この幻想郷の果てがあるならば!   作:OMG00

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8話 : 真昼に胡乱なネゴシエーション

 

白昼堂々鈴奈庵に現れた二人の大妖怪。

霊夢と魔理沙はこの二人の事を良く知っている…

 

一人は、鴉天狗の新聞記者である「射命丸(しゃめいまる) (あや)

もう一人は化け狸の頭領、「二ッ岩(ふたついわ) マミゾウ」だ。

マミゾウは鈴奈庵の常連で、小鈴とも付き合いがある。

文に至っては小鈴と霊夢の許可を得て、

この鈴奈庵で自分の新聞を販売しているのだ。

 

小鈴の演奏を表で聴いて、

パタポンの話を裏で聞いて。

何か“良い事”を思いついてここに来たのだろう。

妖怪とは常に油断ならない存在だ。特に狸と天狗は。

冷酷で、狡猾で、その真っ黒な腹の中で、

一体何を考えているのか分からないからだ。

そして…このギョロ目の巫女はどうだろうか…?

素直に取引を受け入れるつもりなのだろうか…?

 

「まずは あやどの…あなたから おうかがいします

あなたは われわれに なにを のぞむのですか?」

「話が早くて助かります。私の望みはですね…

パタポン族の皆様への独占取材の権利を頂く事です。

私は、幻想郷で貴方達パタポン族の事を掲載する

唯一無二の新聞を作りたいと思ったのですよ。」

 

鴉天狗と言うのは、新聞作りが盛んな妖怪だ。

仲間内で新聞大会を定期的に開催し、

ランキングを競う事があるくらいである。

大体ランキング上位に組み込むのは、派手な見出しで

誇張表現たっぷりの新聞ばかりではあるが……

要は学級新聞みたいなものである。

 

文が発行するのは「文々。新聞(ぶんぶんまるしんぶん)」という新聞で、

主に幻想郷の出来事や少女達のことが記載された新聞だ。

本来は妖怪向けに出されている新聞で里に無かったが、

最近はこの鈴奈庵から人間向きの新聞も発行し始め、

その安さと情報量からかなりの人気を誇っている。

その目的は情報操作のためということでもあるのだが…

 

この交渉は、他のライバル天狗達に、この新鮮な

ネタの塊を取られないようにする為の物なのだと言う。

その為には協力は一切惜しまないとの事だ。

悪くない。取材だけで情報が手に入るなら凄く良い!

元より、神様である小鈴と協力関係にあるのなら…

恐らく…信用は出来るはずだ。メデンは受け入れた。

 

「いいでしょう! その じょうけんを のみましょう

われわれは インタビューから モデルさつえいまで

とことん おつきあいしますよ…こすずさまも…ね…」

「ほほう…貴方とは美味しくお酒が飲めそうですね…!」

 

ガッチリかたい握手を交わす二人の人外ッ!

あぁ!哀れな小鈴ちゃんッ!本人が知らない内に、

人攫いのパパラッチ天狗に売られてしまった……

小鈴ちゃんの素敵な写真集が出るのも時間の問題だろう……

 

幻想郷において、神の天敵は巫女なのかもしれない…

異変の時の紅白の巫女然り、緑の巫女然り。

巫女は神に仕える立場なのに、どうしてこんなにも

幻想郷の巫女は雑に乱暴なのか…巫女だからだろうか?

 

メデンは次にマミゾウへと目を向けた。

次の怪しげな交渉が始まるらしい…ッ

 

「つぎは マミゾウどの ですね? あなたは なにを?」

「そうじゃなぁ…パタポンが増えてからで構わないんじゃが、

儂の元に何人かパタポンを派遣して欲しいんじゃよ。」

「はけん…ですか…」

 

化け狸の頭領、マミゾウの元には沢山の狸の子分がいる。

情報収集に探し物集めも出来て、変化も工作行為も得意。

タヌキだけに可愛げがあって、非常に優秀な子達だ。

それでもパタポンを求めるのはやはり理由があった。

 

「儂等はこれから情報集めで忙しくなるんでな、

事ある事に、儂が鈴奈庵まで直接やって来て、

報告したらサヨナラ…というのは手間が掛かるじゃろう?

そこでパタポン達を遣わして、お前さん達との連絡を

円滑にしたいと思っているんじゃよ!どうかの?

情報伝達は早さが命じゃて…手軽に出来るのも良い…

お互いにとって、悪くない取引だと思うがのう?」

 

要は使いパシリのメッセンジャーを寄越せという事か。

里の外に出る事はもう確定しているのだ…であれば、

今の内に外がどんな場所なのか確認した方がいいだろう。

メデンは理解し、頷いた。確かに情報は欲しい。

 

「ふむ…たしかに そのとおりですね…わかりました

ちょうほうかつどう が とくいな パタポンが

ふっかつ しだい そちらに つかわせましょう。」

「ほほう?……ふうむ。よろしく頼むぞい。」

 

マミゾウとメデンは握手を交わした。交渉成立だ。

一時はどうなるかと心配していた霊夢と魔理沙だったが、

三人の人外娘による交渉は、無事に幕を閉じたようだ…

これでみんな仲良くページ探しが……

 

 

いや!そうではないッ!!決してそうでは無いッ!!

この取引は、そんな綺麗な物じゃあないのだッ!!

