あきつ丸(仮)が往く!大海賊時代特殊任務!   作:月日は花客

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8:あきつ丸、出国ス!

 

 さて、おでんと知り合い、鍛錬を始めてから半年が経った。

 いきなり時間飛びすぎだと思っただろう、弁明させてくれ。

 元々ワノ国にはそこまで滞在する予定はなかった。なんせじきにオロチによる将軍の挿げ替えが成され、カイドウも加わり修羅の国になっていくのだから。

 それなのに半年も居た理由としては……だいたいおでんの所為である。

 おでんは俺がワノ国を出て行こうとするとそれはゴネた。なんなら自分もついていくと騒いでやまない。

 何故こんなにも懐かれているのかわからなかったが、何度か手合わせしているうちに情を持たれたのだろうか。

 まぁ、確かに俺はワノ国でも有数の実力者であるおでんと長時間の接戦を繰り広げられる腕になったし、なんとか未熟だが覇気も習得した。

 まだ砲撃や戦闘機の射撃に覇気を乗っけることはできないが、秋茜に纏わせることはできる。秋茜本体も、苦戦はしたが威力のコントロールが可能になった。切りたくない時は紙すら切れず、切ろうと思えば鉄すら切れる。そんな刀になってくれた。

 たまにおちょくるように大規模な斬撃を飛ばすのはご愛嬌と言ったところか。

 

「だーかーらー、自分はもうそろそろ旅に戻りたいのであります」

「その旅におれも連れていけばいいじゃねぇかよ!」

「将軍の息子をそう易々と連れて行けるわけないでありましょう!」

 

 何十回目かのやりとり。俺としてはワノ国は刀を貰って観光したらさっさと出ていくつもりだった。ぶっちゃけ、オロチからこの国を守ろうだとか、カイドウの魔の手から救おうだとかは考えていなかった。

 なんせ戦力が違いすぎる。それに「何年後かに将軍スキヤキが幽閉され、オロチが将軍となって悪逆を尽くす」なんて言って誰が信じるのか。

 おでんの死も、覆せないと思った。おでんはあそこで死なないと、最終的なワノ国奪還作戦に致命的な影響が出るかもしれない。

 もう俺がおでんと関わってしまった時点で、バタフライエフェクトだので諸々変わってしまったかもしれないが……。

 なにより、任務に「おでんと接触」の欄はあれど「おでんを救う」欄は無かった。

 つまりは、そういうことなのだろう。

 

「それに船もないでしょう! 自分は海を渡れる術を持っているでありますが、おでん殿は違う」

「船なら作らせる!」

「こういう時だけ将軍の血筋を利用しないでいただきたい!」

 

 おでんと自分は、なにかと行動を共にすることが多く、花の都ではもはやセット扱いされていた。

 “将軍の跡取り”光月おでんと、“秋茜”のあきつ丸。

 何故か俺がおでんの家臣扱いされているのは腑に落ちないが、都ではなかなか有名人になってしまった。

 おでんがひとり暴走している時、俺を呼べばいいと町人に思われている。俺がおでんに斬りかかれば、おでんは俺との手合わせに意識が行くからだ。

 まぁ、俺とておでんの保護者ではないのでラインを越えない限り放置することもままあるが。

 

 で、この俺の足もとにしがみついて我儘をこねる将軍の跡取り息子様をどうするかという話だ。

 

「ええい、往生際の悪い! もう半年もここに留まったんです、じゅうぶんでありましょう!」

「嫌だ! おれは外の世界が見たい! お前と冒険したい!」

「だから、将軍家の許可を取ってきてくださいと言っているんです!」

 

 わーぎゃーと叫びあっていると、なにやら半鐘が鳴った。火事だろうか?

