あきつ丸(仮)が往く!大海賊時代特殊任務!   作:月日は花客

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ワンピースの地理が、原作やWikiを見てもよくわかっていない地理感ゾロなので、ルートに多少無理があっても許してほしい……。
弱えやつは地図すら使えねぇ……!





92:あきつ丸、弟子ニナル!

 

 俺とミホークは、南の海に向かうことにした。

 

 理由としては、海流の流れと島との繋がりを考えると、ロビンが南の海に流された可能性が高かったからだ。

 グランドラインほど無茶苦茶ではないが、東や南の海にも海流による影響はしっかりあり、子ども一人が漂流するとなると、もはや東の海ではなく別の海に移動してしまった可能性がある。

 既に渦潮から二週間経っているため、もしロビンが島に漂着していた場合、どういう行動をとるかが読めないのが痛いところか。

 ロビンには、万が一のために一人で生き残るためのサバイバル技術や、航海術も学ばせてある。

 彼女の持つ知識の価値を考えると、ひと所に留まるというのは危険だろう。ポーネグリフを読めることはまだ隠せているが、それを抜きにしても、ロビンが人混みに紛れ生活している様子はあまり想像できない。

 彼女の人間不信は、完璧に剥がれたとは言い難い。大人らしい対応を学んではいるが、根底には、やはり心をあまり開いていないように思える。

 俺は人外だからか、ロビンのそういう所には最初からあまり引っ掛からなかったようだが……。

 ロビンの精神状態もわからない現状では、あまり信憑性のない予測で動くしかない。

 連絡船や個人行動の範囲も、聡いロビンはその時その時の状況に合わせるだろう。柔軟な発想ができるが故に、俺でも情報が少なすぎて唸るしかできない。

 結果、取り敢えず海流や物流の流れ的に南にいそう、というぼんやりした根拠で移動することになってしまった。

 流石に単身グランドラインに行ってはいないと思うが……原作では逃亡生活をしつつ戦闘能力や知識を鍛え、バロックワークスのメンバーに選ばれていたハイスペックガール。

 まさかアラバスタに行ってないよな?? と冷や汗が伝う。

 原作のロビンのアグレッシブさを思うと自信が無い。二週間あるなら東の海でもグランドラインに出れる。

 

 だが、ゼフのファインプレーによってロビンの生存率はしっかりと上がっている。

 なにより、ロビンの生きる力を信じたい。

 彼女は、原作と違って生きる意思も強い筈だ。ルフィに焚き付けられるまで火種のままだった本音も、この世界ではきちんと燃えて未来を照らしている。

 俺が先にその灯火を否定してしまったら、意味が無いのだ。

 精神に余裕が戻ってきたからか、食事や睡眠も、ちゃんと摂ろうと考えられるようになった。

 もちろん、抜いたらミホークによる強制カロリーバーと気絶の刑が待っているからというのもあるが。

 ミホークは、完全に俺を弟子と認識しているらしく、師匠面を隠さない。

 しかし、ゾロに向けていたような物とは違う気がする。なんだろうか、ゾロの時は、禁酒や技を会得するまでひたすら扱くような厳しさがあったが、今の俺にはなんだか……過保護なような……?

 いや、俺もゾロとミホークの修行は原作の短い描写でしか知らないが、でも、明らかに違うと思う。

 表情こそ無表情で目つきも悪いが、なんとなく、いつもこちらを見守るような生ぬるさを感じる。

 親戚のおじさんが、姪のワガママに「しかたないなぁ」と答える時のような、それ。

 その視線がこそばゆくて、やりにくい。

 

「朝だ。起きろ」

「……あと五時間……」

「起きろ」

 

 こうして毎朝起こされるのも、昔なら気にならなかったが、今はそこにぬるま湯の温度を感じてしまって、申し訳なくなる。

 朝は苦手だ。何故こうも起きられないのだろうか。

 ほとんどは夢も見ない深い眠りなのだけれど、時折、艦船のあきつ丸の記憶なのか、艦内で過ごす男たちの姿だとかを夢に見る。それは戦闘中であったり、整備中であったりと様々だ。

 詳しい会話内容や個人の顔は覚えていないけれど、それが確かにあきつ丸の艦内で起こったものだと夢の中でも起きた後もわかっている。

 眠ることは、脳の休息や記憶の整理だと言うけれど……つまりは、俺自身の記憶と、艦船の記憶が同時に存在するせいで、整理に時間がかかっている、と言うことなのだろうか?

