あきつ丸(仮)が往く!大海賊時代特殊任務!   作:月日は花客

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湿度差。






80:あきつ丸、待機スル!

 

 泣いても笑ってもスワロー島の悲劇はきっとやってくる。

 ロシナンテはローの病気を治そうとするだろうし、オペオペの実を手に入れようとするはずだ。

 ロー周りの事は概ね原作通りになっているし、ドフラミンゴの事を調べていた際にヴェルゴが見当たらなかったので、海軍に潜入しているのだと思われる。

 ならばオペオペの実の情報は確実に入ってくるはず。不老手術を求めるドフラミンゴが狙わない手はない。

 では俺がやるべき事は何か。

 

 まずロシナンテの死亡は阻止する。そしてローにオペオペの実を食べさせ、珀鉛病を治す。

 この2つを目標としておこう。

 ドフラミンゴは強敵になりそうだが、まだ若い彼ならギリギリ俺でも相手取れるのではないかと思う。

 本心で言うなら戦いたくはない。

 子どもの頃は食料を与えていただけとは言え可愛がってはいたし、その後放り出してしまったが今でも彼に対する情はある。

 後悔の念を拗らせたって、会わないといけないわけだ。そしてあの兄弟喧嘩を止めないといけない。

 今から内臓がキリキリしてくるが、こればっかりは過去の自分を恨むしかない。

 せめて出会って1秒で首を切られない事を祈るばかりだ。

 

「あきつ丸さん、これからどうするの?」

「スワロー島という島を目指すであります。そこに未来でロー殿が危機に瀕する。それのために島で待機であります」

「わかった。……無理してない?」

「責任からはもう逃げたくないのであります」

 

 これでまた怖くなって逃げ出したら過去の二の舞どころではない。

 俺は羅針盤にスワロー島を設定した。つくづくどうして羅針盤を回すのだろう。

 スワロー島は確か冬島で雪が降ってたはずだから、ロビンに防寒をしておくよう言っておかねば。

 

 そういえば、俺の身体は寒さは大丈夫なんだろうか。

 フレバンスも気温的には低いほうだったが毎日雪が降っているわけではなかったし、暖かい日は暖かかった。

 あきつ丸改はゲームでは寒冷地では特殊な装備を搭載しないと出撃できないという仕様があったが、あれは寒冷地での航空戦運用の問題といった感じだったし、動く分には大丈夫なのだろうか。

 外套の防寒性能でやっていけるかはわからないが、まぁなんとかなるだろう。

 

 スワロー島に着いたら、プレジャータウン近くの離れに妖精さんに家を建ててもらう。今回は暖房完備だ。

 スワロー島での決闘があるまでのしばらくの間、ここで過ごすことになる。

 思えばいろんなところに家を建ててきたな。用事が終わったら捨て置いて来たけれど、今回も同じになりそうだ。

 いや、もし俺がドフラミンゴに殺されたらここがロビンの家になるのか? そう考えると設備をしっかりしておかねば。

 

「ロビン殿、自分、貴女に料理を教えることにしたであります」

「料理?」

「自分で簡単なものでいいから作れるようになっておいた方がこの先便利であります。それにロビン殿は何かに夢中になると食を抜きがちでありますからな、食育も兼ねて」

 

 俺は燃料だけで生きられるが、ロビンはそうではない。

 この先ドフラミンゴ戦で俺が倒れても、ロビンが一人で生きていけるようにしよう。

 それにもうロビンも15歳。後数年もすれば独り立ちするかもしれない。

 この世界ではいつ死ぬかわからない。俺にはダメコンがあるが、これを使っても勝てない敵が現れるかもしれない。

 そんな時、ロビンだけでも逃して生き残れるような力を身につけさせないと。

 

 ドフラミンゴは俺を見たら殺しにくるかな。怖いなー、カイドウと戦うより怖い。何故なら頼れる味方がいないから。

 あの決闘にロビンを連れて行くつもりはない。家で待機させる予定だ。

 白ひげもおでんも赤鞘もいない未来の王下七武海戦。しかもロシナンテとローを庇って戦わないといけない。

 本気でくるなら部下も襲ってくるだろうし。

 あー胃が痛い! 胃が痛い!

 この身体になって痛みに耐性ができたとしても痛いもんは痛い。なにより可愛がってた子どもに殺意を向けられる心が痛い。

 勝ったとしてもそこにあるのは後悔か絶望か。

 なるべく無力化の方向で行きたいが、それを相手が許してくれるかどうか。

 鳥籠によるタイムリミットもあるし、かなり不利なのだ。

 

 これでロシナンテも俺を恨んでいて信用してくれなかったら終わる。

 最悪恨んでいた俺が更に兄殺しの罪をおっ被る事になる。なんだそれ、仇のアソートセットか?

