この幻想郷の果てがあるならば!   作:OMG00

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13話 : 香霖堂防衛戦線

 

 

魔理沙が博麗神社から飛び立ってしばらく……

 

ここは魔法の森の入り口に構えている古道具屋。

この店は「香霖堂(こうりんどう)」という、霊夢と魔理沙行きつけの店だ。

店の中には所狭しと商品が敷き詰められており、

そのどれもが幻想郷では珍しい外の世界の品ばかり。

暗く埃っぽい店内だが、どこか居心地が良い空間だ。

 

ここは外の世界から流れ着いた古道具、

そして、魔道具を扱うこの幻想郷唯一の店だ。

値段もその道具に合わないようなモノばかりな上に、

店主が気に入った商品は非売品になるなど、

どうやら店主は少しばかり商売が下手らしい……

 

そんな香霖堂の店内、一人の少女と一匹の妖獣少女。

そして…緑色の不思議なタイコを持つ香霖堂店主が、

このタイコについて二人の少女と会話をしていた。

 

 

「“知恵のタイコ”か……なるほど。実に興味深いね。

確かにこの楽器は、幻想郷や外の世界とは違う作りだ……

 

タイコとは言うが、コレはタンバリンに近い見た目だね。

まぁタンバリンも太鼓も同じ打楽器であるから、

タイコと言ってもある意味、間違いでは無いのだろうが。

そうなると、同じ見た目で違う名前の楽器があってもおかしくない。

そもそも、彼らの世界に他の楽器は何があるのだろうか?

きっとそれは僕たちの知らない未知の音を奏でる

不思議な楽器なのだろうね。このタイコでさえ、

僕が聞いたことのない不思議な音だったのだから。

一緒にあったこの紙も、楽譜である事は分かるんだが、

肝心のタイコがこれだけで確認のしようが無くてね……

 

しかし……それにしてもだ。

 

知恵のタイコとは中々言い得て妙な感じだ。

そのパタポンというのは、タイコから奏でられる

唄で行動し、戦う種族なんだろう?そして……

小鈴君が今持っているタイコが「勇気」と「力」のタイコで、

それで奏でられるのが「前進」と「攻撃」の唄と……

では、この知恵のタイコから奏でられる唄は何だろうか?

知恵と言うからには、やはり戦術的な唄なのだろう。

武器を振るって攻撃するだけが勇気と力ではないのは、

弾幕ごっこを嗜む君達なら良く知っているはずだね。

例えば……守りに徹したり、攻撃を回避する唄というのはどうだろう?

知恵ある者の戦いとは、常に戦略と共にあるものだ。

きっとパタポンも、そうやって世界の果てを目指していたんだろう……

 

と、僕は思うんだが、実際どうだろうか?」

 

「あー……わからん。小鈴とパタポンに聞いてこいよ。

どうせこの後ソレを渡しに行くんだろ?香霖」

 

魔理沙が「香霖」と呼ぶ彼の名は「森近(もりちか)霖之助(りんのすけ)

ショートボブには跳ねた癖っ毛がある白い髪に、

青と黒ツートンの服、眼鏡を掛けた物腰柔らかそうな男性だ。

ここ「香霖堂」の店主である彼は

霊夢と魔理沙とは長い付き合いで、非常に親しい仲だ。

霊夢の巫女装束にお祓い棒を仕立てているのは彼であり、

魔理沙のミニ八卦炉も、この霖之助お手製である。

 

慧ノ子(えのこ)はどうする?一緒に来るか?」

 

ふあー…と大きな欠伸をするのは、慧ノ子と呼ばれた少女。

寝転がってた彼女の白いショートヘアには犬耳が付いており、

特徴的な三本の尻尾を揺らしながら立ち上がった。

妖しい気を纏った、緑色の大きな宝玉を首にかけており、

その両手に取り付けているのは真っ赤なトラバサミ。

手を握るとガチンッ!と勢い良くトラバサミが閉まった。

 

「んー……あぁごめん。話が長くて寝ちゃってたよ……

そうねー…里の中には入れないし、留守番しようかなぁ」

 

