とある仮想の欠陥電気(レディオノイズ)   作:さくらぎ おきの

11 / 29
誤字報告感謝です。本当に助かっております。


4、暗躍④

 

 

 

 

 

 

 

「あれまぁ。なんかしんねーけど結果オーライか。実質1・1交換ってことであとはヨロシク〜。」

 

 

【トリオン供給器官破損 緊急脱出(ベイルアウト)

 

 

 

 つい先ほど体の中心を貫かれた米屋もまた、木虎と同じように緊急脱出(ベイルアウト)していった。

 

 これによって両陣営とも1人ずつメンバーを失ったことになる。

 

 嵐山隊、木虎はチームで唯一高機動動力を生かした3次元戦闘が可能。点取り屋である彼女を欠いた嵐山隊は比較的不利な展開を負わされているといっても良い。

 

 ただ、

 

 

「秀次、すまない。当真さんが離脱した。」

「…………ふざけるなッ!」

「ま、まあ人数はまだいるし槍バカと当真さんがいなくてもなんとかなるんじゃ無いのか?」

 

 

 作戦の途中だというのに抜け出して単独行動を選択した当真に憤慨する三輪。出水がなだめるも、それを受け入れられるような状態ではない。

 

 何故彼がここまで苛立ちを隠せないでいるのか。

 

 それは、この戦いはただの黒トリガーを奪取するだけの戦いではないからだ。

 

 近界民(ネイバー)を徹底的に撲滅する姿勢を貫く城戸派。

 

 近界民(ネイバー)友好主義の玉狛支部派と近界民(ネイバー)抗戦、防衛最優先主義の忍田派。

 

 本来は三つの派閥に分かれているはずなのだが、今回は例外で二項対立という形になった。

 

 この二者が戦うということは、実質的に近界民(ネイバー)に対する考え方の衝突を意味する。

 

 近界民(ネイバー)に実の姉を殺されたという過去を持つ三輪は特にこの戦いに負けるわけにはいかなかった。

 

 自分のこの恨みの気持ちは当然で、正しいものであると証明したかったから。そして、姉を見捨てた迅が守ろうとしているものを奪取することで()()()()()の気持ちを味わわせたかったから。

 

 だから、この勝負には絶対負けられない。

 

 手始めに目の前の嵐山隊を速やかに殲滅し、太刀川には悪いが迅をこの手で葬る。そして黒トリガーを風刃も含めて二個とも回収する。

 

 上層部の命令はあくまで玉狛に匿われている近界民(ネイバー)の黒トリガーの回収だったが、三輪は全ての黒トリガーを回収するつもりでいた。

 

 二度と城戸派に逆らうことがないように。

 

 

 

 

 

 

「………まあいい。狙撃手は引き続き佐鳥への警戒を。嵐山と時枝は残りの俺たちで押さえ込むぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

△▼△▼ △▼△▼ △▼△▼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オイ真木ちゃん。どーなってんだ?これはよ。」

『私が知るか。貴様から見た感じはどうなの?』

「あ、冬島さんは大丈夫だったのね。……わっかんねぇ。使ってんのはボーダーのトリガーだが、()()()ありまくりだ。真木ちゃんもなんか感じない?」

 

 

 一発撃ったら次の狙撃ポイントに移動する。狙撃手の基本だ。

 

 例に漏れず次の狙撃ポイントに速やかに移動した当真はオペレーターの真木理佐(まきりさ)と現状確認をとっていた。

 

 なにしろ今回の相手は武器の仕様こそ知っているものの、使用者本人については全く未知の相手。

 

 彼女の使っている装備はボーダーのもの。

 

 普段から見ているからこそ、彼女の存在はボーダーの隊員ではないことが一瞬で理解できる。

 

 だからこそ、意味がわからない。

 

 

「気配の消し方は完璧だ。どっから狙ってるかもわかんねぇ。」

『なんだかお前らしくないな。』

「実際に受けてみればわかるぜ、これは……」

 

 

 当真の額から一筋の汗が滲み出した。

 

 

狙撃手(スナイパー)をずっとやってたら、どっから攻撃が来んのかはだいたいわかる。『自分ならこっから狙う』みたいにな。」

『それが貴様には今わかんないんだろう?回りくどく言わないでハッキリ喋れ。』

 

 

 いつもならあけすけと言いたいことを言う彼が少し口ごもっているのを見て、真木は少し混乱した。

 