 喧嘩と火事は江戸の花と言うが、それにしては火消しが動いていない。そのくせ、人々は逃げ回っている。

 

「“山の神”だぁ〜!!」

「食い殺されるぞ〜!!」

 

 そんな叫び声が聞こえてきた。

 ああ、山の神事件。もうそんな時期だったのか。

 どーしよーかなー。この事件からおでんは家臣候補を集め、アシュラ童子を倒し九里大名となる。で、白ひげさんちに勝手についていく。

 ロジャーさんちに送り届けるためにも、おでんには白ひげの船に乗ってもらわねばならない。てかそこでトキを拾わないと色々と詰む。

 やはりここら辺が潮時だろう。なんとかしてワノ国を出国しなければ。

 

「山の神ねぇ」

「ほら、おでん殿好みの事件でありますよ。自分は茶屋で抹茶を飲んでいるので、適当に巻き込まれてくるであります」

「お前、この半年でおれの扱いが雑になったよな」

 

 半年も破天荒に付き合っていると人は適当になるのだ。

 幸いここら辺はまだ山の神ことクソデカ猪に飲み込まれない距離があるので、のんびり茶屋で茶を啜っていよう。その間におでんがなんとかするだろうて。

 俺とおでんはお互い反対方向に歩き出した。おでんはここで錦えもんと傳ジローと出会う。家臣第一号と二号だ。俺は断じて家臣ではない。

 友人程度の位置には置いてもいいが、おでんの下につくのはゴメンだ。胃がいくつあっても足りない。

 

「あら、あきつ丸さん。おでんさんは?」

「おでん殿なら山の神の方向へ向かったであります。あ、抹茶と練り切りを一人分」

「町中大騒ぎだってのに呑気ねぇ」

「逃げずに店をやってる女将さんも大概でありますな」

 

 行きつけの茶屋「半月堂」は肝の据わった女将さんが運営する酔狂な店である。

 火事があろうが通り魔があろうがおでんが暴れようが営業を止めないパワーの塊。俺がおでんを止めるのを諦めた時は大抵この店でお茶をしている。ので、女将さんとはそこそこ話す仲だ。

 

「はい、半月練り切りとお抹茶。おまけの塩昆布よ」

「頂戴するであります。いやぁ、いつ見ても見事な練り切りでありますなぁ」

 

 濃紺と黄金の半々に分けられた丸型の練り切りは、黄金の中にウサギが彫られている。半月堂の看板商品だ。

 俺はそれを一口齧ると、抹茶で流し込んだ。甘さと苦さのマリアージュがなんともホッとする。海に出たら味わえなくなるからここで堪能しておかねば。

 

 のんびり女将と看板娘の恋模様だとか、イケメン大工の噂話なんかでひとしきり盛り上がっていると、遠くから歓声が聞こえた。

 おおかたおでんが山の神を斃したのだろう。

 気にせず抹茶を啜っていれば、直におでんが店にやってきた。なにやら上機嫌だ。

 

「で、どうなったでありますか?」

「絶縁に都追放だと! あきつ丸、白舞に行くぞ!」

「はいはい、いつかこうなると思っていたであります」

 

 白舞にはあまり行きたくない。オロチがいるからだ。顔を覚えられたくないのである。

 オロチは必ずおでんの派閥を皆殺しにしようとする。その時に俺がいないと騒がれるのは面倒だ。

 いつもより帽子を深く被り、この半年の間に仕立てた黒の外套で口元を隠した。

 黒髪黒目に黒い服。おまけに刀も黒ときた。白粉をはたいたように白い肌はモノクロ迷彩のように自身の陰影を薄くする。

 この調子で、おでんの影に隠れて記憶から埋まればいい。

 

「あきつ丸! 九里にアシュラ童子という賊がいるらしい! 退治しに行くぞ!」

「そうですか。行ってらっしゃいであります」

「行くぞ!」

「巻き込まないでほしいでありまあああぁ……!」

 

 白舞で霜月家に世話になったと思ったら、今度は九里に行くという。ワノ国漫遊の旅は俺を強制的に巻き込んで始まった。

 傳ジローや錦えもんは突っぱねたくせに、何故俺にそんな構うのか。傳ジローたちは傳ジローたちで俺になんだか甲斐甲斐しいし。

 あの二人、俺を上司か何かと勘違いしているんじゃないか。

 

