Justice前章:Labyrinth 嶺編   作:斬刄

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15話温泉迷宮

テレビの中

 

嶺が呼ばれるまでの間、悠達はずっと完二を救出するための手がかりを探していた。クマは自問自答で悩んだまま色々なことを考えすぎて誰かを探すことも難しくなっていた。雪子の時は分かったのだが、完二がどこに言ったのかが分からない。クマからは探したい人の匂いがあれば何とかなると、こうして悠達がちゃんと持ってきている。

「なんとかなるの?」

「これさえあれば、クマが突き止めれるんだって」

少年の為に完二が作っていたストラップ付きの兎の縫物をクマが嗅いでいる。匂いを覚えて、クマの鼻センサーで完二がどこにいるのかが分かるようにした。

 

「これで完二君の匂いは覚えたクマ!あとはこの匂いを探すだけクマね!クマの鼻センサーっ!」

(匂いでわかるんだ…)

クマはクンクンと鼻を嗅ぎ分けて、匂いを識別している。

これで、どこに完二がいるのかが分かる。

「当たりの予感…あぁ、これですか!

みんな付いてくるクマ‼︎」

完二の匂いを辿っていくと、そこは旅館のような場所があった。

両端にある布には男子専用という文字があり、女子の入りを禁止している。

「なんかこの霧今までと違くね?」

「メガネ曇っちゃった」

「にしてもあっちーな…これじゃまるで」

 

霧だけではなく暑苦しいほどの湯気が漂っている。旅館の中からは昨日の深夜に嶺がテレビで即切りした思い出したくもない声がその中から聞こえている。

『僕の可愛い子猫ちゃん…』

『あぁっん!なんて逞しい筋肉なんだ…ぁぁっ!』

『怖がらなくて良いんだよ…さぁ力を抜いて』

(うん、分かってた。なんか薄々嫌な予感はしてた。

悠達の救出についてはこっち(正義側)の仕事にも含まれてるから仕方なく請け負ったけど…やっぱり逃げたい、この場から今すぐにでも逃げたい。すごく逃げたい。

暑いのに寒いってどういうことなの)

嶺はあのマヨナカテレビと悪夢のことを思い出しつつも鳥肌がたった。

ここは温度的にも熱いはずなのに、悪寒がしている。

 

「ちょっと待てっ⁉︎俺行きたくねぇぞ⁉︎」

「あぁ、行ったらヤバイ…」

 

男子組も先に進むのは危険だと訴えており、三回頭の中で逃げたいと訴えながら唱えている嶺。あくまでも人の欲望が作り出した迷宮とはいえ、この場所はあまりにも直接的に、主に完二の影からの同性への執着心が強い。雪子の影もメンヘラみたいなものだったが、さっきの声の時点で完二の影がどんな奴なのか大方察してしまう。

 

「クマさん…本当にここに完二君がいるの?」

「クマの鼻センサー舐めたらあかんぜよ!」

「じゃあ…行くしかないか」

 

女子二人組の方は諦めて行くこととなった。本当は陽介と同じように帰りたい気持ちではあるが、生き死にが関わっている以上見捨てるわけにはいかない。

 

「俺マジで嫌なんだけど!これ行ったら絶対ヤベーって!引き返せなくなるって!

大事なもん失うって!」

「はいはい、いくよ」

「放せ、ヤダっ!俺はまだ綺麗な体でいたいんだよーっ!」

行くことに何度も拒み続けているが、それも虚しくドナドナのように引っ張られていく陽介。

悠も嶺もまた諦めて助けに行くこととなる。

 

「もう嫌だ…帰りてぇよ。いっそ二手に別れねぇ?嶺に天城と里中はこのまま特攻、俺と悠は帰宅っつーことで!」

「それだ!」

「それだ、じゃない!アンタ達サボりたいだけじゃん!私達完二君を助けに来たんでしょ!そこんとこ忘れないように‼︎」

(私だって気配を消して逃げたいんですけど…でも結局怒られるんだろうなー)

