Justice前章:Labyrinth 嶺編   作:斬刄

19 / 32
19話月の雫と偶然の再会

嶺はどうすればいいか右往左往していた。

ナツ達とはぐれたことで、食べ物も持っておらず、どうしようか困っている。

 

「うーん…どしよ」

 

船とのGPS機能はないから亮達とは連絡すら取れずないまま森の中を彷徨っていた。森に紛れつつ鉈を構える敵が、嶺の周囲を囲って観察している。まだクリーク・二世ことボスからの指示が来ていないため、彼らは様子見している。

それでも嶺は、マイペースだった。

 

「あとご飯も探さないと餓死しちゃうよね。

一旦村に戻った方がいいかー。

もう探索どころじゃなさそ…あ、地図がないから戻れなかった…」

(何をやっているんだあの女は)

 

側から見たらわざとらしく一人劇をやっているかのようで、敵は困惑していた。尾行に気づかれたのか、それとも本当にボケているだけで気づかれていないのか。

嶺はたった一人で、ナツ達が入っていった洞窟を目印にして周囲を探検していた。

 

*****

 

洞窟の探索中に、巨大な怪物が氷の中に閉じ込められているのを発見した。グレイは驚いた顔をしながら凝視し、眺めている。どうしてこんな場所にあるのかということを考えて。

 

「デリオラっ…⁉︎なんでこんなところに」

「グレイ…知ってるの?」

「あぁ…だが、俺の師匠が封じたはずなのにどうしてだ…」

 

燃やせば良いんじゃねと言い、ナツが氷を溶かそうと近づくか、グレイがナツを殴りとばした。

 

「テメェ、何しやが「火の魔道士がこれに近づくんじゃねぇ!氷が溶けてデリオラが動き出したら…誰にも止められはしねぇんだぞ!」ならその氷って、そんな簡単に溶けちまうものなのかよ!」

 

デリオラのと氷のこともナツとルーシィには分からず、当事者であるグレイにしか分からない。

彼が一番苛立っている。

 

「俺の師匠は…アイスドシェルっていう魔法でデリオラを閉じ込めたんだ。それは溶けることのない氷…いかなる爆炎の魔法だったとしてもだ。

ならどうして溶かせないと知ってて…何故この場所に持ち出した?」

「何とかして溶かそうとしてるのかも…」

「一体何のためにだよっ‼︎」

「し、知りませんけどっ…」

あの怪物を見た彼は、ナツだけではなくルーシーにも強く当たっており、全く落ち着きがなかった。

 

「一体…誰が何のためにここにデリオラを⁉︎」

「簡単だ、さっきの奴らを追えば」

「いや…ここで待つ。月が出るまでな。島の呪いもデリオラも…全ては月の光関係していると思えてならねぇ…奴らも」

「いいや、俺には無理だ!追いかけるっ!」

と言ってるナツだったが、すぐにその場で眠ってしまった。

「ほんっと…コイツって本能のままに生きているのね。ある意味羨ましいっていうか…

でもグレイ…逸れちゃった嶺はどうするの?」

「多分大丈夫なんじゃねぇのか。結局、嶺の力のことはそんなに聞けなかったが…あの巨体のネズミを倒した実力を持ってるくらいだ。多分、自衛用の武器は流石に持っているはずだろ。

ルーシーは聞いたのか?」

「ううん…知り合ったばかりだったから、能力についてはそんなに」

 

嶺が始末されるんじゃないかと心配していたが、夜までナツ達は留まることとなる。その間にルーシーがリラを召喚し、夜になるまでの間歌を聞かせていたが、音が聞こえてもナツはそのままいびきをかいて眠っている。途中でグレイが何かを思い出したかのように少し泣いていた。

 

夜になったその日、デリオラの真上から魔法陣が出現する。その紋章には紫の月の光が放たれ、デリオラの氷を溶かし始めていた。

「あの氷も、紫の光も偶然じゃなかった」

「行くぞ!光の元を探すんだ!」

 

遺跡の中心へと光を集めており、さらに上へとナツ達は登っていく。上には大勢の人が紋章を囲っており、光を集めていた。ナツ達には分からなかったが、ルーシーの召喚したリラが詳しく説明していた。

「コイツらは月の雫を使って、あの地下の悪魔を復活させる気なのよ!」

「えっ、知ってるの⁉︎」

「馬鹿なっ⁉︎アイスドシェルは溶けない氷なんだぞ!」

「その氷を溶かす魔法が月の雫なのよ。

一つに集約された月の魔力は、いかなる魔法をも解除する力を持っているの」

 

もしあの怪物を解放したら、デリオラのことを知っているグレイには想像がついている。この島を滅茶苦茶にすることも造作もないことに。

「あいつら…デリオラの恐ろしさを知らねぇんだ!」

「この島の人が呪いだと思っている現象は、月の雫の影響だと思うわ。一つに集まった月の魔力は人体をも汚染する。

それほど強力な魔法なのよ」

 

