Justice前章:Labyrinth 嶺編   作:斬刄

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10話見定めし試合

なのはの一家には古流武術(御神流)を習っており、その父は師範代であった。今ではその流派を恭也、美由希の兄姉に教え、受け継がれている。

 

なのは本人にはその流派は教えられてないが、血筋もあってか魔法面だけではなく戦闘面もまた冴えている。

現にユーノからなのはに魔法の扱い方や戦術を教えることで、少女は短期間で腕を磨き、レイジングハートの力を扱えるようになっているからだ。

 

これから嶺達が信用に値するのかを見極めるために、道場へと到着する。が、

 

「あのー行くのはともかく、見極めるルールや、どう決着をつけるかが分からないので教えてくれませんか?」

「ルールは簡単だ。

まず、俺が二人を相手して勝負を挑む。真剣勝負なら勝敗や戦術も大事だが…これはあくまで俺達が判断材料としてこのような機会を設けた。勝敗だけではなく、僕らで試合の評価も判断することも理解した上で挑むことを理解してくれ。

武器は竹刀か木刀のどちらかだ」

 

恭也が一対一ずつ亮と嶺を相手にすることとなるが、この勝負は結果を制することが全てではない。肝心なのは、二人が信用に至るかが行動によって決まるということが重要だった。

 

*****

 

「亮さんと嶺さん。大丈夫なのでしょうか…」

一方のアトリはなのはの母親である桃子と料理の手伝いをしており、嶺達が帰っているのを待っていた。

 

「私達のことを試合だけで判断しても…」

「さっきの話を聞いて、私達家族だけで本当にあの子を守れるか分からないから。

貴方達がなのはを危険から守っているから少なくとも悪い人じゃないかもしれないけど、その確信が持てないの。

私だって貴方達が良い人なのか悪い人なのかをどう見極めるか分からないわ。

 

なのはが魔法に関わったことで…あの子は優しいからジュエルシードっていうものに関わって、家族は知らない場所で危険な目にあってたもの。今回の件で、仮にユーノ君っていう子だけでなのはを責任持って守ろうってなったとしても…そんな危険な人が襲ってきたっていうのを家族みんなが知った以上、やっぱり解決なんてしないわ。

 

本当はね?貴方達のことを士郎さんも…家族全員が貴方達のことを信じたいって思っているの。それでも…」

 

信じたいけど、嶺達を信頼できる境界線から一歩踏み外すことができない。娘のために安全に守り、事件解決に貢献しているのは分かっていたがそれでも信頼性に欠けている。

 

「私も、亮さんも嶺さんの本質を理解したのは初めてです。守り切れるかどうかも、嶺さんの行動次第では不安を抱くかもしれません。

 

ですが、これだけは断言できます。二人ともいい人だってことを…それは私が保証します」

 

そう、千草はなのはの事で暗い顔をしている桃子に笑顔で答えた。

 

*****

 

試合開始前、試合用の服は自由だったが武器に関しては適任であるものを探し出すのに少し時間がかかった。亮は更衣室でハセヲに変身し、私服へと着替える。

嶺達が持っていたものは、

(嶺の方は竹刀で、彼は短い木刀か…)

 

嶺は竹刀を両手に持ち、兄妹達が小さい頃に振るっていた短い二本の木刀をハセヲに貸している。ハセヲは木刀をどう持って戦うかを考えているが、

 

(大丈夫なのか、ゲームじゃ大剣を操作してたけどよ…)

 

竹刀を眺めている嶺のことも心配している。彼からは嶺がゲーム上で大剣で振り回していたというのは知っているが、剣の修行もしたことがなければ、扱ったこともあまりない。

ましてや記憶がない彼女に、剣を扱うことが出来なかった。彼女の武器がほとんど鎌系統ばかりで、剣を振るうにしても彼女は亮よりもド素人だった。

当然彼女が剣道なんてやったこともない。

 

お互い準備を終え、双方構えの姿勢をとる。

 

「では…始めっ!」

 

まず亮が最初に戦うが、はじめの合図を父親が声で発した時に恭也が先手を打たれた。

ハセヲの予想として彼が胴上げして竹刀振り上げるのか、手の甲を狙うかと思っていたはずが、竹刀を突き出してきた。

 

(⁉︎くそっ…いきなりかよ!)

