この幻想郷の果てがあるならば!   作:OMG00

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10話 : エピローグとプロローグの境界

 

 

全ての出来事には始まりがあり、終わりがある。

 

命も、物語も、冒険も、いつかは終わりが来るものです。

 

終わりがあるから、全ては流転していくの。

 

永遠とは即ち、終わりを否定した牢獄みたいな物よ。

 

始まりと終わりは表裏一体。

 

全てが終わったと思った時、それが始まりである時もある。

 

その境界は人に、自然に、全てに影響を受けるもの。

 

つまり、終わり(エピローグ)始まり(プロローグ)の境界は曖昧なものなのです。

 

まぁ…私ならその境界。自由に弄れるんですけどね?

 

さて…そろそろ出て来ましょうか?

 

 

———————————————————————————

 

 

「はい。私が出て来ましたぁ。」

 

幻想郷の夜明け、小さな冒険が終わったその時、

その妖怪は始まりを告げるため、博麗神社に現れた。

 

何も無い空間に穴が開いた…空間の裂け目である。

“スキマ”と呼ばれる裂け目の中にいたのは一人の女性。

優雅に歩き、その妖怪少女は彼女達の前に姿を現した。

 

彼女は紫の豪華なフリルドレスを着た美しい女性だった。

赤いリボンが付いたナイトキャップのような帽子を被り、

長く美しい金髪を靡かせ、妖艶な笑みを浮かべている。

身に纏う雰囲気が人間離れしている…彼女は妖怪だ。

先程の能力といい…底が計り知れない存在だ。

 

「ご機嫌よう。しばらく振りですね?本居小鈴ちゃん?」

「貴女は…紫さん…ですよね?」

「はい。幻想郷の賢者、「八雲(やくも) (ゆかり)」ですわ。」

 

 

八雲(やくも) (ゆかり)

 

幻想郷を創り上げたとされる賢者の一人。

境界を操る能力を持った、幻想郷最古参の妖怪だ。

普段は何処に居るのかサッパリ分からないが、

その活動範囲は、この幻想郷のあらゆる場所に及ぶ。

これも彼女が持つ、境界を操る力による賜物だ。

先程のワープを始め、あらゆる事に対応した

余りに強力な力だ…その力は、神にも匹敵するだろう。

 

そんな大賢者たる八雲紫が、この博麗神社に来たのは

目の前にいる新人神様とパタポンに用があるからだ。

 

「へぇー…貴方達がパタポン…どれどれ…」

「えッ?まッ、うわわわっ!」

はたポンをひょいっと持ち上げ、じーっと見つめる紫。

突然の拉致に驚くも、何もしないからか暴れる事なく…

 

「ちょ…ちょっと…はずかしいですよぉ…」

 

見られるだけで吸い込まれそうな瞳に、恥ずかしさを覚えていた…

そんな恥じらう姿に、紫は思わず微笑みながらこう言った。

 

「あら可愛い。食べちゃおうかしら?」

「たすけてぇ!!かみさま ほとけさま こすずさまー!!」

 

突然の捕食宣言に、涙を流しながら助けを求めるはたポン。

甘酸っぱい青春は、恐怖と共に終わりを迎えた。

見かねた霊夢は、紫の頭にお祓い棒を叩き込むのだった…

 

「はたポンは だいじなものを ぬすまれて しまいました…」

「よしよし…怖かったねー…もう大丈夫だからね?」

 

小鈴に抱かれて撫でられて慰められるはたポン。

はたポンの心の中はグルグル回っていた…

紫の瞳は今でも思い出す程に綺麗な瞳だったのだ…

そんな綺麗な瞳をもつヒトが、自分を食べようとした…

旅の途中、大きなモンスターに喰われた仲間を思い出す…

自分もあんな風に喰われてしまう所だったのだろうか?

