無人島の砂場で、男二人が楽しく追いかけっこをしている。もう一人の男は、その二人と海をただ眺めていた。
のほほんなイタリア
真面目な日本
頑固なドイツ
三人は朝から夕方までに食物を探していた。
だが、いくら探してもココナッツ以外はイマイチなものばかりで、満足のいく食事はできない。
救助が来てくれるのを待ち、砂場にSOSの文字が刻まれている。
絶賛、無人島に遭難して楽しんでいる。
そんな時だった。
「たすけてぇぇぇぇぇぇ」
日本は微かに女の人叫び声が聞こえ、足を止める。彼は上を見上げ、追いかけてこないことにイタリアは振り向く。
「日本、どうしたの?」
「…あの、何か聞こえませんでしたか?」
「聞こえるって?何が?」
耳をすましても、何も聞こえずに首を傾げる。二人を眺めていたドイツも急に真面目な顔をして話していることに気になって近づく。
「おい、二人ともどうし」
「たぁぁぁぁすけぇぇぇてぇぇ‼︎‼︎」
瞬間、女の甲高い声が聞こえてきた。3人が一斉に上を向くと、声のした女の人こと嶺が落ちていく。
「誰か落ちてきてる!」
「に、日本!空から女の子が⁉︎
どうしよう!」
「お、落ち着きましょう」
落ちてきた嶺は二人にぶつかり、三人は気を失った。
*****
一方、弟の正輝は黒沢ことアーチャーが隠し持っていたチケットで、転移装置を起動させられたのだ。
「あ。転送装置をウッカリ」
「は?えっ…ちょっおま」
(黒沢ぁぁあ‼何しやがんだてめぇぇぇ‼お前そのチケットのバーコードを利用して転送装置の起動させやがったな⁉︎)
「地面に埋れて溺死しろ…ククク」
「 イェア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!! 」
転移対象である正輝のみが、何も準備できずにそのまま介入する形となる。
転移先は公園へと辿り着き、立ったまま目の前にいる男ことイギリスの話を聞くと、今立っている召喚陣で呼び出され、悪魔という扱いを受けていた。
「おい!お前何かできるだろ!」
「あー、ハイハイ…」
何かやれと言われると正輝はため息をつきつつ、投影魔術を見せた。イギリスはご満悦だったが、そんなことできるなんてと内心では滅茶苦茶驚いている。
これならあの日独伊の連中を懲らしめ、他の国に威厳を示せられると鼻を高くしている。
その光景を公園にいた他の子から見たら、イギリスは虎の威を借る狐のようだった。
ーーーー
敵国が無人島にいると知らせが来ると、さっそくイギリスは悪魔を連れて現場へと向かう。無理矢理に連れて行かされた正輝は早く船に帰りたいと思いながらも、死んだ目で自慢げなイギリスを眺めていた。
襲撃が今回の任務ならさっさと済ませて帰ろうと、武器を投影し襲撃の準備をする。
「それ!とつげきだぁぁっ!」
「しまった⁉︎島に伏兵がいたのか!」
「あれ…俺達一体、って囲まれてるぅぅぅっ⁉︎た、助けてーっ!ドイツー!」
「つっ…気を失ってる間に」
アメリカ、中国、フランス、各国のメンバーが隙だらけの二人を襲う。
しかし、その3人を守ったのは
「えい」
「ぐびゃっ⁉︎」
まだ倒れ伏していた嶺は、こっちも襲われると周囲の危機に反応し、すぐさま起き上がる。大鎌の刃の部分を使わずに、棒がわりになぎ払った。取り囲んでいたフランス、アメリカは吹き飛ばされ、中国は辛うじて防いでいる。
「彼女は…俺達を守ってくれるのかっ…」
(いや、私も襲われそうだったから)
姉の強さに襲ってきた各国の人達は足を引いてしまう。しかし、イギリスだけが前に出て高らかに笑いつつ、切り札があると自慢して登場した。
「心配するな…俺には奥の手がある!
さぁ、先日召喚した悪魔よ!
あの3人を退治しろ!」
「あーハイハイヤリマス(棒読み)…ってえ?」
適当にやろうと武器を構えるが、相手が姉だなんてこの時知る由もなかった。
邪気な笑顔に、正輝は一歩下がった。
これは攻撃したらヤバいと投影破棄してイギリスの方に顔を向けた。
「何やってるんだ!さあ早く奴を倒してお前の力を周りに知らしめてやれ!」
「あの…ごめん無理です」
「え?」
正輝は再度姉の顔を見ると、まだ笑顔(笑ってない)の表情をしている。少し静止し続けていくうちに彼の額に汗が溢れ、そして
「やっぱ無理無理無理無理イィィィッアウトォォォ‼︎」
「いや!お前悪魔なんだろ⁉︎」
その場から逃げ去り、背後にあるヤシの木へ移動した。さっきまでの悪魔とは思えない反応にイギリスは焦り出した。
「馬鹿言え!俺の姉と立ち向かえるか‼︎
あんな覇気まで纏っているし!
