英雄の子は凡才だった件について   作:runamoon

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第七話 マルスの実力

とある日の朝。

そいつは俺のことを待っていた。

「やぁ、ルナークくん。昨日ぶりだね。」

「マルス…。」

俺の目の前には、マルスがいた。

「どうしたんだい?そんな険しい顔をして。」

「朝から、怪しい奴に声を掛けられたからな。」

「随分な言われ方だね。そんなに嫌われるようなことをしたかな?」

マルスは残念そうな顔をする。

もはやこいつの全てが胡散臭い。

「自分の胸に手を当てて考えてみろよ。初対面のやつにいきなり特別とか言われたら、誰でも警戒するわ。」

「それは事実だからしょうがないよ。君は特別な存在なんだから。」

「じゃあ、その理由を聞かせてくれ。」

「んー、そうだな。タダで教えるのは面白くない。確か君は剣を扱えたよね。そしたら、少し手合わせをしよう。もし君が勝てたら全て話してあげるよ。」

「手合わせ?なんでまたそんな事を。」

「君の実力が知りたいのさ。」

手合わせか。

それくらいならまあいいだろう。

ただここは少し慎重に。

精霊眼でマルスを見てみる。

どうやら、敵意はないらしい。

「よし、わかった。やろう。」

俺とマルスは修練場に向かった。

2人で木剣に手を取る。

「ルールは、相手を戦闘不能にしたら勝ち。危険な行為は禁止にしよう。手合わせで大怪我したら学校から怒られるからね。それと、魔術の使用もいいとしよう。」

「わかった。」

俺は、マルスの提案に同意する。

「よし、なら、今からスタートだ。」

マルスがスタートと言ったため、俺はマルスとの距離を詰める。

先手必勝だ。

しかし、マルスは慌てる様子もなく、俺の剣をいなしてきた。

「おっと、随分好戦的だね。」

「早く終わらせたいんでな。」

俺はマルスに剣を打ち込む。

しかし、どれも簡単にいなされてしまう。

「筋は悪くない。でも、まだまだ足りないな。」

「ずいぶんと余裕そうだな…。なんで、そんなに剣が上手いんだ。お前は魔術師の息子なんだろ。」

「ははは。魔術師の息子だからと言って、魔術に秀でている訳じゃないよ。それに僕は剣術の方が好きなんだ。」

そう言うと、マルスの少し強めの一撃がきた。

俺はそれを木剣で受けるが、衝撃をいなしきれず、少し後ろによろめく。

「魔術は使わないのかい?」

「言われなくても!」

俺は剣を振り下ろすのと同時に魔術を使う。

アイススピア。

氷の塊を飛ばす魔術だ。

1番、相性のいい氷魔術なので、そこそこな強度と威力がある。

俺は、アイススピアの陰からマルスの隙を窺う。

アイススピアに気を取られているところに一太刀浴びせるのだ。

しかし、上手くいかなかった。

アイススピアは外れた。

いや、避けられたのだろう。

速すぎて目で追えなかった。

気付いた時には俺に一太刀浴びせに来ていた。

俺はそれをかろうじで避ける。

さっきから、防戦一方だ。

「やっぱり筋は悪くない。でも、全てが中途半端だ。」

全てが中途半端。

俺が散々感じている事だ。

「言われなくてもわかってるんだよ!」

俺はマルスに向かって剣を振り抜く。

「君の剣じゃ僕には届かない。」

そう言うと、マルスは俺の一太刀を軽くいなした。

「くそっ。」

俺は、半歩下がる。

「そろそろ終わりにしよう。」

そう言うと、マルスの姿が消えた。

俺は精霊眼で、マルスを探す。

捉えた。

マルスの魔力動きがわかる。

次にどこに打ち込んで来るのかもわかる。

しかし、動きが速すぎて対応できない。

ガキンッ

次の瞬間、俺の剣は弾き飛ばされ、マルスの剣先が俺の首元を捉えていた。

「やっぱり、君に仕える価値があるとは思えないよ。」

マルスは今までとは違い、非常に落胆した目で俺のことを見ている。

「誰もそんなこと頼んでねーよ。」

俺は苦し紛れに言い返した。

「君が頼まなくても。頼む人がいるんだ。だから君は特別なんだよ。その意味がわかるかい?」

「何言ってんだ。お前。わけわかんねーよ。」

「君は誰の息子で、どういう立場にあるのか、もう少し自覚した方がいいよ。でなきゃ、大切な人を失うことになる。」

そう言うと、マルスは剣をしまい、どこかに行ってしまった。

1人取り残された俺はマルスの先ほどの言葉を思い出す。

誰の息子で、どういう立場にあるのか。

俺は先の戦争の英雄の息子だ。

しかし、どういう立場にあるのかわからない。

親父とは10年会っていない。

俺だけ何も知らずに、周りだけ知っている。

そんな事が最近増えてきた。

(なあ、さっきの聞いてただろ。)

俺は、頭の中で話しかける。

(まあの。聞いておったわ。)

(そろそろ、何か教えてくれてもいいんじゃないか?)

(まだ早い。)

ティアは即答だった。

なぜ、頑なにみんな教えてくれないのだろう。

(何がまだ早いんだ?勿体ぶらなくてもいいだろ?)

俺は諦めずにティアに聞く。

しかし、望みのものは聞き出せなかった。

(お主は、まだ弱い。弱すぎる。だから、知ったところで何も出来ん。今は力を付けろ。ただそれだけじゃ。)

ティアはそう言い残すと、返事をしなくなってしまった。

弱すぎるか。

確かにその通りだ。

魔術では、エマに抜かれ。

剣術では、マルスに軽く捻られる。

なぜ、親父みたいに強くないのだろう。

努力すれば親父みたいになれるのだろうか。

わからない。

自分が何をしたいのか、わからなくなってきた。

その後、俺は授業を受ける気にはなれなくて、そのまま帰路に着くのであった。

 

 

 

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