 ドフラミンゴはまだ原作でも敵キャラポジションだったから恨み辛みを向けられてもギリギリ耐えられるが、ローの恩人で善人ポジだったロシナンテにもう一度拒絶されたら俺のメンタルが耐えられるかわからない。最悪ダメコンを消費してしまうかもしれない。

 なんでこんなに恨みを買ってるんですかー!? お前が逃げたからだよ。

 

「あきつ丸さん……顔色が悪いわよ? 大丈夫?」

「ちょっとこれからのことを考えて胃が痛く……いや、大丈夫であります。えーと、まず包丁の使い方から」

 

 待て、ローも好感度が下がっている説が頭の中に急浮上して来た。

 ドフラミンゴやロシナンテ経由で俺のやらかしを知り、かつ俺が珀鉛の使用を止められなかった事による相乗効果でガクンと急降下しているのではないか。

 特に途中から懐くようになり、恩人とまで呼んでタトゥーを入れるまでに心を預ける事になるロシナンテから話を聞いたら、それはもうやばいのではないか。

 救いたい三人全員に拒絶される可能性が微粒子レベルで存在する……?

 あなんかもう死にたくなってきた。

 秋茜が包丁に対して嫉妬している気配を感じるが、ごめん今はそれどころじゃない。

 俺の生命(いのち)精神(いのち)の危機が迫っている。

 しかしこれも全て俺が過去に自分で蒔いた種なんだよなぁ……戻れるなら戻ってぶん殴りたい、己を。

 

「包丁を扱う時は猫の手でありますよ。ほら、にゃーん」

「うっ……! にゃ、にゃーん」

「これが銀杏切り、これが短冊切り、これが乱切り。みじん切りは効率のいいやり方があるであります」

 

 秋茜が最近目立った活躍が無いと鳴いている。もっとガレオン船を一刀両断したり、飛んできた砲弾をいなしたりしたいと騒ぐ。

 なんなら自分でそのにんじんを切ってくれてもいいんですよ? と気配を感じるが、包丁に嫉妬しないでほしいし打刀が包丁の代わりになれると思わないでほしい。

 何より今はロビンの料理レクチャー中。刀を扱えないロビンに刀での切り方を教えてどうする。

 待て、ミホークなら喜ぶんじゃないか? 飾り切りとかしたら細かい制御の練習にもなりそうだ。今度やってみようかな……。

 

 いやいやいや違うそうじゃない。ドフラミンゴ問題の話。

 やっぱ話し合いに持ち込みたいというのは甘えだろうか。相手からしたら今まで食の世話をしてきたのに、知っていた自分たちの危険を教えず挙げ句の果てに全部放り出して逃げたクソ野郎である。並べてみるとひどいな、字面が。

 事実なのがより心臓にダメージがいくんですけどね。

 見敵必殺で俺の姿を見た瞬間発砲してくるとかありそう。銃程度でこの身体は傷つかないが、撃たれた時俺のメンタルがどれほどのダメージを喰らうか未知数だ。

 いやもういっそはっきり恨んでて、明確に殺しにこられた方が楽か? 変に理性的に、一線を引いて対応された方がメンタルにくるかもしれない。こう、他人以下の存在に成り下がる感じ。

 ローとかにそんな対応されたら泣いて沈んでしまう。

 

「……煮干しは頭と内臓をとって、出汁を取るであります。そして具材を入れ、柔らかくなったら火を止めて味噌を入れる。味噌を入れた後は温め直す時も沸騰させないように。沸騰してしまった時は鍋の上にこうやって菜箸を一本置いておくと吹きこぼれないであります」

「……あきつ丸さん、やっぱり顔色悪いわよ。寒い? 疲れた? 休んだ方がいいわ」

「うう……そ、そんなに顔に出てるでありますか?」

「生きて内臓を引き摺り出されたみたいな顔をしてるわ」

「例えが怖い……」

 

 いやでも、俺はやると決めたのだ。もう逃げない。絶対に逃げない。

 そのためにも覚悟とロビンの生存能力を高めなければ。

 ドンキホーテ兄弟に、ローに、嫌われたって俺はドフラミンゴを弟殺しにさせないし、ロシナンテとローを生き残らせてみせる!

 ベッドに顔を埋めながら、俺はひたすらに何回も心の中で覚悟を決めるのだった。

 味噌汁は美味しかった。








これは「主人公が珀鉛病になったら?」というイメージで書いた結果「誰!?」って感じになってしまった落書き。
見なくても問題ないです。

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