 

彼自身恭也の行動に予想外ではあったが、セイバーとの戦闘経験のおかげで彼の素早い突きをなんとか防ぐことが出来た。

そのままもう片方の木刀で、反撃したが

 

(なっ、距離が届かねぇ⁉︎)

 

反撃されることを見越していた恭也は、木刀と竹刀の長さから相手との安全な距離を仕掛ける前に把握し、ギリギリな所まで攻撃を避けることは造作もなかった。すぐさま恭也はハセヲに向かってまた竹刀を突きつけてくる。

(またか…同じ手は通用しな、つっ⁉︎)

 

だが突きと見せかけて、右手に持っている木刀をはたき落とされた。手から果たした木刀は地面に落ちてしまう。

 

(拾うか?いや、そんなことしたら身体がガラ空きになって勝敗が決してしまう。仕方ねぇっ…‼︎)

 

反射的に落ちた武器を拾おうとせず、もう片方の木刀を両手持ちにして攻撃を防ごうとしたが、

 

「僕の勝ちだ」

「…参った」

(あのセイバーよりも動きは遅いし、不視界ってわけでもねぇのに…こっちの武器が絞られて、こんな風にすぐさま俺の動きが読まれたらどうにもならないか)

 

剣の腕前はハセヲよりも恭也の方が上回っていた。亮は双剣や大剣、鎌といったマルチウェポンを扱っているが、武器縛りで恭也やセイバーのように一つの武器と常人よりも肉体が精錬に磨いている相手となると今回の試合のように完全に動きを先読みされ、押し負けてしまった。

 

「咄嗟の判断で反撃したり、フェイントには弱いそうだが…初手に攻めた時、武器を落とした時にどう自分の身を守るかといった防御の反応は悪くなかった」

 

ハセヲは武器を下げ、変身解除のために更衣室へと向かうが、その前に嶺の方へ向かう。

さっきの試合を嶺も見ているのは分かっているから、恭也の力量を忠告したところで無意味だった。

 

「悪い、負けてしまった」

「良いよー。そもそもこの試合は恭也が言ったように勝ち負けが全てじゃないからねー。

あと、ナイスファイト」

 

亮が負けたことから、呑気にしている嶺はそのまま恭也と戦うことになる。彼は木刀を横に置いて、竹刀を眺めている嶺を見ていた。

 

(…マジであいつ大丈夫なのか?)

「一ついいですか?私は、剣を扱ったことは無いんですけど」

「構わない。君の思うまま、自由に戦ってくれ」

「ん、自由にね」

 

恭也と嶺は竹刀を構え、また父親の声で試合が開始される。恭也は胴上げすると、距離を詰めて真っ直ぐに竹刀を振り下ろされる。

(な、突きじゃな…おい嶺っ、何ぼけっとしてるんだよあいつ‼︎

このままだと頭に直撃するぞ⁉︎)

 

剣道ならば面と声を上げて振り下ろされるが、ハセヲとの試合のように声を上げないまま恭也は黙ったまま嶺を攻撃する。

このままいけば、ハセヲよりも早く決着がつき、これでは誰が見ても数秒の間だけの試合で見極めようがない。

 

(さぁ…どう動く?)

(嶺のやつ、一体どうするつもりだ⁉︎)

 

しかし、『提案だった試合なんて面倒だから終わらせる為に降った竹刀にそのまま頭に直撃しただけ』なんてそんな下らないことを嶺は考えてなかった。

 

至近距離で真剣白刃止めのような器用さは持っていない。が、彼女は恭也から見て竹刀を下に振り上げたはずだったのに、横にずれている。彼女はこの攻撃を竹刀で止めるという無駄な動きよりも、当たる前に素早く横へ避けることを選ぶ。

その方が次の攻撃に移せるからだ。

 

(避けられたっ…⁉︎しかしっ!)

