紫が去り、博麗神社に平和が訪れた気持ちの良い朝。
小鈴達も、そろそろ鈴奈庵に帰ろうとしていた時だった。
「こすずさまー!そらから おんなのこがッ!!」
そう叫ぶのは旗を持ったはたポン。何かに気付いた様だ。
空を見上げると、確かに何者かが神社に迫って来ていた……
最初は黒い点だったが、徐々に大きくなっていき……
やがて疾風と共に、その少女は小鈴達の前に舞い降りたッ!
「うわあぁ〜ッ!?」
着地時の風の強さに、思わず吹っ飛ぶパタポン達!
弾丸以上の速さでやって来た風神少女は何者か?
その正体は、明るい笑顔の黒い鴉天狗だったッ!
「おはようございまーす!文々。新聞のお届けでーす!!
……って、小鈴ちゃんにパタポンズ!丁度良い所に!
貴方達の記事もしっかり書きましたよ〜!」
小鈴達の前に現れた少女は、先日メデン達と鈴奈庵で
楽しい(?)お話をしていた新聞記者、射命丸文だッ!
今は人里ではないからか、いつもと服装が違っていた。
リボンが付いた真っ白な半袖のシャツに黒いスカート。
白いボンボンが左右に垂れた、赤い頭襟を被っている。
何より特徴的なのは、その背中から生えた黒い翼。
真っ赤な靴の底は天狗の一本歯の下駄の様になっており、
手には天狗の団扇と、刷ったばかりの新聞を抱えていた。
この格好こそが、普段の文の格好なのだろう。
「おや? あやどの あさ はやく から ごくろうさま ですね」
「あやや!メデンさんもご一緒でしたか!これは僥倖!
こちらが、私が真心込めて作った本日の新聞です!
号外という事で無料ですよ!是非とも読んでみてください!」
そう言いながらメデンに新聞を渡す文。
ニッコニコの笑顔から、強い圧力をメデンは感じていたッ。
「ず…ずいぶんと グイグイ きますねぇ……ほほう……
これが しんぶん ですか……どれどれ……」
「お二人にはこちらを…今日配る予定の人里用の新聞です。
内容に問題が無いか、チェックをお願いします!」
新聞を受け取ったメデン達は、早速新聞を読み始めた。
霊夢も読もうと思った時、ふと小さな疑問が浮かんだ。
「あれ?メデンあんた…読めるの?文字が違うんじゃ…」
「ええ!しっかりと よめますよ!おそらく……
こすずさまが われわれを よびだした えいきょうかも?」
「召喚者の能力が、召喚された者にも移るパターンか…
他のパタポンもそうなのかな……興味深いぜ……」
魔理沙の研究が一つ増えた所で、新聞の中身を見てみよう。
大きな見出しには、パタポンとその神である小鈴が
大きくピックアップされていた。今日の新聞の主役だ。
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『貸本屋の美少女看板娘、まさかの現人神に!?』
『人里の新たなマスコット、その名はパタポン』
先日の昼頃、人里にて新たな現人神が誕生した。
彼女は人里にて貸本屋を営む鈴奈庵の看板娘であり、
当新聞と深い関わりを持つ「本居小鈴」氏だ。
博麗の巫女、霧雨魔法店店主、御阿礼の子立ち合いのもと、
封印された本を解き放った結果、彼女は異世界から
不思議な一つ目の生命体、パタポンを召喚し、
パタポンの神様として信仰の対象となったのだ。
パタポンの見た目はかなり独特であり、初見だと
少々恐怖を覚えるかもしれないが、驚くべき事に、
パタポンは意思疎通が問題無くしっかりと出来る上に、
主人である本居氏の命令には絶対服従である為、
人間相手にも非常に友好的な存在だと思われる。
既に人里では新たな座敷わらしの一種であると認知され、
その可愛げな見た目と仕草から徐々に人気が高まっており、
パタポン自身も人間達の生活に寄り添おうとしている。
いずれ人里のマスコットになる日は近いのかもしれない。
以下、パタポン族の巫女である「メデン」氏のコメント。
「我々は長い間封印されていましたが、小鈴様の御力で
この幻想郷に蘇る事が出来たのです。種族は違えど、
我々はこの世界の人達と共存していける様に努力し、
我らの神、小鈴様の為に全てを尽くすつもりです。
幻想郷の皆様方。どうぞよろしくお願い申し上げます。」
尚、パタポンの召喚の際に、本から不思議な力を持った
ページが幻想郷に散らばっているのを確認しており、
これらが幻想郷にどういった影響を及ぼすかは不明だ。
メデン氏を始め、パタポン達はこのページを集める事を
今現在の最優先事項としている様である。
もし読者の中に、ページを確認、もしくは保管している者。
ページの影響を確認した者がいるのであれば、
すぐに妖怪の山にある当新聞の記者にご一報願いたい。
当新聞はパタポンを掲載している幻想郷唯一の新聞であり、
今後もパタポンの情報を掲載していく予定だ。
パタポンのこれからに、乞うご期待である—————
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「意外とマトモでビックリした…意外だわ。
アンタ、ちゃんとした記事書けるのね?」
「えぇ〜…いつもマトモな事しか書いてませんがねぇ…」
「ますこっと?にんき?ほんとぉ〜?」
「おお、はたポンも読めるのか……
ん?この記事は…なんだ……?」
霊夢の発言に肩を落とす文、頭に?を浮かべるはたポン。
そんな中、魔理沙は別の記事を読んでいた。
それは新聞の隅にあった短い記事だ。
「なぁ文、この記事なんだが…」
「ん?あぁ、それですね?何やら未確認生物の報告を
椛から受けましてねぇ…ちょっと記事にしてみたのよ。
寝不足だったのかしらねー?あの時の焦りようと来たら…」
「それ くわしく」
魔理沙が見つけたのは、白狼天狗からの報告で
謎の生物が妖怪の山で何種類か確認されたという記事。
本当かどうかは不明だが、警戒する様にと書かれていた。
どうにも信頼されていない白狼天狗であったが、
どうやらこの巫女には重要な発見だった様子!