この場所から早く出たいと言う気持ちは嶺も男子二人も同じ気持ちであるが、悪い人ってわけじゃないから止むなしに助けに行くこととなる。

進んで行くうちに、完二の影と接触した。

『ウッホッホ!これはこれは…ご注目ありがとうございま〜す!僕、完二★(キラッ)』

その一言で嶺だけではなく悠達四人もドン引くしかなかった。悠と陽介がペルソナを出し、戦闘態勢になる。

(そりゃうん、感情的になっちゃうよね、やられる前に潰すってなっちゃうよね。

 

この場で呪符使えたら、今すぐにでも使うんだけどなー)

「落ち着いて花村!」

「うっせーっ!こっちはもたねぇんだよ精神的にぃ‼︎」

 

嶺は皆まで言うなと口に言わない。口に出さなくとも、表情からして苦い顔をしている。

本来の嶺なら悠と花村の二人と同じように先手を取って襲っている。

「嶺さんもこの二人を止め「賢明な判断だと思うよー」いやいや、ダメだってば⁉︎」

『あ・や・し・い熱帯天国から御送りしていま〜す!暑い湯気のせいで、胸がビンビンしちゃう!』

嶺を止めようとした千枝でさえも、悠達と同じようにペルソナを召喚する。

「ち、千枝までっ…」

「あぁごめん…なんかムカついて」

「だよな…」

『みんなも熱くなったところで…このコーナー行っちゃうよ〜っ!』

【女人禁制!突☆入⁉︎愛の汗だく熱帯温泉!】

 

今回も、雪子の時のようにタイトルロゴが飛び出す。意味深な一枚絵のように、5人とも口に言わなくとも理解してしまう。

「うわー…」

「これはヤバイぞ…色んな意味で」

「確か雪子の時もこんなテンションだったよな?」

「うそ、こんなんじゃないよ!」

『それでは更なる愛の高みを目指してもっと奥まで…突☆入。行くぜコラァァッ‼︎』

「待てっ⁉︎」

 

影がその場から去ると、またシャドウが出てくる。警官の格好をした敵が拳銃と鞭を手にとって向かってくるが、こっちにはペルソナ使いが四人に増えたおかげで、倒すのも楽になっている。

(…早くこの場所から出たい)

陽動をしている嶺は、積極に動きつつもすぐに解決したら帰ってゆっくりしたいという気持ちだった。

 

このまま完二を助ける為にこの迷宮を奥へと進んで行くと大きな扉があった。

 

【おいでませ、熱帯天国】

「いるな…ここに」

 

扉は熱烈な文字が書かれている。もう下に続く階段もなければ、周囲の敵もある程度倒している。

 

「それじゃ、張り切っていこうか!」

「うん、冷静にね‼︎」

(…このメンバーでそれは難しいと思うなー)

「それ天城さんが言っちゃいます⁉︎」

 

最初の時点で張り切るのも冷静なのも、間違いなく掌の上で踊らされる。言葉ではいくら言っても、クマを除く四人に耐性がないのだから後々感情が優先する察した。嶺に関しては、敵の煽り言葉も行動に対する気持ちをシャットダウンできる。

 

「とにかく!頭に血登るの禁止!目的は一に完二君の救出、二に完二君の救出なんだからね!」

「プッ!千枝っ、今一度に同じだったよ」

「いや、わざとだから…」

「え、わざとだったの?」

「気づけよ!天城のツボってマジでわかんねーっ…」

完二を救出するために余計なことは考えず張り切っていこうというのに、グダグダになってしまう。張り切ろうとしても、みんなして呆れ顔になってしまう。

「なんでみんな扉開けないクマ?」

(…何で行かないんだろ?)