 

今の恭也は面を振り下ろしたせいで、今度は肩や頭上が狙われてしまう。追撃よりも体制を整えて一歩下がり、その間だけ守りに徹しようとする。

が、

 

「な、何っ…⁉︎」

 

口を閉じていた恭也がそう呟いたのは、既に背後を回り込まれて嶺の姿が見えなかったことに驚いたからだ。彼の背筋に殺気を感じ、恭也はそのまま振り向いた。

嶺の顔を視認できたと同時に、ハセヲ戦とは逆に嶺から竹刀で突き返された。彼の首から20センチギリギリに寸止めされ、動き次第では首部分を穿つことができる。

 

(…間違いなく首を取られている)

「勝ちの基準が分からなかったので、首あたりで止めました」

「いや…それでいい。参った、僕の負けだ」

「「ありがとうございました」」

 

二人の見極めの試合が、こうして終わった。

嶺はハセヲとの戦いで対策し、初手の突きに警戒するはずだったのが今度は振り上げて襲ってきたのだ。

 

「お前、よく勝てたな…?」

「剣道の試合なら、お互いとんでもないルール違反だけどね」

(…まさか、アイツの攻撃を真似したのか?)

 

嶺は、ハセヲと恭也の動きを見つつすぐに理解した。見よう見まねで不意打ちの突きを再現している。

 

「でも、二人とも…あの戦いから分かったことがあった。

 

まず彼も、彼女も【良い人】だったこと」

 

士郎は亮もそうだが、嶺もまた良い人だと判断する。二人とも父親の結論に文句を言うことはなかった。彼が試合開始前とその後の対応を評価し、それらを含めて下した結果だった。

 

「亮君は双剣のようだが…恭也の動きに対して即座に反応していた。剣道の階級を得た人でも、追いきれないくらいの速さで挑むと試合前に恭也から聞いている。反撃は惜しかったが…恭也の動きに追いついて、かつ判断も悪くない。彼は焦りはしたが…試合中に怒りや不安というものがなかった。

 

嶺の方は剣を習ってなかったと言っていたものの…まさかあんな素早く裏を取って、恭也の突きをそのまま再現させるとは本当に思わなかった。

それに、彼女は首筋よりも離して止めているというのは…相手が攻撃されたことすら分からないままだったら、反撃されていたかもしれなかったのに…どうしてだい?」

「恭也さんが、亮に竹刀を当ててトドメをささなかったように私もトドメを刺さなかったからです。

 

そのまま動かないことに気づいてくれることを、信じてましたから」

 

嶺自体は元々、恭也を無力化させるために極力傷つけることないよう動いていた。殺す必要性が全くないのならば、彼女は相手次第でその対応を決めている。

殺す覚悟もあれば、殺さないようにする判断もちゃんとしていた。

 

「そうか…これで『二人は信頼できる』というのが私からの結論だが、どうだ?」

「…さっきの試合から、僕は二人は信頼に値します」

「私も、なのはを守ってくれるって信じられます」

 

試合では回避と防御のみを行い、動きを予測したと同時に無力化した。その反面、もし彼女はあえて出さなかった牙を向けることとなれば確実に仕留めようと躊躇しない。

 

 

(これが試合ではなく、戦争や死合いという形だったら…彼女はあんな突きの寸止めでは済まない。ルールを無視し、手段を選ばなかっただろう。

 

相手を敬ってだからこそ、出来たことだ)

「それじゃあ最後に…なのは、二人のことはどう思っている?」

「えっ…⁉︎」

「二人は確かに強いし、こうして見極めたことで僕らは問題ないと判断した。あとはなのはが嶺達と一緒にいたいかどうか聞きたい。

 

 

今後護衛としているのなら、なのは本人が不快に思わないようにするのも重要だ」

 

なのはは返答に困っている。嶺達はテロリストから親友の命に、自分の命も助けた。

ジュエルシードも正輝という弟と協力関係にならなかったら、なのは達二人は事の真相が見えずに、蟠りを抱いたまま知らぬ間に事が終わっている。

 

「あ、あのね…お父さんに、お兄ちゃん。

嶺さんと、二人に出会ってまだ短いけど…それでもやっぱり信じたい。ジュエルシードのことも、アリサとすずかちゃんを助けたのは嶺さんのお陰でもあるし…フェイトちゃんっていう子とも会えるきっかけも作ってくれた。