地獄の番犬、ケルベロスみたいな彼女の名は「三頭(みつがしら)慧ノ子(えのこ)

魔法の森に住むヤマイヌが、とある理由で妖怪になったのが彼女だ。

幼くして泣きながら魔法の森に逃げて来た魔理沙の事を知っており、

少し前の異変が終わってから、よく絡むようになったのだ。

 

魔理沙と慧ノ子が香霖堂にいるのは、魔理沙が手掛かりを

探している最中、丁度そこにいた慧ノ子に出会ったからだ。

なんでも、嗅いだことの無いニオイが香霖堂からする……

と、慧ノ子が言ってきたので、霖之助に会いに来たのだ。

 

するとどうだろうか……会いに行った霖之助の手には、

パタポン達が探し求めていた伝説のタイコの一つ、

“知恵のタイコ”そして、パタポンの書のページがあったのだ。

霖之助曰く、気分転換に外に出歩いた時に森で見つけた物だとか……

一目見た時にコレは凄まじいモノだと気付いた彼は、

そのままタイコとページを店まで持ち帰って来たのだと言う。

 

霖之助は、道具の名前と用途が判る能力を持つ。

故に紙切れが楽譜である事を即座に理解し、

このタイコが普通でない事を理解したのだ。

そんな彼が伝説のタイコと楽譜を見つけたのなら、

持って帰って来るのは偶然では無く必然だった。

先程の話は、あくまでタイコを見た霖之助の考察である。

 

さぁこの素敵な楽器をどうしようかと考えてた矢先、

魔理沙と慧ノ子がやって来たのだ。本来の持ち主の情報と共に。

しかもその人が知り合いで、ちょっとした手違いで

異世界からやって来た存在の現人神になったという。

情報が多すぎて困惑しそうになった霖之助だが、やる事は決まった。

本来の持ち主である小鈴にタイコと楽譜を返す事。

先程の考察の答え合わせをする事。そして……

異世界からやって来たパタポンをその眼で見る事だ。

タイコとページを手に、霖之助は立ち上がった。

 

 

「本来の持ち主がいるのであれば、このタイコを

小鈴君に返さないといけないな。魔理沙も来るんだろう?

一緒に人里に行こう。小鈴君の所まで案内しておくれ。」

「おう!任せときな!じゃあ慧ノ子は留守番を……

おい、慧ノ子?どうしたんだよ、玄関をじっと見て……

随分と怖い顔するじゃないか……何かいるのか?」

 

魔理沙の問いに何も答えぬ慧ノ子。その視線の先は、

香霖堂の外に向けられていた……そして……

 

 

ズシン……ズシン……ズシン……ッ……

 

 

「んなっ……なんだなんだ?地震か?」

「いや…この音は足音じゃないかな…?」

 

外から聞こえたのは大地が揺れるような足音……

まるで巨大な生き物が歩いたかのような地響き……

一体何の音なのだろう?またあの人形使いが

巨大人形の実験でもしているのだろうか?近所迷惑だなぁ。

なんて思いながらドアを開ける魔理沙。

 

 

そこにあったのは太陽でも月でも無く、顔だった。

青いアゴに黒いモヒカン。黄色の目が二人を見つめていた。

 

 

そして………

 

 

 

グオオオォォォォォーーーーッッッッ!!!!!!!!!!

 

 

 

二人を見たその顔は雄叫びを上げ、大きく何度も飛び跳ねたッ!!

再び揺れる大地!転びそうになった二人を慧ノ子が掴み、

そのまま二人を外に放り出したッ!!

急いで状況を確認する三人、目の前のモンスターは何なのか?

 

魔理沙は知っていた!今朝神社で話していたヤツと

特徴が一致していたからだッ!特にッ!モヒカンッ!!!

 

「おいおい!コイツが噂の“ドドンガ”かッ!?

顎がでっかい恐竜みたいなヤローだな!!