「開けたら良いことないっつーの…嫌な映像が想像できちまうんだよ」

「でも、どうしよう?」

 

みんなが足を前に出せずじまいで、扉を開けようとしない。このままだと進展がないと理解した嶺は溜息をついて、自分から行こうと進言する。

嫌々ながらも仕方なく。

 

「…あれなら、もう私が先に見に行ってこようか?」

「え、マジで⁉︎サンキュー!嶺‼︎」

「いやいや⁉︎あんたら男子の二人が前に出るべきでしょうが!」

(さっさと済ませよ)

男子組は朗報で喜び、女子組は嶺のことを心配している。嶺の本心は男子に任せたい気持ちでもあるが、実際にするのは少し見て状況説明を済ませればいいと。

「その、一人で大丈夫?」

「まぁうん。なるようになるさー」

「空元気だな」

「んーじゃ、見てくるね」

嶺がドアをゆっくりと開き、周りが見える程度に一部始終を見た瞬間に判断し、そして即行動に移った。

 

ガラッ(開ける)

ガラッ(閉じる)

「帰る」

「待て待て⁉︎」

「無理ー!あんなのと戦うなんて無理ー!」

 

嶺は首を横に振り続けて、戦いたくないと駄々をこねる。悪夢のことを思い出してし、余程見たくないものを見せられ、戦う気が削がれていく。

 

「一応聞くけど、中には何かあったの?」

「…な、何も無いよー」

「いやいや明らかに問題あったでしょ!」

「棒読みっ…ブッ!」

千枝がツッコミ、雪子が笑い吹く。嶺は問題ないと言うが、目線を向けておらず戦いたくないと帰りたがっている。

 

「もう!嶺さんがダメならやっぱり男子が先陣きってよ!!あと、嶺さんもここまで来て逃げない!」

「ちょっ、なんで俺達までぇ!」

「嶺ちゃん、もう少しの辛抱クマ!」

「やだー帰るー!」

 

雪子とクマが逃げようとする嶺を抑え、千枝は嫌がっている悠と花村を押し、無理矢理扉を開ける。

 

「「「「ほらやっぱり…」」」」

「だから帰りたかったのに…」

 

本物の完二と完二の影がプロレスのように戦っている。温泉場で湿気が高い場所で、男二人がゼェゼェハァハァと競り合っていた。

悠達は、嶺がどうして戦うのを嫌がったのかも納得する。

 

「お前ら…何でここに!」

「えーっと…助けに来た」

「なんだそのやる気のねぇトーンはっ⁉︎」

 

ここまでやってきた悠達に視線が向いたことで、完二の影は押し出した。完二は勢いよく後ろに吹き飛ばされるが、何とか倒れないようにする。

 

「テメェっ…!」

『もうやめようよ嘘つくの。

人を騙すのも、自分を騙すのも嫌いだろ?

やりたい事、やりたいって言って何が悪い?

ボクは君の"やりたい事"だよ』

悠達が助けに向かっている間、完二の影は彼自身の奥底にある弱みを肯定しているが、本人は否定している。

『女は嫌いだ…偉そうで我儘で、怒れば泣く、陰口は言う、チクる、試す、化ける…気持ち悪いモノみたいにボクを見て…変人、変人って…笑いながらこう言うんだ。

 

裁縫好きなんて気持ち悪い…絵を描くなんて似合わない…』

(十分すごいと思うけどなー)

完二を見た女子達からはそう思われてても、嶺にはそれが趣味でも普通だなと思っていた。寧ろ、細かいことができる完二のことを褒めていた。

結局好みは人それぞれなのだからと、嶺は心の中で完二を褒めていた。

 

『男のくせに、男のくせに、男のくせに‼︎

じゃあ男らしいって何だよ!

 

女は怖いよなぁ…』

「怖くなんてねぇ…!」

 

過去に趣味を否定され、女性全てが怖く思ってしまった。ヤンキーみたいに周りから怖い印象を植え付けているが、もっと前の彼は完二の影のようにこんなに荒々しいわけじゃなかった。

 

(まぁうん、色々あるよね)

『男がいい!男だったら男のくせにって言わないしさ!だから男がいいんだ!