 

またあんな危険な人と鉢合わせしたら、嶺さんが戦って…本当にやむ負えなかったら酷いものを見てしまうかもしれない。でも、嶺さんに魔法の危険性を言われて…気づいたの。

私、表面的な部分ばかり見てその背面は何も見てなかった。使っている魔法がもし人間相手に使ったらどうなるのかも。子供だから正しさの認識は曖昧だからって言ってくれたけど、それでも嶺さんの言葉は今でも覚えてる。

 

私は子供で、正しさも間違いも、成功も失敗も沢山するのも、私が本心で見たくないものだって、見て見ぬ振りをして避けられないかもしれない。

 

私は…嶺さんを信じて、本当の意味で魔法と、自分自身と向き合いたいの‼︎」

 

嶺と一緒にいたいという娘の本気の頼みに、親が応えるわけにはいかなかった。嶺達の見極めは終え、彼らの強さも優しさも理解している。

 

「なのは、両親や私だって失敗も間違いもするんだよ。それにね…私の言ってる事が全部正しいとは限らないし、あくまで私のやり方を真似したいって考え方ならやめたほうがいい。

 

それに、その道はなのはにとっては過酷だよ。守り切れるかどうかも分からないし、第一にその年齢で自分で判断し、悩み考えるっていうのは本当に酷な事だから。

それでも私達を信じるの?」

「悪い人じゃないのも、やり方が合わない事もあるのも分かってるよ。真似もしないし、ジュエルシード事件の時のような魔法に関することも嶺さんと協力しながら、大きくなったら私自身で結論を出すの。

その上で、私は嶺さんと二人のことも信じたい」

 

今のなのはには、結局正しさも間違いの答えは出さなかった。自分のやり方だけではなく、嶺を含めた色んな人の出会いと彼らの考え方を知っていくことを選んだ。

 

「…私は、【殺人】のことを正当化させてるわけでもなければ、その美学も求めてるわけでもない。何が正しいかを決めるなんて対応力を子供に委ねるのは流石に烏滸がましいと考えてる。現実だって1+1=2っていうような正確な答えたとは限らない…幼い頃から自分の認識でどう正しく判断して生きるのかを段々と理解していくっていうのが家族、学校、友達関係であって…それらをふまえて成長していくものだと思う。規則規則と縛って正し過ぎてもそれがコンプレックスになって悩む人だっているし、逆に自由過ぎて迷惑どころか取り返しのつかないことをしてしまった人だっている。

 

誰にでもそうだけど、今のなのはにはメリハリも、後悔のないように何かに取り組んで懸命に生きるのも、成功もあるし失敗もするからなのはにとってはそれって結構大事だと思う、かな?だからね、なのはがそう決心したなら…うん。その期待には応えるようにするよ。

なのはを守る事も、成長にもね」

 

こうして嶺達はまた、なのはの家に認められ、父はなのはの頼みにあることを思い出した。こうして娘自身が何かに本気で取り組んだのも家族にやりたい事を言ったことも初めてだった。

 

「そうだな。そう言えばなのはとの我儘を聞いたのは…フェレットを飼うって言って以来だったかな」

「え、お父さん…?」

 

なのはがまだ幼かった頃、過去に父親が大怪我をして以降兄姉と母親も忙しかった。それ以来家で一人きりお留守番なまま、いい子にしなければならないと我儘を言わずに父母と家族のことを考えながら無理をしてずっと我慢していた。

 

なのはが家族や親友二人に内緒で隠していた事が公になって、いい子にしなくちゃという強迫観念から怯えていたのを覚えている。

状況が状況とはいえ、納得はしたものの責められるんじゃないかという不安もあった。

 

「大事な事を明かさずじまいだったのも、俺達家族ののせいでもある。まだ幼すぎたなのはとの、時間を作ってあげられなかった。

父さん達には、それが足りなかったんだ。

本当にすまない、なのは…」

「お父さん。でも、私。ここまで家族に吐き出すなんて、思わなかったの。

こんな事に関わって…私のことを悪い子に見られるのは本当にすごく嫌だった。でも、家族もアリサちゃんもすずかちゃんも、私のことを心配もしてくれた。だから、こんな私のことを家族が受け入れたことが本当に嬉しかった」

ここまでなのはに関してここまで真剣な話になったお陰で、まず家族全員がなのはと向き合っていた。その分なのはが何を悩んでいたのか、娘がどう困っているのかを掘り下げていくうちにある出来事からあぁなってしまった。

 

「んー苦しいことがあれば思いっきり泣けばいいし、親にも引っ付いて甘える…それが子供なんじゃないかな?