 当真の肩書はボーダーNo.1狙撃手。

 

 彼の実力は卓越した狙撃技術とほとんど被弾しないという危機管理能力にある。

 

 そんな彼がここまで言うのは全くないと言ってもいいほどに稀有。

 

 

「狙ってくる方向は分かんねぇのに、()()()()って感情はビンビンしてやがる。」

『おい、それって………』

「ああ、狙撃手としては失格だぜ。まず本職じゃないのは確かだ。」

 

 

 方向のわからない殺気ほど怖いものはない。

 

 そして、間違いなくその殺気はこちらに向いているはず。ただ、方向を決めるにあたって必ず必要な始点が見当たらない。

 

 

『あえて殺気を丸出しにしているとかはないのか?』

「もし、脅しでやってるとしたら流石に戦い慣れすぎだろ。さっきスコープで覗いた時に見たら中坊くらいだったぜ。」

『暫定近界民(ネイバー)なんだから無くはない……が、これからどうするつもりだ?撃ってくる方向がわからないならカウンタースナイプか?』

 

 

 相手の狙撃手を確実に落とす方法としてカウンタースナイプが挙げられる。

 

 何故なら狙撃手は一度撃ったあと、次の弾丸を装填するのに一定のクールタイムが発生する。そして、その間は防御することしかできず、狙撃手の弾丸は広範囲に広がったシールドならば貫通してしまうからだ。

 

 もちろん先ほど防がれたように局所的に重なったシールドで受けられるとどうしようもないのだが、そう簡単に相手の狙いを絞るのはそれこそ当真ですらも難しい。

 

 だからこそ、当真もなるべくカウンタースナイプを喰らわないように『撃ったあとはすぐに移動』を意識していたのだが。

 

 

「………」

『どうした?』

 

 

 真木は突然震え出した当真に柄にもなく心配した。

 

 今まで圧倒的な実力を持ってきたNo. 1狙撃手がここまで震える相手なのか。

 

 

「………おもしれぇ」

『ん?』

「おもしれぇよ、コイツは!」

『ハァ…………こういうヤツだったな。』

 

 

 結論、全くビビってなどいなかった。

 

 むしろ、ビビっているというよりも武者震いをしているようだった。

 

 単純な強敵への興味か。それとも、己こそ最強の狙撃手なのだと証明するためか。

 

 どちらにせよ、普段めんどくさりの彼が方向が違うとはいえ滅多に出さないやる気を見せている。

 

 

「おい、真木ちゃん。弾道予測と射撃角度の割り出し頼んだ。」

『私にものを頼むなら絶対に当てな。ただでさえ仕事ほっぽり出す馬鹿なんだから。』

「やっぱり先輩への態度じゃ無くねぇ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『何故だ!何故城戸司令はお前と遠征部隊を会わせなかった!』

「ミサカもその点については疑問です。まぁこの作戦の前に無駄な確執を作らないためだったのかもしれませんが。と、ミサカは城戸司令の判断の正当性を模索します。」

『文句を言ってる暇はないぞ!かといって当真を放っておくわけにもいかんし………』

 

 

 一方、ミサカたちはミサカたちで混乱の渦に巻き込まれていた。

 

 現状、ミサカは城戸司令の命令に従い、遠征組の仲間としてこの場にいる。

 

 だが現にこうして何故か遠征組、とりわけ狙撃手の中でもトップに君臨している当真と相対している。

 

 それはひとえに城戸が彼らとミサカを会わせないからこそ起きたようなものだ。

 

 

「確か彼らの中にはミワ……とかがいるのでしょう?と、ミサカは先日戦った彼のことを提起してみます。」

『確かに三輪は近界民(ネイバー)に対して強い憎悪を持ってはいるが……それにしても当真とお前がぶつかるのはあまりにも勿体なさすぎる!』

 

 

 片や実力については申し分ない新たなボーダーの傭兵。もう片方はボーダーでも指折りの実力者。

 

 ちょっとした情報の齟齬でぶつかるのはあまりにも惜しい。

 

 

『ん、何をしておる。』

「スコープでのぞいてます。」

『待て!やり合うなといったじゃろう?』

『撃ちませんよ、あちらが撃ってこない限りは。と、ミサカは正当防衛の口実を得るまでは待つつもりです。』

『なんじゃと?それになんの意味がある。』

 

 

 鬼怒田は何故撃たないのに身を乗り出して狙撃の姿勢をとっているのかが気になった。

 