 

君は僕、僕は君だよ…分かってるだろ?』

「違う…違うっ‼︎」

完二の影は囁いていく。完二からしたら自分と似た顔で偽者なはずなのに、痛い所を突いてくる。そして、

 

「テメェみてぇのが…俺なもんかよっ!」

『ウフフ、僕は君!君さぁ‼︎』

 

完二は目の前にいる影を否定した。

大量の花びらが舞い、完二の影から下半身部分が巨大なムキムキマッチョと変異していく。頭部位には完二の影がにょっきりと出ており、影の方は手を胸に当て、マッチョの手には性別(男)のマークの形をした物体を二本持ち上げていた。

 

『我は影、真なる我。

僕は自分に正直に生きたいんだ。

だから邪魔な奴には消えてもらうよ?』

(悪夢の分身じゃないとは言え、これでもキツイわー…)

 

完二の影だけではなく、二人のマッチョマンまで出現している。ある意味、悪夢の続きを見せられてるようで嶺の気分が駄々下がりになっていく。

 

「これが、完二君の本音なの…?」

「こんなの本音じゃねぇ!タチ悪く暴走しちまってるだけだ‼︎」

『もう君らには関係ない…消えてもらうって言っただろぉ!』

 

とは言うものの、悠と花村のペルソナを片方のマッチョマンに掴まれて、もう片方のマッチョマンに

 

(あ、これ手遅れだ)

「心が折れたクマーっ⁉︎」

 

早速悠と陽介が精神的な意味で再起不能になっている。男子に興味があるのなら、女子には興味ないと油断している。

しかし、

『下品な赤っ!』

「はぁぁっ⁉︎」

「何とか言ぇ!」

 

マッチョマンの煽りによって、怒りに任せた雪子と千枝が炎と氷で攻撃するが、全くダメージが通らない。頭に血が上ってダメって入る前にそう言った千枝も、無言で煽られせいで怒っている。

(おーい、二人とも…)

千枝も雪子も、頭に血を登らせたらダメと入る前に言ったのに。言い出しっぺの本人がこんな有様なのだ。

こうして千枝と雪子は絶賛お怒り中なままだが、嶺は自分に意識を向けつつ敵の言葉に耳を貸さない。残った嶺にも同様に挑発しているが

『あら?どうしてあの子だけ変わらないのかしらぁ?』

「何モー、何モー、聞コエナーイ、何モ聞コエナーイ」

 

嶺は暗示の様にブツブツと呟きながら、敵に挑発されても効果がない。完二の一部のシャドウが挑発をやめて襲っても、全て避けている。

 

『んもぅ!当たんなぁい‼︎』

『私達の話を聞いてくれないなんて酷い女っ!』

 

話を聞いたところで暴走してる二人を見て、無意味なのは分かっている。

 

『5人でその程度だなんて本当に…笑っちゃうよ!』

(げ、やばっ…)

雷撃を全員に飛ばしてきた。雪子の影の時は火の手から陽介のジライアが助けてくれたが、今回は避けることもできない。

攻撃は直撃する。

『目障りだよ君ぃ!』

(不味いなーあんなの何回も食らってたら半壊状態になし、こっちが避け続けたせいで今度は周囲への攻撃を積極的にしようとしてる)

 

悠達も完二の影に振り回されるわ、攻撃を与えても変な反応ばっかりして調子を狂わされる。ペルソナを持ってない完二も助けなければならない。

仲間も完二もピンチな時、なんとか一人だけ立ち上がった悠は二つのカードを呼び出し、それを一つにする。そこから召喚したペルソナは、7つの首を持つヤマタノオロチ。

 

ー彼の持つワイルドのカードの、真の力が発揮された。

 