今からでも遅くはない…と思うよ?なのはがどう思っているのかは…分かんないけど?」

(だからなんで疑問形なんだよ…)

 

嶺の方はなのは一家の人間関係が、互いに支え合っている分少なくとも良好であるのは確かなのは理解している。なのは自身の問題であるためこれ以上のことは嶺もわからなかったが、家族全員が一丸となって末っ子のなのはが抱える悩みに触れている。

 

嶺は首を傾げてあやふやな事を言っているのに対し、亮は困り顔なまま心の底で嶺をツッコミを入れていた。

 

「二人にも、こんな形で君達を見極めようと試したのは申し訳ない」

「…家族が私のことを疑うのも無理ありませんでしたし、今回のことで私達のことも分かってくれたならそれで大丈夫です」

 

士郎と恭也が亮と嶺に握手しようと、手を差し出す。

嶺とハセヲもその手を掴んで、握手した。

 

「亮さんも、嶺さん…二人とも良い試合だったよ。この試合を通してこちらも気づいたことがあった。どうか今後ともなのはを守ってくれ」

「こちらこそ、私達だけじゃなくて家族との時間もなのはの側にいてあげてください。

一緒にいてなかったのなら、尚更です」

「「あのー、そろそろご飯ですよ?」」

 

そんな時に母親の桃子と千草の二人が道場にやってきた。異様に早いと感じた5人は見極めの試合と話でいつの間にか時間が早く経っている事に気付いた。

 

「嶺さん達も一緒に食べますか?」

「え?いいの?それじゃあお言葉に甘えて」

 

ご飯の知らせを伝えに向かった千草と桃子は理解した。入る前にドア越しに見極めは合格だったことと、なのはと父親のことを聞いて、千草と桃子の二人は入る前に安心している。

 

「気づいてあげられなくて、ごめんね…」

「お母さん、お兄ちゃんにお姉ちゃん…」

 

現になのはの事を桃子と兄姉が抱きしめていた。ここまで窮屈だったなのはの心も、家族とわかり合うことで気が楽になり、少し泣いていた。嶺はなのはに声をかける事なく、亮と千草の二人で、空気を読んでさっさと家に戻っていく。

 

「…なんか凄い具が溢れてるけど、人数多いから仕方ないね。あと美味しいです」

「どんどん食べてくれ」

 

こうして道場から家に帰ると、桃子と千草が作った鍋料理を囲んで食べている。嶺は帰りが遅くなることをファリンに伝えて、なのはの家族団欒と一緒にのんびりと食していた。

 

「あ、ありがとうございます」

「いいって!帰るにも試合で疲れてるんだし。私はお父さんと同じ判定しかしなかったんだから」

 

亮も帰る前に家族から夕食を頂くことに驚いていたが、なのは一家は気にするなと言っている。

なお、ユーノがフェレットから人間になることはなのはの看病で既に母親の桃子から家族全員に周知なため、

「あとユーノ君だったか?魔法もそうだが、君には特訓するからな」

「え、えぇぇぇぇぇっ⁉︎」

「まぁうん。ガンバー、ユーノ」

ユーノもなのはの護衛として魔法だけではなく、身体に恭也と美由希から御神流を叩き込まれることは言うまでもない。

 

見極め前の殺伐した空気が、あっという間に朗らかで暖かかくなっている。幼少期に抱えたなのはの苦しみと悩みも、嶺達の疑心暗鬼も両方解決したのだから。

 

こうして嶺達は、なのはの家族と一緒に夕食を食してからすずかの別荘へと帰っていった。

 

 


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