姉と戦うなんて絶対嫌だからな!」
「はぁ⁉︎あれってお前のねーちゃんなのか⁉︎
どっからどう見ても人間だし悪魔のお前なら大丈」
「大丈夫なわけねぇだろうがボケェェェ‼」
「おーい、正輝も私も人間だよー」
「…え?」
イギリスは悪魔ではなく人間であることに、今更気づいた。ヤシの木にずっと隠れてる正輝の怯えからして、目の前にいる嶺の言葉は本当だった。
「え、だってお前悪魔って言っただろ」
「あーあれ、テキトーに済ませようとしただけだ。俺も姉もホントは人間だよ」
「ま、マジかよ…」
それを聞いて、イギリスはガックリとする。
このまま枢軸国を襲うにしても姉を倒す実力者など一人もおらず、返り討ちにされるんじゃないかとフランスは怯えていた。
(や、やべーよ…襲えるチャンスだってアメリカが言ったのにこのままじゃ返り討ちにされちま…ん?何だこれ。
ハッ…⁉︎こ、これなら全滅は避けられるかもしれないっ‼︎)
形勢逆転されてしまうんじゃないかとおまっていたが、たまたま近くにあった宝の地図を発見し、あることを提案する。
「あ、アメリカ?この宝の地図見つけたんだけどさ。宝を先に見つけた方が勝ちで良くね?」
「よし!これから宝探しに行こう!」
「「「は?」」」
こうして、戦闘は休戦することとなった。
*****
宝探しは二つのチームに分けて、この無人島にある洞窟を探索することとなる。争い合いよりも、どちらが早く辿り着けれるかの競い合いとなった。
イギリスには切り札があると言いつつもその期待を裏切った罰として枢軸国チームと組む事になった。
「丸かいて地球!丸かいて地球!丸かいて地球!僕イタリア!あ〜!一筆で見える素晴らしい世界ィ〜長靴で乾杯だ!ヘタリア〜!
楽しい楽しい宝探し!」
「何でお前らと…だけど、この二人がいるならなんとかなりそうだな」
「まぁ、そうだな」
二人の戦力が加われば、余程のことが起こらない限り流石に洞窟に入っても無事に抜け出せることができると。
そう思っていた時期が、イギリス達にはありました。
「ギャァァァァッ虫いやァァッ‼︎」
「ちょっ、姉さん⁉︎」
虫が大量発生すると、それに発狂した嶺は札を使って駆除する。周囲にも影響して、洞窟の耐久値が下がっていく。
またある時はイタリアがスイッチを踏んで、大岩が押し寄せていた。
「ぎゃー!丸い岩が沢山きてるよ⁉︎」
「姉さん調節頼んだ!偽・螺旋剣!」
一方の正輝は被害を最小限にできるよう、全設定変更で調節された宝具で大岩を粉砕する。
これ以上洞窟の中で暴れたら、宝を探す前に下敷きにされる。しかし、
「あ」
「イタリアァァァッ⁉︎」
一難去ってまた一難。
たまたま壁にあったスイッチを押してしまい大岩の次は、大量の水が流れ込んでくる。
正輝のアイアスの盾で防ぐこともできるが、蓋みたいに完全に防げるわけではなく、隙間からは守りきれない。
姉弟ですら、これにはお手上げだった。
「あー…これは流石に無理だわ」
「私も」
「嘘だろぉぉぉ⁉」
罠は水や虫だけではない、槍や巨大なとらバサミが進む度に四人を嵌めようとする。そうなる前に虫嫌いの嶺が札を大量に使用し、正輝は投影魔術で先に進む罠を解除している。
嶺の方が罠破壊で進む事はできているが、その代償に洞窟が崩れかけそうだった。
「だ、大丈夫なのか…」
「出口につけれるよう祈りましょう…」
罠をゴリ押しで突破している分、かえって洞窟が崩れるのではないかとドイツと日本は心配しながらも進んでいくのだった。
因みに、
「あ、この洞窟。生き物だけが安全だって」
「それを先に言え!!」
通っていた場所は宝箱から最短距離ではあったものの、死んでもおかしくない罠の巣窟だった。
*****
「なんだよ!ドイツチームが一番かよ!」
「イギリスの服ボロボロじゃねーか!
てか、お前達いくら何でも早くないか⁉︎」
「おかしいアルな…この地図必ず途中でばったり合うはずネ」
「なんか、げっそりとしてない?
