あきつ丸(仮)が往く!大海賊時代特殊任務!   作:月日は花客

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ついに70話まで来ちゃいました。
いつもコメント、評価、お気に入り等ありがとうございます。
ここまできてまだルフィ出てきてないの怖くないですか?
まだまだ長くなりますがお付き合いいただけると幸いです。






70:あきつ丸、北の海ヘ向カウ!

 

 北の海に来たわけだが、じゃあ何か目的があるのかと聞かれるとぶっちゃけ無い。無計画。ただノリで来ちゃった。

 

 道中でロビンにフード付きの黒い外套を買ってやった。これで顔を隠せるし、北は寒いから防寒にもなるだろう。

 あきつ丸さんとお揃いねって言われて、心臓がギュッとなった。

 冬島が多い北はよく雪が降っている。

 さーて、どうしようかな。

 

「北でどうするの? あきつ丸さん」

「正直何も考えてなかったというか……あー、今からフレバンス……? でもフレバンスも相当詰んでるでありますな……」

 

 あと数年で滅びるフレバンス。あれはもう街が珀鉛に染まってしまっている時点で手遅れだ。今更どうこう言っても遠からず珀鉛病は発症するだろう。

 

「また未来視? 次に滅びるのはフレバンスって街?」

「そうであります。しかしあそこは国全体規模の鉛中毒……今から我々が何をどうやっても止められない」

 

 流石に周辺国に鉛中毒であって感染症ではないと語るのも得策では無い。人は一斉に発症した死の病を当然恐れるし、国民全員が一斉発症したら風土病なり感染症なりを考えてもおかしくは無い。

 しかも政府とフレバンス上層部が中毒であることを揉み消しているのだから救えない。ほんと政府ってクソ。何? 余計なことしかしないじゃん。

 じゃあローだけでも助けるか? という話なのだがこれも難しい。

 正直あの何もかも失って自暴自棄になったローを俺が癒せる気がしないし、彼が必要とする医療知識を俺は提供できないからだ。

 悔しいがドフラミンゴファミリーでの生活は彼にとって必要だと思う。

 様々な戦闘術やサバイバル技術、医学に同世代とのコミュニケーション。なによりコラソン……ロシナンテとの邂逅。

 

 あ〜トラウマが……ほんとあれは俺が悪いんだけど、キツイ、キツイなぁ。ロシナンテは俺を恨んでいるだろうか。ドフラミンゴは恨んでそうだな。

 正直言ってあの時の俺は正気ではなかった。油断していたし、その分悲劇を止められなかったことで気が動転していた。

 政府非加盟国とはいえ大量の市民を殺し、少し怖がられたからって全部放り出して逃げた。

 最低か?

 このことを思い出すたびに沈みたくなるのだが、だからこそスワロー島での悲劇は絶対に避けたい。

 俺は船の中でうんうん唸った。どうしようこれ。

 ローにとってフレバンスの惨劇はトラウマものだろうし、体験させたくないのだが、今更家族ごとフレバンス外に引っ越しても無駄だろうし、となるとやはりあの惨劇は回避不可能……?

 

「うう〜……」

「悩んでるね」

「オハラと同じくらいフレバンスは詰んでいるのであります……幸せな結末が浮かんでこない」

 

 結局ローが全てを失いドンキホーテファミリーに行くこと、そしてロシナンテと治療法を探しに旅に出るまでのルートは確定か……?

 ドフラミンゴとロシナンテの対面と殺し合いをどうにかして止めないと。彼らの救済を中途半端に投げ出した俺の自分勝手なエゴだが、ドフラミンゴには弟殺しになってほしくないし、ロシナンテには死んでほしくなかった。

 だがスワロー島の出来事までは時間がある……今は目の前のフレバンスをどうしようという話。

 え〜……。

 

「今フレバンスで接触しても失うものが増えて絶望を深くさせるだけ? せめて今からでも珀鉛から離させて症状の緩和を目指すか? いやでもそもそもどうやって夫婦に接触する? このままだとただの不審者だ。白い町で黒い格好はさぞ目立つだろうし……」

「ねぇ、そのフレバンスの未来って、どんなの?」

 