かつてのショッキングな出来事に、忘れられないあの視線…

キケンな二つが合わさった結果、はたポンは……

 

「うぅぅ…なにかに めざめて しまいそうです…」

「ダメよはたポン!戻れなくなるわ!!!」

 

新たな扉を開きかけてるはたポンを必死に食い止める小鈴。

しかし努力虚しく、紫によってトドメを刺されるのだ。

 

「あら?お望みなら、心の中に私を刻んで差し上げますよ?」

「!?!??!!?!!!!?!?!!?!!」

 

心の中に直接語りかけてくる紫の魅惑的な声…

恐怖と甘酸っぱい感情が最高潮に達し…そして…

 

「もーだめポン……」

はたポンは気絶した…

 

霊夢は紫の頭をもう一度強くブッ叩いたのだった。

 

 

———————————————————————————

 

 

「ごめんなさいねぇ?余りにも驚いてくれるからつい…

ちょっとした悪戯心だったのよ?分かるでしょう?」

「よう霊夢、こいつ反省のカケラも見せてねぇぞ?」

「何言ったって無駄よ、何考えてるか分かんないし。」

「よ、妖怪って…恐ろしいのね…」

「妖怪冥利に尽きるわぁ。恐怖を与えてこその妖怪だもの?」

 

そう言いながらパタポンズに視線を向ける紫。

精神攻撃に不慣れなパタポンは少し怯えていたが、

すぐに鋭い目つきに早変わり。三人は小鈴の前に立ち、

小鈴を護るために、紫に槍と盾と弓を構えたッ!

 

「あら勇敢ね?成る程成る程…ふふ…良いわね…

人間でなくとも、貴方達はしっかりとヒトなのね。

良いでしょう。そろそろ本題に入りましょうか?」

 

紫は扇子を取り出し、横にシュッと薙ぐとスキマが開いた。

そこに手を突っ込み、スキマの中から1枚の紙を取り出した。

不思議な気を感じる紙だ…しかし何処かで見覚えが…

 

「それは パタポンのしょの ページですね?」

「メデン!?いつの間に出て来ていたの!?」

「たったいま ですよ こすずさま……コホンッ

はじめまして けんじゃどの わたくしは メデンと もうします

パタポンの…こすずさまの みこで ございますわ」

「ご機嫌ようメデン殿。お会い出来て嬉しいわ。」

 

後ろから突然現れたメデンに驚く小鈴を他所に、

メデンは紫に頭を下げて挨拶をした。

紫もメデンに挨拶し、話題をページに移すのだった。

 

「さて…このページですが、この幻想郷中のあちこちに

散らばってしまっている事は私も存じております。

このページは先程見つけたものなのです。

しかし…問題はそれだけでは無いとご存知ですか?」

 

「われわれが しっていることは…

なかまが なんにんか いなくなったこと と

ぶぐの いくつかが なくなっていること ぐらい ですね…」

 

紫の問いに対し答えるメデンだが、半分正解のようだ。

どうやら起こっている問題はそれだけでは無いらしい。

そうでなければ、幻想郷の重鎮自らが赴く事は無いだろう。

 

「それで…けんじゃどのが おっしゃる もんだいとは?」

 

「紫で良いですわ。ええ、ちょっとした問題なのですが…

ページが散らばったと同時に、幻想郷のあちこちで

今まで見たことの無い生き物が何種類か確認されたのです。

間違いなく、その本のページによるものでしょう。

接触を試みましたが、どうやら知性が無くてですね…

そして、それらは各々のテリトリーを持ち始めました。

まるで、何かを護るように…ね?」

 

「まさか!われわれ いがいの そんざいも きているとは…

ヤツらは ページを まもっている と いうこと ですね?」

 

「恐らくは。いずれ縄張りを巡り、妖怪達とその生き物は

大きな戦いを始めるでしょう…避けるべき事態です。

霊夢に魔理沙、二人はもう分かっているわね?」

 

そう。これは一冊の本によって引き起こされた異常事態。

幻想郷における「異変」と呼ばれるものだ。

放っておけば、確実に取り返しが付かなくなるだろう。

ここに居るのは異変解決の専門家である霊夢と魔理沙。

二人の目つきが変わった…大きな仕事になりそうだ。

 

「貴女にはこれをお渡しします。必要な物でしょう?」

「は、はいっ…どうも…あっ、本が勝手に!」

 

紫がページを差し出すと、小鈴のパタポンの書が開き、

吸い込まれるようにページが元の場所に戻っていった。

近付ければ勝手に戻ってくれるらしい。便利だ。

 

頭の中に声が聞こえる…

 

 

かみさま…おねがいです……

 

パタポンたちに たたかう ゆうきを おあたえください……

 

 

「…………はッ!?コレは…タイコの譜面だわ…!