仮面の男と彼を率いた仲間達三人の話を隠れながらも聞いている。

(ちょっと待てよ、あの罠もあいつらが用意したものか?そうじゃなかったら、一体誰が)

グレイは、転がってきた大岩も不自然だと少し考えていた。ただの岩なら簡単に破壊することができるのに、全く効かなかった。魔法を無力化させているというよりも、炎と氷を通さないように。

「結局、侵入者も見つからなかった」

「本当にいたのかよっ!」

「昼に侵入者がいたそうですが…取り逃がしてしまいましたわ。

こんな私には、愛は語れませんね」

(ということは嶺さんも無事みたい…良かった)

ナツ達は遺跡の中で夜になるまで待っていたが、外にいる嶺もうまく三人の目を掻い潜りつつ、気づかれてないことが分かる。

 

「デリオラの復活はまだか?」

「この調子なら明日か、2日後には」

「…いよいよだな。侵入者の件だが…ここに来て邪魔はされたくない。確か、この島に我々以外に人がいるのはその村のみだったはずだ。

 

村を消してこい…あの殺者の楽園(連中)と違って血は好まんのだがな」

「この声…おい、嘘だろっ⁉︎」

実際、ナツ達を知らない彼らにとってこの島で邪魔をしてくる可能性があるのは村の人達のみ。関係がなくとも、疑われる可能性は十分あった。グレイが声を聞いているうちに、その仮面の男が一体誰なのかが分かってしまった。少なくとも、その男と過去に関わっていることも。

 

「もうコソコソするのはゴメンだ!

邪魔しに来たのは…俺達だぁぁぁぁっ‼︎」

 

隠れていたナツは、とうとう表に出てくる。

村の人達がフェアリーテイルに助けを求めていることもバレる。

「もうっ…なるようになるしかないわね!」

ナツと一緒にルーシィとハッピー、グレイの三人も出てくる。村の人達ではなく自分達だと自白して、彼らを阻止しようとナツ達は戦いを仕掛けてきたが、

「何をしている。

とっとと村の連中を消してこい。

邪魔をする者、それを企てた者、全て敵だ」

「なんでぇぇっ⁉︎」

ナツ達だけではなく村の連中も、彼らに取っては同罪だった。

グレイが先陣切って、突っ込んでいく。

「テメェっ!今すぐそのくだらねぇ儀式とやらをやめあがれっ‼︎」

グレイが氷魔法で拡散させた氷を、仮面をつけた男も同様に氷魔法でぶつける。激しくぶつかったと同時に粉々に破壊された。

「リオン…テメェ自分が何やっているのか分かっているのか‼︎」

「久しいな?グレイ」

 

かつて過去に師匠ことウルの弟子だった二人が、こうして相入れることとなった。

 

 

*****

 

怪しい三人組がウロウロとしている間に、嶺は隠れつつ遺跡にとどまっていた。一人はネズミが飛んで行った方へ、残りの二人が遺跡周りの見回りをしていた。嶺を背後から襲い、拷問して情報を聞き出すことも可能だった。なんとかこの森で食べれそうなものを取って、武器に付加属性を付けさせつつ火を起こす。

 

『そろそろ頃合いだ。その女を始末しろ』

 

そろそろフェアリーテイルが暴れ出して来る頃だと、まず一人が即効性の猛毒を塗ったボウガンを構えていた。背後を取りつつ狙い撃った瞬間、嶺は双剣を取り出して射出された矢を破壊。

もう一度装填する前には既に近づかれ、敵は近づかれたことで身動きが取れなくなっている。

 

(い、今何をされ)

 

首と胴体が真っ二つになっている。胴体が転がり、地面に落ちてい前にそのまま灰となって消え去っていく。

ボウガンだけが地面に落ちていた。

「…あ、さっきの殺者の楽園だったのね。

あぶな。

こんなところ、仲間や島の人に見られてなくて良かった良かった」

 

嶺は気配で判断し、殺気があることを感じた上で身体を刈り取った。灰となって消えた敵の武器を漁っていく。落ちているボウガンで暗殺されそうになった事を理解し、敵に付けられいた事を把握した。

 

(うーん、仲間とは合流できないしこれは野宿かなー。

まぁ食料はなんとかなりそうだし)

遠い場所で上空に火を吹き出してくれたおかげで、嶺はナツ達の場所がわかった。これなら嶺でも道に迷わず、その場所へ向かえば必ず合流できると安堵している。

 

「あ、そんな所にいたんだ」

(こんな事をするのはナツくらいだし)

 

嶺はすぐさま移動するが、これ以上は行かせまいと隠れ潜んでいた敵が複数出現する。

正義側の介入を阻害するために。

「えぇ…まだこんなにいたの」

嶺がナツ達と合流するのは、まだまだ時間がかかりそうだ。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。