私には好きな人がいる。
5歳の時に彼は家に来た。
初めて会った時、彼は泣いていた。
私は、その時に思った。
彼を守らなければと。
私は彼のそばにずっといた。
初等学校に入ってからも。
彼は、父親のことですごく悩まされていた。
彼の父親はすごく偉大な人みたいだ。
しかし、彼は強くない。
父親と比べられ、苦悩している。
勝手に期待され、勝手に失望される。
そして、彼のそばから人がいなくなる。
そんな彼を私は守りたかった。
彼には私しかいないと思っていた。
けれど、違った。
高等学校に入ると、彼に好意を寄せている人がいた。
しかも、婚約者だと自称している。
彼女の名前はアリス。
とても美しい女の子だった。
最初は、彼の父親に近づきたいがために、彼に近寄ったのかと思っていた。
しかし、違った。
彼女は彼をちゃんと愛していた。
だいぶ、重たい愛だけど…。
アリス曰く、彼と話すのは初めてだが、影から姿だけは3年前から見ていたらしい。
いわゆる、ストーカーだ…。
「私、実はエマさんとお話ししたかったんです!」
「私と?なんで??」
「えっ?エマさんもルナさんのこと好きですよね?」
「えっ??」
態度に出していただろうか?
そんなことはない。
そんな素ぶり一度も見せたことないのだ。
「見てればわかりますよ!同じ人を好きな同士、とことんお話しましょう!」
「私、別にルナのことなんて…。」
「えっ、じゃあ、私が取っちゃっても?」
「ダメ!あっ…。」
私は咄嗟に反応してしまった。
アリスがニッコリと笑っている。
「ルナには言わないで。」
「言いませんよ。それより、エマさん。私、邪魔じゃないですか?」
アリスが恐る恐る聞いてくる。
確かに、最初は何を企んでいるのかわからなかったから、邪魔だと思った。
しかし、今はそんなこと思っていない。
「別に邪魔じゃないわよ。」
「でも、エマさんがルナさんを好きなことを知ってて、私は近づきましたし…。」
アリスが申し訳なさそうにしている。
「いいのよ。いつか、こんな日が来ることはわかってたから。」
そう。
いつか、ルナは誰かと恋をして結婚する。
それが私じゃなくても構わない。
ルナが幸せならそれでいい。
「私は、2人目でも構いません!」
感傷に浸っていると、アリスがとんでもないことを言い始めた。
てか、アリスってこんなキャラだったけ?
「2人目ってどういうこと?」
「この国では、何人と結婚しても問題ないのです。だから、私とエマさんでルナさんを幸せにしませんか?」
確かに、そういう決まりはない。
しかし、そんなこと考えたことすらなかった。
私1人だと心許ない。
でも、アリスと一緒ならルナを支えられるかもしれない。
「アリスはそれでいいの?」
「私は構いませんわ。横入りした身ですもの。」
「横入りではないと思うけど…。本当にこれでいいのかな…?」
「いいか、悪いかはわかりません。でも、やってみないことには始まりませんわよ。」
アリスが真剣な眼差しで、私を見る。
いつの間にかお淑やかな口調に戻っている。
「分かったわ。これからは、2人でルナのことを支えましょ。」
「はい。よろしくお願いします。」
私とアリスは握手を交わした。
「ところで、アリスはお淑やかになったり、快活になったりするけどどっちが本当なの?」
「もともと、私は毎日森を駆け回るくらいにはやんちゃでしたわ。でも、そんな女の子は好かれないと思ったのでお淑やかになるよう努めてまいりました。」
「なるほど。元々は、やんちゃだったのね。それなら、納得だわ。」
「エマさんだって、普段はやんちゃそうにしていますが、本当は静かなタイプですわよね。」
「よく見てるわね。」
私は、ルナと過ごしている時はできるだけ明るく振る舞うようにしている。
周りからはバカだと思われているかもしれない。
でも、それでもいいのだ。
ルナが笑ってくれるなら、道化でもいい。
「いつか、2人とも本当の自分をさらけ出せるといいわね。」
「ルナさんなら、今すぐさらけ出しても受け入れてくれると思いますわ。」
「まだ心の準備が…。」
「それもそうですわね。心の準備ができて、曝け出すことが出来ましたら、ルナさんには責任を取って結婚してもらいましょう。」
アリスが優しく微笑みかけてくる。
「そうね。そうしましょう。」
こうして、2人は仲良くなったのだった。