『悪くないわ、悪くないわぁ!』

『はぁん、寒いぃ!』

まず完二の影が放つ雷撃を守り、蛇が飛びついて一部のシャドウを締め上げて倒す。

影の方は氷漬けにして、動きを止めた。

(すご…あんなの持ってたんだ)

「これ、作ったんだろ」

「なんだよっ…男のくせにこんなの作っちゃ」

 

悠はぬいぐるみのストラップを手渡す、完二はからかっているのかと思っていた。

 

「いや、可愛いと思うよ?」

「か…」

『かかか可愛いっ⁉︎可愛いのが好きィィィィッ‼︎』

 

可愛いという言葉に二人の完二が反応した。

本人は恥ずかしくて赤面し、もう一人の影の方は動きを止めたはずの氷がすぐに破壊されてしまう。

完二はそのぬいぐるみを受け取り、ゆっくりと立ち上がる。

影はまだ動かないままだった。

 

『アンタしつこいっ!』

「あぁそうだ…俺はっ!可愛いものが好きなんだよぉぉっ!」

 

完二はストラップの人形を握り、自分のシャドウをそのまま殴りつけて撃破した。さっきまでの巨体が、花びらが散ると共に消えてゆく。

『はぁぁっん!受け止めてぇぇぇっ‼︎』

「自分でシャドウを…」

「おぉ、私と一緒だー」

(いやだから…もういいや)

 

嶺がシャドウを倒すのと、完二が倒すのとじゃ全然違うというツッコミをしようとしたが、戦闘によるダメージのせいで諦めた。

「その、嬉しかったぜ…可愛いって言ってくれて、受け入れてくれてよ」

 

これで終わったかという空気になっていたが、完二が怪物を倒したとはいえ、完二の影そのものがまだ消えたわけではない。

 

「まだ向かってくるクマっ⁉︎

余程強く拒絶されているクマかーっ⁉︎」

『誰でも良い、僕を受け入れて…受け入れてよぉ〜‼︎』

「やめろっつてんだよ!」

 

完二が叫ぶと、影は足を止めた。

 

「ったく、情けねぇ。こんなのが自分の中にいると思ったら…男だとか女だとか関係ねぇ!拒絶されるのが怖くて、ただ自分から嫌われようとしてるチキン野郎だ‼︎

 

だからとっくに知ってるんだよ。俺はお前で、お前は俺だって…クソッタレが」

『うん…』

こうして完二は己自身と向き合い、影からペルソナを受け取る。男らしいと雪子達も好評し、悠達も褒めている。

 

「大丈夫か?」

「へへっ…これぐらい、なんとも」

 

完二は、悠の隣にいる嶺の方に顔を向ける。クマみたいなものにも気になっていたが、もう一人知らない人も一緒にいた。

 

「…ところでその人、誰っすか?」

「そりゃそーだよね。初対面だし、今のところは嶺って呼んでもらっていいよ」

 

嶺は完二に挨拶しつつ、近づく。嶺とはこうして知り合ったばかりだから、何を言われるのか分からない。

あんなものを見せられたら、拒絶されると。

 

「あぁ、そうだった。お前もこいつらと一緒に見てたなら…俺のあんな姿を見て軽蔑してるよな。

可愛いもの作って、男らしくないって」

「そんなことないかな、そういう趣味を持ってる人が男にいても不思議じゃないって思ってる。

 

軽蔑もしてないし、寧ろ凄いなーって思ったよ」

(実際弟が可愛いもの好きだし。

あ、でもあの強烈なのが好きってなったら凄い困ってたけど)

悠達の前で弟(正輝)がいるとは口で言わないが、完二の趣味は認めている。影の欲望から漏れていた『男がいい』に関しても言われたら、苦い顔をしていた。

「個人的な主観だけどさ、編み物の趣味を持ってもいいと思うかな。少なくとも私は作る途中で失敗して諦めるから」

「そうか…つっ⁉︎」

 