 

 

霊夢と魔理沙はこの取引の本当の狙いが見えていたッ!

独占取材…?互いの情報共有の円滑化…?

そんなものはあくまで表向きの理由に過ぎないッ!

これは「里の権力争い」の一つに過ぎない事だッ!!

 

かつて、文は魔理沙に語った事がある…

この人間の里という場所は、妖怪の権力争いの舞台。

誰がこの場所を支配するか…それを競っているのだと。

支配をするのにも、しっかりとした理由があった。

 

里において、全ての妖怪が危惧している事がある。

それは、人間の里から支配者が現れる事だ。

リーダーが現れ、統率力を手に入れた里の人間達は、

すぐさま幻想郷のルールを破り始めるだろう…

それは幻想郷の終わりを意味する事だ。

そんな未来を阻止する為、妖怪達はあの手この手で

人里に近寄っているのだ…この天狗と狸のように。

 

文は独占取材なんて言っていたが、それは建前だ。

実際はパタポン族との強い関わりをアピールする為だろう。

人里に現れたこの新勢力は、既に天狗の傘下なのだと!

新聞で大きく取り上げて書き込み、ソレをばら撒けば…

幻想郷中の存在に知らしめる事が出来るだろう!

天狗はもう既に人里の中枢に入り込んでるとッ!

パタポン族も小鈴も、強力な手札に出来るという事だ…

それが狙いだ。相変わらず姑息で狡賢い種族である。

天狗は、情報で人里を支配しようとしている……

 

マミゾウもそうだ。情報共有なんて自分で出来るのに、

わざわざパタポンを借りようとするのにはワケがある。

パタポンを堂々と引き連れて行くのを見せつければ、

パタポン族に信頼されているのだと思わせられるだろう!

これで他の妖怪は、迂闊に狸達に手を出せなくなるのだ…

楽が出来て、便利な盾にもなるのだ。欲しいに決まってる!

突如鈴奈庵に現れた新勢力は、狸達に化かされ、

彼女らにとって都合の良い道具になろうとしている…

何とも言えないが、こういう世界なのだろう。

 

ニコニコしあっている三人の妖怪娘達。

霊夢と魔理沙は、見守ることしか出来なかった。

目の前ではまだ、何も起こっていないのだから。

 

「それでは…こうしょうせいりつ ですね」

「いやぁ…感謝致しますよ。最高の記事が書けそうです。」

「きたいしますよ…マミゾウさんも よろしいですね?」

「儂ぁ構わんよ…しかし…のう?」

 

マミゾウが難しい顔をしたと思うと、笑顔を見せた。

ソレは妖怪らしい狂気で歪んだ恐ろしい笑顔で…

そして真心込めてメデンに言い放ったのだッ!

 

「お主も中々ワルよのぉ?メデン殿」

 

ソレを聞いたメデン。くつくつと笑いながら返事したッ!

「いやいや…おふたりほどでは ありませんよ…ふふふ…」

「あやややー…メデン殿には敵いませんねぇ〜…?」

「全くじゃっ…ふぉっふぉっふぉっ…」

 

油断ならないのは、このパタポンの巫女もそうだった…

そもそも妙だった…素直に従いすぎるのだ…

しかしコレで確信したッ!メデンは分かっているのだ!

自分やパタポン族、小鈴が利用される事をッ!!

それでありながら取引を受け入れ、協力体制に入ったッ。

もちろん、リスクを背負うだけの価値も理由もあるからだ。

 

まずは文の取引だ。素直に受け入れたのには意味がある。

文の取引はメデンから見ても実に都合が良かったのだ。

新聞で自分達の存在を知らしめることが出来れば、

幻想郷の住人達も協力してくれる可能性が出てくるだろう。

里でもパタポン達の印象操作をしてくれるというのなら、

もしかすれば…我々を受け入れてくれるかもしれない。

断る理由は無かった。取材ぐらいお安い御用だ。

 

マミゾウの取引にしてもそうだ。

狸による情報は、おったまげる程に欲しいのだ…

マミゾウが、里と外と自由に行き来できるパタポンが欲しいというのなら、足が早いパタポンを渡せば済む話だ。

 

しかし今回メデンが用意するのはそういうのでは無い。

「諜報活動出来るパタポン」 スパイを送ると言ったのだ。

お互いの情報は筒抜けだぞという、メデンからの脅しだ。

もちろんマミゾウ側も全部の情報を出す事は無いだろうが…

パタポンのスパイを送り込むという行為に意味があるのだ。

パタポンの忠誠心は、半端では無いのだから。

 

これでお互い、利用し利用される関係になった。

文とマミゾウも気付いていたが、それで良かった。

これが理想的な相互関係であり、逆に信用出来るからだ。

一方的に扱き使われる事を、メデンは決して許さなかった。

 

悲願を達成する(セカイの果てを見る)まで…そう簡単に支配などさせるものかッ!

妖怪が我々を利用する?結構!好きにするが良いッ!

ですが…それなら我々も存分に利用させて頂きましょう…

世の中はギブ&テイクなのですから…ですよね?神様?

 

楽しそうに談笑する三人の腹黒妖怪娘達。

霊夢と魔理沙は、見守ることしか出来なかった。

目の前の三人が考えてる事に、思わずゾッとしたから……

 

 

一方その頃……

小鈴と阿求は完全に酔い潰れてダウンしていた。

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