*何故か最新話がエピローグの前話に来ていたので修正しました(4/12 7:22修正)
*読み返してたら、没案の内容が何故か入っていたため直しました。
突然だが、コウキはトリニティと仲が悪いで有名なゲヘナにも交流がある。それも在学時からだ。
理由としてはたまたまトリニティで暴れていたゲヘナの生徒を引き渡す際に、何度も向こうの風紀委員や救急医学部と会っていたからだ。そのため、彼の2個下までとは顔見知りだったり、プライベートで交流を持つようになった生徒もいる。
そして現在、定休日のため事務所兼自宅で過ごしているコウキは──
「……毎回思いますけど、そんな大量の武器をよく一人で整備できますね」
「素直に褒める、っていうコマンドが出ないの何で?」
ソファーに腰掛けて自分の作業を見ている私服姿の甘雨アコに対して、若干呆れ気味の目を向けた。
先に弁明しておくと、コウキは自ら好んで異性を自宅に招くことはしない。基本的に彼の家に異性が訪れるパターンは3つある。
その1:向こうからアポを取った上で来るやつ
その2:アポなしで急に突撃してくるやつ
その3:何かしらの理由でコウキが自ら招いた場合
今回に関してはレア枠に見えそうで、実は全然結構起こるパターンであるその2だ。朝起きて武器の点検のために道具を整えていたところ、呼び鈴がなり出てみたらアコがいた、というパターンだ。
菓子折りも持ってきていたため、そのまま帰ってもらうということも出来ず、こうして家に招き入れたわけなのだが。
「それは……!って、そんなことよりもこの前の記事!あれ一体何なんですか!?」
「……この前ちゃんと説明したやん」
アコを顔を赤く染めたと思いきや、今度は怒りながらコウキに質問を投げかけてきて、それを受けた本人は疲れたように呟く。
サオリがコウキの家に入るところをクロノスに記事にされたその日、コウキの元には色んな人物から連絡が入った。
例えばゲヘナの救急医学部部長、ヴァルキューレの真面目な婦警、百鬼夜行のくノ一や百花繚乱の現トップ、トリニティの後輩たちなど様々な人物から説明を求める連絡が入った。
その中で、特に長文だったのがコウキの目の前にいる天雨アコだった。しかも何が悪かったといえば、全員に説明の文を送る前にナギサに呼び出され押し倒されたせいで、説明するのが遅くなってしまったことだ。
このせいでアコからは暫くチクチク言葉を言われるようになり、そしてコウキはなんか自分の周りがしっとりしているような感覚を覚えるようになった。
閑話休題
「とにかくだ、アレに関してはこの前世話になった奴がお礼ってことでご飯を作りに来てくれただけだっての」
「そんなことはもう知ってます!私が言いたいのは、その人とどういう関係なのか、ってことです!まさか……恋人だったりするんですか!?」
──冗談は普段の服装だけにしてくれ。
反射的にそう言いそうになった寸前でコウキはそれを口の中に留まらせた。
いくら軽口を言い合える仲でも言って良いことと悪いことある。今回に関しては女性の服装に関してのため、それはライン越えであるとコウキは懐かしい思い出と共に学んでいた。
今回はそれが功を奏したと言える結果である。
「あのなぁ、いくら何でもそれは相手に失礼だろうが。先生相手ならともかく、俺はどこにでもいるような一般人だし、容姿だってイケメンじゃないし、稼ぎも平均よりちょっといいぐらいだからな?流石に俺程度じゃあいつ釣り合わねえよ」
「……色々言いたいことはありますが、取り敢えず私が知る一般人は7囚人の1人を1対1で警棒とハンドガンのみで渡り合いませんし、ゲヘナの要注意人物にされませんよ」
「お、そうだな(適当)」
アコから「( 눈_눈)」というなんとも言えない視線を向けられつつも、コウキは適当に返しながら武器の整備を続ける。しかも丁度入念にかつ精密にやらないといけない武器のため、意識をアコから自分だけの武器に向ける。
その武器は一目見ただけでは、装飾が入った分厚い大剣である。しかし、コウキが神秘を流したと同時に甲高くも短い音が響き、大剣から銀色に輝く1本の細い剣が出てきた。そして、大剣の刃だったものは最初からそうであったように鞘としてその場に置かれた。
「適当に返さないでください!……はあ、それにしてもその仕掛け武器ってものは本当によく分かりませんね」
──仕掛け武器。