頭の中に勝手に流れ込んで来たの!今なら……」

 

小鈴はタイコを手に、頭に流れて来た譜面を叩いた。

 

 

PON PON PATA PON!

 

 

「おぉッ!コレは こうげきの ポンポンのうた!」

「これで たたかえるよー!」 「いま てき いないけど」

 

パタポンズが唄に反応し、臨戦態勢をとるも、

敵がいないので不発した様子だった。しかし…

どうやら、今一番必要な歌が戻って来たらしい。

メデンは更に説明をし始めたッ。

 

「もし きょうだいな てきと たたかうので あれば

ほかの タイコも うたも ひつように なるでしょう

せんりょくも パタポンズ だけでは しょうじき むぼうです

どうにか なかまと ぶぐ そして タイコと うたを

あつめることが いまの われわれの もくひょう ですね」

 

恐らく…それ以外にも沢山の譜面に、集めるべきモノが

この幻想郷に山ほど散らばっているのだろう。

マミゾウと文の情報を待って、今は人里に籠るしか

出来ないのだろうか…どうするべきなのだろう…

 

小鈴がそんな事を考えていた時だった。

 

「本居小鈴」

「は、はいッ!?」

 

紫が彼女を名を呼んだ。

 

「今回の異変は、言ってしまえば貴女が起こしたもの。

貴女には、その責任を取って貰う事を決定しました。」

「そんな…責任なんて…ッ!?」

「当然でしょう?貴女の軽率な行いが、幻想郷に

異変をもたらし、平和を乱してしまうのです。

異変の首謀者は、その責任を取る義務があります。」

 

圧倒する紫のオーラに、絶望の表情を見せる小鈴。

逆らう事も逃げる事も出来ず、思わず後退り。

権力者としての無慈悲な決定は、ここにいる人達の

表情を怒りに染め上げ、一瞬で爆発させたッ!!

 

「紫ッ!小鈴ちゃんに手ぇ出したら許さないわよッ!!」

「こすずさま!いのちがけで おまもりしますッ!!」

「丁度良い!異変解決の肩慣らしに付き合って貰うぜッ!!」

 

針とお祓い棒を構える霊夢、八卦炉を構えた魔理沙。

そしてはたポンとパタポンズも小鈴の前に出て来た。

皆紫に対して敵意を放っている…一触即発の状況だった…

 

「貴方達が何を言おうと変わりません。コレは決定事項です。

はぁ…メデン殿だけが理解して頂けたようですわね?」

「えっ あぁ…そうですねぇ…なんとなくですが」

 

そう言えば先程からメデンはやけに静かだ…

どうやら小鈴の背中を摩って慰めていたらしい…

小鈴の背中をポンッと叩き、メデンは紫の前に出た。

 

「よびすて で かまいませんよ ゆかりどの

それはそうと…もうちょっぴり わかりやすく いったほうが

よろしかった かと…いつも こんなかんじ なのですか?」

 

「その通りよメデン。何一つ問題なんて無いの。

結果的に全て上手く行くのですから…ね?

全く…まだ何をどうするのかも言ってないのに、

貴方達は血の気が多くて本当に困るわぁ…」

 

扇子を開いて仰ぎ始める紫、余裕に満ち溢れる表情で、

小鈴達には一切の敵意も見せていなかった。

だがコレで良かった。人間が妖怪と敵対するのは、

この幻想郷の正しい在り方だからだ。

 

「紫さん…私は…これからどうすれば良いの?」

小鈴は問うた。この責任の取り方を。自分のすべき事を。

この幻想郷に対し、自分の為すべき事は何なのかを。

 

後ろをご覧なさい。小鈴。この美しい幻想郷を…

 

