうぶんだ。
歳の差的にはちょっと歳の離れた姉妹でありたいのだが、うん、なんというか、母性がね……。
ロビンが俺に依存している現状はよろしくないとはいえ、今の彼女の心の支えが俺しかいないのも事実。
依存先を増やすのが自立というから、彼女が頼れる先を今後増やして行ければいいなと思う。
母親がわりとして、やらねばならないことがあるのだ!
船生活に慣れるため、基本的に寝食は船で。それ以外は島で走り込みをしたり、能力を鍛えたり。
武器の扱いも一応教えておく。使えて損はないからね。と言っても、簡単な剣や銃の使い方程度しか教えられないが。俺は基本独学だし、他人に教えるのが上手いとも言えない。ミホークは勝手に育った。
なので、付け焼き刃だがマシだろう程度にしかできない。
「んー、もうちょっと握力も鍛えた方がいいでありますな」
「握力……」
「相手を掴んでも振り解かれたら意味がない。まぁ地道に頑張るでありますよ」
幸いにして鍛える時間はある。毎日毎日、走り込みに能力修行、握力トレーニングに関節技の勉強。
考古学に耽っていた頃とは打って変わって体育会系になった生活は、ロビンにはたいそうキツイだろう。
しかしここで折れたらどのみちこの先の航路ではやっていけない。俺と離れた後もやっていける強さを得なければならない。
永遠に一緒にいられるわけないし、なんらかの事情で離れることもあるだろうし。
鍛えること数ヶ月。
なかなか関節技も形になってきて、臆せず向かってくる度胸や冷静さも鍛えられてきた。
試しに軽く手合わせしたら、流石に刀は抜かなかったが肉弾戦のみだと割といい勝負ができる。やはり他人に自分の手足を生やせるのは強い。
足払いや目潰しなんかも覚えさせた。物騒だが、機動力を削いだり内臓を狙うのは基本だ。まぁ俺の眼球に指突き立てたら覇気纏ってないと突き指すると思うけど。
更に数ヶ月経てば、下手な大人程度なら簡単にのせるだろうくらいには強くなった。
ロビンもなかなかの戦闘センスを持っている。
ただし多数戦や武器持ちになると話は変わってくるだろうし、戦闘を本業とする海賊相手では不利になる。
しかし彼女の場合あとは実戦を重ねていけば勝手に強くなる気もした。
関節や人体の弱点についてもしっかり勉強しているようだし、旅を再開してもいいだろう。
「しかしこの海ではまだまだ弱者だということを肝に銘じるであります。敵相手に油断は捨てること。万が一自分が守れなかった時、ロビン殿はロビン殿自身が守らないといけないでありますよ」
「うん。でも、あきつ丸さんはわたしのこと絶対守ってくれるって知ってるよ」
「もう……そういうセリフ、どこで覚えてくるのでありますか?」
「ふふ、どこだろうね」
まさかあの図書館に子どもにはまだ早い書籍が置いてあったとかないだろうな。官能小説とか。ちゃんとレーティングは守んないといけないんだぞ。
大人になってからそういうものは読みなさい。
呆れる俺に、ロビンはクスクスと笑っている。
オハラではそれぞれの部屋があったが、船生活になってからは同室になった。相変わらず妖精さんが作るベッドは二人用一台で、だから一人用を二台作ってくれよと思う。
仕方なく同じベッドで寝ているわけだが、俺は最近自覚したのだが寝相があまり良くない。
特に隣に何かがあるとそれに抱きついてしまう癖があるようで、ちょくちょくロビンを抱きしめて寝入っていた。ロビンがいなかった時は布団や枕を抱きしめていたのだが、人が隣にいると体温につられるのかそっちに抱きついてしまうようである。
絞めてないか不安になるし、ロビンも暑苦しいだろうから別の部屋で寝るかと提案したら、全力で拒否されて首を傾げた。毎朝がっちり腕と脚でホールドされてるんだぞ、寝苦しいだろ。
まぁ本人が「誰かの温かさを感じられて好きなの」と言っているので、せめて首とかお腹を絞めないよう注意したい。
ロビンに朝起こされるのは変わらないし、俺が三食作るのも変わらない。
キッチンには妖精さんが(いつの間にか)作った冷蔵庫と炊飯器、ホットサンドメーカーがあるため、わりと台所事情は快適である。
ロビンの強さがまだ完全に育ってない以上、一度グランドラインから出て四つの海のどこかへ行くべきか。
なんとなく北の海にでも行くか、と羅針盤に航路を設定する。
海王類は俺がいると何故か襲ってこないので、カームベルトも楽々よ。海王類が襲ってこない理屈はわからないが、艦娘は海に愛されてるのかな、と思う。勘だ。それか鉄製だから海楼石みたいなもんと思われてるのか。
どっちにしろ、助かるから、いい。
「北の海に向かうでありますよ、海賊に会ったらなるべく自分が沈めるでありますが、油断はしないように」
「わかった。いつでも戦えるようにしておくね」
「船上でのトレーニングは……妖精さんにルームランナーでも作ってもらうか……?」
まだ体が出来上がってないから、無闇に筋トレすると逆に身体を壊してしまう。
能力の発想力を高めるという点で、能力を使って同時並行で料理でも作らせてみようか。並列思考は戦闘の基本。でも最近忙しかったから、たまにはのんびりするのもいいな。
ロビンは頭を使うゲームが好きだ。なんとなくヌメロンとか教えてみたらハマったらしい。暇な時は大抵それかウミガメのスープなんかをやっている。
チェスは俺が知らないし、オセロは単純すぎるし、人狼は人数が足りない。
案外ボードゲームって二人でやるやつあんま無いな。
小舟にふたり、のんびりと時間が過ぎていく昼下がり。
オハラはもう滅んだのだろうか。