とある仮想の欠陥電気(レディオノイズ)   作:さくらぎ おきの

10 / 29
誤字報告ありがとうございます。

遅くなってしまってすみません。









3、暗躍③

 

 

 

 

 

 

 

「逃さねぇぜ!オラよッ!」

「しつこい人は嫌われますよっ!」

 

 

 ガキン!!という金属音が鳴り響く。

 

 木虎は振るったスコーピオンが米屋の弧月で受け止められた事を認識し、即座にその場を離れる。

 

 米屋も同じくA級。高い確率で反撃が飛んでくるのは容易に予想できる。

 

 そして回避と同時に拳銃型トリガーで牽制。だが、相手側もそんな牽制如きで怯むような隊員ではない。

 

 シールドで的確に防ぎ速度そのままに木虎に突っ込んでいく。

 

 それに応じるように木虎も距離を詰め、再びスコーピオンを振るい刃が交錯。

 

 二人は、互角の鍔迫り合いを続けていた。

 

 木虎の武器は己の機動力にマッチしているスコーピオン。だが、米屋の槍型の弧月と比べると耐久力という面では敗北を喫してしまう。

 

 現に彼女のスコーピオンにはヒビが入ってしまっている。

 

 

「防いでるだけじゃジリ貧だぜ?もっと攻めにきなよ!」

「……私の目的は"足止め"です。最悪倒せなくても迅さんが勝利するまでの時間を稼げればいい。」

 

 

 太刀川と風間隊の面々は迅を倒すためには不可欠。裏を返せば太刀川と風間隊が倒されれば迅を倒すことはできなくなる。

 

 迅の計算では太刀川と風間隊を同時に相手取っても十分に勝てるらしい。

 

 ただ、そこに他の面々が加わればどうなるかは未知数。

 

 だからこそ、嵐山隊の面々は他のメンバーが彼らの戦いに加わるのを全力で止めなければならない。

 

 

(挑発してるつもりでしょうけど……ただ、言われっぱなしは性に合わないわね。)

 

 

 だが木虎藍という人間はよく言えば負けず嫌い。悪く言えば意地っ張り。

 

 年上には特に舐められたくないというスタンスであるために、見え見えの挑発にも()()()乗る。

 

 

「お?イイねその目。ようやくやる気を見せたか。」

「やる気?私は淡々とこなすだけですよ。でもまずは……」

「……ってオイ!逃げんな!」

 

 

 ようやく時間稼ぎから本格的な戦闘へと移行するかという瞬間。

 

 木虎は片手に持つ拳銃で再度米屋へ向かって攻撃。これで倒れてくれれば楽だが、流石に米屋もシールドを張って防いだ。

 

 その隙に木虎はマンションに侵入し逃げの選択を続行。

 

 同じ攻撃手トリガーであるスコーピオンと弧月の違いがまた悪く作用し、重い弧月を使う米屋は初動が少し遅れてしまった。

 

 だが、木虎の逃げにも限界が訪れる。いくらマンションといえども通路の長さには限界があるからだ。

 

 ようやく追い詰めた米屋は木虎が最後に逃げ入った部屋のドアを槍で強引に文字通り切り開き、彼女を目前に捉えた。

 

 

「お?逃げ隠れるのもここまでか?狭いところなら槍が使えないと思ったか?」

「……」

「そんなもん、対応済みだっての!」

 

 

 本来であれば槍などを扱うにはあまりにも狭い部屋。短距離(ショートレンジ)メインの戦闘であれば、小回りの効くスコーピオンの方が有利。

 

 ただし、それはあくまで柄の部分が長いのがネックなだけ。

 

 ニヤリと米屋が口角を上げた瞬間、()()()()()()()()()

 

 これによって槍であることの不利はほとんど存在しない。あとはトリガー本来の耐久度による真っ向勝負。

 

 それがわかっているからか、米屋は木虎をここで仕留め切れる、そう確信した。

 

 

「オラァ!」

「かかりましたね。」

「なッ……!ワイヤー!?まさか……スパイダーか!?」

 

 

 彼が槍を突き刺そうとした刹那、ピン、と張られた何本もの糸が米屋の肘を引っ掛けていた。

 

 急な動きの静止に一瞬判断が遅れた米屋は無防備なまま思考も止めてしまった。

 

 その瞬間を木虎は逃さない。

 