 俺がブツブツとフレバンスについて考えていると、ロビンが聞いてきた。

 ちなみに今は、ダイニングでコーヒーを飲みながらダラダラと考えている。ロビンもココアではなくコーヒーがもう飲めるようになっていた。妖精さんが(いつの間にか)作っていたコーヒーメーカーで淹れるコーヒーは美味しい。

 カフェインの摂りすぎは注意しないとだが。

 

「んー、フレバンスは珀鉛という鉱物で産業が成り立っていて……」

 

 俺はロビンにフレバンスの顛末の説明をした。珀鉛の恐ろしさから政府の陰謀、その後の周辺国の対応から何から何まで。

 とても幼な子に聞かせる話ではないが、現実とはこういうものだ。なにより俺より頭のいいロビンなら何かヒントになる考え方をもたらしてくれるかもという縋るような気持ちもあった。

 ロビンは政府が絡んだ一国の末路に顔を顰めていたけれど、真面目に聞いてくれた。

 

「政治的にも病気的にもその街の住民はすでに罠に嵌っているのね」

「足掻こうがタイムリミットが既に決まってしまっている。故に動きづらいし対応が難しいであります」

「確かに難しい問題だわ。第一、二、三産業ほぼ全てが珀鉛で成り立っている以上、元を絶ってももう遅いもの」

「流石に一国を救うのは規模的にも状況的にも無理であります。ただここで『対応しない』選択肢を取っていいのかどうか……」

「キーパーソンの存在、ね」

「そうであります。このフレバンスが滅びた後、唯一の生き残りとなる少年……ローについても、考えないといけない」

 

 ロビンと話すと会話が楽だ。程よく言いたいことを察してくれる。

 

「彼を助け出したところで、自分では彼の生きる希望になり得ない」

「でも、『助け出す』ことと『生きる希望になる』ことは別じゃない?」

「つまり?」

「ローって子をなんとか助けた後、生きる希望になれそうになかったらそのドンキホーテファミリーに渡せばいいんじゃないかと思うの。自暴自棄になってたとしても、無理に一緒にいる必要は無いわ」

「そ……れは……」

 

 ちょっと酷くないか? と思いつつ、アリだと思う自分もいる。

 ローだけなんとか救出し、その後あの「全てをぶっ壊したい」精神状態だった場合ドフラミンゴファミリーをこっそり紹介すればいい。

 でも、精神状態が安定していたらどうする? 俺はロシナンテほど彼の救いになれるだろうか。

 

「そこはもう、やってみなくちゃわからないんじゃないの」

「……今回の作戦は、溢れる命が多すぎる」

「あきつ丸さん、無理はしないでね。貴女が潰れたら元も子もないわ」

「はぁ……やり遂げるでありますよ。知っているからには」

 

 最優先事項はローの救出。それ以外の命はほぼ捨て置くつもりで覚悟を決めておこう。

 ローの家族もシスターも同年の友達も、全て救えるわけじゃないのだから。

 珀鉛病はほぼ全ての国から差別される伝染病紛いの中毒症状。たとえ複数人の命を救えたとしても、それを治すオペオペの実を食べたローの負担が大きすぎる。

 

「今回、ロビン殿は船に待機でもいいでありますよ。見ていて面白いものでもない。むしろ危険であります」

「あきつ丸さんが辛い時こそ一緒にいるって決めてるの」

「だからそういうセリフをどこで……はぁ〜」

 

 多少歳が近いロビンがいた方がローの警戒も解かれるか……?

 グルグルと思考を巡らせながら、俺たちの船はフレバンスヘ向かうことになった。

 いずれ会うことになるかもしれないドンキホーテ兄弟に胃がキリキリする。

 そういえば艦娘の胃はどうなっているのだろう。食べ物が燃料がわりになるわけでもあるまいに。消化したものはどこへいっているのか。そもそも内臓が内臓の役割を果たしているのか?

 だめだな、頭が回らない。こういう時自分がもっと賢かったら良かったのにと思う。

 誰かを救うには自分の頭も理性も倫理観も中途半端な自分がたまに嫌になる。全てを救うことができるとは思ってないけど、俺にもっと能力があったらな。

 

「不安?」

「少し」

「今日はもう寝ましょう。考えすぎて疲れてるのよ」

「……そう、でありますな」

 

 今日ばかりは、ロビンの温もりが心を落ち着かせてくれた。

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