あ、もしかして君達危険なルートで行ったとか?」
「生き残ったのが不思議なぐらいだ…」
日本は洞窟を出て、おにぎりを食べている。
近道ではあったものの、その分苦労は絶えなかった。
「うわぁぁぁん!怖かったよぉぉっ!」
「虫嫌い虫嫌い虫嫌い虫嫌い虫嫌い…もうやだ」
「なにあの大量のトラップ鬼畜過ぎるだろ」
「…それじゃあ、宝箱を開けるぞ」
イタリアとイギリスの心は折れており、嶺は虫の大量発生に滅入っている。宝物を開くと金銀財宝ではなく、入っていた写真からしてアメリカ達の思い出の品が宝箱に入っていた。
「…どういうこと?」
「あれ?なんでアメリカの品物があるんだ?」
「これは…
あーそうだ思い出した!これ前に俺がここで漂流された時に書いた宝の地図だ!」
「は?」
「え?宝の地図で探索したら、また宝の地図があんの?
何それマトリョーシカ式?」
以前、アメリカとカナダがこの無人島に漂流し、その思い出をタイムカプセルみたいにこの宝箱に入れたものだ。一枚目は行方が分からずに、もう一枚を宝箱に入れていたのだ。
「いやぁ。あの時はホント死ぬかと思ったよ!でも確かカナダもいたからな!おかげで生きて帰ってこれたわけだ」
「いや!普通に思い出せれるだろ!」
つまり、アメリカとカナダが島で発見したガラクタものである。
「いやーメンゴメンゴ!」
「「「ふざけんな!!!!!」」」
(思えばこの宝箱…ボロボロだったな。ん?それじゃああの豪華な宝箱は?)
「んじゃあ、このもう一つのは?」
正輝がその隣にあった宝物を開けると、
「やあ!僕の名前はポーランド!僕と友達になって…」
バタン!!!!!!
人間が出てくることに驚き、すぐさま宝箱を閉じてしまった。
(あー閉めちゃった…これ開けて良いのか?)
正輝はもう一度開けるかと宝箱を指差しつつ他のみんなに顔を向けているが、アメリカ達は嫌な顔と腕で×字を見せている。もう一度開けて調べたら別の意味で厄介毎になりそうだなと敢えてその宝箱に手を出す事はなかった。
「そっか…じゃ、帰ろうか」
「うん」
こうして宝探しは終わり、一同は砂浜へと戻っていく。
「なんか勝てる気がしなかった…お姉さん怖いね♪」
「君のお姉さんとは仲良くなれそうだよ」
「領土だけどさ…もうお前ら争い合ったら場所が荒れ果てるぞ…」
「なんか…怖かったネ」
「お前らの威圧感恐ろしいわ!近くに宝の地図があったからこうなっちまったんだよ!」
これ以上争っても洞窟探検の疲労のせいか、お互いに戦う気力は失せている。
全員無人島から出て帰ることを優先し、正輝と嶺は別の場所で迎えが来るとみんなに伝え、自分の船へと転移して帰っていくのだった。
「それじゃあまたねー嶺ちゃーん!」
「ん、またねイタリアー!」
*****
転移はフェアリーテイルで用意した家でも良かったが、ハセヲが嶺の迷子の心配であるため、こうして船に帰ってきた。
「ただい、ん?何だろ」
帰ったと同時に、携帯の着信音が鳴る。
取り出してメールを開くと
ーーーーーーーーーーーーーーー
転生者50体を瞬殺しました
お金560000円
称号:無自覚爆破を手にいれました。
ーーーーーーーーーーーーーーー
(あれ?敵の転生者って今回見かけたっけ?)
砂浜でも、洞窟でも彼ら以外と出会ったことなどない。腕を組んで不自然に思いつつ、正輝に電話をかける。
「もしもし正輝?あたし達って転生者に会ってないよね?」
「あぁ、会ってないよ…どうしてこうなった?」
正輝にも同じメールが送られており、まさか洞窟内で大暴れしている間、敵転生者が介入して早々巻き込まれるとは思っても見なかったのだから。
「そんなことあったか?」
「爆破って私の大暴れが原因ってこと?」
「そもそも爆破って…あ」
(ええい!よこせ!洞窟の外が見える隙間に飛ばすぞ!)
(壊れた幻想!)
通行止めの通路に本来正輝がドイツに渡すはずだった投影の手榴弾を何故かイタリアが口で咥えていたため、急いでそれを隙間に投げていたことを思い出した。
激しい爆発音と共に、叫び声が聞こえたような聞こえてなかったような。
(あー…もしかしてそれだったかな?)