というか、一体全体なんでこんな所にいやがる……ッ!?」

「まさか…持って来たタイコとページを追いかけて来たのか!?」

「あり得るぜ……コイツは守護獣らしいからな……」

「つまりは番人ってコト…?面白いじゃん…!!」

 

神の遺産……ドンガ遺産を護る遺跡の守護獣、ドドンガ。

一見すると細いようにも見える身体だが、

胴体以上に巨大な頭を支えるその強さは三人を戦慄させた。

 

ドドンガがスゥーッ……と、深呼吸しながら仰け反った!

この動きが何かの予備動作である事は確実ッ、

魔理沙がマズイ!と思い思い切り叫んだッ!!

 

「香霖ッ!!避けろおぉぉーッ!!!」

 

ドドンガの口から吐き出されたのは灼熱の嵐ッ!!

そう!炎だッ!!御伽話のドラゴンの如く、

ドドンガの口から炎が吐き出されたのだッ!!

慌てて逃げる霖之助!しかし後ろには香霖堂ッ!!

香霖堂を護るため、魔理沙と慧ノ子は炎の前に立ったッ!!

 

「やらせないよッ!三頭「ケルベロスファイア」ッ!!」

 

吐き出された炎に向かって慧ノ子が繰り出したのは、

両手のトラバサミから放出された地獄の業火ッ!!

炎と炎がぶつかり合い、相殺したかのように見えたが、

ドドンガの炎は少しばかり香霖堂に着火してしまった!

しかしッ、それを予想して動く少女がここにいたッ!!

 

「火を消す為だ!後で文句は言わないでくれよ!

マスタースパークのような放水だぁぁーッ!!」

 

ミニ八卦炉から大量の水が放たれ、香霖堂を水浸しにッ!

香霖堂に着いた火は、魔理沙の魔法で一瞬で鎮火させた!!

 

魔理沙は火力が高い星の魔法を得意とするが、

本来の彼女の属性は水。水の扱いはお手の物なのだッ!

 

しかし危機が去ったワケでは無い!目の前のドドンガは

血走った眼で魔理沙と慧ノ子を見ていた…

今の攻撃で完全に戦闘態勢に入ったようだ……

 

 

「香霖!タイコとページを持って人里に向かってくれ!

ドドンガが来たって小鈴に伝えてくれッ!!」

「分かった!急いで戻るから、二人とも怪我しないでくれよ!」

「留守番は任せなよ!番人対決、負けられないなぁッ!!」

 

霖之助は一目散に走り出したッ!人里に向かって!

それを追いかけようとするドドンガ!しかし次の瞬間、

ドドンガの顔面が勢い良く爆発し始めたッ!!

魔理沙が発射したマジックミサイルがクリーンヒットしたッ!!

 

そして爆風でフラつくドドンガに更なる悲劇ッ!

足元でガッチィン!!と音が鳴り、激痛に襲われたのだ!!

その正体は、慧ノ子がこっそり仕掛けていたトラップの起動音!

足元にあるトラバサミを思い切り踏みつけたのだッ!

痛みで悶えるドドンガに、慧ノ子は強く宣言したッ!

 

「お前は逃がさないよ!ここで倒してやるッ!」

「おう!こんなデカ顎モンスターに、香霖堂をやられてたまるかってんだ!」

 

「「いくぞおぉぉぉーッ!!!!」」

 

二人はドドンガに向かって一斉に弾幕を放った!

 

ドドンガは再び雄叫びを上げ、二人に突っ込んでいった…

 

 

 

—————————————————————————

 

 

「ハァッ…という事なんだ…だから…ハァ…頼むッ…」

「分かったわ!だから落ち着いて!はい、お水よ。」

 

人里に入ってすぐに、霖之助は小鈴と阿求、パタポンズと

合流を果たした。が、霖之助は思い切り走って息を切らしていた。

普段外に出ないで家に篭っていたのが仇になったのかもしれない。

阿求から渡された水を飲み干すと、落ち着きを取り戻した。

 

「助かったよ…君達がパタポンか…愛嬌があるね……」

「いやぁ それほどでも…?その てに もってるものは…」

「コレを君達に…渡しに来たんだ…受け取っておくれ…!」

 

小鈴は霖之助の持っているタイコを手に取った!