アコの口から出たその名称は、本来武器ごとに固有の変形機構があり、変形することで対応力の幅を上げたりすることが出来るものだ。だが、キヴォトスにおいてあるのはコウキが持っているこの剣のみ。そのためこの剣の名称、そもそも仕掛け武器という単語自体知っているものは極僅かだ。
そして甘雨アコは──
「ルドウイークの聖剣……でしたっけ。あなたの大立ち回りを見た後だと本当に聖剣の名に恥じない剣ですよね」
その極僅かである。
そしてそれがアコの機嫌を少しだけ良くした。コウキは集中しているため、アコに対して全く反応しないものの彼女にとってその事について思うことは多少あれど、細かくいうものでも無い。
何故なら──
(惚れた弱み……ってやつでしょうね。私自身、何故この人のことが好きになったのか分かりませんが)
きっかけなんてものは無かった、とアコは思う。だが、何回も彼と会い、その都度軽口を言い合ったり、自分の愚痴に付き合ってくれたり、時には吹っかけた賭けに負けて辱めをうけたり、そして──
『ヒナのことは俺に任せてくれ、絶対にお前達の所へ帰してやるからさ』
アビドスで起きたとある事件でヒナが一人で向かったのに気が付いた時、アコは自由に動けて尚且つ実力者である彼に依頼をした。その時、自分でもどこか不安や恐怖が声ににじみでていたのかもしれない。
それをコウキは受け止めて、返してくれた言葉はいつも以上に頼もしかった。その後、つい勢いに任せて──
(って、何思い出してるんですか!?それより、コウキは……)
つい入ってしまった回想を止めたアコはコウキの方を見る。彼はまだ仕掛け武器に意識を向けているようであり、作業の進み的にももう少し時間がかかりそうであった。
(集中していると本当に周りを見ませんよね。まあ、戦闘の時はアホみたいに視野広いですが……)
そう考えながらアコはコウキの顔をじっと見つめる。
コウキの容姿は平均より少しはいい、ぐらいだ。決して優れているとは言えないものの、その逆も言えないという何とも言い難いものだ。
だが、アコは彼の笑みが子供っぽいところや、驚いて晒した間抜け面も知っている。特に驚いた表情を見たのは自分だけではないか、という自信もある。
(……よく見たら、前お会いした時よりちょっと顔が細くなりましたかね?菓子折を来た時に渡したとはいえ、このままただお邪魔した、というのもアレですし、カフェオレでも入れてあげましょうか。コーヒーは苦手だって言ってましたし)
アコはそんなことを思いながら勝手知ったる彼の家の台所に赴く。そこで前に自分がプレゼントしたコーヒードリッパーを手に取り、準備し始めたところで。
ピンポーン。
「あら……?」
「おん?」
部屋に響いたのは来訪者を告げる呼び鈴の音。今日が休みであることはコウキが運営している仕事用のサイトにも明記されている上に、表の玄関にも定休日の看板は下ろされている。
それなのに呼び鈴が鳴るということは、来客かはたまた宅配業者の可能性があるだろう。
「アコー、俺が出てくるから待っててくれ」
「いや、これくらい別にいいですよ。それよりあなたはさっさと片付けておいてくださいね。そのとっちらかった状態で出迎える訳にもいかないでしょう?」
「あー、確かにそうだな……そしたらお願いしていいか?一応仕掛け武器の方は中断してもいいぐらいまでは整備終わってるし」
「わかりました。それでは行ってきますね」
コウキがいそいそと片付けているのを視界に捉えつつ、アコは玄関へ向かう。2人きりの時間を邪魔されたのは少し遺憾ではあるが、そんな日もあるだろうと割り切って玄関のドアを開け──
「はい、どなたでしょ、う……か……」
「コウキさん、近くによったので2人でお話で、も……?」
──カサッ。
そこに居たのはトリニティ総合学園のティーパーティーのホストであるナギサの姿。普段の華美でありながらどこか落ち着いた制服ではなく、白のワンピースに、狼のモチーフが入ったスカーフを手首に巻いていた。そして地面にある先程まで両手で持っていた紙袋からは、甘い香りがするところから菓子折が入っているのだろう。
お互いが相手を認識しながらも固まっているという状況。第三者から見たら色々疑いたくなる光景であるが、それを気にしない者がいた。
「アコー、片付け終わったけどどうした……ってナギサじゃんか。連絡なしに来るなんて珍しいな」
明らかに異様な状況ではあるものの、コウキは普通に話を続ける。無論、彼とて空気がおかしいことに気がついてはいるものの、それが『ゲヘナとトリニティ』という先日まですこぶる仲が悪かった陣営同士が会ってしまったから、というものだと思っている。