「あきつ丸殿! おでんの下処理はおれが!」

「あきつ丸殿! 洗い物は拙者が!」

「いや、それだと自分の仕事が無くなるであります。というか、貴方達は何故自分をそこまで敬うのでありますか?」

「そりゃ、おでん様が認めた姫君!」

「それにおでん様に並ぶ剣の腕!」

「いや、姫じゃないでありますが」

 

 二人の中では俺はおでんの次に偉い姫君だそうだ。普通に嫌だ。居た堪れない。

 というか、俺おでん一派じゃないし。

 そう否定しても聞かないため、もう諦めて姫扱いされる事にした。

 俺と傳ジローたちが姫論争をしている間にも、おでんは仲間を増やしていく。

 イゾウにその弟、カン十郎に雷ぞう、そしてアシュラ童子……。

 やがて野蛮な者が多かった九里を統一し、九里大名にまで上り詰めた。

 

「はー、なんというか、怒涛の日々だったのであります」

「はっはっは! 愉快な漫遊旅行だったじゃないか」

「結局アシュラ童子はおでん殿一人で倒しに行くし……自分、必要だったでありますか?」

「何を言う、旅中の手合わせは楽しかったぞ」

「…………」

 

 もはや何も言えない。

 さて、ここから数年はおでんの騒がしいながらも愉快な統治が続くはず。そして白ひげさんちにレッツゴーする。

 本格的に退散しなくてはならなくなった。これ以上は……そう、情を持ち過ぎてしまう。

 結局のところ、おでんは死ぬ予定のキャラである。救済任務も無い、史実通りに死ぬことを推奨されているキャラだ。

 彼は将来オロチによって尊厳を奪われながらも、誇りと己の武士道を捨てずに煮られて死ぬ。

 この一年と少しはなんだかんだ楽しい時間ではあった。覇王纏いを完成させ、武装色の覇気を使いこなせるようになり、秋茜のコントロール精度は更に増した。

 皆で食べるおでんは美味しかったし、なんだかんだダラダラと付き合い続けてしまった。

 

「頃合い、でありますな」

「あきつ丸?」

「おでん殿、自分は今回こそワノ国を出ていくであります。今までお世話になりました」

「なっ……!」

 

 俺のその言葉に、おでんよりも家来たちが先に反応した。

 なんとなく、俺はおでんの元を離れないと思われていたのかもしれない。大名の家来になってからも、お前らは俺の姫扱いをやめなかったもんな。

 しかしそうはいかないのが現実だ。

 

「ならおれも行く」

「責任を考えるであります。おでん殿はもはや九里大名。貴方の元に集まっている家来や民草はどうするのでありますか」

「そんなもの、傳ジローたちがなんとか」

「できません。……はぁ、どうせこのままだとイタチごっこのままでありますから、ひとつ、予言を残していくであります」

「予言……?」

 

 俺としては、原作の展開を仄めかすことはあまりしたくないが……言っても聞かない暴れん坊大名にはこうするしかあるまい。

 

「六年、待つであります。そうすれば、運命的な出会いが、貴方を待つでありましょう」

「いやに具体的な数字だな」

「六年、六年でありますよ。それまで海には出ないこと! どうせおでん殿のこと、家臣をほっぽって飛びつくこと間違いなしでありますからな」

「六年なんて長過ぎる! その時にはお前死んでるかもしれねぇじゃねぇか! グランドラインは過酷なんだろ!?」

「自分とて簡単に死ぬつもりは無いであります! とにかく六年待つことであります! それじゃあまたいつか!」

「ちょ、あきつ丸ー!!」

 

 半ばヤケクソに城の天守から飛び降りた。艦娘の身体能力なら屋根伝いに着地することなんて楽勝だ。

 六年経てば白ひげが港に来るはず。そっちに乗って、最終的にロジャーの船に乗らせないといけないからな。まぁここまで釘を刺せば案外追ってこないものだ。明確な期限を設ければああ言うタイプは割と大人しく従う。

 

 港まで駆け、そのまま滝壺に飛び込むように身を投げた。一般人なら投身自殺だが、今世の俺は違う。

 2回捻りを入れて、1回転して、着水。

 

 すぐに浮上すれば、すでになつかしい大海原が広がっていた。








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おでん編が思ったより長くなった。
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