小鈴の周りに浮かぶ二つのタイコ。
それは勇気と力のタイコであり、
パタポンの神様である証でもある。
赤い力のタイコを叩けば PATA!と音が鳴り、
青い勇気タイコからは PON!と響いた
「あらためまして…はじめまして! かみさま!!
ぶたいの ごうれい と あいず を たんとうしている
「はたポン」と もうします!!」
旗を掲げたパタポン…はたポンは高らかに名乗った。
「わ、私は小鈴、本居小鈴よ。えーっと…
出来ればで良いんだけど…小鈴って呼んで欲しいな?
神様って呼ばれるの、むず痒くて…あはは…」
「はいッ!わかりました!では…
こすずさま と よばせていただきます! 」
「うん!よろしくね、はたポン!」
挨拶を終えた小鈴は再びパタポンを撫で始めた。
意外と触り心地が良いらしい…?
撫でられてるはたポンも満更では無さそうだ。
一方その頃、こちらは怒りを忘れた博麗霊夢。
魔理沙と阿求の二人は、背中を撫でて慰めていた。
霊夢はもうパタポンを封印する気は無いらしい。
契約され、解放された。既に手遅れだ。
魔理沙は慰めるつもりなのか、ちょっとした持論を述べた。
「神になるって聞くと何だか穏やかじゃあないが…
実際は
人間を辞めるわけじゃなくて、パタポンからの
信仰を受ける対象になっただけだと、私は思うぜ。
ほら、守矢神社の早苗だってそうじゃないか。
神って言われるけど実際は私達と同じ人間だろ?
多分だが…霊夢は小鈴の事になると、
ちょっぴり神経質になり過ぎるんじゃあないか?
まぁ…“あの時の事件”と、お前の立場を考えると…
心配するのは理解は出来るんだがな…」
幻想郷に法律と呼ばれる物は無い。
だが、決して破ってはいけない掟がある。
それは「人里の人間が妖怪になる事」である。
妖怪の存続には人間の恐怖が必要不可欠。
妖怪になればもう妖怪を恐れる事は無くなる。
その結果、幻想郷の人間と妖怪のバランスが
保てなくなり、幻想郷は崩壊してしまうからだ。
その掟を破れば最後、博麗の巫女によって
問答無用で掟破りは消される。
かつて幻想郷での人間と妖怪の扱いの差に絶望し、
自ら妖怪になったあの易者のように。
それはつまり、霊夢は博麗の巫女として、
友人の小鈴を退治せざるを得なくなってしまう
という可能性がある…そんなの耐え難い事だ…
そんな状況は何としても回避しなくてはならない。
ちなみに
神と同様の扱いを受け信仰を受けている人間の事である。
先程の魔理沙の話に出て来たのは、少し前に
外の世界から神社ごとやって来た別の巫女の事である。
そう考えると、神の力たるタイコを叩き、
パタポンを導く小鈴は現人神そのものなのかもしれない。
「まぁ…特に変わった様子は無いみたいだし、
今まで通りにすれば良いんじゃ無いかしら…?
私も協力するから、一緒に見ていきましょう?」
阿求の言葉に、霊夢はうん…と、力無く頷いた…
今は大丈夫だ…これからも見守っていこう…
霊夢は心の中で誓ったのだった。
らしくない親友を見ていられなかった魔理沙は、
あえて起爆剤を投下した。
「それに、魔法の森に住んでる私や、
妖怪神社の妖怪巫女の方がよっぽど人間離れしてるしなー!」
誰が妖怪巫女よッ!!霊夢は魔理沙の頬を思い切り
ぐにぃぃぃっ!!と引っ張った。
痛みで思わず泣きそうになる魔理沙だが、
それを甘んじて受け入れている事を霊夢は分かっていた。
無神経極まりない魔理沙の発言だったが、
今は寧ろそれが心地良かった。
後で一緒に酒盛りをしようと心に決め、
満足した霊夢は魔理沙を解放した。
「いたた…少しは加減してくれよなぁ……
さてと!私も挨拶するかなぁ」
はたポンに近づくと、魔理沙はしゃがんで目線を
合わせた。小鈴だけが人間ではない事を教えなければ。
「ようちっこいの、私は魔理沙って言うんだ。
そっちの赤いのが霊夢で、あっちの紫髪が阿求。
私達はお前達の神様の友人なんだ。よろしくな?」
「なんとッ こすずさまの ごゆうじんで ありましたか!
