英雄の子は凡才だった件について   作:runamoon

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第三話 アリス・エカトリア

入学式翌日の朝、俺は昨日のことを言及すべく、とある女生徒とお茶をしている。

呑気だと思うかもしれないが、仕方ないのだ。

話があるならお茶をしながらしましょうと言われてしまったので、渋々了承した。

「それで、なんのご用ですか?」

アリス・エカトリアがわざとらしく聞いてくる。

もはや、隠すつもりもないらしい。

「昨日のことについてだ。」

「昨日のこととは?私には分かりかねます。ルナーク・ソルティーニさん。」

うん。

完全に揶揄われている。

どつき回したいが、多分魔術で負けるので我慢だ。

「なんで、俺の本名を知っている。誰に聞いた?」

「あなたのお父様にですわ。」

「は?親父に?」

俺は思わず聞き返してしまった。

昨日から、やたらと親父絡みのネタが多い。

こっちはもう、10年も会っていないのに。

「どうかなさいましたか?」

「いや、俺にわかるように説明してくれないか?」

「わかりました。」

そして、アリスは事の経緯を説明してくれた。

5年ほど前に、親父に魔獣に襲われているところを助けてもらったらしい。

そして、何かお礼がしたいと言ったが、親父はすぐ旅立つため、俺の名前を出して、よろしく頼むって言ったらしい。

だいぶ、適当だが、本当のことなのだろうか。

「まあ理由はわかったが、なぜ最初から理由を言わなかった?」

俺が至極真っ当な質問をすると、彼女は俯き加減で答えた。

「話しかけた瞬間あなたは警戒なさっておられましたので…。」

「確かに、警戒してた。それについては、すまなかった。」

「それに…。」

アリスはなぜか頬を赤らめている。

暑いのだろうか?

「それに??」

アリスが言葉に詰まっていたので、俺が聞き直した。

「婚約者がどのような方か、事情を話す前に知りたかったので。」

アリスは照れながらそう言った。

婚約者って言ったか?

聞き間違いだろう。

俺が、フリーズしていると、隣の草むらから急にエマが出てきた。

「婚約者ってどういうことよ!?」

盗み聞きしてたのは、よくないと思うが、俺の心を代弁してくれたのでよしとしよう。

「あら、エマさん。おられましたのね。おはようございます。」

アリスが会釈をする。

「おはようございますじゃないわよ!婚約者ってどういう事か聞いてるのよ!!」

エマは今すぐにでもアリスに飛びかかりそうだ。

「そのまんまの意味ですわよ。ルナークさんの、お父様によろしく頼まれましたので。」

よろしくって、そういう意味なのだろうか…?

そうだとして、律儀にそれを守る必要はないと思うのだが。

「多分、よろしくの意味が違うと思うし。仮にその意味だったとして、律儀に守らなくてもいいと思うよ。」

「いいえ。その意味以外、あり得ませんわ。そして、無理に守っているわけでもありません。私の意志で婚約したいと思っております。」

アリスが真剣な表情で言ってきた。

困った。

意志は固そうだ。

しかし、俺にはやらなきゃいけないことがある。

今は、結婚とかしてる場合ではないのだ。

アリスにそれを説明しよう。

「アリスさん。」

「アリスで構いませんわ。」

「…。アリス。」

「はい。なんですか、ルナさん。」

「詳しくは話さないが、俺にはやらなきゃいけない事がある。それを達成するために結婚とかしてる場合じゃないんだ。だから、すまん。婚約は無かったことにしてくれ。」

俺は、頭を下げた。

ここまで言えば流石に引き下がってくれるだろう。

そう腹を括っていた。

しかし、考えが甘かった…。

「お父様を探しに行かれるのでしょう?」

「え?なんで知っている?」

「昨日、あの現場にいましたので。」

嘘だろ…。

昨日の現場は、あいつの魔術で誰も来れないはずだ。

そもそも、なんの魔術か見当も付かない。

「魔術で近寄る事ができないはずだが。」

「近寄れますわよ。あれは、炎魔術と風魔術と水魔術を組み合わせた上級の魔術蜃気楼ですわ。」

「そんな魔術があるのか…。知りもしなかった…。でも、なんでわかったんだ?」

「私も使えますから。対処できて当然ですわ。」

当然のように言われてしまった。

今までの話で忘れていたが、アリスは全ての魔術を上級以上使える優秀な人だった。

「なるほど、じゃあ、あいつが何者かわかるか?」

「何者かまでは、分かりません。ですが、恐らく、魔族でしょうね。それも、上位の魔族だと思います。」

「やっぱり、魔族だったか…。でも、なぜ親父の名前を…?」

「お義父様は、私を救ってくれた後、魔界の方へと旅立ちました。」

なんか、変な気がするが、一旦放置しておこう。

それよりも、大事な情報が出てきた。

「それは、本当の話か?」

「えぇ、私のお父様が止めてましたが、行ってしまわれたので。」

「なるほど。やっぱり、魔界に行かなきゃ、親父には会えないみたいだな。」

そのためにも、俺はもっと強くなる必要がある。

だから、婚約してる場合じゃない。

これでアリスに納得してもらおう。

「アリス…。」

俺が申し訳なさそうな顔で話し始めると、アリスに止められてしまった。

「強くなるためにはどうすればいいと思いますか?」

どういう意図だろうか?

わからないが、素直に答えるか。

「まずは、魔術を磨かなきゃな。」

「どうやって磨きますか?」

「それは、自分より魔術の腕がたつ人に…。あっ…。」

アリスの意図に気付いてしまった。

上手くのせられたみたいだ。

「はい。目の前に、最適な人がいるとは思いませんか?」

アリスが微笑みかけてくる。

完全に彼女のペースだ。

しかし、彼女の魔術の腕は確かだ。

この学校でNo. 1と言っても過言ではないだろう。

背に腹はかえられない…。

「まずは、師弟関係からお願いします…。」

「まあ、初めはそれでもいいでしょう。ゆくゆくは分かってますわね?」

「ははは…。」

俺は愛想笑いをして誤魔化した。

こんな時、エマがギャンギャン騒ぎながら噛みついてくるだろうと思ったが、珍しく大人しくしている。

顔は、般若みたいな顔をしているが…。

「では、いきましょうか。」

そう言うと、アリスが立ち上がった。

「「どこに??」」

アリスは満面の笑みで答えた。

「私とルナの愛の巣に。」

この後の惨状は語るまでもない。

こうして、俺とアリスはとりあえず師弟関係となったのだった。




アリス・エカトリア
ルナとエマが通う、高等学校に主席で入学した。5年前にニコラスに魔獣に襲われている所を助けられた。
その日以来、未来の婚約者であるルナのために魔術の腕を磨き続けた。
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