 いかにも撃ってくださいと言わんばかりの構えをしていたのはなぜか。

 

 

「理由は二つあります。一つは相手を威圧して撃たせないようにするためです。」

『撃たせないように……?』

「はい。相手は今こちらの様子を伺っているはず。そこから狙われているという感情を引き出すためです。と、ミサカは淡々と理由を述べます。」

 

 

 狙撃手というポジション同士の戦闘は一発あたったら大概お仕舞いの世界。

 

 なるべく被弾したくないのが狙撃手の心理のはず。

 

 そこにどこからか狙われているという感覚を相手に思わせることで()()()姿()()にしてしまおうと彼女は考えた。

 

 

「それにこの行動は相手が実力者であればあるほど効きます。」

『なるほど。当真は確かにボーダートップの狙撃手。これで潰し合わずにすむのう……』

「いえ、よくて50%。先ほどの不意打ちも鑑みたら35%くらいでしょう。と、ミサカはあなたの感想に訂正をします。」

『何故じゃ!?』

 

 

 戦闘経験が豊富であればあるほど殺気には敏感になる。そこに見え見えの殺気を当てれば自ずと勝手に警戒してくれる。

 

 だが、それは相手が慎重に行動するような人間の場合。

 

 実力者は慣れやこれまでの経験から安全択が適切に選択できるものだ。ただ、その中にも例外は存在する。

 

 

「これは相手が基礎に忠実である敵には良く効きますが、才能だったり特性だったりで独自の戦闘スタイルを確立している敵には確実に決まるわけではありません。」

『それがなんだというのだ。もう一つの理由とやらに関係するのか?』

ざっつらいと(その通り)です。と、ミサカは肯定の意思を表明します。」

 

 

 人によっては自身に絶対的自信を持っている人間や、基礎を捨てた立ち回りをする人間もいる。

 

 そう言った相手には威圧は関係ない。

 

 一瞬は臆するだろうが、じきに慣れて自分の戦闘スタイルを遂行するだろう。

 

 

「もうそろそろ頃合いです…………来ます………ッッ!!」

『どうした!?大丈夫か!?……ってお前、()()()()()ではないか!』

 

 

 ガキィィンン_________

 

 先程までミサカがいたマンションの屋上が狙撃され破壊されたのがわかる。

 

 鬼怒田は悟る。当真が彼女を狙撃して見せたのだと。

 

 そして、彼女はそこから飛び降りることで躱して見せたのだと。

 

 

「問題ありません。これが二つ目の理由です。」

『何?』

「もし相手が才能マンで、そいつに狙撃させたということはここからカウンターが狙えます。と、ミサカはここから相手を取りに行きます。」

 

 

 一つ目の理由はあくまで相手が攻撃してこないように牽制するため。

 

 本来であればそれが望ましかったが、どうやらそのようにはいかないらしい。

 

 であればボーダー上層部には申し訳ないが、一旦落とさせてもらうしかない。

 

 

『何を言う!今いるのは()()じゃぞ!』

 

 

 マンションの屋上から飛び降りた彼女が今いるのは紛れもなく空中。

 

 スコープを覗き込むために体を支える土台もなければ、身を防ぐ障害物もない。

 

 だが、相手は今攻撃できない状態にある。狙撃を行った直後なのだから。

 

 

「だからなんだと言うのです。と、ミサカは常識の訂正を求めます。」

 

 

 普通であれば不可能。

 

 だが、この世界で不可能をくつがえしてきたのが近界民(ネイバー)の戦闘スキルや技術。

 

 それを身をもって知っている鬼怒田だからこそ、彼女の言葉に妙な説得力を感じてしまった。

 

 空中で自由落下を続けながらも、ミサカはイーグレットのスコープから目を離さない。

 

 狙うは狙撃を仕掛けてきた相手、その一つのみ。

 

 彼女の指は力をもって引き金に触れた。

 

 

 

 

「ターゲット確認。と、ミサカは徐に引き金を引きます。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






アンケートへの投票ありがとうございます。
日常編を希望する声が多数寄せられていますので、章の合間に幕間という形で日常編をかいてみようかなと思います。

他の二次創作者のように面白く描けるかどうかわかりませんが、ぜひその時は見ていただけると幸いです。

日常編欲しいですか?

  • 欲しい
  • いらない
  • 必要最低限の日常編が欲しい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。