この一言で霊夢達は構えを解いた。

そして目の前に広がるのは、朝日に照らされた幻想郷…

紫は優しい口調で、小鈴に語り掛けた。

 

「貴女は、この幻想郷をパタポンと共に巡り、

ページを回収すると共に、異世界の生物を討ち倒し、

幻想郷の安寧と平和を守るのです。

そこに居る霊夢や魔理沙、他の幻想郷の住人と協力し、

貴女の自信の手で、この異変を解決しなさい。

小鈴。これが、貴女の為すべき事です。」

 

八雲紫は、幻想郷を誰よりも愛する妖怪だ。

この幻想郷の為であれば、どんな事だってするのが紫だ。

その紫が直々に、小鈴に異変解決を命じた…

 

それを聞いた小鈴は驚き、沈黙し、ワナワナと震え、

そして…心の奥底から熱い感情が滾り爆発したッ!!

 

 

「いぃぃぃぃぃやったああぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

飛んで跳ねて喜ぶ小鈴!そこに居る全員が驚いたのだった!

 

「霊夢さんや魔理沙さんと肩を並べて戦えるのね!!

異変解決の為に、幻想郷のあちこちに行ったりして、

色々な経験が出来るのね!?凄いわ凄いわぁッ!!!」

 

小鈴はずっと憧れていたのだ。異変解決に赴き、

普通では無い日常を送る霊夢や魔理沙を…

そしていつか、二人のように戦う事をずっと夢見ていた。

 

遂にその瞬間が来たのだと!彼女はすっげ喜んだッ!

はたポンとパタポンズを抱き上げ、紫に宣言したッ!!

 

「私ッ!頑張ります!!パタポン達と一緒にッ!

幻想郷に住む人間達とも、妖怪達とも協力しあって、

この異変を解決してみせますッ!!!そして……

この子達と一緒に…このセカイの果てを目指します!!」

 

紫は笑顔で満足そうに頷き、彼女に応えた!

 

「貴女もパタポンも立派なヒト…期待しておりますわね?」

 

そしてパタポン達にも紫は笑顔で言い放ったッ!

 

「改めて…パタポンの皆様方。

ようこそ幻想郷へ。貴方達を心から歓迎致します。」

 

スキマを開き、紫は去っていった…寝る時間なのだろう。

いつもの事だが、本当に彼女は神出鬼没である。

 

「こすずさま!どこまでも おともいたします!!

こすずさまの ためなら じごくの はてまでもッ!!」

 

「こすずさま!いこう!セカイの はてまで!」

 

「こすずさま!あなたの タイコで われわれに

すすむ チカラを おあたえ くださいませ!!」

 

「おいおい すっげ こすずさま!

おいおい すっげ げんそーきょ!!

このセカイの はてまで!がんばるぞーッ!!」

 

「こすずさま…メデンは あなたのために

すべてを つくすことを ここに ちかいますわ

ともに まいりましょう…セカイの はてまでッ!!」

 

はたポンとパタポンズ、メデンは小鈴に寄り添い、

共に戦い、幻想郷の果てまで行く事を誓った…

パタポン達となら、どんな場所へだって行けるはず!

その為には自分自身も強くならないといけない!

何故なら小鈴は、パタポン達の神様なのだからッ!!

 

「さぁて…異変解決の為に、私も全力でサポートするわよ!」

「へへー、漸く小鈴も異変解決組の仲間入りだな!

ビシバシ鍛えてやるから、覚悟しろよぉ〜?」

 

霊夢と魔理沙に頭を撫でられる小鈴は、これから始まる

刺激溢れる異変解決の日常に心を躍らせていた…!

パタポン達と幻想郷を駆け巡るのが楽しみだった!

里の外で何が待っているのかは分からないが……

それはきっと、素敵なモノに違いない筈だ!

 

「私…自信が無くても…挫けそうでも…

どんな壁があっても…絶対に諦めないからね!」

 

 

小さな冒険は、ここで終わった。

 

そして…これから始まるのは大きな冒険!

 

 

 

さぁ行こう!幻想郷の果てまで!

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