そのため、少しでもそれが和らげばと普段通りの態度を敢えて取り続けることにした。
「まあ、ここで立ち話もなんだしとりあえず中に入りな。あと、アコには悪いんだけどさっき台所見た感じだとがカフェオレ作ろうとしてた感じだろうけど、俺がそれを引き継いで出す形でいい……ん?どうした、2人とも?なんか目が据わってるけど……おい、待て。何でナギサは紙袋から出したロールケーキ丸々一個を片手に俺に近寄るんだ?って、アコ?お前は一体どこから首輪とリードを……」
この後、D.U.シラトリ区で片やロールケーキを手に、片や首輪とリードを手に1人の狼耳をした青年を追いかける女子生徒の姿があった、という記事がキヴォトスにばら撒かれるのだった。
****
~後日談~
「ねぇ、コウキ。この前の記事からそんなに経ってないのにまた女性関係の記事が出回るってどういうことかな?」
「その言い方、なんかとんでもないクズ男みたいに聞こえてて嫌なんですが?」
「いや、でも事実じゃん」
「確かに事実ですけど悪意しかないんですよ……」
「んで、今回は何があったの?」
「説明とは言っても単純ですよ?定休日にアコが遊びに来てて、そのタイミングでナギサがサプライズのつもりでアポなし訪問したから、少しでも空気を和らげようとしたら追っかけられたって感じですよ」
(うーん、なんとも言えない)
「追っかけられた理由は有耶無耶にされたんで分からなかったですけど、次からはあの二人は会わせないように極力努力しますよ」
「そういう問題じゃないんだけどなぁ」
「そうなんですかね?あ、それじゃあ自分はこれであがりますね」
「うん、分かった。いつもありがとう」
「いえいえ、お気になさらず。ちゃんとお金もらってますし、その分の働きはしますよ」
「ふふっ、頼もしいね……ところで、この後は予定あるの?」
「ありますよ。今日はサオリと柴大将のところでラーメン食べに行く予定です」
「あっ……(察し)」
「まあ、女性と夕飯食べに行くのにラーメンでいいのか、ってのはありますが、サオリのリクエストでラーメンになった感じです」
「そ、そう……」
「それじゃあ、お疲れ様でした~」
「……なんか嫌な予感がするなぁ」
後日、コウキは何度目かのお散歩()をする羽目になった。
半分キレ気味のアコに「敗者はリードと首輪を着けて勝者にリードを引かれながらお散歩」コイントス勝負を挑まれ、勝利。3回待ったをかけられたが、ストレート勝利してしまったからだ。
その後、どこでこれを知ったのか、はたまた偶然なのか不明だがティーパーティーのとあるホストが犬耳のヘッドバンドをつけてコウキの家にやってきたとか。
そしてそれをクロノスにすっぱ抜かれたコウキは暫く、「後輩にコスプレさせる鬼畜」という汚名が着く前に、各所へ事情説明行脚をすることになったのだった。
仕掛け武器の話なのにあんまり話してなくない?
キャラ紹介
コウキ:オリ主くん。基本的に驚いた表情はするものの、驚いて変な表情をうかべることは無い。そういう点ではある意味アコが大差で独走している。なお、コーヒー苦手はアコ特性だからとかそういうのなしで普通に苦手。ちなみに、アコの入れたカフェオレは何故か自分がやった時より美味い、という小さい敗北感はあるものの結構好き。
アコ:前回のクロノス記事で脳みそを破壊されたものの、無事修復。コウキとお散歩()は経験済み。屈辱的だったが、なんかスッキリした模様。
ちなみに、バッドスチル世界線ではヒナは戦線離脱レベルの重症ではあるものの帰ってくる。代わりに例の相手と相打ちという形でコウキは愛剣を戦場に残して行方不明になる。
──嘘つき。貴方も生きて帰ってくるって約束したのに。
ナギサ:ちょっとした悪戯心でアポなしで好きな人の家を訪れた結果、見たことある女がいた上に、かなり親しげだったので脳みそを破壊された。
──は、恥ずかしいですがコウキさんが喜ぶなら……
サオリ:まだ話に登場していないが、メインヒロイン候補の錠前サオリだ、よろしく頼む。コウキの好きなものか?確か、事務所の机の引き出しの三重底のところにあった本だと、胸が大きくてかつ、クール?でありながら少し向ける感情が重そうな人みたいだ。
──私がそれに当てはまらないのは分かってはいたが、少しだけ胸が痛いな。
脳みそを破壊された皆様方:彼女たちの話も書きたいなぁ(願望)
夜勤明けからの日勤、終電帰りが当たり前になってきたので多分最終回です。(エイプリルフール12日目)