 直後、米谷に向かって急接近した彼女はスコーピオンを米屋の体の中央付近に勢いよく突き立てた。

 

 

「逃げるように移動したのはワイヤーを張りたかったから。暗くて全然見えなかったでしょう。」

「………」

「トリオン供給器官は破壊したわ。終わりね。」

 

 

 光り出す米屋の体。彼の顔には青白いひび割れがうかんだ。

 

 スパイダー、それはごく少量のトリオンを消費し自由に壁や障害物にワイヤーを張ることのできるトリガー。

 

 ワイヤーの細さや長さ、しまいには色まで調節できるこのトリガーはこういった相手の虚をつくことに特化している。

 

 実際に彼女はあたりが闇で覆われていることに目をつけて勝利をもぎ取った。

 

 

「ふぅん……と、思うじゃん?」

「なッ………」

「最後くらい足掻かせてもらうぜ!っとォ!」

 

 

 だが、これで終わらないのがA級隊員、米屋陽介という男。

 

 彼は残った力を振り絞って部屋の窓ガラスを叩き割り、自分諸共木虎を空中に引っ張り出した。

 

 自由落下をする米屋と木虎。ただ、外には彼の仲間がいる______!! 

 

 

「出番だぜ!弾バカ!」

「誰が弾バカだ!お前こそ負けてんじゃねぇか、槍バカ!"通常弾"(アステロイド)!」

「ぐッッ……シールド!!」 

 

 

 苦虫を潰したような表情をしながら落下する木虎。下には歩く爆撃機、出水公平が待ち構えていた。

 

 彼が選択したのは威力重視の射手トリガー、通常弾(アステロイド)

 

 木虎のような高い機動力を持つ相手には追尾弾(ハウンド)をよく使用するが、相手がいるのは空中。

 

 木虎にとってはろくに身動きも取れなければ、出水のトリオン量もあいまってシールドで受け切るのも危うい状況。

 

 だからこそ、出水は通常弾を選択した。

 

 

「まだです。シールド!!」

「時枝先輩!?」

「マジかよ……さっきまでいなかったじゃんか…」

 

 

 相手が伏兵を使い出すならこちらも伏兵を使うまで。

 

 先ほどまで隠れていた時枝が木虎を庇うようにしてシールドを展開。木虎自身のシールドも相まって出水の通常弾がシールドを貫通することはなかった。

 

 だが、依然として木虎と充は逃げようのない空中にいて不利な状況は変わらないまま。

 

 浮いた駒は狙われるのがこの世の常。

 

 少し離れた場所でずっと狙撃のタイミングが来るのを待っていた男、当真勇のスコープには彼らの姿がバッチリと映っていた。

 

 

「木虎……いやトッキーとで2枚抜き……いただきだぜッ!」

「木虎、こっち。」

「へ?」

 

 

 その狙いに即座に気づいた時枝は木虎の腕をおもいきり引っ張った。

 

 トリオン体によって強化された力によって引っ張られた彼女は普通ではありえないスピードで無理やり移動させられる。

 

 狙っていたターゲットの体勢が急に変わったせいか、当真の銃弾は木虎の体にはかすりもせず、かろうじて時枝の足を奪ったにとどまったのだった。

 

 

「オイコラ、邪魔すんなトッキー。今のはダブルキルの流れだっただろうが。」

 

 

 獲物を仕留め損ねた当真は愚痴を吐いた。古寺も奈良坂も射線が切れてしまったせいで狙えないらしく狙撃銃をしまう。

 

 当真もとい狙撃部隊の狙撃は失敗に終わった。木虎は五体満足で生存し、時枝は足をとばしただけ。一方、米屋は瀕死。もうすぐ緊急脱出(ベイルアウト)で戦線を離脱してしまうだろう。そうなれば戦況は一気に嵐山、迅のチーム有利に傾く。

 

 そう、誰もが思っていた。

 

 ただ、そんな考えも()()()()()()()()()()()()()

 

 

「………木虎!!」

「え?」

 

 

【トリオン供給器官破損 緊急脱出(ベイルアウト)

 

 

 嵐山がその存在に気づいたが、時すでに遅し。

 

 木虎の体の中心を寸分違わず撃ち抜く必殺の一撃。

 

 もう狙撃はない。その一瞬の油断とも言える認識をつく狙撃は彼女の急所を撃ち抜いた。

 

