結婚騒動から、数週間後。
色々とあったが、俺は今、ランドルフ家を離れ、自立した生活を送ろうとしていた。
しかし、アリスやエマと一緒である。
アリスが用意していた家に俺とエマが住まわして貰っているのだ。
スコットさんは、エマが一緒ならとすんなり許可を出してくれたが、サラさんを説得するのは骨が折れた。
まあ、いきなり知らない女の子と一緒に暮らしますと言えば、誰でも反対するだろう。
最終的には、俺がアリスの弟子になって魔術の特訓をするためと言ったら渋々了承してくれた。
そして、一番の問題だと思っていたエマなのだが、いつの間にかアリスと仲良くなっていた。
今では、俺抜きでヒソヒソ話をしていたりする。
とにかく、色々とあったが、これでようやく落ち着いて魔術の特訓に時間を割く事ができるのだ。
早く俺自身のレベルを上げ、真実を突き止めにいかなくてはならない。
数十分後、俺はアリスに魔術を教えてもらうべく、リビングへと向かった。
そこには、アリスとエマがいて仲良さそうに話していた。
「おはようございます。ルナさん。よく眠れましたか?」
「おはよう、ルナ。」
2人が俺に話しかけてきた。
「あぁ。おはよう。アリス早速なんだが、魔術を教えてくれないか。」
俺は軽く頭を下げてお願いする。
「んー。わかりました。そしたら、今日は少しだけ座学をしましょう。お座りになってください。」
俺はアリスに言われるがまま、席についた。
「では、まず初めに。基礎魔術は何がありますか?」
「風魔術だな。」
「あと、治癒魔術もよ。」
俺とエマが答える。
「はい。そうです。お二人は、この2種類の魔術をどれくらい使えますか?」
「風は初級。治癒は中級だな。」
「私はどっちも中級よ。」
「わかりました。そしたら、これからこの二つが上級になるまでひたすら練習をします。」
「え?なんでこんな基本魔術を?」
「基本だからこそです。風魔術は他の魔術との組み合わせ次第で可能性が無限大に広がります。また、治癒魔術が無ければすぐ野垂れ死んでしまいますよ。」
「治癒魔術に関してはわかるが、風魔術についてはよくわからない。」
「では、見ていてください。」
そう言うと、アリスが立ち上がった。
アリスは、的に目掛けて魔術を放った。
勢いよく放たれた魔術は的に当たり、的どころか、周りまで凍らせていた。
こんな魔術見た事がない。
俺自身、氷魔術が得意だが、せいぜい物体を凍らせたり、氷の塊を飛ばすくらいだ。
「今のは?」
俺はアリスに聞く。
「氷魔術と風魔術を組み合わせた、ブリザードです。」
「ブリザード…。」
俺も見よう見まねで、氷魔術と風魔術を組み合わせて使ってみる。
しかし、せいぜい冷たい風が吹くくらいだった。
「なんでこんなにも違うんだ?」
俺は首を傾げる。
しかし、アリスは意外にも驚いていた。
「いきなり、出来るなんて…。さすが、ルナさんですね。」
「何をそんなに関心してるんだ?威力は全く実践じゃ使い物にならないじゃないか。」
「威力はこれから磨けばいいのです。それよりも、2つの属性の魔術を訓練もせず扱う事が出来るのがすごいのです。」
「そうなのか?」
「はい。先ほどから、エマさんも試していますが、何回も失敗していますよ。」
俺はエマの方を見る。
すると、どちらか片方の魔術しか発動していなかった。
「結構難しいわね。」
エマが悔しそうにしていた。
確かに、昔から魔力のコントロールは得意だった。
それがまさか、こんなところで活かせるとは思いもしなかった。
「しかし、ルナさん自身も仰っていましたが、今のままでは使い物になりません。基本的に魔力量の関係上、ランクが低い方の魔術に合わせて組み合わせた魔術が放たれるので、どちらの魔術も高レベルにしなくてはなりません。」
