ここ最近、国の動きがあまり良くない。
学校でもその話題でもちきりだ。
今、この人界にはひとつの国しかない。
名前はアルテレン王国。
1人の王と、5人の領主が取り仕切っている。
昔は、何個も国があったみたいだが、魔界との戦争でめちゃくちゃになってしまったため、ひとつに統治したらしい。
しかし、戦争の影響なのか、とてつもなく人族至上主義で魔族排斥派である。
純血の人族こそ至高であり、それ以外は論ずるに値しないといった風潮だ。
戦争の時に手を貸してくれた、エルフ族を魔族とみなし、国から追放してしまった。
亜人は、見つかり次第処刑されるか奴隷にされている。
相当狂ってると言えるだろう。
そんなこの国は現在魔界の動きが活発になってきたため、戦争の準備を始めている。
確かに、最近魔獣などを街の外れの森で見かけることも多くなった。
しかし、魔界が戦争を仕掛けてきたわけではない。
それなのに、国は今がチャンスと言わんばかりに、魔界に戦争を仕掛けようとしている。
一応、前の戦争の終戦時に平和条約なるものを結んだはずなのだが。
「難しい顔をしてどうしたんだい?」
考え事をしていると急に声をかけられた。
俺は声の主を見る。
誰…?
「自己紹介をしてなかったね。僕の名前は、マルス。よろしくね。」
声の主は、マルスと言うらしい。
どこかで聞いたことあるが思い出せない。
「俺の名前は…」
名前を言おうとしたが、マルスに止められた。
「あぁ、大丈夫だよ。ルナーク君だよね。」
「知ってたのか?」
「まあ、君は有名人だからね。」
マルスが爽やかに笑う。
「有名人?どういう事だ?」
「それは、主席のアリスさんとずっと一緒にいるからね。それに、彼女の婚約者となれば、みんなの注目の的だよ。」
アリス…。
まさか、学校の奴らにも言ってたのか…。
外堀から埋めてくる恐ろしい子…。
「婚約者ではないぞ。魔術の師匠ではあるが。」
「そうなのかい?でも、彼女は嬉しそうに語っていたよ?」
「この話はもうやめておこう…。それより、俺になんか用でもあったのか?」
これ以上アリスの話をすると頭が痛くなるので話題をすり替えた。
「君と一度話してみたかっただけだよ。そしたら、難しい顔をしてたから声をかけてみたのさ。」
「俺と話したかった?なぜ?」
「君は有名人だから。」
「なるほど…。」
有名人というところは納得できないが、話がループしそうなのでとりあえず受け入れることにした。
「ところで、なんでそんな難しい顔をしてたんだい?」
「今この学校でも持ちきりの話題について考えてたんだよ。」
「あー。最近、魔界の動きが活発みたいだからね。それは心配にもなるね。」
マルスは他の生徒と比べて落ち着いた。
「マルスは心配じゃないのか?」
「うん。この国には、強い人が沢山いるからね。国王直属の3騎士と、各領主様についている5人の魔術師。この人たちがいれば平和は維持されるよ。」
「そういえば、そんな話も聞いたことがあるな。」
この国には、戦争で活躍した3人の騎士と5人の魔術師がいるらしい。
親父は、それらを束ねた英雄なので数のカウントには含まれていない。
皆それぞれ、固有魔術や剣術の奥義などを持っており、1人で国を滅ぼすことができるレベルに強い。
しかし、国家機密なのか、名前や能力について全く明かされていない。
とにかく、謎が多い人たちだ。
「その人たちについて何か知っているのか?」
俺は興味本位でマルスに聞いてみる。
「うん。1人だけなら知ってるよ。」
「まじか?なんで知ってるんだ?国家機密級だろ?」
「1人は僕の父さんだからね。」
「え?」
マルスの言ったことが理解できない。
父さん?
「本気で言ってる?」
「本気だよ。」
「みんなはこのこと知ってるのか?」
「知らないよ。」
「じゃあ、なぜ俺に?」
「君は特別だからね。」
マルスは不敵な笑みを浮かべた。
「特別…?」
「人が多くなってきたからこの話はまた今度にしよう。」
そう言うと、マルスはどこかに行ってしまった。
俺は1人取り残され、呆然としていた。
情報量が多すぎて、キャパオーバーだ。
マルスは何か企んでいるのか?
それとも親切心で教えてくれたのか。
まあ、前者だろう。
これからは、マルスに注意しなきゃな…。
……………
授業が終わり、俺は帰宅していた。
ドアを開けると、アリスが椅子に座りながら紅茶を啜っている。
「おかえりなさいませ。」
アリスが俺に気付き、声を掛けてきた。
「あぁ、ただいま。今日は帰りが早かったんだな。」
「もう、大抵のことはやってしまったので、やる事がないのですわ。」
「まじか…。まだ、入学してから半年くらいしか経ってないぞ…。」
「もともと、学校に通うつもりはありませんでしたわ。学ぶ事がとくにありまけんもの。」
「じゃあなぜ入学したんだ?」
「それは、秘密です。」
アリスは少しバツが悪そうな顔をしている。
俺は不思議に思いつつも、聞くのをやめた。
他に問いたださなければいけない事があるからだ。
「アリス。お前、学校である事ない事言ってたりしないか?」
「してないですわ。」
アリスはキリッと済ました顔をしている。
「じゃあなんで、学校で俺はお前の婚約者になってるんだ?」
「事実を言って何が悪いんですか?」
「事実じゃねーだろ!」
「事実ですわ。それとも、私にあんな事をしといて、今さら無かったことにするんですの?」
「あんな事???何もしてないだろ!」
俺はアリスに断固として抗議する。
「しましたわよ。あれは、3ヶ月ほど前。私の恥ずかしい姿をルナさんが見たではないですか。」
「3ヶ月前…?あっ!あれは、お前が俺が風呂に入ってるのを知ってて乱入してきたんだろうが!」
「見たことに変わりありませんわ。」
「ノーカンだ!こんな事絶対に認めん!」
俺たちが言い争っていると、エマが帰ってきた。
「あんた達何言い争ってるのよ。」
「こいつが!」
「ルナさんが!!」
俺とアリスはエマに事情を説明した。
エマは最初難しい顔をしていたが、途中から呆れ顔に変わっていった。
「ルナ。あんた責任は取りなさいよ。」
「責任ってなんのだよ!?」
「ここまで、あなたに尽くしてくれてるんだから、それ相応の対応は取りなさいよってことよ。まさか、用が済んだらさよならってわけでもないんでしょ?」
「まあそうだけども…。」
エマに正論を言われ、少し落ち込んでしまう。
あのエマに諭されるとは…。
「それと、アリス。私さっきのこと聞いてないんだけど??」
「ひっ…!エマ、そのこれには深い訳があって!!」
エマはニコニコしているが、アリスの方は怯え切っている。
「訳があっても、約束破ったことには変わりないわよね。すこし、部屋でお話しましょうか。」
そういうと、エマはアリスを部屋へ連れていってしまった。
1人残された俺は、訳もわからず固まっていた。
あっ、アリスのせいで、マルスのことについて話すのを忘れていた。
…。
今は忙しそうだし、夕飯の時にでも話そう。
こうして、また1日を終えるのであった。
投稿が遅くなってしまいすいません。
これからも、ゆっくりなペースではありますが書いてまいりますのでよろしくお願いします。