「
幻想郷で力や権力を持つ存在であれば、
その名を知らない者はあんまりいないだろう。
幻想郷の最東端に佇む「博麗神社」に住む美しき巫。
彼女は幻想郷と外の世界を隔てる「博麗大結界」を管理する
「博麗の巫女」であり、妖怪退治や異変解決、
巫女としてお祓いなどを生業としている。
……が、基本的にはマイペースでぐーたら。
毎日のんびり縁側で茶を啜って煎餅を齧り、
毎日のように遊びに来る魔理沙と駄弁って酒盛り、
たびたび神社の賽銭とお金稼ぎに執着して色々試すも、
失敗するか長続きしないかという体たらく…
だがしかし、それはあくまで私生活での話。
仕事に向かう彼女は、普段とはまるで別人。
彼女は重力に縛られず空を飛び、
高い身体能力に加えて、天才的な戦闘センス。
数々の不思議な力を持ち、霊力の扱いも超一流。
針とお札、お祓い棒と陰陽玉を携えて異変解決に向かう。
そんな仕事モードの彼女に見つかれば最後、
そこにいただけで妖怪であろうと無かろうと関係なく、
理不尽に完膚なきまでボッコボコに叩きのめされるだろう。
そんな彼女は特に力が弱い妖怪からは恐れられる霊夢、
場合によっては人間や神々にも問答無用で牙を向ける。
それと同時に、強い存在からは好かれ、
霊夢の周りには沢山の人間、妖怪、神々が自然に集まる。
その結果、博麗神社に参拝者もお賽銭も集まらず、
時には妖怪神社呼ばわりされる事もあるが……
それでも博麗霊夢は、幻想郷に愛されているのだ。
幻想郷の守護者たる楽園の素敵な巫女は、
今日も美しくも残酷なこの楽園を飛び回る……
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「あーあ、また霊夢に良い所取られちまうぜ。
だから敢えて阿求と小鈴に言わなかったんだよ。」
「どうせそんなこったろうと思ってたよ。
心配しなくても、封印解いたら一緒に見てみましょ?
……さて小鈴ちゃん、準備は良いかしら?
何が起こるか分からないから、少し離れててね?」
「よ、よろしくお願いします…!!」
霊夢は本を持ち上げ、じっくり眺めている。
むー。と、何やら難しい顔で眺めているが、
何を考えているのだろうか?阿求は霊夢に問いかけた。
「え?どうして簡単に封印を解くのを引き受けたかって?
さっき魔理沙にも言ったけど、“勘”よ。
この本から流れている気は……
放っておくと後で面倒になりそうな感じがするの。
例えどんな化け物が出てこようが…私に任せて。」
博麗の巫女として、人間は絶対に守ってみせるから!
幻想郷の守護者として、霊夢は自信満々に宣言した。
普段は怠けてばっかりの霊夢だが、
こういう時の彼女ほど心強い存在はいない。
「さぁ!やるよ!」
スッ…と、静かに指先を本の上に乗せた霊夢。
彼女は念じながら鎖を指でなぞり始めた。
その手つきを見慣れている魔理沙は、
これから起こる出来事を既に予測出来ていた。
「久々に来るぞ…!」
魔理沙はワクワクしながら言った。
この博麗霊夢という少女、ただでさえ強いのに、
空を飛ぶ能力以外にも様々な能力を持っている。
他の人間には真似出来ないような
特殊で、変わっていて、妙ちきりんで、
時には反則じみた能力までより取り見取り。
そんな能力の一つが、これから披露されるコレである。
「どんな封印も解いてしまう、霊夢のインチキ技だ!」
指を離した霊夢は、神妙な目つきでに本を見つめていた。
ギチギチ…ガリガリ…チャカチャカ…
それは博麗の巫女……
いや、博麗霊夢だからこそ成せる妙技!
今までうんともすんとも言わなかった、
本を縛っている鎖が揺れ始めたッ!
「凄いわ!さっすが霊夢さん!頼りになるーっ!」
「もうちょっとよ!さぁさぁ頑張って霊夢さん!」
キャッキャと嬉しそうに抱き合う小鈴と阿求。
これから起こる出来事に、二人は期待していた。
しかし、霊夢と魔理沙の二人は、先程から妙に静かである…
まるで何かが起きるのが分かっているような…
そんな雰囲気だ。
「これで良し…魔理沙、構えて、何かが来るわよ。」
その瞬間だった…
「えっ…な、何なのあれ!?阿求!!」
「分からないわよ!一体何が…ああ…!!」
「おいおいおい…マジかよ…」
「…………………」
それは本当に唐突だった。
希望に満ちてた少女たちの顔が、絶望に染められた…
封印が解けかかった鎖…
その隙間からドス黒い気が溢れたのだ…
邪悪で悍ましい悪意の塊…正体不明の瘴気である…
あぁ…何という事だろう…全てを蝕む黒い悪意は、
一瞬の内に幻想郷を包み込んでいく…
一体何故なのか?