 そこに更に艦娘のあきつ丸の思考や本能も乗っかっているとしたら、俺の脳にかかっている負荷はどれ程のものなのだろう。

 艦娘の脳と人間の脳は何が違うのだろうか。

 と言うことをボーッと考えていたら、ミホークに軽く頭をはたかれた。

 

「いい加減覚醒しろ」

「う、はい……」

 

 南の海は北の海と比べるとやはり暑く、長袖のシャツワンピースでは寝苦しかった。

 じんわり汗をかいているそれを着替える頃には、ようやくいつもの調子を取り戻す。

 朝は弱いが、眠気はあまり引き摺らない方だ。

 現在は渦潮に巻き込まれて沈んでしまったロビンと乗っていた船と、同型のものを妖精さんに作ってもらい、そこで生活している。

 ミホークの棺桶船は連結しているが、あれで海の日々を過ごしていたミホークの気がしれない。風呂とか、食事とか、どうしてたんだアイツ。

 本人も棺桶船で引き続き過ごすのかと思ったら普通にこっちの船で生活してるし。「見張りだ」とか言っているが、キッチンに簡易ワインセラーを要求しといてどの口がと思った。

 今日の朝ごはんはトマトとブロッコリーのサラダ、トーストにチーズとハム乗せて焼いたやつ、バナナ入れたヨーグルトである。

 船上生活はビタミン不足が怖いので、艦娘には関係無いがこういうビタミンが多く摂れる食事を意識しがちだ。

 ミホークはそれにプラスワインだが、ハムチーズトーストにワインは合わないと思う。味じゃなくて見た目が。

 

「それだけでいいのか」

「何度も言うでありますが、自分はこの量で十分なのであります」

「おれには散々食トレと食わせたクセに」

「貴方は人間、自分は艦娘。成長する胃も何もない」

「まぁ食べるだけマシになったとしよう」

 

 そうしてミホークはまた生ぬるい目をこちらに向ける。

 ああもう慣れない!

 こう……乙女的なトキメキとか、そう言うものではなく、年下に世話を焼かれるあの微妙な居心地の悪さが俺を襲う。

 街にいる少女にその目線を向けたら何十人と黄色い声が釣れるだろうに、他人がいる時はこんな素振り一ミリも見せないのだ。

 昔は俺が世話を焼く側だったのに、いつの間にか逆転している。

 いや、昔もまぁ、朝は起こされていたが、あの時のミホークはあくまでも早く修行をしたいから起こす……という感じだった。

 今のこの、「出かける日になかなか起きない姪を苦笑しつつ起こす叔父さん仕草」は恥ずかしくてしょうがない。

 この世界に来て、年下を相手してばっかだったから、世話を焼かれることに慣れていない。ワノ国時代は、家臣に世話をされることは上の者の仕事の一つのような感覚だったし。トキはもっと言葉に圧がある。

 白ひげは、戦友、少し上の友人の感覚だったので世話を焼かれた気はしない。いざという時こそ手助けはするものの、白ひげは案外放任主義だ。

 前世でも、もう成人していたし、両親も過保護というわけではなかった。

 一人っ子だったから程々に構われつつ割と放り出されて育った自覚がある。ある種のマイペース。

 親戚には確かに何かと可愛がられたが、だからこそあの時感じたこそばゆさがフラッシュバックする。二十歳になってもお年玉を貰ってしまった時の申し訳なさはなんと表現すればいいのだろう。

 つまり、ここしばらくで俺はミホークに自分のペースを乱されっぱなしだった。

 俺の世話を焼くのは良いから適当にワインセラーなり剣の時間なりねだってくれ、そしたら落ち着くから。

 

「島が見えたが」

「そ、うでありますね。一度上陸して、補給や情報収集をしたいであります」

「燃料に余裕は」

「……まだ問題無く」

「ならいい」

 

 これがもし、例えばレイリーやジンベエにされたら特に気にしなかっただろう。あの二人は大人のイメージが強く、今世でも子ども時代に会っていないから。

 しかしこれが子ども時代面倒を見た、かつ原作より幾分若い見た目をしたミホークにやられると、調子が狂う。

 ドフラミンゴとロシナンテもそうだが、自分が成長しないのに相手だけ大きくなっていくのは、案外慣れない。

 大きくなったなぁと思うと同時に、俺の中にはまだあの時の小さな身体をした相手が残っている。

 しかし、俺の身体はなんの変化も無く、だんだんと視線が上に上がっていくのを緩やかだが確かに自覚する。

 ONE PIECEのキャラは全体的に背が高いのも影響して、おそらく今後殆どのメインキャラを見上げることになるのだろうなぁと察していた。

 チョッパーも、形態変えたら普通に越されるだろうな……ずっとちっこいままでいてくれ、首を痛めたくない。

 ロビンを見下ろすのもあと十数年以内に終わりと考えると寂しい。

 ドンキホーテ兄弟も、ミホークも、あのちんまりとした体格からよくここまで伸びたものだ。成長痛やばかったんだろうなぁ……。

 

「やっぱり骨が伸びる感覚ってわかるものなのでありますか?」

「急にどうした」

 

 急激に背が伸びる場合、痛みとともに骨が大きくなる感覚とか、わかるものなんだろうか。

 もう前世の成長痛なんて忘れてしまったから、ミホークも忘れているかもしれないな。

 ローもこれから成長痛に悩まされるんだろうなぁ、いいな、身体が育つって。

 

 ……彼らの身長が伸びきって、やがて縮んでいくようになっても、俺の背は変わらないんだろうな。

 

「そう考えると、こうして見上げるのも、また貴重な時間なのでありますなぁ」

「……くだらん」

 

 一蹴されてしまった。

 しかし、俺の言葉の真意に気付いたのか、ミホークがほんの少しだけ、昔見た子どもの色を瞳に宿したから、思わず笑ってしまった。

 子どもの時から全てが変わってしまったわけではないと、安心したから。

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