そして……

 

 

CHA! CHAKA CHA! KAAAA!!!!!

 

 

緑のタイコは小鈴の周りに浮き始めた……

叩くとCHAKA!!と心地良い音を出すタイコだ。

 

そしてパタポンの書のページを受け取ると、

いつものように頭の中に声が響いた……

 

 

かみさま……きこえますか……

 

いよいよ 3つめの うたを おぼえるとき です……

 

まもりの リズムで パタポンたちを おまもりください……

 

 

CHAKA CHAKA PATA PON!!!

 

 

「ふんッ!!」 「まもれーッ!」 「いっぽも とおさない!」

 

唄を奏でると、パタポンズが守りの態勢に入った!

チャカチャカの唄は守りの唄!たてポンクラスが前線に出て、

後ろにいるはたポン達を守る巨大な盾となるのだッ!!

 

今のたてポンはチン一人だけだが、いずれは他のパタポンも増え、

難攻不落の要塞以上の守りを見せる事だろう……

 

「おぉ…!!僕の予想は正しかった!やっぱりコレは

守りの唄だったんだ!魔理沙に自慢出来るぞ…はは…」

 

予想が当たって思わず嬉しそうな顔をする霖之助。

だがやはり、今は二人が心配だ。改めて小鈴にお願いした。

 

「小鈴君、そしてパタポン達……二人を頼むよ。

ドドンガを退治して、平和を取り戻してくれ!」

 

霖之助の切実な願いに、小鈴は答えたッ!

 

「わ、わかりました…!私、頑張る!!」

「こすずさま……ふるえてますよ?ほんとに だいじょうぶ?」

「これッ!はたポン!せんいを そぐんじゃ ありません!」

 

メデンに叩かれるはたポン。ちょっぴり涙目になっていた。

しかし……はたポンの言う事は間違いなかった。

 

怖いのだ。初めての戦闘が。

重いのだ。背負った責任が。

 

震える足が、その心を表している……

だけど…それでも…やっぱり動かなければならない!

今の私は、異変解決のビブロフィリアなのだから!!

 

「大丈夫!行こう!幻想郷を救う第一歩だよ!」

 

小鈴は決心した!もう足は震えていない。

大きく一歩進んだその時、声が聞こえた……

 

 

おおっと またれよ!

 

あいや! よきかな!

 

 

こちらに近づく二つの影が見えたのだ。

 

「あッ……あの かたがたは……まさかッ!?」

「おいおいおい…まじかよ……すっげ こなこと……」

 

それはまぎれもなく、パタポンだった。

が、メデンやパタポンズの様子がおかしい……

信じられないものを見ているような…そんな雰囲気だ。

二人のパタポンが目の前までやって来た。

片方は大きな2本の角のようなヘルムの”たてポン“。

もう一人はお揃いのヘルムを被った”ゆみポン“。

そして二人は小鈴に名乗り上げたのだったッ!!

 

 

「わがはい バン・たてポン!

しょくんらの ちからになろう」

 

「せっしゃ ドン・ゆみポン!

おぬしらを えんごして しんぜよう!」

 

 

「で……でんせつの えいゆう たち!?」

 

メデンが珍しく興奮している……

目の前にいる二人は、それ程凄い存在なのだろう……

彼らを知らない小鈴はピンと来なかったが、

パタポンズ、そしてはたポンも凄まじく動揺していた……

 

「こたびの ドドンガは きょうてきだ……」

「われわれも ちからを かそう!」

「ゆくぞ!ともに しょうりを めざすのだ!」

「ともに まいろう!あらたな かみ こすずよッ!!」

 

雰囲気が違う二人のパタポンに、小鈴の心は燃え上がった!

英雄の登場で雄叫びを上げるパタポンズ!

そしてやる気に満ち溢れた小鈴はタイコを構えた!

 

「行くよ!魔法の森へッ!!」

 

 

PATA PATA PATA PON!!!

 

 

タイコの音と共に、決戦の地へ繰り出したのだ……

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