「なるほど。だから、風魔術を鍛えろって言ったのか。」
「はい。わかってくれましたか?」
「あぁ、わかったよ。で、具体的にはどのレベルまであげればいいんだ?」
「そうですね。風魔術の上級。風魔術で物体を切れるくらいまでは鍛えて欲しいですね。」
「上級…。今が初級だから相当訓練が必要そうだな…。」
「ルナさんにならすぐ出来ますよ。エマさんはまずは2つの属性の魔術を扱う所から始めましょう。」
「わかったわ。」
こうして、俺とエマはアリスの元で魔術の特訓をするのであった。
…………………
魔術の特訓を始めてから、2週間が経った。
高等学校に入学してから、もう1ヶ月半以上経っている。
高等学校では、魔術の座学をし、家では魔術の特訓をしている。
最初の数日で、中級の風魔術を使えるようになったが、そこからなかなか、進歩しない。
エマは、初めこそ苦戦していたが、今では2種類の魔術を同時に使えるようになっている。
さらに、エマはもともと、中級の風魔術を高めの威力で使えていたため、上級もすぐ使えるようになるだろう。
正直、手詰まりだ。
理論はわかるし、イメージもできる。
風を刃物のように鋭くさせるのだ。
刃物…。
んー…。
試しにやってみるか。
俺は、自分の部屋から剣を取り出した。
初等学校の時に使っていたものだ。
安物なので切れ味は悪い。
しかし、これに風魔術を纏わせれば硬いものも切れるのではないだろうか。
イメージとしては、刃物できるようなものなのだから、これが出来れば風魔術で物体を切る事が出来るはずだ。
俺は、剣身に風魔術を纏わせる。
そして、近くにあった拳ほどの大きさの石に向かって振り下ろした。
スパッ。
石は見事に真っ二つに切れていた。
成功である。
この感覚で、風魔術を使えば物体が切れるのではないだろうか。
俺は早速試してみた。
しかし、上手くいかなかった。
剣身に纏わせたような風魔術を上手く繰り出せない。
剣を経由させれば、必ず上手くいくが、剣がなくなった途端全く上手くいかない。
仕方ない。
アリスに相談してみよう。
………………
俺はアリスの部屋にいる。
先ほどの出来事を相談するためだ。
決して、変なことをするためではない、
「それでもいいんじゃないですか?」
俺が変なことを考えていると、アリスが俺の問いに答えてきた。
「でも、剣がないと使えないってのはあんましよくないんじゃ?」
「剣を使って出来ているのであれば、何回もやっていくうち感覚を覚えると思います。それよりも、普通はモノに魔術を纏わせて使う方が難しいんですけどね。前々から思っていましたが、ルナさんの魔力コントロールは常軌を逸していますね。」
「モノに魔術を纏わせるのってそんなに難しいのか?」
「はい。モノに魔術を纏わせる場合、形を維持しなければならいので、普通に魔術を使うより断然難しいです。」
「…。変な所ばかり器用だな…。」
「いえ、むしろこれはアドバンテージですよ。」
「アドバンテージ??」
「はい。これで、剣術が出来るのであれば魔術を駆使して剣技にバフをかける事ができます。」
「なるほど。組み合わねて使うことにより、さらに強力になるって事か。」
「そういう事です。」
剣術は、元々得意な方であった。
最近は、魔術ばかりで鍛錬していなかったが、初等学校の時は魔術が上手く扱えなかったため、剣術ばかり磨いていた。
まさかこんな所で役に立つとは思わなかったが…。
しかし、これも何かの運命だ。
俺は俺にあったやり方でやっていこう。
こうして、俺は更なる強さを求め、日々鍛錬するのであった。
エマ・ランドルフ
ルナが預けられた家にいた女の子
5歳の頃からルナと一緒にいる
非常に真っ直ぐで純粋な心の持ち主。
常にルナことを守ってあげなきゃいけないと考えている。