さきほどの ぶれいを おゆるし いただきたいッ!
あなたがた みたいな おっきな ヒトたちに
あまり なれていないもので…」
いやぁー おはずかしい…と、
照れ隠しするように頭を掻くギョロ目生物、
その仕草が憎めなくて、思わず笑ってしまう魔理沙だった。
「ははっ、まぁビックリするよなぁ…
この幻想郷だと私達人間も食べられる側なもんでねぇ?」
「げんそーきょ?」
「おっと、幻想郷ってのはこの世界の名前だぜ。
色々と知って欲しい事とかがあるんだが…」
はたポンは、うーん…と悩んだ。
曰く、パタポンは自分一人だけでは無いし、
一人で聞いても何だか難しそうだし、
何なら皆をここに呼んで説明してもらっちゃおう!
との事だ。
仲間?そんなのどうやって呼べば良い?
その疑問の答えを、はたポンが小鈴に答えた。
「こすずさま! いまこそ ”しんぐんのうた“ を
おねがい いたします! われわれの なかまが
いまも このほんに とじこめられて いるのです!」
「進軍の唄って…さっきのパタパタの唄よね?
そっか、そういう唄だったんだ…それなら…」
小鈴は手に持ったタイコを叩き始めた。
リズムはさっきと同じで大丈夫だろう。
PATA? PATA PATA PON?
「パタパタ まいりまーす」
ちょっとだけリズムがズレちゃった。
だが、ちょっとぐらいなら問題ないらしい。
はたポンが旗を振って移動の合図を出している。
神様である小鈴がタイコを奏で、
はたポンが合図、パタポンの部隊が唄い、行動する。
4拍1小節で出された命令が、次の1小節で実行される。
かわりばんこで行動するのが基本のようだ。
唄に反応して本が光り輝いた…
いよいよ仲間のパタポンがここに…!
「来ないわね。」
「来ないじゃんか。」
「来ないじゃないの。」
「あれー?」
首を傾げる3人、困惑する小鈴。
「えんそう しつづけて ください!
なんども なんども えんそう しつづければ
みんな ここに これるはずですッ!」
どうやら一回の演奏だけではダメらしい。
外でタイコを鳴らすのは近所迷惑に
ならないだろうか…少々心配する小鈴だった。
「周りの人達に迷惑掛けないようにしないとなぁ…」
「ちょっとした演奏会になっちゃいそうねぇ。
まぁ折角だし、やるだけやっちゃいなさいよ。
周りの人の事は、私達に任せなさいな。」
外はまだ明るい。両親達が帰ってくるのは
まだもうちょっと先だろう。
だったら…阿求の言う通り、タイコを奏でよう。
はたポン以外の子達にも会ってみたいし。
それに…この子達が幻想郷に流れついたのも、
何か特別な理由があるのかもしれない…
うっかりとはいえ、この子達の神様になったのなら
最後までしっかり付き合うべきなのだろう。
「私達もいるんだ。他の人達も安心して
演奏を見ていられるはずだぜ?」
「何かあったら私達がどうにかするから、
小鈴ちゃんはするべき事をするのよ。
あなたにしか出来ないことを…ね?」
憧れの二人にポンッと肩を叩かれ、
親友の阿求に背中を押されて…
小鈴の心はやる気で満ち溢れたッ!
「よーしッ…いくよ!」
小鈴はタイコを手に取った、進もう!
PATA PATA PATA PON
「まえに でまーす」
はたポンが旗を振り始めた
PATA PATA PATA PON?
「リズムに のってけ みなのものー」
ズレてても構わない。最後までやり続けるんだ。
PATA PATA PATA PON
「いいかんじ ですよ こすずさまッ!」
どんどん盛り上がって来たッ。
PATA PATA PATA PON
「パタ パタ パタ ポン…ッ」
突然はたポンの唄い方が変わった。
まるでそれは嵐の前の静けさで…
そして…
PATA PATA PATA PON!!!