メデンはがっつく様に文に詰め寄ったッ!!
「ど…どっちの方です?仕事疲れな部下のエピソード?
それとも彼女の言ってたヘンテコモンスターのお話?」
「ヘンテコモンスター の ほうで おねがいします」
「え、えーっとですねぇ…モヒカンが生えた青い恐竜とか……
霧の中を歩く4本足の巨大蜘蛛だとか…そんな生物を
見たって、変な話を山の監視役に聞きましてねぇ……
まさか?ご存知で?そんな生物いません……よねぇ?」
「あぁ〜…おそらくは…クモのほうは あめが ふるまで
てを ださない ほうが いいです……むてき ですからね……
それに……ヘタに ちかづくと ちを すわれますよ」
「詳しくお伺いしたいのはこちらの方ですよ…ッ!
一体何が起きてるんです!?まさかページの影響で…?」
明らかに知っている様子のメデンに、質問しようとする文。
ペンとメモ帳片手にメデンに詰め寄ろうとした時!
小鈴が入って来て、さらに爆弾を投下するのだったッ!
「紫さんが先程ここに来て、知らない生き物が
幻想郷のあちこちに出て来たって話をして…それで……
わ、私、この異変を解決する為に戦う事にしたの!」
突然の異変解決宣言に、ペンとメモを落とす文…
衝撃的すぎる情報のオンパレードに、真顔になっていた。
明日の新聞もパタポン一色になりそうだ…
そんな中、パタポンズは何やら騒いでいる。
モンスターの事をなにか知っている様子だったッ!
「モヒカンの きょーりゅー?」
「それって アイツ しか いないかなぁー…」
「“ドドンガ”!まちがいなく“ドドンガ”だッ!」
パタポンズの3人は良く知っていた…忘れられる筈がない。
旅の始まりでいつも最初に現れる大型モンスター。
それがドドンガだ。何度も何度も戦って来た相手でもある。
であれば……最初に倒すべき相手は決まった。
置いてきぼりになった霊夢がメデンに問いかけた。
「ちょっと!ちょっと!話を勝手に進めないでよ!
その……どどんが?っていうのかしら、危ないの?」
「いせきの しゅごじゅう ですね ふだんは よく
ねているの ですが てきが くれば おきますよ
しかし ドドンガ ですか……まだ はやい ですね…
こすずさま……もしも ヤツと たたかうなら……
せんりょくと タイコが ひつようふかけつ ですよ」
遺跡の守護獣とは威厳があってカッコいいものである。
だが、今はそうも言ってはいられない。
ドドンガが守っているのは、パタポンの書のページ。
どうにかして取り返さなくてはならないのだ。
「よし分かった!私はちょっくら幻想郷を飛んで
情報を集めてくるぜ!ソイツら以外にも色々いそうだしな!
小鈴!譜面とタイコと戦力が十分に揃ったら、
弾幕ごっこをしっかりと教えてやるからなー!」
魔理沙は箒に乗って空を飛び、博麗神社を後にした…
彼女の事だ、きっと情報を見つけてくれるだろう。
こうしちゃいられない!と、文も復活した。
ペンとメモを片手に、メデンにインタビューを開始したッ!
明日の新聞の為!そして、幻想郷の明日の為にッ!!
「メデンさん!ソイツらの情報提供をお願いします!
他の妖怪や里の人間への注意喚起になりますし、
他の情報も入ってくるかもしれません!
明日の新聞にバッチリ書かせて頂きますよ!!」
「ええ!もちろん きょうりょく いたしますとも
われわれに とっても だいじなこと ですからね…
まず さきほど いった クモの はなしですが……」
小鈴はこれからやって来る戦いに、心の準備をしていた。
人里の外の見た事ない場所、見た事ない妖怪達。
そして、ページを守る守護獣との戦いに心震えていたッ!
そして…運命の出会いがあると予感していたのだ……