この本は開いてはいけない禁忌の本だったのか?
封印を解こうとした者たちへ、世界へ、
虚無が押し寄せる……
幻想郷に、終わりの危機が訪れた……
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「ふんッ!」
霊夢が目にも止まらぬ速さで本にお札を貼り付けた!
これは邪悪な存在を調伏する、霊験あらたかな博麗のお札。霊夢の手作りである。
貼られた瞬間、黒い気は一瞬にして消滅した。
黒い世界が一変。空は霊夢の心のような快晴に戻った。
幻想郷は救われた
「予想通りね!本からは不思議な気を感じていたけど、
鎖からは凄い邪気を感じてたのッ!つまりこの本は……
“邪悪な意志を持つ何者かが封印した物”よッ!!
さっさとお祓いして正解だったわ!
まさかここまで邪悪なものだったなんてねッ!」
晴れやかな笑顔で勝利宣言する霊夢!
それをよそに、魔理沙の顔は青ざめていた。
「んなぁっ…!?もしかして……
私が上手くいってたらヤバかったのか!?
ひえぇぇぇ…おっかねぇ…失敗して良かったぁ…」
あっさりと過ぎ去った幻想郷の危機。
小鈴と阿求は目の前の出来事に怯えながら抱き合っている。
特に阿求は小鈴を守るためか、
無意識に凄まじい力で締め付けていた。
そんな中、阿求は考えに頭を回らせていた…
これで封印が解ける、だが疑問が幾つも残ってしまった。
そもそも邪悪な意志を持つ者とは?
幻想郷には悪巧みをする妖怪や、邪な意思をもつ者、
自分勝手に周りや環境を振り回す存在は多い。
下剋上を企んだ逆襲の天邪鬼、
復讐の為に幻想郷を駆け巡った反獄王、
自分の名を刻む為に異変を利用した地獄のカリスマ鬼……
名を挙げればキリが無い。
だからといって、流石にここまではしないだろう。
こんな事すれば、霊夢や魔理沙はもちろん、
幻想郷の創設者たる妖怪の賢者に目を付けられかねない。
では誰が?一体何故?何の為に?
この本は一体何なのだろう?
一体どんな秘密がこの古びた本の中に隠されている…?
あと、
先程から妙に小鈴が静かなのも何故だろう?
そんな疑問が生まれたのも束の間。
「これで…終わりよッ!!」
霊夢が大幣に霊力を込めて鎖に叩き付けた!
ヒビが入り、砕けていく感覚、そして……
DON DO DON DO DON!!!!!!!!
封印の鎖は木っ端微塵に爆発四散し、消滅した。
謎の本に施された封印が、遂に解かれたのだ。
天晴れな仕事ぶりだった。
友人の頼み事のついでに幻想郷を救ったのだから。
なんだかんだで、霊夢が信頼されるのは
こういう事をすんなりと出来るからだろう。
封印が解かれると、
何も描かれていなかった表紙に文字が浮かび上がってきた…
やはり普通の本では無いらしい。
知らない文字だ…
何と書いているのかは、霊夢には読めなかった。
しかし、そんな事は問題では無い。ここには彼女が居る。
”判読眼のビブロフィリア“ 本居小鈴が。
「お待たせ!さぁ、読んでみて…って、あれ?」
小鈴からの返事が無かった。
様子がおかしい…一体何が…?
「小鈴ちゃん…?小鈴ちゃんッ!?」
「お疲れさん霊夢。小鈴の事なんだが…」
「霊夢さん!小鈴が…小鈴が!!!」
阿求は魔理沙を押し退け必死に叫んでいた。
阿求に抱かれている小鈴…しかし返事が無い…
小鈴の身に何が…?さっきまで元気だったのに…
まさか、封印を解いた時に何か呪いが!?
一人の人間を……友人を……
博麗の巫女である私は守れなかった…
その事実を認識した瞬間。
霊夢の顔が青ざめ、涙目になった…
「そんな…絶対に守るって言ったのに…ッ!!!」
阿求の細い腕の中、小鈴は力無く倒れていた……