 

「オイオイ、誰だ?俺の獲物を横取りしたやつは。お前か?奈良坂。」

「違います。どうやら古寺も違うらしい……流石に佐鳥が撃つはずが無いだろうし……まさか例の近界民(ネイバー)か!?」

「つってもありゃボーダーのトリガーだろ。わっかんねぇな……」

「一旦放っておいても大丈夫でしょう。今優先するのは嵐山隊の殲滅です。」

「………残り3人ならお前らだけでもいけるだろ。俺はいくぜ。」

「なッ!当真さん!!」

 

 

 己の獲物を横取りしたまだ見ぬ新手。

 

 ただわかっているのはボーダーに所属している隊員であるということのみ。

 

 まだ見ぬ強者との邂逅に彼は高揚を隠せないでいた。 

 

 普段は気分屋な当真だが、今の彼の心理状態はかなり興奮状態にあった。

 

 

 

 

「おもしれぇ……久々に高ぶる戦闘ができそうだなぁ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

△▼△▼ △▼△▼ △▼△▼

 

 

 

 

 

 

 

 

「ターゲット撃破。オーバー。と、ミサカはこれ見よがしに戦果報告をしてみます。」

『おお!よくやってくれた!これで嵐山隊の機動力を一気に奪えたことになるぞ!』

 

 

 少し離れた場所からスコープを覗き込んでいたのはボーダー本部からの第二の刺客、ミサカだった。

 

 狙撃手トリガー、イーグレットを抱える彼女の姿がいつもと違っているのが見て取れる。

 

 真っ黒な防護服のような格好。

 

 いつもの薄茶色の制服とは違って彼女の裏の面をより醸し出している。

 

 

『それにしても何故ワシがオペレーターなど……それに太刀川は……あやつのせいで試作品を試す時間もほとんど取れなかったわい!』

「結果オーライというやつです。と、ミサカは一応上司?にフォローを入れます。」

『それは結果論じゃろうて!とはいえその()()()()()()()の起動には時間制限がある。その時間内に多くの嵐山隊を狙撃せい!』

 

 

 彼女のオペレーターおよび監視役を務めているのはまさかの鬼怒田。

 

 流石に自分の試作した()()()()()()()()()()の試用結果を見ないわけにはいかなかったのか、こうして彼がミサカの補助を行っていた。

 

 そして、鬼怒田の指示を聞いたミサカは首についているチョーカーの電源を切った。

 

 すると彼女の服装は先ほどのものと違い元のものに戻る。

 

 

「ふむ、こうしてトリオン体を解除するのですね。と、ミサカは新たな発見に少々興奮をおぼえます。」

『あくまでトリオン体の換装はその機械中のトリオンを通常時より激しく使うだけじゃからな。通常時でも少しずつトリオンを使っていることをわすれるなよ。』

 

 

 ミサカの今の体の状態は常にトリオン欠乏状態にある。

 

 それこそ、首の機械がなければ戦闘どころか行動も不能なくらいに。

 

 彼女が持ち歩けるトリオンには限りがある。だからこそ、少しでもトリオンの消費は抑えなければならなかった。

 

 

『通常時で12時間。戦闘時は急激にトリオンを消費するから30分まで。試作品じゃからあまり無理はするなよ。』

「了解です。と、ミサカは思ったよりも短いタイムリミットに辟易しま………………来る。トリガー・オン。」

 

 

 鬼怒田と話している途中で、遮るように銃弾が彼女に向かって放たれた。

 

 事前に察知したミサカはチョーカーのスイッチをオンにし、瞬時にシールドを展開。

 

 二重に貼られたシールドは半ばまで貫通していたが、銃弾が彼女に届くのを阻んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

「やるじゃねーか。で、お前はどこのどいつ?」

「なんでミサカのほうにくるのですか。と、ミサカは予想外の展開に眉間の皺がより一層深まります。」

『何をしておるのだ当真は!お前というやつはぁぁぁぁ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






またしても胃を痛める鬼怒田さん。

原作では木虎が生き残って時枝がやられて、当真が木虎にやられますが、本作では木虎がやられて時枝が生き残り、当真が実質退場って形です。

変わった点は生き残っているのが木虎か時枝かの違いですね。

日常編欲しいですか?

  • 欲しい
  • いらない
  • 必要最低限の日常編が欲しい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。