「いくぞー! フィーバーで しんぐんだー!!」
テンションが最高潮に達した!
明らかに先程より唄が盛り上がっているッ!
リズム良くタイコの演奏を続けると、
フィーバー状態になる!全てがノリノリだッ!!
PATA PATA PATA PON!!!
パタポンの書が光り、震え始めた!
ピョイんッ!と新しいパタポンが飛び出して来た!
その子は槍を持っていて、はたポンを見つけると
スタスタと駆けてきた!
「え…はたポン…? それに このおとは…
まさか かみさまを みつけたのか…?
なんてこった♪」
槍の勇者 トン・やりポンが復活したッ!!
PATA PATA PATA PON!!!
震え続ける パタポンの書。
ポンっ!と飛び出し、シュタッ!と着地
剣と盾を持ったパタポンが現れた!
クルクル回って踊りながらこちらにやって来る!
「あぁ…!かみさま…!
タイコのちからに かんしゃします!
わたしも おとも させてください!」
盾の勇者 チン・たてポンが復活したッ!!
PATA PATA PATA PON!!!
次に飛び出して来たのは弓を持った子!
弓をひょいひょいクルクル器用に動かしながら
落ち着きない様子で、こちらに走って来たッ!
「おい!おい!おい!
すっげ このおと! すっげ かみさま!
よ〜しッ!また セカイのはてを めざそう!」
弓の勇者 カン・ゆみポンが復活したッ!!!
PATA PATA PATA PON!!!!!
次々にやって来るパタポン達!
酒を持つ酔っ払い 祭司のような二人組
馬に乗ったパタポン達に 何も持ってない民草まで!
ぞろぞろ わちゃわちゃ うじゃうじゃ
次から次へとやって来て、鈴奈庵前は大渋滞ッ!
霊夢達は集まって来た里の人達を説得している。
阿求も近くに居たお陰か、騒ぎになってないようだ。
寧ろ、音楽で里の人達も意外とノリノリである。
PATA PATA PATA PON!!!!!
パタポンの書が最後のパタポンを呼び出すと
光と揺れが収まった…これで全員のようだ。
最後にやって来たのは綺麗なパタポンだった
七色のキラキラした飾りを頭に付け
背中には緑色のキレイなマント。
足がシュッとした、明らかに他と違うパタポン。
スタスタと小鈴に近付くと、彼女は挨拶した。
「あぁ…かみさま…おあいできて こうえいです…
わたくしは メデン と もうします
かみに つかえる パタポンの みこ です」
巫女だ!パタポン族にも巫女が居たッ!!
「かみさま…あなたの なまえを おつげください…」
「は、はじめましてッ…小鈴ですっ!」
「こすずさま …まちこがれた われらの かみよ!」
メデンがそう高らかに叫ぶと、
周りのパタポンが一斉にワーッと盛り上がったッ!
酒を飲み始める者、踊り始める者、小鈴を讃える者…
小さな宴会が一瞬で始まったのだ。
「われらを おすくい いただき
なんと おれいをすれば いいのやら…
われら パタポンは こすずさまに つくしますッ!!」
「わぁ…す、凄い事になったわ…」
正直予想以上だった…ここまで多い上に信心深く、
小鈴に全てを尽くす事を最大の喜びとしている。
これからどうやってパタポンを導けばいいのだろう?
セカイの果てって、どう目指せば良いんだろう?
そんな考えをしていると、霊夢達が帰ってきた。
里に人達は既に退散して行ったらしい。流石だぁ…
魔理沙はメデンに近づき、自己紹介をした。
「幻想郷へようこそ パタポンの皆!
そしてお初にお目に掛かるぜ、メデンさん。
私は霧雨魔理沙。この幻想郷一の大魔法使いだぜ。」
ちょっと誇張表現があったが、まぁ良いだろう。
パタポン達には、これから生きていくこの場所と、
そのルールを知ってもらわねばならない。
こういうのは先輩妖怪の仕事なのだが、
人間寄りのパタポンが相手なら、
人間である自分達が教えるべきだろう。
多分。
魔理沙先生による、幻想郷講義が始まった。