完二は嶺の返答を聞いて、安心した表情をする。その時、彼の怪我が急に悪化して倒れそうになった。

 

「完二くん!」

「無理してんじゃねぇか⁉︎とにかくここから出よう!」

 

こうして、テレビからいつものジュネスへ帰っていく。悠が完二を支えつつ、ゆっくり出口へと移動していく。嶺も帰っている途中、あんな空間で戦うことになるのならやり辛いと感じていた。

 

(テレビの中に入る前に、必ず耳栓用意しよ。またあんなのが出たら余計戦いづらくなる)

 

ただ叫ぶだけの雑魚シャドウならただ倒すだけでどうにかなるが、完二の影のような人格持ちな上に苦手なタイプが相手では戦意と気力が少なくなってしまう。

 

「よし、帰ってこれたな。身体の方は?」

「あぁ…なんとかな」

「ちゃんと後で話すから、しばらくは身体を休めて」

(ん?メール来てる。確認しよ)

 

ーーーーー

 

主人公を必ず船内に入れる事

 

・鳴上悠

・ナツ・ドラグニル

 

もし、片方あるいは両方が不在の場合。

不在した方の元いた世界は、殺者の楽園の所有物となる。フェアリーテイルの一部ストーリーをクリア後にその制約を課すこととする。

 

制約は二週間以内に果たすこと。

 

 

ーーーーー

 

「…は?えっ?」

 

神から来たメールの内容に、嶺の思考が止まる。唐突に、神から指定された主人公を船に入れるように連絡が来た。もう片方の主人公の住む世界観が余りにも違いすぎたら、その配慮だって何も連絡されていない。

「俺こいつ送っとくわ。

その辺で適当に拾ったって通るだろ、こいつの場合」

「そうだな」

楽園の敵を増やしたくないなら、介入した世界の自分を仲間にして連れていくことが必須項目になる。

 

(え、え、ちょっと待って…どういうこと)

 

嶺を除く悠達が完二を助けて喜んでいる対し、メールを見ていた嶺一人だけがメールの内容に驚愕している。思考が止まり、どうしたらいいのかと混乱したまま。

 

 

 

ーー正義側になってまだ間もないのに、あまりにも早すぎる制約だった

 

【渡るテレビは迷路と自己像幻視その1 クリア】

ーNEXT おとぎ話を辿って その1




[おまけー嶺に対する完二君の反応]

完二「え、あの人生身で戦ってたんすか⁉︎」
陽介「これが本当なんだから俺達も最初に会った時はマジで驚いたよ」
悠「嶺さん。シャドウ相手に動じないし、それどころか一体撃破してる」
完二「マジすか…」
千枝「やっぱり、驚いちゃうよね」
完二「ペルソナも無いまま今でも先輩達と手伝ってくれてるんですよね?」
雪子「でもシャドウだって、進んでいくうちにだんだん危険になっていくし…このまま連れて行って大丈夫なのかな?」
千枝「でも私達が影と戦ってる時、結構肝心な時に助けられてばっかりだったよね」
完二「何やってんスか…」
陽介「で、完二はその人のことどう思うんだよ?」
完二「んーまぁそうっすね…普段そういった環境で生きてきたんじゃないっすか?」
陽介「…一体どんな生活してたら、あんな度胸持てるんだよ?」
完二「そんなに悪い人ってわけじゃないですしあんまり気にしないっス」
雪子「完二君を助けるのだって、一人で偵察に行ってくれたよね」
陽介(まぁ多少の借りができちゃったし、話ししたから悪い人ってわけでもねーし。でもこれで、怪しいのか怪しくないのか…悠も納得して…なんかすっげえ頭ん中混乱してきた)

悠達と行動していくうちに段々と非常識な事が起こりすぎているのもあるが、嶺のことでだいぶ周りが納得しているみんなの環境に、大分影響を受けて常識という感覚が鈍くなり、考えれば考えるほど混乱していく陽介であった まる
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